強化転生国見ちゃん   作:バリバリボール

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あけましておめでとうございます。

狂犬ちゃんが離脱しない為にはどうすればいいか考えた結果こうなりました。


3

 

 

 

 北川第一よりも広い体育館。50人を超える部員達の前に俺達一年、約20名が立ち並ぶ。

 

「初めまして、監督の入畑伸照だ。よろしく。普段から大して口を出す事がないので、ここでも長々と語る事はしない。君達が入る事で青葉城西に新しい風が吹く事を期待しているよ」

 

 簡潔にそれだけ述べて下がる監督。次にコーチっぽい人が出て来た。

 

「コーチの溝口貞幸だ。監督と同じで、俺も選手の方針に口を出す事はない。けど!練習に関してはドンドン口出してくからな!よろしく頼む!」

 

 ……俺と相性が悪そうな気配がする。気を付けリストに入れておこう。そして、見覚えのある二人が出て来た。

 

「主将の及川でーす。よろしくねー」

 

「副主将の岩泉だ」

 

 青城でもあの二人が主将副主将になってんのな。ま、違和感なくていいけど。

 

「他の上級生は自己紹介してるとキリないから省略するぞ!各々練習でコミュニケーションを取ってくれ……じゃあ一年は簡潔に自己紹介を頼む。名前と出身校とポジションくらいのもんでいい。身長や最高到達点は最後に測った時から時間経ってるだろうから言わなくていいぞ。後で測定するからな」

 

 コーチの言葉で端から自己紹介が始まる。何人かは見覚えのある奴もいるけど。順番的に俺が最後か。

 

 

 次々と自己紹介を済ませていく一年。

 

 

「北川第一中学出身、金田一勇太朗です!ポジションはMBです!」

 

 

「でけー」

「もうウチで一番デカいんじゃねーの」

 

 

 金田一の自己紹介で上級生が少しざわつく。まぁこいつ190cmに王手かけてるからな。でかいってのはそれだけ大きな武器だ。俺の番か。

 

 

「北川第一中学出身、国見英です。ポジションは……WSやってました」

 

 ぶっちゃけどのポジションもやれるけど、一番やってたし最後の大会もWSだったからいいだろう。

 

 

「北一の国見だ」

「誰?」

「お前知らねぇの?去年の県大会の最優秀選手に選ばれてた奴だよ。確かベストサーバーも取った事あったろ」

「マジ?やべー……一軍確定じゃん」

 

 

「はいはい静かにねぇー。一年はこっちで測定あるから集まって。お前らはあっちでいつも通りの練習だよ。ほーら行った行った」

 

 及川さんの言葉に一部を除いた部員達が返事をして散らばって行く。

 

「じゃーマネちゃん達お願いねー」

 

「はーい」

 

「はい」

 

 どうやらもう及川さん主体で進めて行くらしい。本当に選手主体でやってるのか……。

 

 

「なぁ国見。あのマネージャーの人超美人じゃね?三年かな?」

 

 小声で話しかけてきた金田一の言葉で身長測定の準備をしているマネージャーを見る。美人と言うからにはあの茶髪のロングの人だな。

 

「もう一人のマネの人に敬語で話してるっぽいから、多分二年じゃない?」

 

 まぁ、美人マネージャーがいるのは流石強豪と言ったところか。準備が出来た所で一人ずつ測定していく。終わった奴から最高到達点を測って行くらしい。

 

 

「189.2だった。お前どうだった?」

 

「183.8。その調子なら一年の内に190行くんじゃない?」

 

「行きてー」

 

 最高到達点の測定待ちの列に加わる。話しながら見てる限り特別バネのありそうな奴はいないな。手にチョークを付けた金田一が跳んだ。ちょっと高くなってるか?

