憑依拒否   作:茶ゴス

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第9話「クリスマス・イブ」

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ーようやく辿り着いたのか

 

ーーそうみたいだね

 

 

ー貴様がここに至ったと言う事はこの鍵を手にする足がかりを掴んだということ

 

ーーそうなんだ。でも珍しいね、君が自分の宝物庫の鍵の譲渡を良しとするなんて

 

 

ー煩いわ。ただ、この鍵は相応しい者にのみ使えるというもの。故に我の裁定の範囲外にあるものなのだ

 

ーーへぇ、初耳だよ

 

 

ーまあよい、では雑種。貴様には試練を与える

 

ーー直ぐあげたらいいのに

 

 

ーそれでは面白くもない。なに、簡単な事だ

 

 

 

「自身の可能性を見てこい」

 

 

 

 

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「こんにちは!!」

 

「こんにちはぁ」

 

 

少女、高町なのはは現在友人の月村すずかに連れられ海鳴大学病院内のとある病室、八神はやての病室へと足を運んでいた。

なのはにとってはやては夢で見た人物であり、はやてにとってなのははすずかによって聞かされていた少女だったため、最初にあった時でも気兼ね無くお互いに話していた。

勿論他の少女、アリサ・バニングスやフェイト・テスタロッサも同様に話を盛り上げていたのだが、一番親睦を深めたのはなのはであると言っても過言ではないだろう。

 

 

「ゆっくりしてってな」

 

「ありがとう!はやてちゃん」

 

 

なのはは微笑みながら周囲を警戒する。夢では彼女の騎士たちが部屋の中にいたのだが、なのはの提案により夢での時間よりも早く病室につき、騎士たちよりも先にはやてと接触していた。

この後起こる戦闘はとても激しいものであり、知っていると言っても心の準備はして置かなければいけない。

戦闘が起こるのを知ってるのはなのはだけであり準備を済ましているのは自分だけだろうと彼女は考えていた。

 

しかし、彼女は気づいていない。彼女の他に着々と戦いへの準備を済ましている人物はいた。

一人はプレシア・テスタロッサ、彼女はなのはの動向やはやての容態からある程度の期間を導き、それに向け準備を終えていたのだ。

後一人はとある男。その男は気だるそうに介入するタイミングを見計らっていた。

 

 

なのはにとって心残りはある。それは彼女の想い人、藤崎優の事だ。彼女は彼の事だから事件の前には目を覚ますであろうと高を括っていた。

しかし、実際はそんなことはなく、少年はまだ眼を覚ましていない。

 

 

「また藤崎君の事考えてるんやろ?」

 

「えへへ、バレちゃったか」

 

「なのはちゃんはわかりやすいねん」

 

 

はやての言葉に少しショックを受けつつなのはは笑って受け流す。

彼女のセンサーに魔力反応が進入する。数は3つ、どれも彼女の知っている魔力反応。

 

ヴィータ、シグナム、シャマルの3人が病室に入ってきた。

それに目を見開き驚いたのはフェイト、挨拶をしたのはすずかとアリサ、そして微笑んだのはなのはだった。

騎士たちはなのはの笑みを少し不気味に思いつつ、主を心配させまいと考え普段通りを装いさり気なくなのは達とはやての間に立ちふさがった。

 

それになのはは更に微笑ましげに見つめた後、何事もないようにはやてと話しだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

面会時間も過ぎ、すずかとアリサと別れたなのはとフェイトはとあるビルの上でシグナムとシャマルの2人と対峙していた。

沈黙が支配する中、最初に口を開いたのはフェイトだった。

 

 

「はやてが、闇の書の主」

 

 

重々しげに話すフェイトにシグナム達もデバイスを握りつつ口を開いた。

 

 

「悲願はあと僅かで叶う」

 

「邪魔をするのなら、はやてちゃんのお友達でも」

 

 

なのはは空を警戒しつつ、一歩踏み出した。

彼女は知っている。この戦いの結末を。だからこそ防ごうと考えたのだが、彼女には具体的な解決案を思い浮かぶことは出来なかった。

 

だけど、彼女はわかっている。恐らくはこの戦いの悲しみを打ち消してくれるであろう人物を。だからこそ彼女に出来る事は限られていた

 

 

《時間稼ぎ》

 

 

それが彼女の取った選択だった。

 

 

「待って、少し話を聞いてくれないかな?」

 

「…なんだ」

 

「このまま闇の書を完成させればはやてちゃんは闇の書に飲み込まれちゃうの」

 

 

なのはは夢のシナリオを思い浮かべる。彼女にとって一番の不安要素は夢のシナリオとは別の道筋を辿ること。ある程度ならば大丈夫だが、あまりにも大きなズレが発生するとどうなるかは彼女にもわからない。

だから、彼女は出しゃばらない。出来るだけ、出来るだけ長く。

 

 

「貴様もそう言うのか。それで、その話の根拠は?」

 

「無限書庫で調べたかr」

 

「うぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

なのはの言葉を遮り少女が飛来した。

手に持った棍を振り下ろすことによってなのはを攻撃したのだ。

それを見計らいシグナムもデバイスを起動させる。

 

もう既に彼女たちは戻れない場所まで来ているのだ。何を言われようと彼女たちの中ではやるべきことに変化は無かった。

 

 

「クソッ!!」

 

 

ヴィータの一撃はなのはに防がれていた。具体的には柄を掴まれることで攻撃を無力化されただけでなく、ヴィータ自身を捕まえていた。

 

 

