憑依拒否   作:茶ゴス

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第11話「総力戦」

 めまぐるしく変化する戦場についていけている者は少ない。闇の書ですら、目の前に出現した3人の影を理解できていないのだ。

 一番理解できている者は3人の影、理解できていない者は一般人のすずかとアリサであった。

 

 

「なのは、なの?」

 

「そうだよ、アリサちゃん。色々聞きたいことがあるかも知れないけど、今は待っててね」

 

 

 なのはは、困惑する友人たち2人を障壁魔法で囲う。彼女たちを逃がすのは管理局員リンディの役目。彼女たちを転移させるまでの時間を稼ぐならばこれだけで十分と判断したなのはは闇の書に立ちはだかる3人の影へと視線を向ける。

 一人は見覚えがある。木刀こそ持っていないもののあの姿は間違いなくパンダ師匠の物でそれから彼女はあの影3人が優と何かしらの関係を持っていると理解できた。

 

 そう、この場で3人の影の他に戦況を把握しているのはなのはだった。

 

 

「何処の誰かは知らないが…今更何をしようとも無駄だ」

 

 

 闇の書は手を振るう。

 それにより動いたのは闇の書が召喚した7人の影。

 

 刀を携えた影はシグナムへ

 巨剣を携えた影はヴィータと仮面の男達へ

 鎖のついた短剣を携えた影はフェイトへ

 ローブを着込んだ影はなのはへ

 双剣を携えた影は赤色の仮面を着けた影へ

 槍を携えた影はパンダ師匠へ

 剣を携えた影は黒い靄を纏った鎧を着た影へ

 

 それに対して3人の影の行動は速かった。

 赤色の仮面を着けた影は双剣の一撃を躱し、背中の剣、カトラスを引き抜いた後、影を切り裂いた。

 

 双剣を携えた影は呆気なく消え去り、赤色の仮面を着けた影は腕を組み、闇の書を睨みつけ叫んだ。

 

 

「正義の味方、アビスレッド参上!!」

 

 

 瞬間、いつの間にか影を倒していたパンダ師匠に頭を殴られた。

 赤色の仮面の影、アビスレッドは痛ぇと唸りながら頭を抱えてパンダ師匠へと視線を向ける。

 

 

「………」

 

「うっ、別にいいだろ。これ着たら言っておかなきゃいけないし…」

 

「………」

 

「何か言えよ…って話せないんだったな。まあいいや」

 

 

 アビスレッドは戦場を見渡し、状況を確認する。

 一番押されているのは巨剣を持った巨人に襲われているヴィータと仮面の男達…

 

 

「さて、他の連中は大丈夫そうだし、あそこ助けに行くか」

 

「………」

 

「調子狂うなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

「イマイチわからなかったが、お前、ランスロットだな」

 

「………」

 

 

 鎧に身を包んだ影は剣を携えた影を消滅させた後、闇の書と対峙していた。

 

 

「にしても、やっぱりダメだな。影は弱すぎる。一応ヘラクレスの影はある程度の力を持っているようだが……」

 

 

 闇の書の視線の先には巨人の攻撃を紙一重で躱し、ナイフで斬り付けているパンダ師匠と、カトラスでいなしつつ切り裂いているアビスレッドがいる。

 恐らくはあの巨人が倒れるのも時間の問題と言った所…他の影達と戦っている者達も苦戦はしているものの、徐々に押し始めている有り様だ。

 

 

「まあ、あの2人は後で俺が倒すとして、まずはお前からだ。ランスロット」

 

「………」

 

 

 何時までも口を開かない影に闇の書は苛立ちが募っていく。闇の書、いや謎の男は目の前の英霊が自身のプライドを傷つけている事を許せなかった。

 たかが人間の分際で天使に歯向かうのか、と内心で言い捨てる闇の書は目の前の敵を徹底的に叩き潰すことを決め、魔力を練り始めた。

 

 

「さて、どこまで再現されているのかは知らないが、所詮はてめえも偽物だろ。それでもまあ、簡単にやられてはくれるなよ?」

 

 

 闇の書は結界を展開させる。自分と敵だけを隔離する結界。何故彼が展開させたのかはわからないが、結界は間違いなく闇の書と鎧の影だけを取り込んだ。

 