 

「何cmでした!?」

 

「……332cmだね」

 

 

「たけー」

「流石189cmだな」

 

 

 やっぱ伸びてるな。嬉しそうにする金田一を見ながら手にチョークを付ける。俺も中学での引退後、下半身トレに結構力入れて取り組んでたんだ。多少は伸びてる筈。

 

 助走。手を振って、踏み込んでから跳んだ。良い感じに跳べた気がする。周囲がざわついたのが分かった。測定しているマネージャーを見る。

 

 

「さ、342cm……です」

 

 お、金田一に10cm勝ってる。身長じゃ負けてるからな、ジャンプ力で差をつけて行け。

 

「340越えかよ……」

「及川、最高到達点No1の座から陥落だな」

「俺はセッターだから悔しくなんてないもんね!」

「……分かっちゃいたが、良く跳ぶな」

 

 

 

「くっそ!10cmも負けてんのかよ。もっかい測らせてもらえねーかな」

 

「何回やっても大して変わらないでしょ」

 

 

「はーい。じゃあ次は一通り何が出来るか見ていくからねー」

 

「まずはレシーブからだ!二グループに分けて見ていくからな」

 

 悔しがる金田一を余所に、次は技術を見ていくらしい。

 

「ほら、行くぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 〇●〇

 

 

 

 

 

 

 

 青葉城西スタメンメンバーがコートの新入部員を眺めながら話す。

 

「やっぱ抜けてるのは金田一と国見だな」

 

「北一は全国行ってるからな」

 

 WS花巻とMB松川が話す。そんな二人とは対照に真剣な眼差しで黙ってコートを見る及川と岩泉。

 

「僕、中学三年の頃北川第一とやって負けてるんですよね。まだ二年だった国見君はもうスタメンで……その時から上手いって印象でしたけど、今はもうそんなレベルじゃないですね」

 

 苦笑しながら言うLi渡の言葉に及川が口を開いた。

 

「国見ちゃんがバレー始めたのは中学からだからね。俺達がいた時はまだ粗削りな部分があった」

 

「逆に言えばバレー歴約一年で強豪北川第一のスタメンもぎ取ってるって事だろ。普通にやべーよ」

 

 及川の言葉に花巻が少し引いた様子を見せる。

 

「素人だが才能の塊って感じではあったな。粗削りっつってもその時点で同学年じゃ一、二を争う実力だったしな」

 

 スタメン陣が話している所に髪を染めた部員が体育館に入って来た。

 

「こら京谷ぃ!今日新入部員来るから絶対遅刻すんなって言ったろうが!」

 

 コーチの溝口が声を荒げるが京谷は僅かに頭を下げてそのままスタメン陣の下へ歩く。

 

「やっほー狂犬ちゃん。今日はかりゃあげ君なんだね」

 

「……」

 

「京谷、挨拶」

 

「……ウス」

 

 岩泉に言われ、小さく挨拶をした京谷は渡の隣に陣取りかりゃあげ君を頬張る。

 

「新入部員はどうだよ」

 

「一人342cm跳ぶ奴がいるんだよ。マネージャーが記録取ってるから見せてもらいなよ」

 

 食べ終わったゴミをバッグに押し込みマネージャーの下へ向かう京谷。

 

「い、石塚」

 

「何」

 

 目を逸らしながら呼び掛けた京谷に表情を変えず反応する二年マネージャー石塚秋音。

 

「その、記録見せてくれ」

 

「これ」

 

 京谷にバインダーを渡して、新入生の方に視線を戻す石塚。もう話すこともないと京谷の方を向く気配はない。心なしか背中が丸まった京谷が記録を眺めるのを見ているスタメンメンバーは笑っている。

 

「脈アル?」

 

「ないだろ」

 

「チワワモード京谷……」

 

「お前らちゃんと新入部員見ろ」

 

 京谷を憐れむ三人に岩泉が注意していると大きな破裂音をような音が響いた。四人がコートに視線を戻すと国見がサーブを打っている所だった。サーブレシーブに入っている一年生はとてもではないが上げられない。

 

「……えっぐ」

 

 引き攣った顔の花巻が呟くように言った。意識を引き戻された三人はその後も何球かサーブを打つ国見を見る。

 

「威力は及川の方が流石に上か?」

 

「でもコントロールは及川さんにも負けてないですよ」

 

「……今度はジャンフロ打ち出したぞ」

 

 レシーブに入っている一年に声掛けをしてジャンフロを打ち出した国見。

 

「ちょっとお前らのとこの後輩出来すぎじゃね?」

 

「ま、全国に行ってる訳だしね。頼もしくていいんじゃなーい?」

 

「金田一もやっぱブロックは堂に入ってるな」

 

「他に目ぼしいのはいないかな」

 

