憑依拒否   作:茶ゴス

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第13話「まさか、こんなに眠っているとは」

「ええ!?1ヶ月も!?」

 

「うん。もうクリスマスだよ」

 

 

 闇の書の防衛プログラムを倒した僕は一度次元航空艦アースラに来て、これまであったことなどを聞いた。

 まさか、眠っている間にそんなに時間が経ってるなんて…

 

 両親には心配かけちゃったかな。後で謝ろう。

 

 

「それにしても、随分と都合のいいタイミングで起きたね。ホントは起きてたんじゃないの?」

 

「うーん。僕自身わからないからなぁ。いきなり竹林に居たと思ったら、笹食べてるし」

 

「はあ?」

 

 

 あれは驚いたね。別の可能性の僕を見た直後にあの竹林にいたんだから。

 そして、身体は勝手に笹を食べているっていう…しかもパンダの身体で。

 

 

「何か取り込まれたってのは教えてもらったから抜けだしたんだ。その時、ある人に面白いからってあんな鎧来て出てきたんだけど」

 

「教えてもらった?ある人?一体誰のこと?」

 

「それは秘密だよ」

 

 

 まあ、無闇に話すわけにも行かないしね。

 それよりも、なんだかあそこの一体暗いなぁ。どうしたんだろ、確か闇の書の主の八神はやてさんが倒れたって話だけど…

 

 

「どうしてあそこの闇の書の騎士さんたちはお通夜みたいな空気出してるの?」

 

「ああ、それなんだけど」

 

 

 ユーノ君は話してくれる。何でも闇の書、いや、夜天の書は随分と昔に作られたもので、現在に至るまでに誰かの悪意ある改変によってバグが発生したらしい。それで防衛プログラムが暴走したりしているんだって。

 そして、その暴走プログラムは式さんが殺したんだけど、このままだとまた新しく生まれちゃうらしいんだ。で、そうならないためにも闇の書を破壊するしか無いらしいんだけど、そうしたら騎士さん達も消えるんだって。

 

 そっか…

 

 

「ねえ、なのはちゃん」

 

「どうしたの?優君」

 

「あのはやてさんって前になのはちゃんが言ってたはやてちゃんって娘でいいの?」

 

 

 前に興奮したなのはちゃんから零れた名前、二人はずっと昔からの友達なのかもしれない。

 本当に大事な友達なのかもしれない。

 

 

「……うん。そうだよ」

 

「じゃあ、二人は友達なの?」

 

「うん!!」

 

 

 やっぱりそっか。だったら、助けない理由にはならない。

 僕の友達の大事な友達なんだ。その娘が悲しむのは良くないしね。

 

 でも、僕はこの状況をどうにかする方法は思いつかない。

 水天日光は生物に作用する宝具だから、夜天の書には作用しない。他の宝具や技とかも大体が攻撃なんかの戦闘用の物。

 

 いい物が見つからない。一番いいのは夜天の書を本来の姿に戻すことだけど…

 

 

『ならば、私の力を貸そう』

 

 

 ん?何か秘策があるの?エミヤさん。

 

 

『ああ、その魔導書が魔術的なものだとすれば或いはだがね…』

 

 

 何でもいいよ。僕にも出来る事なの?

 

 

『勿論。君の投影魔術ならば可能だろう。では、伝えるぞ』

 

 

 エミヤさんがそう言い終えると、頭にイメージが流れこんでくる。それは一つのナイフ。宝具としてのランクは高くはないけど、効果は凄いもの。

 名前を破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)。その効果は刺したものの魔術を初期化するもの。これならもし、魔導書が魔術的なものだとなれば初期化出来る…

 

 やってみる価値はあるね。

 

 

「優君ならどうにか出来る?」

 

「やれるだけやってみるよ」

 

 

 魔力を集中させる

 創造理念--これの本来の持ち主は裏切りの魔女、メディア。彼女の生涯を象徴して生まれた宝具。

 基本骨子--形状は折れ曲がったナイフ。短剣としての性能はそこまで高いものではない。

 構成材質--金属。いや、錬鉄…しかし、そこには魔術の要素を組み込まれている。

 製作技術--短剣としての形状を作成…魔術要素は送られた物をそのまま組み込む。

 

 

 投影を完了させる。僕の手には間違いなく破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)が存在していた…

 

 後は、成功することを祈るだけ…

 

 

 

「おい、何をするつもりだ!」

 

「………」

 

 

 夜天の書の騎士の静止の声を無視し、机に置かれた闇の書へナイフを振り下ろす。

 

 闇の書は光を一瞬放ったかと思えば、直ぐに収まった…これは、成功したのかな

 

 

「信じられん…闇の書、いや夜天の書から闇が消えた…」

 

「それは本当か!?」

 

「って事は…」

 

「ああ、もうこの闇の書は本来の夜天の書に戻った…」

 

 

 少し汗かいちゃったかな。気合入れて投影したし、無理もないか。

 でも、案外簡単に事が済んじゃったね。

 

 

『存外そうでもない。本来ならば破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)を投影するのは難しい。解決できたのは偏に君のお陰、というわけだ』

 

 

 そうなんだ。でも僕一人じゃあきっと何も出来なかったよ、ありがとう。エミヤさん。

 

 

「一体、何をしたんだ。ただその変わったナイフで闇の書を突き刺しただけに見えたが…」

 

「秘密だよ。でも良かったよ。成功するかは僕もわからなかったし」

 

「……そうか。感謝する」

 

 

 そう言い頭を下げてきた騎士さんに少し照れくさくなって頭を掻いていると突然後ろからなのはちゃんが抱きついてきた。

 僕は少しよろけそうになったけど、そのままの姿勢でなのはちゃんへと顔を向ける。

 

 

「ありがとう!!優君!!」

 

「大事な友達が助けたがっていたからね。僕も出来る限りのことをするのは当たり前だよ」

 

「……友達、か。ねえ優君」

 

 

 なのはちゃんは少し沈んだ声で話す。どうしたのかな。何か悲しいことでもあったのかな…

 

 

「どうしたの?なのはちゃん」

 

「また今度でいいから、私の話聞いてくれる?」

 

「う、うん」

 

 

 話ってなんだろ…なんか随分と思いつめた顔しているけれど…

 

 

『……君は私以上に唐変木というわけか』

 

 

 え?唐変木?


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