憑依拒否   作:茶ゴス

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夢想編第3話「盟友」

「これで儂の勝ちだ」

 

 

 これで0勝3敗かぁ、この人本当に戦略ゲーム上手いなぁ。現実だったら常人ではない僕は負けなしだけどそこは英霊。この人達も尋常ではない。

 それにしてもこれは悔しいよ。一応は食らいついているけどあと一歩の所で勝てない。

 

 

「にしても、中々見事な采配だったぞ、坊主。どうだ?余の家臣となり共に世界を征服せぬか?」

 

「何度目の台詞?言ってるでしょ。僕は世界なんて興味ないって」

 

「ふぬぅ、今ならば特に待遇を良くするが…」

 

 

 僕は世界征服なんてしたくも無いのに…

 特に夢とかも無いけれど、取り敢えず真っ当に生きたいから。

 

 

「しかし、貴様が我が軍に入ってくれると大幅に戦力を上げれそうなのだ。」

 

「ふーん。」

 

 

 僕ってそこまで強くないよ?だって普通に英霊の人のほうが強い人いると思うし。

 エミルさん達の方が強いよ。

 

 

「ならば、余と盟友とならぬか?」

 

「盟友?」

 

 

 確か友達とかって意味だっけ?それなら別にいいかな。

 友達が増えるのは嬉しいしね。

 

 

「わかったよ。これからよろしくね?イスカンダルさん」

 

「そうかそうか。盟友となってくれるのだな。よく返事してくれた。感謝するぞ」

 

 

 王宮の中のような空間。それが今回の場所だった。世界の主はイスカンダルさん。多分アレクサンドロス大王って言ったほうがわかりやすいかな。

 大きな身体に立派な顎鬚に鬣のような髪の毛。

 

 最初に見た時は身体の大きさにびっくりしたけど話してみるといい人だってのはすぐにわかった。

 それに、多分あれじゃないのかな。家臣とか盟友とかって言ってるのは友達が欲しいだけじゃないかな。

 

 そう思うとあれだね、少し親近感が湧くというか何と言うか。偉人も僕達と同じなんだなって思えるよ。

 

 

「なにやら、少しばかり誤解された気がしたが気のせいであろう。今宵は気分が良いな。これでまた一歩世界の征服に近付くわ」

 

 

 まあ、手伝うとしても程々だよ?僕が間違ったことだと思ったら全力で止めるからね。だって、友達だし。

 

 

「さて、ではここに貴様。藤崎優と余は盟友となった。まあ、配下となった訳ではないがお主には少しばかり褒美を取らせようと思う。」

 

 

 褒美?何だろ。玉座の横に置かれてるゲームとかかな?

 ゲームなら嬉しいな。寧ろゲームがいい。

 

 

「構えろ。」

 

 

 突然威圧感を感じる。そうか、そうだったね。この人は僕に試練を与えてくれる人なんだ。アンデルセンさんのように情報をくれるわけではないんだ。

 

 この人は、僕に何かを託そうとしている。

 

 

「いいか坊主。我が宝具は種を明かせば簡単な物だ。英霊の座に儂が号令を掛けてかつての配下や盟友達を呼び出す。」

 

 

 イスカンダルさんを中心に風景が変わっていく。まるで侵食するように王宮の絨毯が砂地になっていくのには少し違和感を感じる。

 これが、イスカンダルさんの力なのか….って、宝具ってなんだろ?

 

 

「しかしまあ、お主は英霊という訳ではない。故に英霊の座に号令を掛けることなどは不可能。それ以前にお主と繋がりを持った者は座にはおらん」

 

 

 侵食は更に広がり、とうとう壁をもその色を変える。朱い装飾された壁から真っ青な空へ…

 室内からいきなり室外に放り出されたような感覚。地面の砂地は確かに本物だ。

 

 

「取り敢えずは教えてやろう。これが余の宝具、王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)だ!」

 

 

 完全に空間が侵食されてすぐ、目の前に軍勢が現れた。

 

 

 え?

