強化転生国見ちゃん   作:バリバリボール

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結構需要ありそうなんで頑張ります。

感想、評価もありがとうございます。返事は出来てませんが有難く目を通させてもらってます。


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 ある日の練習中、監督に呼び出された事がある。

 

 

 

 

 

 

「影山の事ですか?なんで俺……」

 

「普段の事は分からないが、少なくとも部内じゃお前があいつと関りが深いだろう」

 

「それは……」

 

 最近は学校でも一人でいる事が多いからな影山の奴。そういう意味では確かに監督の言う通り……いやでも関わってるって言えるか?

 

「もう全国予選も目前に控えてる。このままの雰囲気では、全国はもちろん県予選すら危ういだろう」

 

「そうでしょうね。影山の奴、最近はますますピリついてますから」

 

「影山のあの言い方やトスは俺の方でも再三注意してるが中々な……。お前たちの年頃はそういうのを素直に受け取れないのは仕方がないんだがな」

 

 それをその年頃の俺に言うのか……。中身は違うけど。

 

「このままでは影山を外す事も視野に入れなければならん。だが、全国で勝ち抜くには影山が必要だ。お前が何か聞いたりしてないかと思ってな」

 

「聞いてないですね。そもそも自主練で良く一緒に残ってはいますけど会話なんてしませんし。話すとしてもバレーの事だけですよあいつ」

 

 俺も影山も自分の事話すようなタイプじゃないし。あいつは口を開けばバレーの事しか出てこない。俺の話を聞いて頭を抑える監督。

 

「そうか……。あいつがバレーに真摯なのは分かるし、勝つ為に真剣にやろうとしてるのも理解してるんだが、それが悪い方に拗れてしまっている」

 

 それは多分、皆理解してる。誰よりも練習して、誰よりも真剣にバレーに取り組んでる。だから正面から堂々と反発しづらいんだろう。シンプルに影山が何でも出来て上手いのもある。誰よりも勝つ為に真剣にやっていると言う自負が、影山のあの状態を増長させている側面もあると思う。

 

「俺が何言った所であいつ聞かないですよ」

 

 多分、今の影山は言葉じゃ納得なんか出来ない。曲がりなりにも部で、一番近い所であいつを見て来たから分かる。監督も分かっていたんだろう、俺の言葉に表情を変えない。

 

「あいつだって勝つ為に行動してる。なら、監督も勝つ為の選択をすればいいんじゃないですか?」

 

 行動の結果。それが勝ちの邪魔になるなら下げられても仕方がない。思う所はあるけど俺に出来る事はないし。

 

「そうか。そうだな……。ただ、影山が下がる事態になればお前の負担が増えるのは間違いないぞ。そうなればサボるのにも限度があるからな?」

 

 げ、影山の話してたのにこっちに飛び火してきた……。

 

「せ、選手を良い方に導くのは指導者の役目なんで頑張ってください。じゃあ練習戻りまーす……」

 

 

 話も区切りが着いた所でさっさと退散しようとする俺を監督が止める。

 

 

「もう一つだけ聞きたい事がある。お前は影山のクイックをどう処理してる?」

 

「どうって……。あいつはブロック躱す為にあんなトス上げてるんで、ブロック見てどう躱そうとするのか予想してそれに合わせて跳んでるだけですけど」

 

 あくまで予想で合わせてるだけだから、多少はズレたりもするけど打てる範囲だ。

 

「……なるほど。他の参考にならない事は分かった。すまなかったな、戻って良いぞ」

 

「はい」

 

 

 

 

「まったく。実力は圧倒的なんだがどうしてこう二人共……」

 

 

 最後の監督の呟きは聞こえないフリをして俺はそそくさとその場から去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〇●〇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ブロック見る。影山なら……

 

 

 助走から踏み込んでブロード気味にジャンプ。ブロック二枚着いて来た。トス、速い、掴まる、ブロック、指。

 

 一瞬の思考、腕を振り抜く。俺の打ったスパイクは相手ブロックの指に当たってアウトになった。

 

 

「「「「ナイスキー!」」」」

 

 

 

 

 

 

「すげー、また点取ったぜ」

 

「仙蔵中のブロックにあれだけ徹底的にマークされてんのによく点取れるよなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 全体的にブロックが高い、上手い。全然サボれねぇ…………。

 

 

 

 

 

 

