憑依拒否   作:茶ゴス

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外伝というよりもこの小説の元ネタ


外伝:開放

 あれはいったい何時の事だろうか。

 僕が友達と遊び、笑い、怒り、泣いたあの日常を奪われたのは

 

 忘れられる筈もない日のことなのに、憎しみや悲しみがまったく感じることが出来なくなってしまった

 転生者。僕から全てを奪い、僕の居場所に平然とした顔で居座るイレギュラー

 

 僕は力と知識を携えた藤崎優の冒険を見続けることしか出来ない。ただ、目の前に映る画面を見て、何も思えずにただ記憶が刻み込まれていくだけ

 

 高町なのはという少女に近付き、フェイト・テスタロッサという少女に近付き、八神はやてという少女に近付く藤崎優を僕はただ見るだけ

 

 

 少女たちに相手にされずに憤慨する藤崎優(転生者)がいる。

 

 自分の力に酔いしれる藤崎優(転生者)がいる

 

 

 そして、ただ生きたいと願う藤崎優(ぼく)がいる

 

 

 

 

 ーーー願わくば誰か、僕を助けてくれ

 

 

 

 

『…いいだろう』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

「なのは、ジュエルシードは封印出来たのか?」

 

「うん、出来たよ藤崎君」

 

 

 魔法による激闘を終えた少年と少女は地面に転がる宝石、ジュエルシードに近付き会話する。

 少女が少し迷惑そうにしているのに気付かずに少年は心底嬉しそうに話を弾ませた。

 

 自分の剣技を見ていてくれたか?カッコ良かっただろ?

 

 借り物の力を振りかざすだけの少年は少女の思いに気付かない

 先の戦闘、最終的に封印できたのは少女のおかげなのだ。少年の剣技は確かに素晴らしいが、火力不足なためジュエルシードの鎮圧化には向いていないのだ

 

 どんどん冷たくなってくる少女の視線を、何かと勘違いした少年は地面に落ちたジュエルシードを拾い上げる

 

 

「結構綺麗だよな、ジュエルシードって」

 

「う、うん」

 

 

 少女に見せびらかすように宝石を掲げる少年に小動物は危険だと伝える。

 しかし、少年は平気平気と答えてジュエルシードを片手で弄りながら笑う。

 

 そんな少年を見て少女が更に冷たい視線を向けた時だった

 

 

 ジュエルシードがまばゆい光を出しながら宙に浮いたのは

 

 

 少年たちは、また暴走したのかと考え臨戦態勢に入る。

 しかし小動物は疑問に思う。ジュエルシードとは持ち主の願いを歪んだ形で叶えてしまう物。ならば今回の願いの対象は藤崎優なのではないのか?

 

 

 それは間違いなく正解の答だった。

 正しくは、本来の藤崎優という少年の願いなのだが、運が良かったのかもしれないし"誰か"が細工をしたのかもしれない

 だが、ジュエルシードは間違いなく少年の願いを正しく叶えたのだ

 

 

『生きたい』という願いを

 

 

 

 

 

 ジュエルシードが放つ光が収まると、そこには少年(藤崎優)とそっくりな存在がいた

 

 

「何だよ、俺の偽物か。確かにそれなら多少は強いかもしれないけど…な!」

 

 

 少年は一足で目の前の敵に近づくと、その手に持つ武器を振るい攻撃する

 

 対する敵はそれをつまらなそうに見つめ、腕を振るい少年を吹き飛ばした

 

 

「がっ!」

 

 

 少年は岩に激突し、肺の空気が全て出たような錯覚を覚える。

 苦しい

 まるで鈍器で殴られたような衝撃を受けた少年は、手のひらを見つめて何かを確認している敵を睨みつける

 

 

「何するんだよ!」

 

 

 八つ当たり気味の少年の言葉に、敵はぴくりと反応し少年を見つめる。

 それだけで多大な負荷が少年に襲いかかった。

 

 なんという威圧感、なんという圧力

 

 息をするのも苦しい中、敵はその口を初めて開いた

 

 

「喋るな雑種」

 

 

