こよみさんは勝たせてくれない:意地悪だけど甘やかしてくる幼馴染ちゃん   作:maricaみかん

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24話 相手の考えた恥ずかしいセリフを当てるゲーム

 学校が終わってから、相変わらず僕の家でふたり。いつものように、勝負する予定だ。

 負けたら恥ずかしいことを言う勝負。いったい、どんなことを言わされてしまうというのか。僕はつばを飲んだ。

 いや、気が早すぎる。戦う前から負けを考えるな、僕。勝てさえすれば、言わなくても済む。それどころか、こよみに言わせることもできるんだ。

 

 よし、やるぞ。僕は姿勢を正して、こよみに向き合った。目の前には、良いことを思いついたという笑顔が見えていた。

 

「負けた方が、相手の考えた恥ずかしいセリフを言うってことでどうかな?」

 

 なるほど。以前とはまた違った形で、恥ずかしいことを言うと。今回は、別に本心でもないことを言わされるだけ。なら、僕が受けるダメージは、最小限に抑えられるはずだ。

 それに、うまくやれば、こよみに大ダメージを与えられる。いつものお返しをするチャンスだ。

 

「分かったよ。それで、こよみさんは決めているの?」

「うん。まずは、お互いに紙に書いていこうよ。それで、どうかな?」

 

 こよみは自信満々の笑みを浮かべている。どんな勝負だろうと、僕が負けると思っているのだろう。今日こそ、手痛い反撃を食らわせてやるんだ。僕も笑顔で、頷き返した。

 

 そして、こよみの取り出したメモ用紙に、恥ずかしい内容を書いていく。

 僕の考えた内容は、これだ。『魔法少女ラブリーこよみ、ただいま見参! みんなをメロメロにしちゃうぞ?』

 ふふふ、僕の才能が恐ろしい。これを言ったこよみは、どれほど恥ずかしくなることか。きっと、迷子センターに名前を呼ばれたくらいになるはずだ。覚悟しろ、こよみ。

 

 こよみもペンを走らせて、書き終えた。ニヤけながら頷いていて、よほど自信がある様子。

 その感情を隠さないまま、僕の方を見てきた。

 

「じゃあ、お互いの書いた恥ずかしい内容を当てるゲームね。順番に質問をして、先に当てた方の勝ちだよ」

 

 なるほど、今回の勝負はそれか。受けて立とう。魔法少女なんて、そうそう思いつくものじゃない。僕の頭が読めるというのなら、読んでみることだね。

 

「じゃあ、僕からね。親の前で言うのは厳しい?」

「はい」

 

 こよみはためらいなく返事をする。まあ、前提条件を確かめただけだ。恥ずかしいセリフという時点で、親の前で言いたくないだろう。そんなの、屈辱どころじゃない。

 とはいえ、こよみのことだ。予想の裏を突いてくる可能性もあった。それを抑えたのは、悪くないはず。

 

 僕の質問を受けて、次はこよみが質問をしてくる。

 

「私からは、そうだね。親が言っている姿を、見たくない?」

「はい」

 

 こよみも、僕と同じような戦略で質問をしてきたようだ。逆説的に、僕の戦略が正しいことが証明されたようなもの。この調子なら、いけるはず。魔法少女なんてものを当てられるのなら、どんなエスパーだって話だ。

 

 よし、この調子でどんどん進めていくぞ!

 

「言っていたら、誰でも恥ずかしいって思いますか?」

「はい」

「ふふっ、はると君自身が言っていても、恥ずかしいかな?」

「はい」

「似たようなセリフを、実際に聞いたことがありますか?」

「いいえ、かな」

 

 こよみは、明らかに余裕の笑みを浮かべている。対する僕は、ちょっとあちこち見回してしまう。何か、少しでもヒントがないかと。

 まるで、手がかりがつかめない。具体的な回答が、全然思いつかないんだ。

 だというのに、こよみは僕のことを見透かしたかのように、笑みを深めた。ブラフなんかじゃない。それが確信できて、背筋に寒気が走った。

 

「それって、子供が言うようなセリフ?」

 

 その質問に、胸が跳ねる。かなり、近いところまでたどり着かれている。もしかしたら、もう王手がかかっているのかもしれない。そんな気がしてしまった。

 なのに、僕は有効な質問ができない。ただ、ジリジリと追い詰められていくだけ。

 