 雰囲気は悪くも県予選は突破。全国も初戦は接戦でなんとか勝ったけど、二戦目で高い守備力で有名な優勝候補の一角とされる仙蔵中と当たった。スタメン全員高身長で固めて、ブロックはもちろんレシーブのレベルも高い。エースらしいエースはいないけど全員ある程度高さがあるから攻撃力も普通にある。

 

 

 序盤は相手のブロックを振り切ろうと影山がいつも以上に速いトスを上げて、こっちのミスでの失点が続いた。途中からトスがほぼ俺に集中しだして、相手もそれを見て俺に二枚のブロックを常につけるようになった。点はそれなりに取ったけど序盤の失点の穴を埋めきれずスコアは24対21で相手のセットポイント。

 

 

 俺に二枚張り着いた状態。守りの薄くなった他で得点狙おうにも一枚ブロックでも最低限コース絞るか触ってきてレシーブで対処してくる。高さがある金田一は俺の次に警戒されてるし、スパイクが得意って訳じゃないから決定力に欠ける。他は金田一よりも攻撃力ないからなおさらだ。そもそも他は影山のトスに着いていけてないんだけど。バックアタックでかく乱しようにも十分な高さでバックから攻撃できるのは結局俺と金田一だけ。

 

 

 空中戦、そして俺と影山のサーブでなんとか点はもぎ取ってるけど限界がある。

 

 

「クソッ!国見一人の攻撃じゃ限界がある!お前らもっと早く動けよ!もっと早く飛べ!」

 

 

 焦りでとうとう爆発した影山が怒鳴り声をあげた。俺一人じゃ限界があるのは同意するけど言い方ってもんがあるだろ……。

 

「ふざけんな!お前の無茶なトスなんて国見くらいしか打てねぇんだよ!」

 

「打てなきゃ意味ないだろ!?」

 

 

 珍しく金田一たちが影山に反論する。全国大会で相手は優勝候補、この負けそうな状況でこいつらも焦ってる。

 

「オープントスじゃお前ら点取れねぇだろ!勝ちたいなら俺のトスに合わせろよ!」

 

「おい。言い過ぎ」

 

 流石にまずそうだと思い影山を止めに入るけど振り払われた。

 

「お前もこいつらのせいでずっと二枚ブロックとやりあう羽目になってる!ブロックもっと分散すればお前なら!」

 

 影山の叫びがホイッスルで中断される。長く中断させ過ぎたか。影山も不服そうながら定位置に着く。今までで一番雰囲気最悪だな。これまではそれでもなんとか勝てたけどこの相手には……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〇●〇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クソっ。どうする!?このセット取られたら勝つ為には後二セットやらなきゃいけなくなる。時間をかければそれだけ対応されていく。ここ取らないと……。

 

 相手サーブ、国見が拾って綺麗に返ってくる。そのまま助走に入る国見の前にはブロック三枚……完全にマークされてやがる……!でも逆サイドブロックなし、これならオープンでもあいつらで決められる。

 

 

 

 

 トスを上げる。相手ブロック全員国見の方に跳んでる。振り切った!これなら………。

 

 

 

 

 ボールを打ち抜いたスパイク音……は、聞こえなかった。トスの先を見たらそこには誰も……。ボールが床に落ちる音がコートに響いた。

 

 

 

 な、にが。

 

 

 

 頭が真っ白になる。その光景の意味を理解出来た時、目の前がボロボロと崩れていくような感覚に襲われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 〇●〇

 

 

 

 

 

 

 

 あーあ、こうなったか。いやでも今この時までギリギリでもチームとして機能してたのが奇跡か。ベンチで項垂れる影山を見る。これ以上にない程明確に示された拒絶の意思。いつもなら怒鳴り散らして文句を言って来てもおかしくないけど、流石にあれは堪えたか。

 

「全員思う所はあるかもしれんが今は切り替えて行こう。次のセットからセッターは森山でいく」

 

「うぇっ!?ぼ、僕ですか?国見先輩の方が良いんじゃ……」

 

 監督の言葉に後輩の控えセッターが狼狽える。自信に欠けた奴で実際、影山がいる事で霞んではいるけどいいセッターだと思う。影山を見てきてるから自信がないのかもしれないけど……。

 

「勝つ為には国見の攻撃力が必要だ。ただ、今のマークされた状態では動き辛いだろう。二セット目序盤は得点を狙うよりも左右に攻撃を振ってブロックの意識を分散させて行こう」

 