 一通り見終わった所で及川が監督の下へ向かう。

 

 

 

 

 

「まずはお前の意見を聞こうか。及川」

 

「やっぱり金田一と国見ちゃんの二人ですかねー。190近い身長は高さに欠けるウチでは貴重ですし……国見ちゃんは言うまでもないですよねー。何より二人共全国経験アリ」

 

 及川の言葉に頷く監督。

 

「金田一はレシーブの安定感には欠けるがブロックは流石だな。長身から来る打点の高さでスパイクも磨けば武器になるだろう」

 

「国見は流石の一言ですね。どれを取ってもレベルが高い、特にサーブは凄まじい。ドライブサーブだけでも一年の打つ代物じゃないが、そこにジャンフロも加わるとなると……どちらで来るのか分からない厄介さまで含めると及川、お前のサーブよりも上かもな」

 

「やだなー溝口クン。国見ちゃんが凄いのは認めるけど……セッティングとサーブで負けるつもりはないですよ」

 

 他は正直、分が悪いカモ……と内心で呟く及川だったが口には出さない。

 

「ってな訳で。一軍合流はその二人で問題ないと思います」

 

「うむ、こちらもそれで異論ないよ。……お前は早く足を治すこと。見学するのはいいが、くれぐれも練習に参加はするなよ?」

 

「分かってますってー」

 

 

 

 

 

 〇●〇

 

 

 

 

 

「はーい、じゃあ国見ちゃんと金田一はこっちに残ってくれるかな。他の一年は向こうの練習に合流してねー」

 

 一通り済んだ所で及川さんがそう切り出した。他の一年は俺と金田一をチラチラと見ながら返事をして向こうに駆けていく。それを見送った及川さんの周囲に先程まで見学していた先輩達や球出し等の補助をしてくれていた先輩達が集まる。

 

 

「それじゃ、もう察してるとは思うけど一応ね?二人共、青葉城西バレー部一軍にようこそ。……一軍って言ってもただ単にスタメンと控え、それ以外を一軍、二軍って分けてるだけなんだけどねー」

 

「とりあえず自己紹介してくぞ。俺と及川は必要ねぇだろうから……花巻、お前からでいいな」

 

 岩泉さんの言葉に赤みがかった茶髪の人が前に出る。

 

「うぃ~っす。三年の花巻貴大だ。WSやってる。親しみを込めてマッキー先輩と呼んでくれていいぞ」

 

 ちゃらいと言うかゆるいと言うか、そんな雰囲気を感じる人だ。次に背の高い老け顔の人が前に出てくる。

 

「俺は松川一静、三年MBだ。俺の事はまっつんでいい。よろしく」

 

 背は金田一の方が高いけど雰囲気はこの人の方が遥かに大人びてるな。見た目よりは茶目っ気ありそうだけど。

 

「2年、渡親治。Liです。よろしくね」

 

 比較的背の低い坊主の先輩だ。強豪の青城で二年でLi任されてるのはかなり凄い事だろう。

 

「……」

 

 自己紹介の流れが止まり、沈黙が訪れる。後、さっきから金髪のいかにもヤンキーって感じの人が睨みつけてくるんだけど……。

 

「おい京谷、流れからしてお前の番だろうが!自己紹介!」

 

「……京谷賢太郎」

 

 岩泉さんに促されたヤンキー先輩はそれだけ言ってそっぽを向いた。見た目通りの感じと言うか。刺々しい雰囲気の人だ。明らかに浮いてる感じがする。岩泉さんは溜息を吐くけど及川さんは笑っている。

 

「あー、じゃあ俺。矢巾秀でーす。二年で控えS。よろしくー」

 

 分かりやすくチャラそうな雰囲気。及川さんの控えってプレッシャー凄いだろうな。その後も控えの人達の紹介を聞いていく。

 

「三年の早池峰泉美です。マネージャーやってまーす。よろしくねー」

 

「二年の石塚秋音。よろしく」

 

 最後にマネージャーの二人で全員分の紹介が終わった。

 

「うし。自己紹介も終わった所で練習入るぞ!……ちなみにこのバカは捻挫で練習禁止中だ」

 

「ちょっと!怪我人なんだから労わってよね!」

 