 

 

「皆の者!今宵は新たな盟友が現れた!!名は藤崎優!!まだ童子ではあるが、必ずや我が軍の力となる者だ!!」

 

「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」

 

 

 まるで地響きがなるような怒号。全員が武器を掲げて雄叫びをあげている。

 

 すごい…

 

 

 流石は征服王と呼ばれた人。こんな光景見たら改めて思うよ。とんでもない人なんだって。

 

 

「では坊主、貴様に試練を与えよう。これから余の軍と戦うのだ。貴様の力を皆に見せつけるが良い」

 

「軍って…この人数?」

 

「なに、心配するな。この者達は全員が本来の力を有しているわけではない。誰も彼もが生前よりも力を発揮出来ん。故に貴様ならある程度は戦えるだろう。」

 

 

 僕、1体多ってやったこと無いんだけど…

 どうしよう。

 

 

「もしだ、もし勝つことが出来たならば…」

 

「ん?どうしたの?」

 

 

 聞き逃しちゃった。もう一度聞いてみるけどイスカンダルさんは気にするなと言って軍の方へ歩いて行った。

 もしかして、これって拒否権無い?

 

 イスカンダルさん達は離れていく。恐らくは距離を取ってくれるのだろう。ここから全員で突進されたら怖いけどね。

 

 

「では、行くぞ!!我が盟友よ!!」

 

「仕方ないね。僕も出来る限りやるよ!」

 

 

 王様の蔵からエターナルソードとローレライの鍵を取り出す。

 更に時計を首に掛けておいた。さあ、これが僕の完全武装だよ。

 

 

「AAALaLaLaLaLaie!!」

 

「「「AAALaLaLaLaLaie!!」」」

 

 

 イスカンダルさんの雄叫びとともに迫ってくる。イスカンダルさんはいつの間にか馬に跨っている。他の人達は武器を構えて走っている分イスカンダルさんの方が速い。

 少しだけ危惧してたことが起こったか。僕の勝ち筋としては普通ならこんな人数で一人の人間を相手にしないからこんな場合の戦いは不慣れなのだろうってことくらい。

 

 全身に気を巡らせてダメージに備える。

 手足に魔力を集中させて身体能力の向上。

 

 イスカンダルさんとの距離は目測70m

 もうすぐそこまで迫ってきている軍。僕は右手に持ったエターナルソードと左手に持ったローレライの鍵の切っ先を地面に着けて息を吐く。

 

 

 さあ、始めよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 眼前に佇む少年へ迫るのは征服王。

 万に届く軍を引き連れての進軍は正しく圧巻そのものである。故に本来ならば少年は為す術もなくこの人数の津波に飲み込まれてしまう状況だ。

 

 征服王は確かに少年に「貴様ならば大丈夫」だと告げたが実のところ内心では自分自身半信半疑だったのだ。

 だが、それでも征服王は見極める必要があった。目の前の少年の実力を。

 

 自身の軍勢には絶対に殺すことはしないように告げている。自分たちは既に死んでしまっている身であり、実は死んでも蘇る事が出来るのだ。しかし、少年は生身の人間。以下に強大な力を有しようとも死ぬ時は死んでしまうのだ。

 

 故に軍勢は殺さずというハンデを背負っていた。しかし、その程度で結果が覆る事などがあるはずもなく。

 もし、少年が勝つとすれば…少年自身がその軍と対等に渡り合える力を持ってるに他ならない。

 

 

「なに!?」

 

 

 征服王は驚愕する。目の前の少年が消えたのだ…否、一瞬で接近してきたのだ。

 とっさに手に持った剣を振るう。しかし少年はそれを軽々と避けて征服王の乗る馬に一太刀当てるとその速度のまま後方の軍へと突っ込んでいった。

 