 監督の指示を聞きながら休む。他の攻撃も意識させる事を優先させるなら二セット目の序盤は少しサボっていこう。体力の温存も出来るし、その方が相手ブロックも他を意識せざるを得ない筈だ。

 

「それと国見、そろそろジャンプフローターも混ぜていくべきだな」

 

「……まだ安定しないんですけど」

 

 監督の提言にそう言いながらも、俺自身勝つ為には使うべきかと悩んでいた所だ。本格的に練習し始めたのは最近のジャンプフローターサーブ。実戦で最低限使えるレベルには仕上げてはいるけどまだ安定しているとは言い難いからなるべく使いたくはなかった。でも相手を崩すにはジャンフロも使っていかないと厳しそうだ。

 

「でも、そうですね。二セット目からはジャンフロも使って崩していきます」

 

「それがいいだろう。お前の事だから心配いらんだろうが、ミスは気にせず狙っていけ」

 

 

 ブザーが鳴る。影山に話しかける監督を尻目にコートへ向かった。ガチガチに緊張した様子の森山。こういう時は主将が何か緊張を和らげる言葉を投げ掛けるべきだろうと目線を投げるが先程のトス無視から主将を含めてみんなうつむき加減な様子。

 

 

 

 ……こういうの柄じゃないんだけど。森山の肩を強めに叩く。

 

 

「うへぇあい!?」

 

 なにその声……。

 

「急な抜擢で驚いてるだろうけど程よく緊張して行けよ」

 

「そこは緊張するな、って言う所じゃ……」

 

「馬鹿言え、勝ちたいから緊張するんだよ。緊張しない奴は勝ち負けなんてどうでもいいと思ってるか、妖怪みたいな化け物メンタルしてる極一部の例外くらいでしょ」

 

 俺の言葉に何とも言えない表情でこちらを見てくる。なんだよ、元気付けてやろうとしてると言うのに。

 

「いや、国見先輩にそれを言われると何というか、まぁ、はい」

 

 釈然としない反応ではあるけど、どうやら緊張は和らいだらしい。

 

「監督が勝ちに必要だと思ったから、お前を選んだんだ。自分に出来るとこをやればいい。……迷ったら俺に上げな。まぁ、何とかする」

 

 

「……っ、はい!」

 

 

 もう大丈夫そうかな。後は……。

 

 

「お前らも。自分たちで無視したくせにやったらやったで何クヨクヨしてんの?俯いてる暇があったら影山にお前なんかいなくても勝てるくらいの気合で行けよ」

 

「お、おう。すまん」

 

「……そうだな」

 

 思わず溜息を吐きながらポジションに着く。

 

「……やっぱ。お前が主将になれば良かったんだ」

 

 隣の主将がそう零すように言った。超ネガティブモードじゃん……。

 

「アホか。俺がそんな柄じゃないの知ってるでしょ。しっかりしてよ、主将なんだから」

 

「……あぁ、分かってる」

 

 

 さて、影山がいなくなった事で不足した部分もあるけど、他のスパイカーが機能するなら穴は最低限埋められる筈だ。再開の合図。ニセット目は相手サーブから。

 

 

「よし。一本切って行くぞ!」

 

 

「「「「おう!」」」」

 

「おう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〇●〇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 試合終了の合図が鳴り響く。荒れ狂う息を整えようとする俺の視界に映るのは仲間とハイタッチする相手チーム。

 

 

 

 

 

 

「二セット目取り返した時はワンチャンあるかと思ったけど、流石に無理だったかぁ」

 

「しょうがなくね?後半明らかに3番バテてたし。すげー上手かったけどあれだけ警戒されてたらなぁ」

 

 

 

 

 

 

「すみません。俺、国見先輩に頼ってばっかで……っ」

 

「違う。俺達がもっとやれてたら……」

 

「俺がもっと点取れてれば」

 

 

 どいつもこいつも負けた途端にまたネガティブに……。

 

 

「バレーは六人でやる競技だろ。責任があるとすればそれはチームにでしょ。全員気負い過ぎ」

 

 半分以上は岩泉先輩の受け売りだけど。……でも。

 

 

 

 普段から死に物狂いで練習してる訳じゃない。疲れない程度に自分なりの効率を求めて練習するだけ。試合だって手を抜ける所は抜く。俺以上に頑張って、努力してる奴なんてそこら中にいるだろうな。それでも……

 

 

 

「悔しいもんは悔しいな」

 

 

 

 