 岩泉さんに尻を蹴られた及川さんが吠えた。って言うか及川さん捻挫やってるのか……。ちょっとオーバーワーク癖あったもんな、治ってないのか?他のメンバーが練習に入って行ってるので俺達も続こうとしたが及川さんがこっちにやって来た。

 

 

「やっほー、国見ちゃん。ひっさしぶりだねー。金田一も」

 

「お久し振りです」

 

「はい!久し振りです及川さん!」

 

 しっかり頭を下げて挨拶する金田一。こういう後輩が可愛がられるんだろうなぁ。俺は無理です。

 

「俺達は去年の全国予選見に行ってるからそこまで久し振りって感じでもないけどな」

 

 そこへ岩泉さんがやって来た。

 

「岩泉さんも久し振りです!」

 

「どうも」

 

「おう」

 

 言葉短く返す岩泉さん。相変わらず漢感溢れる人だ。

 

「いやー、話したかったんだよねー。俺と岩ちゃんが行けなかった全国に簡単に行ってくれちゃった優秀な後輩達とさっ」

 

 俺を指差して言い放つ及川さん。何か含みがある気がするけど気にしない事にする。

 

「いえ、別に簡単ではなかったです」

 

「嫉妬か?ダセェぞ」

 

「違いますぅ」

 

 雑談もそこそこに練習に入る。北一も強豪だった事もあり練習についていけないなんて事はなかった。及川さんは監督達と話しながら見学している。

 

 

 

 休憩中、既に先輩達とそれなりに距離を詰めている金田一に混じって休憩する。こういう所は勝てないな。

 

「あのマネージャーの人、石塚さんでしたっけ?めっちゃ美人っすよね」

 

「おっ、やっぱりそう思うよなぁ~。でもなぁ、美人なのは美人だけど性格がなぁ」

 

 金田一の言葉に矢巾さんが惜しそうに同意する。

 

「そんな悪いんすか?クールな人だとは思いますけど」

 

「悪いとは言わないけどとにかくキツイんだよ」

 

「矢巾は分かってないなぁ。そこがいいんじゃん……なぁ京谷?」

 

 話を聞いていた渡さんが京谷さんに振るけど視線を逸らした……けど小さく頷いてる。ふーん、寄らば噛みつくみたいな雰囲気してるけどその辺の感性は普通なのね。

 

 

 

 そんな高校生らしい会話を聞いている俺の横にやってきた及川さんが小声で話しかけて来た。

 

「国見ちゃんに聞きたい事があったんだよね。中学最後の全国、二回戦の事」

 

 

 ……話したかったって言ってたけどやっぱその事か。変に回りくどい事言わないで正直に影山の事が気になるって言えばいいのに。

 

「聞きたいのは試合の話じゃなくて影山の事でしょう。そんな事聞いてくるって事は噂で知ってますよね?」

 

「……噂って言うか、試合の動画見たからトス無視があったのは知ってるよ。ただ、現地の人間の話も聞きたくって」

 

 そう言う及川さんの表情は何とも言えない物だった。嬉しいとかでもなく心配しているという風でもない。

 

「だったら見た以上の事は言えないですけどね。普段から抑えてた物が、負けを前にして噴出した。それだけですよ」

 

「試合自体は定期的に見に行ってたよ。飛雄のプレーが荒れてたのも知ってたけど、ああなるまでに拗らせてるとは思ってなかったけどネ」

 

 結構見に来てたのか。気づかなかったな。まぁ及川さんからしたらバレたくないか。

 

 

「金田一や、他の奴らの言い分は聞かなくても分かる。でもさ、唯一ついていけてた人間はどう思ったのかなって」

 

 気になるじゃない?と目で問いかけてくる。別に俺が何か特別な思いがあったとは思わないけどなぁ。

 

「まず一つ言う事があるとするなら別についていけてた訳ではないです。普通にやり辛かったですし」

 

 金田一もそうだけどみんな俺が影山に余裕でついて行ってたみたいな感じに思ってる節がある。まったくもってそんな事実はない。俺がどれだけ苦労してあいつに合わせてたと思ってるんだ。

 

「ただ、全部が全部あいつが悪かったとも思ってはないです。トスがクソだったのは事実ですけど、俺達があいつの熱量に応えられなかったのも事実ですから」

 