「人が話してる時は大人しくしないといけないよ。ヴィータちゃん」

 

「うるせえ!!離しやがれ!!」

 

 

力任せに引き抜こうとするヴィータをなのはは少し苦笑いしながらその手を離す。

彼女としてはそこまでここで戦う意味を持っていない。精々が今からくるリーゼ姉妹への攻撃までの時間稼ぎ程度にしか思っていないのだ。

 

それを本能的に悟っているヴィータは更に激昂する。自分たちは舐められているのだと、誇り高いベルカの騎士がこんな小娘に相手にもされていないのだと…

 

 

ヴィータはカートリッジをロードしグラーフアイゼンを構える。一撃で終わらせる意気込みで振り下ろす。

なのはは、それをただ見ていた…

 

 

 

「はっ!悪魔かよ」

 

「悪魔でいいよ。それよりも大事な事があるから」

 

 

アイゼンの一撃により発生した炎を切るようになのはは現れた。手には待機状態のレイジングハート、バリアジャケットを展開しているが、それでも尚何のアクションもなくヴィータの一撃を無傷で凌いだ。

手応えはあった。直撃はした。だけど無傷だった。

そのことにヴィータは冷や汗を流すがそれでも彼女は止まることは出来なかった。ただ、主であるはやてのために…

 

 

「てめぇはここで殺す!!」

 

「貴方はここで止める」

 

 

戦いの幕は上げられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、海鳴大学病院の屋上では一つの戦いが行われていた。

戦っているのはプレシア・テスタロッサ。その相手は新たに出てきた敵。

 

突然病室に現れた彼をプレシアは攻撃した。

 

 

「喰らいなさい!!」

 

「うぉっと!!あっぶなー」

 

 

悠々と雷撃を躱す男にプレシアは苛立ちが募る。風貌は白いローブに軽薄そうな顔立ち、背は成人男性の平均程度の男にプレシアは数ヶ月前、藤崎優と戦った際に現れた謎の男の仲間なのだと察していた。

あの時ほどの実力差は感じられないものの攻撃が一向に当たる気配がない。

 

 

「全くさ、つまんないんだよね、神様も。他の連中も」

 

「知らないわよ、そっちの事情なんて」

 

「まあ、聞きなよ」

 

 

縦横無尽に飛び回る男に舌打ちをしながらプレシアは雷撃を放つ。

打ち続けられる雷撃を躱しながら男は語る。

 

 

「俺はさ、つまらないことはいけないと思うんだよね。後、面倒臭いこともダメだと思う」

 

「聞く気はないわ!!」

 

「だけど、神様はそんな俺に指令を出してきた。イレギュラーの少年を消せってな。でもただ消すんじゃあ面白く無い。俺ってそこまで強くないし」

 

「だったらここで倒れなさい!!」

 

「おっと…で、俺は考えた。やるからには面白可笑しくしないとなってね。というわけで」

 

 

男の全方向からの雷撃。一つ一つの隙間を極限まで小さくしたもの。

これを避けることはまず不可能、だからこそ男はその場に留まった。

 

 

「時間もそろそろだしここいらでお暇させていただきますわ」

 

 

雷は何かに阻まれるように消える。ある程度予測をしていたプレシアは躱されたときの為に貯めていた魔力を放出し雷撃を放った。

しかし、男に当たることはなく、既に姿を消した男のいた場所を通過しただけだった。

 

 

「…一体どこに」

 

『お母さん大変!!』

 

 

突然アリシアの焦ったような声色の念話がプレシアに届いた。

プレシアはそれを聞いた途端、走りだす。場所は病室、そのままアリシアへと返事をする。

 

 

「一体どうしたの!?」

 

『優が、優が!!』

 

 

プレシアは数秒で病室にたどり着くと扉を開け放った。

 

 

病室には慌てたようにプレシアを見ているアリシアと蛻の殻になったベッドだけがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なのはとヴィータの勝負は呆気なく着いた。なのはのレイジングハートを振り下ろす攻撃を防いだヴィータはそこで一瞬安心してしまい、なのはの蹴りを腹部にもろに入れられてしまった。

それによりヴィータは少しの間戦闘を行え無いほどのダメージを内臓に負ってしまった。

 

その後、なのはは現れた仮面の男へ不意打ちの攻撃を入れ、攻勢に移る。

彼女にとって闇の書起動までの時間稼ぎが最優先であり、その為に騎士たちの魔力を蒐集される事は許されなかった。

 

 

しかし、彼女の考えはある男によって崩されてしまう。

 

突然現れた闇の書の主、八神はやて。

その姿にその場にいた全員が困惑した。そう、仮面の男も同様に彼女がこの場に召喚された事に驚いたのだ。

 

彼らにとっての作戦は既に意味を成していないと言っても過言ではなかったが、それでもシナリオとしてはまだ八神はやてを召喚する段階ではなかった。

なのはにとっても同様で、召喚され困惑しているはやてをみて一瞬思考を止めてしまった。

 

 

そして、更に魔法陣は現れる。

そこから召喚されたのは2人。一人は笑いながら、そしてもう一人は…

 

 

「優君!!」

 

 

未だ眼を覚ましていない藤崎優だった。

 

 

「さて、ここからが本番だ」

 

 

男は呟きつつ、その手にいつの間にか持っていた闇の書を少年へと向ける。

なのはは魔力弾を展開しながら男へと突っ込む。

 

 

 

 

 

 

優と男が闇の書に取り込まれた。




ものっそい駄文が出来てしまいました。
なんかすみません。次回からもっとちゃんと書きますので

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