 自分勝手な感情だと思う。本気で勝ちたいなら練習だって、影山の事だって、出来る事はもっとあった。でもしなかった。……今更だな。

 

 

 整列を終えてベンチへ戻る。そこには項垂れたままの影山の姿。相当喰らってんなこれ……。そんな影山の足に軽く蹴りを入れる。

 

「おい。帰るぞ」

 

「……おう」

 

 普段なら確実にキレて言い返してくる所だけど力なく返事して準備を始めた。調子狂うな。

 

 

 

 

 コートから出てロビーへ。ただ負けた以上に重い雰囲気がチームを包んでいる。試合中は夢中で気にする余裕もなくなっていったけど。あのトス無視に関しては何も解決してない……。もう俺達三年は引退だから、解決も何もないけど。

 

 

「お前達選手の調子や、チームの雰囲気。それらを適切に管理して導くのが俺の仕事だ。今日の敗北は俺の責任だ。すまなかったな」

 

「そんな、俺達のせいで……」

 

 主将がそういって反論しようとするけど力なくその声は萎んでいった。そうだよね、影山のせいって言いたいよね。

 

 

「まぁ、監督って立場ですからね。誰に責任があるかって言ったら監督ですよね」

 

「国見お前な……」

 

 俺の言葉に金田一が呆れたように見てくる。でも事実だ。

 

「次に悪いのはもちろん影山でしょ。それが分かってるからこいつも気持ち悪いくらい大人しくしてる訳だし」

 

 そう言って影山を見ると罰が悪そうに眼を反らした。ほらな、バレー以外は鈍いにも程がある影山でも流石に理解してる。

 

「最後にお前ら。気に入らないんだとしてもトス無視は試合放棄と同義だろ。そこに関してはお前らにも非がある」

 

「「「「……はい」」」」

 

 

「国見、俺が悪かったから。あまり言い過ぎないでやってくれ……」

 

 完全に萎れてしまったスタメン連中を庇う監督。いや駄目でしょ。主に今日引退する俺達三年がやらかした事でこの先の一、二年の雰囲気まで悪いままにするのは論外だ。

 

「いや言います。なにより自分たちで無視した癖にそれをグズグズ引き摺ってるのが論外でしょ。やろうとして出来なかった事を後悔するのはいいけどそうじゃない」

 

「「「「「……分かってます」」」」」

 

 

 スタメン連中に加えて監督も何故か萎れて来てしまった。

 

 

「もちろんお前もだ影山。お前の思う最高のセッターってのは仲間にトスを無視されるようなセッティングする奴のこと言うのか?」

 

「……んな訳ねぇだろ」

 

 

 顔を歪めながら絞り出す影山。分かってたとしても現状の自分はそんなセッターになってしまっているからな。

 

「でもこれがお前の現状だ。今のままじゃ二流どころか三流にもなれないよ」

 

 

 

 

 〇●〇

 

 

 国見の言葉に死屍累々と化したスタメンに監督。それらを見た一、二年の思考は一色に染まっていた。

 

 

(国見先輩怖ぇ……)

 

 

 

 〇●〇

 

 

 

「そんで俺もだ。練習でもサボるし試合でも手抜いたりする。言われても直さないしこれからも直す気がない怠惰な人間だ」

 

「自分で言うのかよ……」

 

 萎れた金田一の力ないツッコミ。一通り言った所で手を叩いた。

 

「ってな訳で。グズグズで問題だらけの俺達三年みたいにならないように。これを反面教師にしてお前ら一、二年はこれからも頑張ってくれ」

 

 

「「「「「は、はい」」」」」

 

 

 戸惑いを残しながらもそう返事した後輩たちに頷く。

 

 

 

「そういうのは監督の俺の仕事なんだが……。つくづく思うが本当に中学生らしくないな国見は」

 

 苦笑する監督は頭を掻きながら零すけど、状況が状況だ。監督の立場で影山を思いきり責めるのも難しいだろう。スタメン連中を責めるのもな。

 

「分かってて何もしなかったのは俺も同じですから。自分らのケツは自分らで拭きますよ」

 

「そういう所なんだがな……。ま、大体国見が言った通りで間違いはない。もちろん俺にも至らない所があった。直していくからみんなでまた全国に来るぞ」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

 そして監督は俺達三年に向き直る。

 

「三年もだ。全員が高校になってもバレーを続けるとは限らない。……俺の至らなさで色々と窮屈な思いをさせてしまってすまなかったな。でも今日までの努力の日々は何かに活かせる筈だ。お前らもそう思ってこれからの道を歩んでくれると嬉しい」