 まぁ、応える気があったかと言われればないけど。それでも一番バレーに懸けてたのは誰かと言われればそれは影山だろう。所詮部活ではある以上、影山と同じだけバレーに懸けろと言うのは酷な話だと思うけど。

 

 

「ほんと、冷静だね。……そう言えば飛雄がどこ行ったとか聞いてたりする?」

 

「烏野行ったとか言ってましたけど」

 

「へぇ、烏野……変な所とは言わないけど少し意外かな」

 

「推薦貰えなかった以上あいつの頭でいける所なんて限られてますからね」

 

「……いいこと考えちゃったカモ。じゃー国見ちゃん、話してくれてありがとね」

 

 そう言って監督の下へ歩いていく及川さん。

 

「及川さんと何話してたんだ?」

 

「別に大した事話してないよ。全国の事とか」

 

 聞いて来た金田一に誤魔化して立ち上がる。丁度休憩も終わりだ。練習の程度も掴めて来たし後は俺なりにやって行きますかね。

 

 

 

 

 

 〇●〇

 

 

 

 

 

「そういえばマネージャーが補佐してるのって一軍だけですよね」

 

 先輩に誘われた金田一のついでに一緒に帰る。

 

「あーそうだな。元々はいなかったらしいけど結構最近マネ取るようになったらしくてさ」

 

「元々二軍の人間で持ち回り制だったらしいんだけど、持ち回り制でも一軍の為に練習時間が削られるのはアレだからせめて一軍業務だけでもマネに任せようってなったらしいね」

 

 金田一の疑問に矢巾さんと渡さんが答える。

 

「及川さんが入ってからは及川さん目当てのマネ希望者で溢れ返って大変だったらしくて、監督が内申点で釣ってスカウトするスタイルなったらしくてなぁ」

 

「それで石塚入れてくれたんだから監督には感謝しなくちゃねー」

 

 内申点で釣るってアリなのか……。

 

「京谷いるだろ?あいつ前の三年と折り合い悪くてさ、多分石塚いなかったら部活フェードアウトしてたまである」

 

「僕達二年の中じゃ実力抜けてるからいなくならなくて良かったよ」

 

「俺あの人ちょっとだけ苦手なんですよね……」

 

 ああいうタイプはどう接していいか分からないもんな。俺的には関わらないに限るんだけど。

 

「誰にでも威嚇する癖あるんだよあいつ。悪い奴ではないんだけど」

 

「国見とか結構意識しちゃってるみたいでさ。大丈夫?居心地悪いとかない?」

 

 心配そうに聞いてくる渡さん。

 

「別に特には。まぁ見られてるなぁとは思いますけど」

 

「強心臓かよ」

 

「こいつ相当図太いんで大丈夫ですよ」

 

 自分は苦手とか言ってたくせに俺にはソレなのどうかと思うよ金田一君。まぁやっぱ部内の話を聞くには元からいる人間に聞くに限るな。その後もアレコレと情報を先輩に聞きながら帰った。主に聞き出してたのは金田一だけど。

 

 

 

 

 

 〇●〇

 

 

 

 

 

「国見聞いたかよ」

 

「何を」

 

「烏野と練習試合するって話だよ」

 

 ……多分及川さんの入れ知恵だな。そこまで影山が気になるか、気になるだろうな。

 

「へぇ、いいんじゃない?影山が新しい環境でどうなってるか見るって事でしょ」

 

「……どうせ変わってなんかねぇよ」

 

「一応って事でしょ。実力的には注意して然るべき選手ではあるし」

 

 実際に試合を決めた監督はそう判断したんだろう。提案しただろう及川さんは完全に私情だけだったろうけど。

 

「絶対負けられねぇ……うし!サーブ練だ!」

 

 気合を入れてジャンフロを練習しだす金田一。中学の引退後、突然俺にサーブを練習するならジャンフロとドライブサーブのどっちがいいか聞いて来た事があった。あいつなりに試行錯誤した結果サーブを習得する考えに至ったんだろう。

 

 中学時代の俺は及川さんって言う上質な手本がいたからドライブサーブをまず習得した。ただドライブサーブは十分な武器に出来るだけの威力やコントロールを両立出来るまでに相当量の時間と練習を必要とする。正直、武器に出来るまでの練習時間や相手の崩しやすさを考慮すればジャンフロ一択だろう。パワーがそこまである訳じゃないけど高さはある金田一ならジャンフロの方が合っているのもある。打点が高い方がアウトになり辛いし、上から切り込むように打たれるジャンフロは確実に厄介な筈だ。