 これが、闇の書にとって大きなミスであったのを彼は知らない。

 大きくわけて2つあるのだが、それでも彼はこの行為が自身の首を締めたのに気付かなかった。

 

 

 影の背後から鏡が現れた。

 闇の書はその鏡を見て自分が勘違いしていたことに気付く。

 

 

「お前、ランスロットじゃねえのか」

 

「………」

 

 

 影は話さない。目の前に佇む闇の書を見つめながらその魔力を高めていく。

 鏡の効果により高められた影の魔力に闇の書はたじろぐ。闇の書は影に時間を与えすぎたのだ。

 

 後悔してももう遅い。影は自身の魔力を消費しある宝具を発言させた…

 

 

「………結界が」

 

 

 

 闇の書が展開した結界は上書きされていく…海鳴市の街並みが飲み込まれ、広い広い荒野へとその姿を変えていく。

 この結界を闇の書は知っている。情報としてだが、その名称と内包した力を彼は知っている。

 

 王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)、征服王イスカンダルの持つ固有結界。それは彼の生前の仲間を召喚する結界。それを影は展開させた。

 

 闇の書は影を召喚する。その数は数百を超えたもの。使えないとは言えどいないよりはマシと考え召喚した。

 

 

 そして、影の軍勢を従え目の前の敵へと視線を向ける。

 

 

 

 

 

 そこに居た人間たちの数は26人。そのいずれも闇の書は知っていた。

 

 

 15人の英雄に10人の英霊。そして1人の英霊ではないが同じ位置の者。

 

 王の軍勢はその26人を召喚していた。

 

 

 

「ランスロットじゃなく、お前は藤崎優だったってわけだ」

 

 

 ランスロットの鎧に身を包んだ影はその兜を脱ぐ。それと同時に靄は消え、身長も成人男性程のものから小学生程の物になった。

 

 己が栄光の為でなく(フォー・サムワンズ・グロウリー)により姿形を変えていた少年は自身が召喚した者達、いや、召集に応じてくれた者たちへ感謝の念を送る。

 一人だけ少年も知らない者がいるが、少年の助けを呼ぶ声に応じてくれたのはこの26人だった。

 

 

 

「面白い。全員ぶっ潰してやる」

 

 

 

 闇の書は滾る。

 闇の書の力で具現化した影と王の軍勢により召喚された者。その数は圧倒的なれど、力の差というならば絶望的に闇の書が不利だと、闇の書は感じていた。

 

 これこそ戦いだと内心で呟き影の軍勢を進軍させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 結界の外、闇の書と藤崎優以外の者達は困惑していた。

 それは後から現れたザフィーラの助力もあり巨人の影を倒したアビスレッド達も例外ではなく、何が起こったのかを理解できていなかったようだった。

 

 彼らから見ると突然2人が消えたのだ。

 そこまでは特に驚くことも無かったのだが、問題はその後。

 八神はやてと闇の書の管制人格、そして小さな触手の塊が現れたのだ。

 

 真相を聞いてみれば簡単の事である。闇の書が展開させた結界は彼と敵を隔離した。その結果、彼が不要と判断した3つの存在を排したのだ。

 

 

「まずい!!」

 

 

 闇の書の管制人格…いや、はやてにより名付けられたリインフォースははやてを抱き、その場を離れる。

 その直ぐ後触手の塊、闇の書の防衛プログラムナハトヴァールは暴走を起こし巨大化する。

 

 

「大丈夫ですか!主はやて!!」

 

「大丈夫か!!はやて!!」

 

「大丈夫やよ。それよりもナハトをどうにかせなあかんねん。皆力を貸してくれる?」

 

 

 それに4人の騎士は一斉に頷き、主の周りを囲みナハトヴァールへ視線を向ける。

 奇しくも夢の状況に戻った事になのはは安堵の息をもらし、気を引き締める。

 

 

「最終決戦…か。燃えてきたな」

 

「………」

 

 

 2人の影もまた目の前の怪物との戦いに心を踊らせていた…




王の軍勢で呼び出された人達


テイルズ主人公15人


英霊10人
エミヤ
イスカンダル
クーフーリン
玉藻の前
ヘラクレス
アルトリア
モードレッド
ガウェイン
ランスロット
カルナ


その他1人
両儀式

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