 

 

「「「「はい!」」」」

 

「「……はい」」

 

 

 

 

「なんかもう会わないみたいな言い方だな」

 

「試合引退するだけでもう会わない訳じゃないのにな」

 

「普通卒業する時とかだよなこういうの」

 

 

「そういうの言う雰囲気だったから言ったんだよ!卒業の時はまた別途で言います!」

 

 

 そんな三年と監督のやりとりで後輩たちが柔らかい笑いの雰囲気に包まれる。もう引き摺ることはなさそうだな。一名を除いて。

 

 

「とりあえず、バスの時間までは余裕がある。各自試合見学なり好きに行動していいぞ。時間には気をつけろよ」

 

 

 返事をしてみんな思い思いに散っていくのを見送る。

 

 

「国見。試合見てこうぜ」

 

「おう」

 

 

 金田一に誘われて観客席に向かう。影山は一人で考え込むようにベンチに座っていた。ま、あいつがこれで折れてバレーやめるような事はないだろうし、そこまで気にする必要はないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〇●〇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺達三年が正式に引退した後、三年で練習に来る奴はほぼいなくなった。影山もあんな事があって練習に来るような真似はしないらしい。本人は気にしなさそうだけど流石に空気を読んでの事だろう。そんな訳で今でも練習に参加するのは主に俺と金田一の二人だった。引退したにも関わらずコートを使わせて貰ってる関係上、前以上に後輩の指導させられてるけど仕方ない。

 

 

 

「国見先輩!俺のトス打ってもらっていいですか!」

 

「いや他の奴に打ってもらえよ。俺はもう試合に出ないんだから……」

 

 影山がいなくなって正セッターになった森山は人一倍俺に絡んでくる。正直面倒ではあるけど慕ってくれての行動だから邪険にも扱えない。

 

「あいつらには後で打ってもらいます!セッティングのアドバイス貰おうと思って」

 

「お、じゃあ俺ブロック跳ぶわ。二年も呼んでくる!」

 

 一緒に練習してた金田一も乗り気になって二年を集めに行った。ジャンフロ練習したかったのに……いいけど。

 

 

「国見先輩!俺、あの試合で先輩に頼ってばっかでしたけど……いつか先輩に頼って貰えるようなセッターになって見せます!」

 

 

 突然胸に手を当て、そう宣言する森山。

 

「いや、そう言ってくれるのはいいけど。同じ高校行くとは限らないだろ」

 

「大丈夫です。俺、絶対青城行きます!」

 

 もう進路決めてるのは早くない?いや俺が口挟む事じゃないけど。

 

「あ、そう。じゃあ頼むわ」

 

「任せてください!うぉおおおおおおおお!」

 

 宣言するだけして叫びながらコートへ向かう森山。あんま周りにいないタイプだから新鮮といえば新鮮なんだよな。あんな感じでも結構頭脳派タイプだし。

 

 

 

「国見!はよしろー!」

 

 

「はいはい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 引退した俺達が遅くまで練習の邪魔をするのも悪いから早めに上がるようにしてる。後輩達はそんな事ないと言うけど俺達の意識の問題だ。

 

 そんな訳で、金田一とも別れた帰り道。ふと通りかかった公園からする音が気になって覗いて見ると……。

 

 

 

「……」

 

 

 

 影山が一人黙々と壁当てしている所を目撃してしまった。練習来なくてもなんかやってるとは思ってたけどこんな所でやってたのかよ……。

 

 

「はぁ……。おい」

 

「……国見」

 

 俺の声に振り返った影山が少し驚いた顔をして壁当てを止めた。

 

「流石のお前もあんな事あってまで練習に顔出す勇気はなかったか」

 

「勇気とかじゃねぇだろ。俺でも空気くらい読む……」

 

 気まずそうに顔を背ける影山。空気を?読む?へぇ……。

 

「もっと前から空気読めてたらあんな事にはならなかったのにな」

 

「うっるせぇな!……分かってる」

 

 ほんとにしおらしくなっちゃってまぁ……でも、これも成長と言えば成長か。少し笑いそうになるも堪えて、荷物を置いて構える。

 

「ほら、来いよ」

 

「なんだよ」

 

「対人パスに決まってるでしょ。付き合ってやるよ」

 

 

 ようやく理解した影山がボールをオーバーで投げてくる。オーバーからアンダーへ。しばらくしてからスパイク。

 