 征服王を乗せた馬は倒れる。足を切り飛ばされた訳ではないが、少年の持つ剣の腹で足を叩かれ、衝撃に足の神経を麻痺させられていたのだ。

 

 地面を転がりすぐに顔をあげる。そこには驚くべき光景が広がっていた。

 少年を取り囲む軍勢が一人、また一人と吹き飛ばされていたのだ。

 

 

「ここまで、とは」

 

 

 征服王は思わず言葉を漏らしてしまう。もしかしたら自分はとんでも無い者と盟友になったのではないか…と。

 

 

 一方で少年はただ考えていた。

 敵がどの方向から攻撃してくるのかを。常に死角である背後に気を配りつつその眼に入れた情報に従いほぼ反射的に身体を動かす。

 少年は今、並列思考に酷似した事を行っていた。

 

 ただ考える。どこへ避ければいいのか…どこに攻撃すればいいのか…

 

 少年は実のところ一つ失敗していたのだ。

 このような大衆の中央付近で戦えば少なくとも軍としては自分が振った剣が仲間にあたってしまうと躊躇すると踏んでいたのだ。

 しかし、それは間違い。少年がどう避けようがお互いの隙を埋めるように攻撃の波状を受ける。そこに味方への躊躇は無いどころか、それぞれの武器をぶつけることもなかった。

 

 相手の連携の隙を突いて崩すことは既に少年の頭の中には存在しておらず。ただ、目の前の一つ一つの場面においての少年が出来うる最良の選択肢を紡いでいく。

 

 近くの敵に剣を振るいながら術で遠くの敵への攻撃及び牽制を行う。

 相手を殺すわけにはいかない。だけど負ける事も考えていない。

 

 下段の切り払いと上段への横薙ぎを身体を倒しながら跳び、剣と剣の間に身体を入れ込む。当然敵はそこへ剣を振り下ろしてくるが両手に持った剣で多方向からの攻撃を受け流す。

 その人間離れした動きに周囲は動揺する。まるで空気を斬っているような感覚に囚われるほど少年へ攻撃を与えることは出来ない。

 ただ闇雲に斬り付けても隙を見つけて反撃されてしまう。

 

 軍が勝つ糸口は唯一つ。少年が疲労して動きが鈍る事だった…

 

 

 

 

 それから2時間が経過した。軍勢は少年に吹き飛ばされては再度戦いを繰り返していたが、もう既に3000人ほどを残して全員が地に伏せるか膝を付いていた。

 一方で少年もまた肩で息を吐きその疲労を隠せずにいる。

 肉体的と言うよりも集中力が持たなくなったと言う方が正しい。

 

 少年はその場に座り込む。それを好機と見て軍勢はここぞと少年へ迫った。

 

 しかし、少年に近付けなかった。それは軍勢にとっては敗北宣告と同義の状態である。

 少年はただ、自身の周りに障壁を展開させたのだ。

 

 生前の力ならば何人かならば壊せたであろうその障壁をスケールダウンしてしまっている軍勢に敗れることはなく、ただ少年が疲労を癒やすのを眺めるしか出来なかった。

 

 

「そこまでやるとは思わなんだ。この勝負、余の負けだ」

 

 

 故に王は宣言する。自身の軍の敗北を。勝機が無くなった状況を見極められない王ではない。少年に安全に休まれるならばどうしようも無いのだ。

 少年は息を大きく吐き障壁を解除する。

 

 

「貴様の実力、しかと見せてもらった。その武勇は近い未来大義を起こすであろう。」

 

 

 王は馬を降り、座り込んでいる少年へと手を差し伸べる。

 少年は少し笑うとその手を取って立ち上がった。

 

 

「皆、この者の実力を味わったな!!この者が我が盟友となる事に不満を持つものは名乗りをあげろ!!」

 

 

 その声に名乗りを上げたものは…

 

 

 誰一人としていなかった。




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