怪我が少しずつ治ってきて、吾輩は川へ向かい魚を食べながら静かに傷を癒す日々に入った。
……まさかこれを見越して魚の捕り方を教えてくれたのだろうか?
魔女殿、恐ろしいっ!未来視でもしているのかあの御方は。
…いや流石に持ち上げ過ぎか、あの御仁わりと適当なとこあるしな…いやでもな…まあよしである。
肉も食べたいが、今の体では無理だ。
木にぶつかったら間違いなく泣くし、ドラゴンダイブなどしようものなら、衝撃が痛すぎて墓標になる未来が見える。
――さて。
あのオーク共が妙に気になり、吾輩は戦った跡地に戻ってみることにした。
まだふらつくが、どうにか辿り着くと、死体が吾輩に蹴散らされたまま残っている。
……なぜだ?
本来なら、この森は死肉漁りが山ほどいるというのに。
首を傾げていると――洞窟。
オークを葬りに来たときは頭に血が上っていて気付かなかったが、今見ると、入口から凄まじい気配が漂っている。
オークが子どもを隠しているような巣穴のはずなのに……
この気配はどう考えても、そんな可愛げのあるものではない。
そりゃあ、死肉漁りが寄ってこないわけだ。
吾輩は窮屈な入り口に首をねじ込み、中を覗いた。
そして、見つけた。
――鱗。
洞窟の奥、ボロボロの地面に、血なまぐさい巨大な鱗が落ちていた。
「い、いいいやいや!? な、なんだこれ!? なんで気付かなかった!?」
驚きすぎて首を跳ね上げようとした結果――洞窟の天井を盛大に掘ってしまった。
「うおお!? ちょ、ちょっと待っ……あっぶな!!」
どうにか首を引っこ抜き、砂埃まみれで咳き込みながら鱗を見下ろす。
これ……散々避けてきた、あの強い気配の主のものではないか。
しかも……くさっ! 血なまぐさいっ!
これほど巨大な鱗を、竜からオークごときが剥がせるとは思えん。
一体何があった? 誰が? 何を?
……しかし、見つけてしまった以上仕方あるまい。
吾輩の先達の物である可能性があるなら、こんなところに埋もれたままでは不憫だ。
持って帰って丁重に扱っておくのが仁義というものである。
持ち主がキレて襲ってくる?
まあ、会話は通じるだろう。
竜だしな。大丈夫だろう、多分。
しかし……結構デカいぞ、これ。
舌に乗せるのは嫌だし、かといって首をこれ以上ねじ込むのも――
「……うおおおお!!?」
無理やり咥え、ずるずる引きずり出して、どうにか洞窟から持ち出すことに成功した。
吾輩、土まみれである。川で洗ってから帰るしかあるまい、いやあ災難であった。
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