強化転生国見ちゃん 作:バリバリボール
作者のハイキュー知識はアニメ中心なので他部分は捏造で乗り越えます。それを承知の上でご拝読お願いします。無理な人はブラウザバックで
俺は、面倒くさがりな人間だ。
”前回”中学では部活に入ってたけど特別優れた身体能力や才能もなく、本気で打ち込んでなかったのもあって当然ながら結果なんて出せなかった。そして高校ではどうせ頑張った所で結果なんて出せやしないとそもそも部活には所属しなかった。
そのまま適当に就職して、適当に過ごして……そして事故に会ってポックリ逝った。
気づいたら赤ん坊になっていて愕然とした記憶がある。すわ異世界転生かと思ったけど普通の現代日本で特に前と変わらない世界だった。歴史はほぼ俺の知っている物と差異はなかったけど、流行の曲や作品なんかは全く知らない物ばかりだったから並行世界っていう奴なのかもしれない。
今世に授かった肉体は非常に優秀だった。優れた身体能力に動体視力、身長も平均より高い方だし、何よりも思考が極めて明瞭且つ速い。後はまぁ……顔も悪くないと思う。
前は運動なんて好きじゃなかったけど、自分の思った通りに動くこの身体で運動するのは悪くないと思った。
ただ、前回の二十数年で染みついた面倒くさがりな性格は性根まで届いていたらしく、どうしても我武者羅に、何かに打ち込むという事が出来なかった。身体を動かすのは好きだけど、限界まで体力を振り絞って、反吐を吐きそうになるまで動くのは嫌いだ。……自分でも面倒くさい人間だと思う。
小学校。精神年齢の問題であまり馴染めた感じはしなかったけど、小学校環境なんて運動が出来るだけでチヤホヤされたから孤立したりする事はなかった。
中学。家から近かった北川第一中学を選んだ。この身体なら、前回と違って結果を残せるかも、なんて部活に入ろうと思って、どうせならレベルの高い場所がいいと、強豪と言われているバレー部に入部した。
やはりと言うか、小学校環境とは大違いだった。授業や遊びでしかバレーをやっていなかった俺と違って、小学校からバレーをやってる奴らや俺よりも一年、二年先にバレーをやってる先輩達。同時期に始めた奴らよりは遥かに優秀だったと思うけど経験の差と言うのは簡単には埋め難いものだった。
それでも強豪と言われているだけあって、お手本には事欠かなかった。身体能力は高いが未経験という事で二軍スタートだったけど、少しして俺は一軍に合流した。そして、本物のバレーの天才という奴に、俺は出会った。
影山 飛雄
小二からバレーをやっているらしかったそいつは本当にバレーの事だけを考えている奴だった。選手として全体的にレベルが高くはあったけど正直、ジャンプの最高到達点は最初から俺の方が高かったし、二年になる頃にはレシーブもスパイクもブロックも俺の方が上手くなった。サーブは……同じくらいか?でも、影山の凄さはそんな所にはなかった。
セッター。バレーボールにおいて攻撃の中核を担うポジション。そしてさらに、そんなセッターとして中核を担う技術であるトス。そのトスの技術、特に精度が恐ろしく高かった。
生まれ変わって非常に優秀な身体に恵まれた俺だったけど、影山を見て思ってしまった。
この先、どれだけバレーに人生を捧げて、血反吐吐く程に努力したとしても俺にこいつのようなトスは上げられないだろう、と。そう理解させられた。
まぁ、バレー一点特化過ぎて勉強も人間関係もダメダメだったけど。それに俺達が一年の時、三年にいた及川さんの方がトス以外は全てにおいて影山より上だった。二年も上なんだから当然と言えば当然だけど。それでも俺の知る限りの最高のセッターは及川さんだ。実際、中学最後の大会ではベストセッター賞も取ってたし。……あの人も影山に劣らず結構ひどい人間性してたけど。