 

 まだ安定しているとは言い辛いけど物に出来れば、及川さんや岩泉さん、京谷さんのドライブサーブとの緩急で大きな武器になる筈だ。というかウチはジャンフロの使い手がいなさすぎる。費用対効果を考えれば練習し得だと思うのに。まぁ及川さんの化け物ドライブサーブ見たらそっちやりたくなるのも分かるけど。

 

 俺もジャンフロ練習しよ。何がいいって疲れないのがいい。大してスタミナ使わなくても相手を崩せるなんて最高だろう。

 

「国見がサーブ練入るぞー。レシーブ入れ入れー」

 

「あっ、僕も入って良いですか?」

 

「及川いないからいつもよりサーブ物足りないんだよな」

 

 直近の悩みはこうして俺がサーブ練に入ろうとするとみんながサーブレシーブに入ってくる事くらいだ。

 

「練習するのジャンフロなんですけど」

 

「猶更バッチコイだべや!ウチはジャンフロ使いあんまいねーから丁度いい!」

 

 岩泉さんが構えて気合を入れる。それに続いてスタメン陣がそれぞれの位置に着く。それでいいならいいけど。

 

「っしゃあ!二人共バンバンジャンフロ打ち込んで来い!」

 

「はい!行きます!」

 

「はい」

 

 金田一に続いて俺もサーブを打ち込んだ。みんなが嬉々としてサーブレシーブに入ってくるからサーブ練中心でも文句言われないのはいいな。

 

 

 

 

 

 

 

 〇●〇

 

 

 

 

 

 

 

 練習試合当日、体育館に現れた烏野高校のメンバーを見る。高さは総じてあまりないな、と思ったら一人金田一と同程度のタッパがいた。眼鏡の金髪の奴。

 

「松川さんあの眼鏡のデカい奴知ってます?」

 

「初めて見るな。烏野あんなデカい奴いたか?」

 

 松川さんが知らないって事は一年か。中学時代突出した結果を残してれば覚えてる筈だし、そこまで警戒する必要はないと思うけど……。お、影山だ。頻りに周囲を気にする様子を見せている。分かりやすい奴だな

 

 

「及川さんなら通院してから来るらしいぞ」

 

「おう、国見。及川さんが通院って怪我か?」

 

「軽い捻挫だと。今日が最後って言ってたから今回の練習試合から復帰って話だったけど……どっかほっつき歩いてるんじゃない?」

 

 自分で提案しておいて影山の前に顔を出すのが嫌なのか、無駄に動揺を誘う為にわざと遅れてるのか……俺の予想ではどっちもだと思うけど。

 

「そうか……。お前は今日の試合出るんだよな」

 

「まぁな」

 

「じゃあいい。……負けねぇからな」

 

「はいはい。練習試合なのがちょっと締まらないけどな」

 

 

 

 

 

 

 

 〇●〇

 

 

 

 

 

 

 

「おう日向。戻って来たかって、顔色最悪じゃねぇか」

 

 準備をしている烏野陣営の下へ緊張からトイレに行っていた日向が合流する。

 

「なぁ。影山と話してるのって……」

 

「ん?あぁ、北一の国見だろう」

 

「国見って、あのスか?」

 

 菅原と澤村の話に田中が反応する。

 

「あ、あの?あいつ、有名なんですか?」

 

 どこかで見たような……と顔色が悪いながらも考える日向。

 

「一応お前らの代の宮城県No1エースって呼ばれてた奴だぞ……」

 

「な、No1エース……!」

 

「ここ最近の宮城県のエースの話題はウシワカに持っていかれがちだけど、年代No1エースの実力は本物だろうな」

 

 対抗心を剥き出しにして影山と話す国見を見つめる日向。

 

「チビちゃんにもっと分かりやすく言うと王様の前の相棒って事。今回の試合で役に立たなくてやっぱり前の相棒の方が良かったな~って思われたら捨てられるかもねー」

 

「う゛っ……ソ、ソレハ」

 