 更に増す威圧感。敵は心底苛ついているかのように少年を睨む。

 少女と小動物は理解する。眼前の敵は自分たちでは到底倒しきれる相手では無いと

 

 少年は気付く、人を雑種と呼ぶ自分と関係のある人物を

 

 

「お前、ギルガメッシュか」

 

「……」

 

 

 帰ってきたのは言葉ではなく、無数の武器だった。

 敵の後ろの空間を波紋を出しながら現れる武器の数々に少年と少女は戦慄する。

 

 あれがいつ飛んで来てもおかしくない状況。その状況に精神力と体力がガリガリと削られているのが自分でわかっていたのだ

 

 

「…な、何で王の財宝を俺が使えないんだよ!」

 

 

 少年はそれでも敵へと叫ぶ。

 神様に頼んだ特典にはギルガメッシュの蔵もあった筈だが、少年には使うことが出来なかった。

 

 理由は至って簡単。ギルガメッシュがそれを良としなかったのだ

 

 

「貴様のような偽物に我の宝物を使う資格などないわ、たわけ」

 

 

 ただ淡々と告げるギルガメッシュに少年は憤慨し襲いかかる

 それをギルガメッシュは蹴り飛ばすことで中断した。

 

 

「お、俺のどこが偽物だってんだよ!」

 

 

 腹部を蹴られ、激しい痛みが走る腹を押さえる少年はギルガメッシュが告げた内容の意味がわからずに叫ぶ

 ギルガメッシュは目を細めて、少年の身体に視線を向けた

 

 

「我が出てきた理由を特別に教えてやろう」

 

 

 指を一本立てて少年へと向けたギルガメッシュは告げた

 

 

「本物の藤崎優が我に助けを乞うたからだ」

 

「本物…?」

 

「貴様に数年前、居場所を奪われた童子の事だ」

 

 

 それを聞き、少年は思い当たるフシがあるのか顔をしかめる。

 

 そんなものは知るか、この肉体に憑依させたのは神の都合だと内心で叫ぶ少年にギルガメッシュは冷ややかな視線を送った

 

 

「難儀なものよな。己は何も考えることは出来ずにただ、貴様がしていることを記憶していくという日々を数年に渡り送ったのは」

 

 

 少年は困惑した。彼の知るギルガメッシュは自尊心に溢れ、他人の事を考えることなどしない人物なのだ。

 だが、前の人物は何だ?自身が乗っ取った少年の身を憂いているではないか。いったいどういう事だ?

 

 そう。少年はその考え事態が間違いだったのだ

 

 ギルガメッシュとは自らを裁定者と呼び、人類の進化のために不老になろうとも考えるほど人の事を考えているのだ。

 自らが上に立ち、眼下にいる民たちを見守り制裁を加える。そう言った事をしてきた

 

 故に何の罪もない子供が虐げられ、助けを乞うのを助けないはずはない。

 

 自身の宝物を勝手に使おうとする相手だという理由も多々にあるが、それでもなお。その根底は藤崎優という少年を生かすためである

 

 

「貴様がいかに力に酔いしれようとも構わぬ。だがな、我の宝物に手を出すなど不敬にも程がある。それにな、我に助けを乞う愚か者がいるのだ。そのような無礼(馬鹿)者、我が救わずして誰が救う」

 

 

 ギルガメッシュは不敵に笑うと自らの宝物庫に手を入れ剣を引き出す。

 

 

「選定の剣、原罪(メロダック)。貴様には過ぎた逸品だが特別だ。この剣にて葬り去ってやろう」

 

「な、何を言っているんだ!」

 

「誇るがいい、転生者よ。本来ならその不敬、自決を持って償うべきなのだが。我に引導を渡されるのだ」

 

 

 ギルガメッシュはその手に持つ剣を振るい、光の奔流を生んだ

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 その奔流は藤崎優(転生者)を容赦なく飲み込んでいった




はい。本編とは関係が無いというわけではありません

ありえたかもしれない世界
拒否できなかった世界で暴れたのは英雄王でした

最初はこっちを書こうと思っていたんですけど、作者の文章力では無理だと判断し拒否した世界を本編として書かせてもらってます。外伝の続きがよみたいという方が多ければちょくちょく書かせてもらいます

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