その及川さんが卒業してからは当然影山が正セッターとしてレギュラー入りした。後ついでに俺もレギュラーになった。
二年。三度あった県大会ではベスト4二回、優勝一回。全国は予選を勝ち抜いて、本戦ベスト16だった。
そして三年。中心選手は当然影山で、次いで俺、後は急激に身長が伸びてチーム一の長身になった金田一辺りか。部内では三強なんて言われ出した俺達三人は部の中じゃ仲は悪くない方だったけど、ここ最近は影山が荒れててチームメイトは勿論、金田一も影山に着いていけなくなってる。
全国を控えてるのに、練習中の雰囲気は最悪に近い。影山もみんなもピリピリしてる。
「おいそこ!クイックの入りが遅い!もっと早く飛べ!」
言われた方は苛ついたように顔を歪めたけど言い返しはしない。出来ない。実力は影山の方が遥かに上だから。そんなチームメイトに舌打ちした影山は俺を見た。
うげ、こっち来た。
「国見、お前もだ!今のボールなんで追わなかった!?」
「どう考えても間に合わなかったでしょ。試合じゃないんだからそんなアツくなんないでよ」
俺とこいつ、バレーに対する価値観みたいなものが本当に合わないんだよな。だから高確率で噛みつかれる。試合でも囮サボったりすると目敏く怒ってくるし。
「お前なら間に合ったかもしんねぇだろ!それに、お前は試合でも変わんねぇよ!」
痛い所ついて来るな……けど。
「試合でも変わんないのは否定できないけどその前は否定させて?お前俺の事超人かなんかだと思ってる?」
それにしても俺には噛みついて来る頻度高いんだよなぁ。まぁ精神年齢成人済みの俺が反発するのは大人げないし、そういう年頃なんだな、と温かく受け止めてやるのが大人って奴だろう。
「お前、滅茶苦茶上手いのになんで本気でやんないんだよ……っ」
……あぁ、そういう。要するに、文化祭の準備なんかで真面目にやらないヤンチャ君に苛つく真面目系委員長みたいな感じか。ただ……。
「あのさ、お前が……常に我武者羅な事が=本気だと思ってるのはいいよ。でも、俺は俺なりに勝つ為に、本気でやってる。お前の価値観を俺に押し付けるなよ」
「……?何が言いたい?」
……そういえばこいつバレーの事以外基本残念だもんな。勉強も碌に出来ないし。察しも悪い。
「悪かったよ。難しい事言った。要するにお前にそうやって言われる筋合いないって言ってんの。少なくともレシーブとかブロック俺より上手くなってから言って貰える?」
「くっ……!」
俺からのカウンターに悔しそうに顔を歪める。自分が実力を盾に周囲にアレコレ言ってるからな、こう言えばこいつは素直に引き下がる。
渋々引き下がった影山を見送った俺に金田一が駆け寄って来た。
「大丈夫かよ国見。また噛みつかれてたな」
「問題なし。噛みつかれたってより吠えられたくらいのもんだよ」
飄々と言って見せる俺。金田一はそんな俺を見て呆れるような表情をした。
「そうやって言えるお前が羨ましいわ」
その後もピリピリとした雰囲気のまま練習は終わった。掃除後、みんなは帰りの支度をしてそそくさと帰って行った。今日は金田一も帰るらしい。前はもっと居残りで自主練する奴いたんだけどな。影山が毎回確定で残るから、そりゃ残る筈もないんだけど……。
「お前もよくやるよな……。影山いるのに一緒に残るとか」
帰り支度を終えた金田一が最後に一声かけてくる。