「は、はい……」

「主人公は、男の子?」

「いいえ……」

「朝にやっているのが定番かな?」

「はい……」

 

 ここまで質問をされて、僕はうなだれないことで必死だった。もはや、ほとんどバレていると思っていいだろう。そうじゃなきゃ、出てこない質問だからだ。

 3択くらいが浮かんでいて、後はそれを合わせていくだけ。まだ、もう少し粘らせてくれ。そんな祈りは、通じなかった。こよみは、僕に目を合わせて、ゆっくりと口を開いていく。その数瞬が、処刑を待つ時間のようだった。

 

「ふふっ、正解は魔法少女のセリフでどうかな?」

「はい……」

 

 まさか、全文当てろなんて言えるはずもない。僕だって、間違いなく当てられないのだから。

 僕の、負けだ。完敗と言っていい。今だって、有力な候補は何も思いついていない。手も足も出なかった。それだけだ。

 

 こよみはニコニコとしながら、僕にメモを差し出してくる。どう見ても、これから僕が言う恥ずかしいことを待ちわびている様子。

 僕はただ、両手を出して受け取っていくことしかできなかった。

 

「じゃあ、これを言ってね。ね、はると君」

 

 渡されたメモに目を通した瞬間。僕は二度見した。夢であってほしいと思った。頬をつねった。痛かった。

 こ、こんなの思いつくわけがない。最初から、勝ち目なんてなかったんだ……。

 自分が震えていることを隠すことすらできないまま、僕は指定のセリフを言っていく。

 

「ぼ、僕は……。こよみさんの胸をこっそりチラチラ見ていたことがあります……」

 

 な、なんて悪魔的なことを言わせるんだ。あまりにも、胸が苦しい。こんなの、何かの条約で禁止するべきだろ!

 

「ふふっ、そんなことしてたんだー? ……でも、はると君なら良いよ?」

 

 心底楽しそうに、頬を赤らめている。なんてやつだ。僕を全力でおもちゃにしてやがる。

 なんと言えば僕が恥ずかしくなるか、完璧に理解されている。これが、釈迦の手の上というやつか。

 

「こ、こよみさんが言わせただけでしょ! 僕が言い出したわけじゃないから!」

「じゃあ、はると君は一度も見たことないって言い切れる?」

 

 こよみはニヤニヤとしてこちらを見ている。どう考えても、僕の答えを確信している顔だ。

 いや、僕は節度を守って、しっかりと見ないようにしているけど。だからといって、一度もないとは言い切れない。それは、男の本能というものだろう。

 だからこそ、否定できないんだ。こよみのやつ、的確に弱い所を突いてくる。

 

「そ、それは……。その……」

「やっぱり、当たってるんだよねー? ……はると君の、えっち」

 

 両手で胸を隠しながら、こよみはジト目で僕を見てくる。くそっ、これ以上何を言っても、傷口を広げるだけ。

 そう分かっていても、僕は声を抑えられなかった。

 

「も、もう! こよみさん!」

「ふふっ、かーわいいー! 色っぽい服とか、着てみた方が良いかな?」

 

 小首を傾げて、問いかけてくる。ちょっと、想像してしまう。でも、こよみはどこで着るのだろうか。外でだと、注目の的になったりしてしまうのだろうか。

 想像して、胸がきゅっとなるような感覚があった。嫌だなと、心から理解できた。

 

「それは……外では……その……」

「私が見せたいのは、もちろんはると君だけだよ。それで、どうかな?」

 

 はいと言えば、本当に着てくるのかもしれない。そんな気がして、ちょっとだけ言いたくなる。

 でも、僕には耐えられる気がしなかった。いろんな意味で、大変なことになってしまう。想像しただけで、ドキドキしてしまうのだから。

 

「ま、まだ早いです!」

「そっか。なら、もう少し段階を踏んでみよっか。じゃあ次は、勝ったら私がはると君とぎゅっと腕を組む勝負だよ?」

 

 こよみはニンマリとしながら言ってくる。

 そ、それはつまり。ドキドキの展開というやつなのだろうか。

 最初とはぜんぜん違う意味で、僕はつばを飲んでしまった。

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