「おい月島!余計な事言うな!ほら見ろ日向の顔色がまた……っ」

 

 

 

 

 

 

 

 〇●〇

 

 

 

 

 

 

 

 話を終えて戻って行く影山を見る。そのまま烏野陣営を見れば見覚えのあるオレンジ頭が目に入った。あいつ、中学の時の……。

 

「……へぇ」

 

 思わず声が零れた。いつかの県予選で目を惹いた奴だ。技術は稚拙もいいとこだったけど、運動センスとバレーに対する熱量は目を見張る物があった。そうか、あいつも烏野だったのか。見た所影山が向こうのチームで浮いているという感じでもないし、上手い事やってんのかね。

 

「国見!アップ入れ!ちゃんと身体動かしとけよー!」

 

 溝口コーチがそう声を張り上げる。うーん目敏い。しばらくアップに入った後監督の前に集まる。

 

 

「事前に言っていた通り今回は、金田一と国見を入れての運用を試す。及川が間に合えば入れたが案の定遅れているからセッターは矢巾で行く。ただし、国見を対角に入れてのツーセッター気味での運用だ。矢巾はセッターではあるが攻撃や防御にも積極的に参加して行け」

 

「はい!」

 

「国見も自己判断でセットアップや攻撃など臨機応変に対応して欲しい。お前ならば問題ないだろう」

 

「はい」

 

「残りの岩泉、松川、花巻、渡は概ねいつも通りでいい。一年のフォローは頼む。金田一もブロックは松川と連携を取りながら飛ぶように」

 

「はい!」

 

「……ッチ」

 

 試合に出られない京谷さんが不機嫌そうに舌打ちをした。俺を睨むのは止めてね。睨むなら監督にどうぞ。

 

 話も終わりポジションに着く。あのチビはMBか……。まともにブロック出来る技量があるようには見えないけど……いや、消去法か。ローテや他メンバーとの兼ね合いでMBに入れるしかなかった感じだな多分。叩き落すと言うよりかはひたすら触ってくるブロックだと思った方がいいな。あのジャンプ力ならタイミングが噛み合えばシャットも出来るだろうけどそんな技量ないだろうし。

 

 って言うか話に聞いてたリベロがいないな。体調不良か?何留かしてる成人済みスパイカーとか言う不憫過ぎる言われようのエースの姿も見えない。まさかほんとに留年してて卒業したのか?

 

 

 

 ま、こっちも正セッターいないからお互い様か。……影山が新しいチームでどんな風にやれてるか、見せてもらうか。

 

 

 

 

 

 




という訳で原作には存在しない女マネを生やしました。

ハイキュー世界のヤンキー枠は美人マネージャーに弱いという統計がですね、えぇ。この女マネちゃん達が深く物語に関わるかどうかは今後の作者の気分次第です。とはいえ一番の仕事は既に果たしているので……。タグは追加しておきます。

追記:ちなみに気づいた人もいるかもしれませんが、国見ちゃんの身長が生活習慣が改善されたことで原作よりも1cmUPしてます。

新年明けての自分から読者の皆様へ言える事は、感想、評価ありがとうございます。という事とインフルには気を付けよう(1敗)という事くらいです。ではまた
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シュートセンス→◎▼瞬発力、ジャンプ力、パワー、スタミナetc...→ゴリラ▼おつむ→人並み▼原作知識→なんかバスケの漫画だったような▼身長→並以下▼足りないものは身長だけとして、彼はどこまで羽ばたけるのか(但し性格は考慮しないものとする)▼※予防線と言う名の言い訳▼・作者はバスケ俄か▼・あひるの空は遥か昔に読破したため記憶がおぼろげ▼・勢いだけで書いたため…


総合評価:2365/評価:8.93/連載:20話/更新日時:2026年05月07日(木) 23:52 小説情報

英雄にしかなれない男、転スラに行く(作者:ちゃがまくら)(原作:転生したらスライムだった件)

とあるRe:ゼロから始まる異世界生活好きが転スラに転生する話▼*ラインハルトと同じ加護、体質を持っているだけの一般人です(予定)▼ここの設定違うよ、とかあったら遠慮せずコメントにどうぞ


総合評価:2650/評価:7.19/連載:46話/更新日時:2026年05月02日(土) 19:30 小説情報


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