「いや別に。自主練中までは流石にアレコレ言ってこないし。それぞれ勝手にやりたい事やってるだけだよ」
実際問題影山はほぼ休憩なしのぶっ続けでひたすら練習してる。俺は疲れる前に何度も休憩入れるからな。
「ほんと、お前の図太さが羨ましいわ……明日は、多分俺も残る。じゃあな」
「じゃあね」
一人で出来る練習なんて限られてる。基本的には二人共サーブ練してる事が多い、それか片方がサーブ練してる時にサーブレシーブ入るか。影山はトス練もしてる。気が向けば俺がそこに入ってスパイク練する事もあるけどあんまない。
サーブ練に一区切りついて休憩しようとした俺に珍しく影山が話し掛けて来た。
「なぁ、ディグ練したいんだけど。スパイク打ってくんないか?」
「やだ。今から休憩する」
また休憩かよ、と言いたげな目で見てくる。視線がうるさいな……俺はお前みたいに疲れるのが好きなMじゃないんだよ。それに疲労が溜まって思うように動けない状態でやる練習なんて効率が悪い。
「……じゃあ休憩の後で良い」
「やだ。今日サーブが良い感じだからもう少しサーブ練する」
「…………じゃあ、サーブレシーブ、受ける」
何かを堪える様に言う影山。練習中のお前はこれ以上にひどいからな?普通に接してあげてる俺の懐の大きさに感謝を忘れて貰っては困る。ほんとに。
「それならいい。勝手にしてくれ」
俺の休憩を待つ間にトス練する影山を眺める。ネット前、セッターの位置から離れた位置に置いたコーンへ落ちるようにトスを上げ続ける。トスの高さは一定、時折立ち位置を変えるもひたすらコーンへ吸い込まれるボール。今度はコーンを無視して強めのトスを上げ続ける、ボールは必ずある定位置を通過して落ちていく……定位置が高いか?いや、そうか。俺がスパイク打つ時の打点か。影山が寸分の狂いもなく同じ軌道で上げ続けるから気づけるけど、普通は気づけないだろ。
今度はさっきよりも低くなった。多分金田一だな。しばらくしてからまた低く……まじかよあいつ、レギュラー全員の打点把握してんの?これだから天才は……。っていうかそんな真似出来んのになんで試合ではあんなトスになるのか、これが分からない。
あ、まだ休憩してんのかって目で見てくる。はいはいそろそろ再開しますよ。ドリンクを置いて立ち上がる。腕の感覚、ヨシ。足、ヨシ。
ボールを持ってエンドラインから離れた位置に陣取る。そんな俺を見て影山がトス練を止めて正面コートに入った。特に言葉は交わさない。っていうかさっきは珍しく話したけど。いつもはお互いがやってる練習に勝手に入り込む。トス練してる影山の所に入ったら無言でトス上げてくれるし、俺がサーブ練してる所に入ってきたら俺も影山の所に無言で打ち込んでやる。
さて、やるか。思い出すのは及川さんの言葉。
『サーブのコツ?うーん、俺が国見ちゃんに教える事なんてないと思うけどなぁ。ま、意識してるのは遠心力……かな。短い棒で叩かれるより長い棒で叩かれる方が痛いじゃない?え?まず叩かれた事がないって?おかしいなぁ、俺は岩ちゃんに……』
いけない。余計な所まで思い出しそうになってしまった。
必要以上に力んだ所で、威力なんて大して上がらない。大事なのは脱力と遠心力。
ボールを二回、バウンドさせる。目を閉じて、両手に力を入れてボールの弾力を確かめて目を開いた。
サーブトス、少し高めに。腕を目いっぱい後ろに振って、そのまま前に振り戻す勢いを利用して高く飛ぶ。ボール位置、ヨシ。限界まで右腕を伸ばして……力よりも速く振る事を意識して、手の最到達点にボールが来るように……インパクトの瞬間に力んで、手首のスナップも意識する!