 

 

「お前。高校どうすんの?まさか青城じゃないよな?だとしたらある意味尊敬するけど」

 

「流石にそれは……。やっぱ白鳥沢だろ」

 

 流石の影山も北一の連中が多く流れる青城を選ぶような真似はしない事に安心を覚えるも、さらにありえない選択肢を挙げてきたので思わずボールを止めた。

 

「お前、白鳥沢から推薦来てたっけ?」

 

「……来てない」

 

 だよな。推薦来てたのは俺だもんな。

 

「あのさ、もう少し現実見ようよ。お前が白鳥沢に一般で入れる訳ないじゃん」

 

「わっかんねぇだろ!それに行くなら強いとこだ!」

 

「分かるだろアホか。伊達工はどうなんだ」

 

 現実的に行けそうな範囲の強豪を挙げてみる。しかし影山の表情は微妙そうだ。

 

「流石にちょっと遠いだろ……。通学に時間取られて練習時間減るのは嫌だ」

 

 この我儘ボーイめ。後は正直強豪らしい強豪ないんだよなぁ。……あぁ、そういや。

 

「烏野は?そこまで遠くもないでしょ」

 

「烏野か……前は結構強かったらしいけど今は微妙だろ。烏養監督も今はいないらしいし」

 

「その烏養監督が戻ってくるかもって噂があるんだよ。あくまで噂だけど」

 

「まじか!」

 

 又聞きの噂でしかない俺の言葉に食い付く影山。いや、流石にこの話鵜呑みにしてこいつが烏野行って監督復帰しませんでしたは良心がちょっと……。

 

「まじで噂レベルだぞ。あんま本気にすんなよ?」

 

「でも烏野を全国に連れていった名将だろ」

 

 考え込む影山。まぁ現実的に考えて比較的近場で環境に期待できそうなとこってまじで烏養監督が復帰した烏野が一番ではあるか。

 

「烏野行くのはいいけどこれで烏養監督が復帰しなくても俺に文句言うなよ。俺だって噂で聞いただけなんだから」

 

「分かってる……お前は、やっぱ青城か」

 

「まぁそうだな、家から一番近いし」

 

「白鳥沢の推薦は蹴るのかよ……」

 

 見るからに勿体ないと言いたげな目で見てくる影山。俺が知った事じゃないけど。それに……。

 

「白鳥沢の鷲匠監督めっちゃ厳しそうじゃん。絶対俺と合わないと思うんだよね」

 

「そんな理由かよ!」

 

 十分過ぎる理由だろうが。鷲匠監督って昔ながらの根性!っていう感じそうだし絶対合わない。その点青城は選手主体のスタイルらしいからある程度好きにやれる筈だ。

 

「どの道、お前とは敵になるって事だ」

 

「上等だ。お前を倒して、全国に行って、今度こそ最後まで俺がコートに立つ!」

 

 最後まで、ね。そうだよな、勝ち負け以前にコートに立っていられなかったもんな。こいつ想像以上にトス無視トラウマになってるっぽいな。

 

 暗くなってきたので影山にボールを投げ返して荷物を手に取る。

 

 

「もう終わりかよ」

 

「周り見える?もう暗くなってきてんだから帰るのは当然だろ」

 

 

 どうやらまだ練習していきそうな雰囲気の影山にドン引きしながらも立ち去ろうして足を止める。一応、か。

 

「おい、携帯出せよ」

 

「は?なんで」

 

「メアドだよメアド。連絡なんてする事ないだろうけど一応な」

 

 俺の言葉に納得したのか携帯を出す。赤外線でメアドを交換した後に影山が画面を眺めながら言った。

 

「白鳥沢受かったらメールしてやるよ」

 

「あぁ……じゃあ一生メール来ないじゃん。交換した意味なかったな」

 

「なんか他の用事でメールするかもしんねぇんだから一生はねぇだろ!」

 

 お前その言い方、白鳥沢受かんないの自分でも分かってる言い方じゃん。後合否分かるのは卒業前なんだから普通に対面でいいだろ。学校で話す事なんてまぁないけどさ。

 

「じゃあな。あんま遅くまでやってんなよ」

 

「おう……じゃあな」

 

 

 

 

 

 

 

 




試合描写は高校までお預け。めんどくさくなんてないです、ええ。

次回から高校編になりますね。青城にテコ入れする為に設定を弄る所が出てくると思いますけどご容赦下さい。

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