目を覚ましたら本の山の中だった。視界をうめつくすほどの山、タイトルに目を向けるとみにくいアヒルの子などの童話や辞典などが並べられていることがわかった。
多分、ここはまだ夢の中なのだろう。こんなことは初めての事だから確信はできないけど現実の僕は今も自分の部屋で眠っているのだと思うから。
視線を横にずらす。本の山にすこしだけ通路のような隙間ができている。取り敢えず進もう。
それにしてもここには色んな本があるなぁ。これとかこの前僕が読んだ本だし…
あれ?あそこに誰かいるな。椅子に座って何かを飲んでる。見たところ背丈は僕より少し上くらいの青い髪の男の子。
あれがこの世界の人なのかな。
「すみません」
「うぉう!?何だ貴様、もう来たというのか」
ず、随分と低い声だね。でも驚かせちゃったみたいだ、謝らないと。
「ごめんね。貴方がこの世界の人?」
「言われるまでもなく理解しろ。ま、オマエのような無知の子供には無理な話かもしれんが…そんなものは知らん。」
凄い口悪い子だなぁ。でも凄く頭が良さそう。
初めて無知って言われたよ。なんだか少し感動した。
「だがしかしまあ、言うに事欠いて俺の所に来るとはな。オマエも幸薄そうだな。それで、オマエは何を知りたい?俺の知ることなら答えてやる」
え?いきなりそんなこと言われても。
質問する気なかったし…どうすれば…
「早くしろ。俺もそう暇ではないのだ。」
「じゃ、じゃあ。貴方の名前は?」
「聞くことが俺の事とはよくわからん子供だ。まあいい、聞かれたからには答えよう。俺はアンデルセン。ハンス・クリスチャン・アンデルセンだ。」
アンデルセン?ってあの童話の?
同姓同名っているんだ。外国じゃあわりとありふれた名前なのかな?
「……オマエが何を考えているのかは知らんがそれは恐らく間違いだ。俺は正真正銘童話の作者であるアンデルセンだ」
「あ、アンデルセンって子供だったの!?」
「子供に言われたくないわ!あとこの姿は少々特殊でな。俺の幼少期の姿をしているにすぎん」
「そ、そうなんだ。でも驚いたなぁそんな有名人が僕の中にいるなんて」
でも、どうしてそんな人が僕の中にいるんだろ。
「まさか知らないと言うのか?どういった人物がお前に宿っているのか」
僕は頭を縦に振り肯定する。
あれなのかな?異世界とかの英雄とかなのかな。スタンさん達だってそうだし。
そんな僕の様子を見て頭を押さえるアンデルセンさん。一体どうしたんだろう。
「一から説明してやる。まず最初にお前が出会った16人は地球とは違う世界を救った英雄という凡夫だ。そして、それ以外は英霊と呼ばれる存在、地球で何かを成し遂げた偉人等と呼ばれた者達だ。」
「え?じゃあ、エミヤさんとかも偉人だったんだ」
「奴は違う。いや、他にも何人かはいるが英霊となるには偉人と言うものが条件ではない。全員が宿っている訳ではないがお前には数多くの英霊が宿っている。」
そうだったのか。そんなすごい人たちが僕の中にいるんだ。知らなかったよ。
「折角だ、これまでお前が会った英霊たちについて教えてやろう。特徴を挙げていけ」
「じゃ、じゃあ。金色の鎧を纏った金髪の王様」
「いきなりとんでも無い奴について聞くのだな。まあ聞かれたからには答えてやろう。奴の名はギルガメッシュ。この世全てを統治した古代ウルクの王であり通称は英雄王。自称人類の裁定者。とまあ、奴についてはそこまで語らぬ方がいいだろう。奴自身からどんな仕打ちをうけるかわからんぞ」
ギルガメッシュか。それも聞いたことがある。帰ったら詳しく調べてみよう。
「じゃあ、金髪で緑色の目をしてて騎士の格好で思い込みが激しい男の人」
「ふむ…そのような男は知らんな、いや待てよ。女ならばあるいは、普段顔を隠している騎士を該当から外せば…まさかお前、女版騎士王を男と間違えたか!傑作だ」
え?男じゃないの?だって胸無かったよ?
「何処を見て判断したのかが容易に想像できるな。子供の思考とは残酷なものだ。で、騎士王についてだな。騎士王、名をアーサー・ペンドラゴン。ブリタニアの王であり配下に円卓の騎士を従わせている人物だ。円卓の騎士も何人かはいるが全員がいるわけではない。」
「アーサーってアーサー王?…アーサー王って女だったんだ」
「そこら辺が少しややこしくてな。男版騎士王も貴様の中には存在している」
「…え?どういうことなの?」
顎に手をおいて答えるアンデルセンさんは難しい顔をしている。
何か複雑な事がありそうだ。実はアーサー王は双子だったとか
「いや、結論から言ってしまえば平行世界の騎士王というわけだが…流石にあの性格の違いは…」
「え?」
「気にするな。まあアーサー王の事くらい少し調べればわかること。特筆して言えばどちらも食いしん坊なだけだ」
食いしん坊…なんか何処かで聞いたような気がしなくもないけど…
「他には会ったか?」
「ええっと、鏡の持ち主の女の人」
「鏡か、これは簡単だな。狐耳が至高だと宣う間抜けな女だ。まあ、その生涯を通して人間に仕えようとする姿は少しだけ同情はするがな。名前は玉藻の前、言わば狐だ」
そうか、ここの人達ってみんな過去に死んだ人達なんだ…
それを聞くと何か変な感じがするな…
「次だ次」
「エミヤさんは」
「ふむ。実のところ奴の事はあまり知らん。まあ一言で言えば自分の幸福と他人の幸福を秤にかけられる物好きと言った所か」
これだけかな。それ以外はスタンさん達だけだし…
「ふむ、もう居ないようだな。では他に質問はあるか?」
質問か…
そう言えば一つ聞きたいことがあった。
「どうして今になって僕はここに来たの?エミヤさんの後は目覚めるかと思ったんだけど」
「そんな事もわからんのか。簡単にいえばだ、お前はここに来るための力を習得したため今現在俺達の世界を巡っているのだろう。故にまだ目を覚ます事は出来ん。しかしまあ、全ての世界を巡るわけではない。案外早い間に目を覚ますだろうさ。」
成る程、じゃ、じゃあ現実世界の僕ってずっと眠った状態なんじゃ…
「では最後に、お前についての俺の評価を教えてやろう」
な、なんか凄い怖いけど大人しく聞こう。
「いつも周囲に流されながらも周囲を巻き込んだトラブルを起こす厄介者。神を嫌い人を好むその様はある意味で英雄王に似ているとも言える。強大な力を持ちそれに飲まれないのもそれ故にだろう。神に作られた自己を持たない器でありながらどうなろうとも神に抗おうとする人間らしさを持った意味不明な存在。それがお前だ」
なんか凄い酷評だった気がする…
「さて、俺から言いたいことはそれだけだ。また何か聞きたいことがあれば聞いてこい。ここは執筆しなくてすむが娯楽が少ないのでな。俺に出来る範囲でなら協力してやろう。」
そうアンデルセンさんが背を向けた瞬間意識が沈んだ。
このように宝具を貸すわけではない英霊もいます。
後、優君が巡れるようになったキッカケは時空剣技や超振動などのせいです