大きな破裂音のような音、重い手応えと共にボールは影山に向かう。ちょっと右に逸れたか。なんとか正面に入って腕に当てた影山だったけど、ボールは後方に弾かれて行った。
これが、サーブ。ブロックに阻まれる恐れのない。唯一の攻撃手段。
スパイクやサーブのようにどこに飛んでくるのかが不確実で練習した状況なんていつ来るか分からないレシーブ。そのレシーブが乱れれば当然それに付随して乱れるトス。トスが乱れればこれまた練習通りにスパイクなんて打てない。ブロックもそうだ。自分の付いた相手が打つかどうか分からない、マーク相手が打つとしても相手がどのコースを打つかなんて確実には分からないブロック。
それらと違ってサーブは、サーブだけは完全に一個人だけで完結した。不確定、外的要因による乱れのない技術。ローテーションによって確実に回ってくるチャンス。練習した100%が確実に出せる。バレーにおいて、最も練習効率の良い技術。
俺はまた一球、ボールを手に取った。
〇●〇
『強くなれば、絶っ対に、目の前にはもっと強い相手が現れるから』
一与さんのその言葉を胸に、ひたすらバレーの練習を続けた。クラブチームでも地域の小学生大会でもその相手は現れなかった。
そして中学、その相手は現れた。三年の及川さん、ポジションは同じセッター。あの人がセッターに入るとチームがイキイキとしているのが見るだけで分かった。それにセッターとしての技術だけじゃなくて、スパイクもレシーブもブロックも、そして特にサーブ。全部が上手くて、中学ってやっぱすげぇって思った。
実際は及川さんが凄いだけだったし、選手として、セッターとしては尊敬出来る人だったけど……性格はすげー悪かった。
でも、越えたいと思った強い相手が……すぐ近くに、目標がいるのは楽しかった。セットアップやサーブ、ブロックのコツを教わりたかったけど一切教えてくれなかった。本当にすげー選手だけど、本当に性格は悪かった。だから練習や試合の及川さんを見て必死に覚えた。
最後の大会、強豪白鳥沢には勝てなかったけど及川さんはベストセッター賞を取って卒業していった。県で一番優秀なセッターの証明。セッターとして越えたいと思った、強い相手。俺がそう思ったのは間違ってなかった。
本当に嫌な人だったけど、身近にいた強い人がいなくなるのは残念だと思った。でも、あいつがいた。
国見 英。
中学からバレーを始めたらしいそいつは確かに技術は素人だった。でも、部で最初にやった身体測定では一年で一番優秀な記録を残してた。バネもあって、俺よりも……跳んでて。ジャンプ力も一年で一番だった。
最初から一軍に入ったのは俺だけだったけど、あっという間に国見は一軍に上がって来た。まだ技術的には荒かったけど瞬時にボールの軌道を見切る動体視力に無駄の少ないレシーブ、瞬発力、ジャンプ力を活かしたスパイクとブロック。それに及川さんに教わっていたジャンプサーブ。俺には教えてくれなかったのに……。
及川さんがいなくなる二年の頃には、正直セッターとしての技術以外は良くて同じくらいか……国見の方が……上、だった。なんならトスも普通に……上手かった。小学二年の頃からバレーを始めて、一番かっこいいと思ったセッターの練習を中心にやってきた。それでも他の練習をサボった訳じゃない。バレーは、セッターだとしてもセットアップだけ出来れば良いようなものじゃないから。
だから他の技術も、少なくとも同年代には負けねぇと思ってた。それをバレーを始めて一年の奴に軽く追い越されて行った。正直、かなり、すげー悔しかった。国見だって努力してない訳じゃない、居残りで自主練だってしてるし。でも、どうしたって必死にやってる感っていうか、ガムシャラにやってる感じがしなかった。
