憑依拒否   作:茶ゴス

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最近いそがしくて執筆が進みません。
3月に入れば多少楽になるので更新できるとは思いますけど…

あとイヤホンを無くしました


夢想編第6話「狐耳」

 目を覚ましたら神社にいました。

 

 確か僕は涙目になったクーフーリンさんから槍を受け取ったはずなんだけど…いつの間にか景色が変わっていた。

 槍も消えてるし一体なんだろう。もう次の世界に来ちゃったのかな…だとしたら一体誰の…

 

 

「やっぱり来ちゃいましたか」

 

「ん?」

 

 

 声が聞こえた。呆れたような声、境内の方から聞こえた。

 人がいる。獣の耳と尻尾を生やした和服を着た女性。前に見た影に似たシルエット。プレシアさんとの戦いの時に聞こえた声。

 

 そうか、この人があの鏡の持ち主…確かアンデルセンから聞いた話では、名前を玉藻の前って言ってた。

 

 

「全く、いつかは来ると思ってましたけどこんな早いだなんて思ってもなかったですよ。玉藻ぷんぷんです」

 

「……貴方はあの鏡、水天日光天照八野鎮石の持ち主の玉藻の前さんですか?」

 

「ええそうですよ。誰から聞いたかは知りませんけど私は玉藻で間違いないです」

 

 

 それを聞いて僕は頭を下げる。あの時アリシアちゃんとプレシアさんを救えたのは間違いなくこの人のお陰なのだ。

 感謝してもしきれないよ。僕自身には蘇生の手段が無かったんだから…

 

 

「頭を上げて下さい。私は貴方に水天日光を蘇生のために貸したわけではありません。しかし、貴方はあろうことか自分だけの力で水天日光の力を引き出しました。可能性を考えなかった私の落ち度です。」

 

「……」

 

「別に水天日光を使うのは問題ないのです。貴方は既に私の根源の影を倒す事により実力を示していますから。ですが、これからは水天日光を蘇生に使うのはしないように。本来は死者を生き返らせるなどはあってはならないのですよ」

 

「それは…保証できません」

 

 

 玉藻さんの言い分を断る。確かに人を生き返らせるのはよくないとは思う。だけどいざ誰かが死んで友達が悲しんでいたなら迷いなく僕は蘇生を行うと思う。

 自分でも勝手なのはわかっているけど、力があるのに見てみぬふりなんて出来ないよ。

 

 

「……」

 

「僕は、多分使ってしまうと思います。今約束してもそれを守る事は出来ません。」

 

「…嘘でも使わないと言えたと思いますけど」

 

 

 嘘は付きたくない。僕が勝手に決めた宿ってくれた人達に対する礼儀だ。この人達がいなければ多分僕は転生者に身体を乗っ取られていたと思う。

 そんな人達に嘘を付くくらいならば最初から僕には水天日光を使えない方がいいんだ。

 

 玉藻さんの目を見る。僕は絶対に嘘はつかない。

 それだけは信じてもらうために…

 

 

「……貴方が正直者だということはよーくわかりました。しかし、それでも蘇生の技法を使用されるのは困るのです。」

 

「……」

 

「だから、力を示して下さい。そして見せてください。貴方が水天日光の間違った使い方をしないかを」

 

 

 …ありがとう。僕にチャンスをくれて…

 目の前の玉藻さんに内心でそうお礼を言いつつエターナルソードを取り出す。

 玉藻さんもそんな僕を見て一つ息を吐いてから目を細めた。すると彼女の1本だった尻尾が2本になった。

 どんどんと横にずれるように増えていく尻尾。それと同時に感じる威圧感。

 そうか、そうかそうか。玉藻の前、いや玉藻御前は九尾の狐が化けたとされる女性だったっけ。この力の跳ね上がり方から察するに彼女は尻尾が多ければ多いほどその力を増す…

 

 影を打ち倒せたから安堵していた。根源というばかりのその存在を制する事が出来たのだからと…

 だけどそんな事は無かった。いままで感じたこともないほどの圧倒的な力。彼女の前では僕なんかは塵にも等しいのかもしれない。いや、それ以下なのかもしれない。

 

 

 エターナルソードを握る手に力が入る。わかってしまった、この人に勝つことは出来ないと。

 他の人と対峙した時は感じなかった感情。どんな人でも心の何処かでは勝てるかもしれないと感じていたことが今になってわかった。

 

 これが恐怖。これが絶対的な存在…

 

 

「……何故笑っているのですか?」

 

 

 今僕は笑っているのか。そんなつもりは無かったんだけどな。

 でも、確かに笑ってしまうのは仕方ないと思う。初めて会った強大な相手。自分がまだまだだということを嫌というほどに思い知らされる力の差。

 

 そう、まだ先はあるんだ。僕よりも遥か先、その到達点が…

 

 この人が僕の中に居てくれて良かった。僕はまだまだ強くなれる。だから…

 

 

「今の僕の全力受け止めて下さい!玉藻さん!」

 

「わかりました。貴方の力拝見させて貰います。」

 

 

 骸殻を纏う。それと同時に左手に槍が出現する。エターナルソードで次元を切り裂いて時間を止め、絶影で接近。更に蒼破刃で牽制しつつエターナルソードを持ち替え右手にゲイ・ボルクを持つ。

 2本の槍での双針乱舞。更に力と魔力を込めてゲイ・ボルクを投げる。突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)、大軍をも吹き飛ばす威力の投擲。

 まだ終われない。すぐさまローレライの鍵を持ち超振動を起こして撃ち放つ。ルークさんが言っていた。超振動は簡単に言ったら凄まじいビームが撃てるって。他にもいろんな物を無効化出来る第2超振動もあるけど使えない…

 煙が立ち込める所へもう一度超振動を撃ち込む。まだ倒れていないのがひしひしと伝わってくる。多分攻撃を止めたらすぐにやられる。

 

 かと言って今僕は全力で攻撃しているんだ。手加減なんか一切していない。ただ僕が持ちうる攻撃の最上の物で攻撃している。

 それでも一向に収まらない威圧感…

 

 

 

 

 

 

 --一陣の風が吹いた

 

 

 

 

 一瞬何が起こったのかがわからなかった。僕は地面に倒れていた。目の前に立っているのは無傷の玉藻さん。冷ややかな目でこちらを見下ろしている。

 僕はどうなっているの?

 

 

 痛い、痛い、痛い。

 

 骸殻も解け、目の前にはローレライの鍵を握った手が転がっている…

 そうか、これ、僕の右手か…

 

 

 痛い、痛い、痛い。

 

 幸いにも左手は無傷だ。両足も無傷…

 治癒功を使用して出血を抑えながら左手にエターナルソードを持つ。

 

 敵わないことはわかっていた。勝てないことはわかっていた。ここまでの実力差があることはわかっていた。

 

 

 なら、どうするべきかはきまっている。

 

 

 

 

 何処までも足掻いてやる。




玉藻さんの尻尾の強さ

尻尾1
Aランクサーヴァントの9/100程度の力

尻尾2
Aランクサーヴァントの81/100程度の力

尻尾3
Aランクサーヴァントの約7倍の力

尻尾4
Aランクサーヴァントの約65倍の力

尻尾5
Aランクサーヴァントの約590倍の力

尻尾6
Aランクサーヴァントの約5,300倍の力

尻尾7
Aランクサーヴァントの約48,000倍の力

尻尾8
Aランクサーヴァントの約430,000倍の力

尻尾9
Aランクサーヴァントの約3,870,000倍の力



なんだこいつのパワーは…
宝具度外視での数値とはいえとんでもないのが一目瞭然ですね。

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