普段の練習だって真面目にやってる時もあるけど軽く流す……手を抜いてる事も多かった。練習で国見が上手くいってない事があったりしてすぐに休憩入ってぼーっとする事が結構あった。最初は拗ねてやる気なくしたのかと思ったけどしばらくぼーっとした後に同じ事すると明らかに上手くなってんだ。
天才っていんだなって、思った。セッター技術だけはぜってー負けねぇ。負けたくない。でも他の部分は一生かけても敵わないんじゃないかって思っちまった。
それと、すげー悔しいのと同時に、すげー勿体ねぇって思った。やる気なさそうな今の国見でもこんなすげー上手いのに、本気でやる気出したらどんだけすげーんだろうって、考えたらワクワクする。あいつが、やる気になるとこなんて想像つかないけど……。だからこそあいつとは合わねぇっていうか、でも、仲が悪かった訳じゃない。バレー部……っていうか学校では一番付き合いがあったと思う。
及川さん達がいなくなって、一与さんが亡く……いなくなってから部の雰囲気がピリピリしだした。自主練する奴らも減って行って最後の方は時々金田一がいる位で後は国見と二人な事が多かった。あいつは滅茶苦茶に休憩挟むから半分くらいはいないようなもんだったけど……。マイペースが過ぎる奴で、練習誘っても自分がやりたい事を優先するような奴で……。
でも、あいつと二人で自主練してるのは嫌いじゃなかった。無駄に会話しなくてもいいし。時々トス練でスパイク入ってくれたし、サーブも受けさせてくれた。ディグ練とかトスのボール上げはマジでやってくれなかったけど……。
あんま進んでスパイク練するタイプじゃないけど、速さも高さもあるし際どいコースを狙う精度も普通にパワーも結構ある。なにより相手ブロックを冷静に見て避けたり躱したりで勝負する技術も。及川さんの世代は岩泉さんがいて……一つ上の学年には、正直エースと言える人はいなかった。どんな選手でも使えるようにするのがセッターだ。でもやっぱエースと言える選手がいるかどうかで試合の組み立てやすさは段違いだ。身長のある金田一もいるし。今回の全国はベスト16より上、ベスト8いや4……優勝だって不可能じゃない。そう、思ってた。
全国大会の県予選、中学最後の大会。一回戦の相手は聞いた事もないような無名、でも油断も手抜きもしない。負ける可能性が1%でもあるなら、手を抜く理由なんてない。
……あいつは、適当に流すんだろうけど。くそ、ほんともったいねぇ。
どう見ても素人集団、なのに一人だけ異様に目を引くチビがいた。
「相手チーム素人臭いな。楽でいいけど」
いつも通りの国見を睨む。細かい事に文句を言う様な事はもうしない。それが無駄な事なのは流石に学習した。
試合開始、国見のサーブ。ウチで一番強烈なジャンプサー……。エンドライン丁度の位置から飛ばずにサーブを打つ国見……は?
慌てて相手に視線を戻すと触れられずにサービスエースになった。いや、そんな事より!
「おい国見お前!なんでジャンサー打たない!?」
詰め寄った俺に溜息を吐く国見。
「サービスエース。点とった。何か文句ある?」
「点は、取ったけど……ジャンサーの方が確実だろ!」
「そうかよ。じゃあお前はジャンサーで打てばいいんじゃない?」
ボールを受け取りながら言う国見。クソッ。サーブ、こいつの方が上手いから文句いいづれぇ……!
「……ナイサー!」
「「「ナイサー」」」
これ以上止めてたら審判から注意入っちまう。俺は引き下がるしかなかった。その後も国見は通常サーブで点取ってたけど、運よく拾われてチャンスボールだけど帰って来た。金田一が拾う。国見は後衛……クソッ、バックアタックの準備すらしてねぇ!ブロックのいないレフトだ!
がら空きでスパイクを打ったが浮き気味に撃たれたスパイクはアウトになった。
「何やってる!フリーだぞ!?決めなくてどうすんだ!」
「悪かったよ……」
「「「「どんまーい」」」」
それだけ言って位置に着く。クソ、国見が本気でサーブ打ってれば……っ。思わず国見を見た。
「俺。ミスしてない。何か文句ある?」
俺が文句を言う前に先手を打って来た。……ミスは、してねぇけど。クソッ。
〇●〇
俺のサーブから味方のミスで失点した。ミスったメンバーに怒鳴った後俺を睨む影山を一蹴。俺、ミスしてない、悪くない。影山にはつらつらと小難しいいい訳言うよりも単純に、小学生に言う様に分かりやすく言うのがコツだ。
一セット目は普通に取った。失点はこっちのミスだけ。それでも影山はご立腹だったけど。
二セット目もクイックに遅れてミスしかけた金田一に怒鳴る影山。まぁいつも通りだな。言う事なし。
「クソっ。ムチャなトス上げやがって……!」
毒吐く金田一の肩を叩く。ま、影山のやつ俺の次に文句言うの多いの金田一だもんな。
「ナイス……いつもの事じゃん。とりあえず勝てれば何でもいいでしょ」
「……そうだな」
俺のサーブ、依然として通常サーブを貫く。ジャンサーは少なくとも同点になるまではしない。センターが受け損ねて遥か後方へ。
「よし」
「油断すんな!まだ落ちてないだろ!」
気を抜く俺に影山は言った。はいはい全力バレーマシンは今日も元気だね。
「無理だろ。瞬発力も速度もあるのは認めるけどアレ拾うには身長足りないよ」
俺の言葉通りに、ボールを追いかけるけど届かずに壁に激突する相手1番。うげぇ。あんなになってもボール追うのかよ……影山と同族だな、あれは。
「タッパが二メートルくらいあったら届いたろうな」
そんな相手の1番を、影山はじっと見つめていた。
瞬発力に速度、バネ、後ボールへの反応的に動体視力も良い……それは認める。ただ身長と何より技術が足りてない。身長はいい、仕方のない事だから。それに、あれだけ飛べるなら身長の不利は帳消しかギリマイナスくらいに抑えられてるだろう。後のスペックは良い物持ってる。天性の運動センスって言うのかな。
でも、それを武器に出来る程の技術を持ってない。他のメンバー見たら一目瞭然だけど、まともに成長出来るような環境じゃなかったのが見て取れる。何人かバレー部かも怪しい奴いるし。
「なんか、頑張る小学生見てるみたいで微笑ましくなるな」
「金田一、お前……」
お前それ結構残酷な事言ってると思うぞ……。悪意はないんだろうけどさ。
マッチポイント、俺のサーブ……これが最後のサーブかなと思いながら打つ。1番がソレを何とか上げる。
おぉ、取った。レシーブ自体は苦手そうなのに……まぐれだろうけど。今度は足かよ……。っていうかあいつさっきから妙に足使ってるけど本職サッカー部とかじゃないだろうな。足トスで中々良い位置にいったボールを目掛けて跳ぶ1番。
改めて思うけど、良く跳ぶな。
「ワンチ!」
金田一のブロックで跳ね上げられたボールは後方に飛んで行く。さっきの向こうみたいだな。間に合……いそうな距離だけどさっきの壁激突が脳裏を過る。やめとこ、怪我したくないし。向こうのコートは凄いはしゃぎようだ。試合に勝ったみたいな。まぁ自力での初得点だもんな。
「最後まで追えよ!お前なら取れるボールだったろ!」
今日一の剣幕で詰め寄ってくる影山。
「お前、さっきの壁激突忘れたの?下手したら病院送りだぞ」
俺の言葉に少し勢いが和らいだ。まぁお前も怪我とかには人一倍気を付けてるから俺の言い分は分かるよな。と、そんな雰囲気を醸し出す。
「そっ、それでも……お前ならなんか、こう、上手いことやれんだろ!」
「おい。お前ついにトス以外もクソみたいな無茶振り言い出したな?」
いい加減にしろ。お前は俺を何だと思ってる。悔しそうに震える影山。
「でも、あいつに点を、取られたんだ!」
ほんとに負けず嫌いな奴だな……。全く。
「だったら取り返せばいいじゃん。お前のセットアップで……まぁ相手のチビが凄くて出来ないって言うなら俺がやってやるけど?」
「んだとゴラァ!?出来ねぇ訳ねぇだろ!見てろボゲェ!!」
ほんとに扱いやすい奴だな……。全く。
相手サーブ、当然の如くアンダーのサーブ。素人なのも相まってかネットイン。金田一が何とか拾うも相手ボール……相手にとっての絶好のチャンスボール、流石に不格好ながらも上げてセッターへ、そしてトスは1番の反対方向。
ここでミスか。まぁ素人っぽいから仕方ないけど。
1番が今日一の速度でコートを横切る。トスミスを目で追っていて影山は反応が遅れた。ありゃ追いつけないな。ってか速ぇ。
恐らくぶっつけ本番のブロード攻撃。クロス……はないな。そんな技量ない、ストレート。体勢を崩しながらもスパイクを打つ1番。パワーはない、取れ……。
咄嗟にレシーブしようとした手を引っ込める。やべっ、入ったかも……。判定は?審判を見る。アウトか。危ねー……。
試合終了のホイッスル。呆然と佇む相手1番を影山は見つめる。金田一が声をかけるけど聞こえてないのか動かない。そして。
「お前は三年間……何やってたんだ!?」
「うわ、性格悪っ」
金田一がドン引きして声をかけるのをやめた。うん、まぁそう聞こえるよな。ただ影山は味方の下手くそはとにかく相手の下手くそになんか声はかけない。多分興味も湧かない。なんなら認識すらしない。
勿体ないと感じたんだろうな。実際俺もちょっと思った。影山に喰って掛かろうとする向こうの5番を宥める6番。を尻目に影山の肩を叩く。
「おい、整列だ」
肩を叩いた俺を見て何か言いたそうにする影山。なんだその眼は。試合での文句なら一切受け付けてないぞ。
異様に印象に残るチビは居たけど、いつも通りの一回戦突破。そして二回戦も当然のように突破。
「今日のチビ凄かったなー。……何中だっけ?」
大会からの帰り道を金田一と歩く。っていうかもう忘れたのか。印象に残ったのは確かにチビだけだったけど。
「雪ヶ丘中でしょ?……運動センスは抜群だったね」
名前は……日向、なんだっけ?下は流石に覚えてないな……。
「あのチビなら、影山のトスにもついていけんのかな……」
俯き加減で言った金田一。いつも散々文句言ってるけど、何だかんだ影山の事気にはかけてんだよな……とはいえ。
「いや無理でしょ。不測のミスではあったけど、あくまで緩いトスだから処理出来ただけだ。影山のクイックには追いつけはしても多分まともに打てないよ」
技術が伴えば、話は別だろうけど……現時点じゃあのチビに影山のトスを処理は無理だろうな。
「でも、お前は影山のクイック普通に打ててる……」
「いや普通には打ててないから。結構神経使いながら打ってんの」
影山のトスが無茶だとは思いつつも、どこかで着いていけない自分にも責任感じてんだよなこいつ。あのチビ見て一層そういう感情が刺激されたのかね。
「そうだろうけどさ」
「お前は気負い過ぎ。影山の言ってる事やってる事、間違ってないのも多いけど……あの無茶振りトスに関しては完全アイツが悪いよ」
「それは分かってる!けど、あのチビとか国見見てるとちょっと……うぐっ!」
弱気になりかけてる金田一の脇腹を小突く。こいつこういう所あるからな。軽く睨んでくる金田一をスルーして足を進めた。
「地味にいてぇ……。なんか腹減った!コンビニ行こうぜ」
「お前はいつも腹減ってるだろ」
今更ハイキューのアニメ見て衝動で書いたので多分続かない。
需要ありそうなら頑張って書きます。