ドライバー ~ 運転手 異世界で道を創る ~ 作:アンクルソー
「とりあえず、一旦落ち着こう」
自分に言い聞かせた。
モモも居ないし、今の状況・・・・。
周りを確認するように、運転席・助手席のウィンドウをフルに下げた。
風が気持ちよく、草木がなびく音しか聞こえない。
時折、犬の遠吠えのようなものもしてくる。
けど、この声は明らかにモモじゃない。
タバコが吸いたくなった。ムーンルーフを開けた。
年末の丸の内みたいな星空だった。
タバコが美味い。
ーーーーーーーーーーかなり落ち着いた。
時計を見たが、針は止まっている。
現在時刻‥‥17時30分。
これはなんか怖かった。1時間も時間が戻ってるし。
一服終わって缶コーヒーを口にすると急に腹が減ってきた。
そう思いながらも、とにかく今からどうすべきか、状況整理を頭の中で行った。
‥‥整理できない。
よし!!
まずは明るくなるのを待ってから行動しよう。
辺りがわからないまま、車を走らせるのは自殺行為な気がするよな。
外灯を全て落とし、室内灯をつけて荷室に目をやる。
やっぱりモモは居ない。
「モモ~~。モモ~~。」
小声で叫んでみる。
運転席の窓から呼んだところで、やはり応答はない。
あまり騒ぐと、動物とか寄ってきそうで直ぐやめた。
なんかもう、車から外出るのが怖い。
未知の場所だし・・・・・で、そのまま俺は車中でバタバタと動き回った。
―――――――――――思い出した。腹が減ったのだ。
エアマット、寝袋、毛布、枕その他をセットして、テーブル開いてからケトルで湯を沸かす。
手っ取り早く定番のカップラーメンを作った。
カップラーメンで腹を満たした後、ケトルの残り湯でコーヒーを淹れた。
フロントガラス越しに、遠くのほうがぼやーっと光ったりする。
民家でもあるのだろうか、民家なら明かりはついたままの気がするのだが・・・
とりあえず歯磨いて寝ちまおう。
朝明るくなれば状況がわかる。
腕時計の針はいつの間にか動いていた。
時刻は夜9:00になっていた。
・・・・・・・・
夢を見た。例の若い女性の夢だ。
会った時と違って、なんか・・・恰好が仰々しい。
転生マンガに出てくる女神様のよう・・・・な???
ん?・・・・・マジ?転生なの?
こんなデカい車持ったまま?
なんて考えてると、その女性が・・・
クルマの運転席側に寄ってきて、手招きする。
ああ・・・ウィンドウ下げろ!って事?
するといきなり・・・・。
『あなたのこの世界での役割は特にありません。・・・・・が、しいて云うなら』
・・・話始めた。
『ほんの少し、この世界の人の力になってほしい・・・ですかね?ニコ』
「え?ちからになって・・・・とは?」
『あなたの知識と能力で文明を進化させ、経済を活性化させること。あと‥‥ちょっとした諸悪から人々を救う事ですかね。』
「あの~・・・自分はごくごく普通のトラック運転手なのですけど?」
「異世界転生者を生むべく、人を跳ねたことも無いですし!!」
「なんで自分なのですかね?」
『あはは!ウケる(笑)』
「ウケる?(汗)」
「あと、質問です!!いいですか?」
「モモはどうしたのですか?元の世界で生きているんですよね?」
「モモは無理だったとか・・・」
『モモちゃんは、魂が貴方より大きくて、肉体ごと持ってくることが出来なかったんです。』
『あなたは魂がそれほど・・・・ですので。』
え?そりゃ、俺は平凡ですけど!
それほど・・・ですけどね・・・・。
「モモは普通の柴犬じゃないのですか?」
『あー、それは~・・・・。モモちゃんの前世は、神獣ですから!』
え?シンジュウ?
『こちらに来る直前までは一緒に居られましたよね?』
「え?モモのことですか?」
『はい、ですが、転生実行の際に、モモちゃんを肉体ごとは連れては来れませんでした。残念ですけど・・・・・。』
そうかぁ・・・モモ置いてきちゃったのか・・・・
「モモ生きてはいるのですよね?」
『ええ・・・まぁ、生きていると言えば生きている・・・・死んではいないです』
―――――――――何それ。
『まぁ。あの方‥‥モモちゃんは、この世界とは別の世界の神獣で、あのままこちらに来ると、いろいろと問題があったので‥‥。』
『前世では、別の世界のある国に、銅像もあるような方で。時の勇者と邪神を滅し、世界を魔物から守り、天命を全うした後に、地球に創造神様が転生させた方なのですよ。』
「創造神?」
『はい、あちらに!』
・・・・・・・(昨日の横断歩道のばあさんかよ!)
『失礼ですよ!ソーさん!あの方は創造神ネイエス様、ちなみにわたくしはこの世界リーバイエスの女神リースです』
リーバ〇スて、ジーンズかよ?
『リーバイエスです‥‥リースでいいですよ!』
「すいません‥‥リース様‥‥。」
『話を戻します。あなたはこの世界で唯一保持するスキル‥‥”ドライブ”で世界の活性化をお願いします。』
「ドライブ?・・・・ですか?確かに運転手ですけど・・・・・・・でしたけど。」
「それは具体的にどんなスキルですか?」
『それはまだ言えません。成長とともに様々なことができるようになります。ただ、重要なことだけ教えます。』
『あなたも魔法は使えるようになります。そのスキルの成長とともに・・・』
「魔法!!!(やった!)」
『しかし、主にはモノづくりの魔法です。攻撃魔法で無双することはあきらめてください。』
「あらら。」
『また、あなたのその乗り物は、あなた自身の成長とともに質量変化し、用途によって形を変えることが可能になります。』
『ただし、空を飛んだりはできませんけど。』
「飛行機には変化しないということか・・・・まあよし!高所恐怖症だし。」
『また、その乗り物は燃料を必要としないよう細工してあります。大気中の魔素または魔石をもとに動きます。物理と魔法攻撃による耐性も十分に備えました』
『それと、トラブルを避けるため、魔動技師という職能をこの世界に追加してあります。あなたはこの世界唯一の魔動技師ですね。』
「ありがたい・・・のか?手厚い保護をありがとうございます。あと・・・・」
「自分は地球に帰れますかね?」
『‥‥』
『正直言って良いですか?』
「いえ‥‥結構です!!」
「あっと‥‥モモちゃんですが‥‥。」
そう!モモ!モモの今後が気になります!!
『そのクルマに魂だけ乗り移ってます!!』
え?マジで?
「モモが俺のRVに?」
「モモ‥‥。」
「念じても、何も返答無いですよ?」
『あー・・・そうでした。ソーさんレベル1でした(笑)』
恥ずかしい事やらせんな!
『犬種は本来魂が小さいのですが、モモちゃんの魂が大きすぎて、魂だけ置いてくることになりそうでしたので‥‥。』
『しかし魂だけでももってくれば、この世界でもやはり神獣。よって、無機物個体に乗せるの方が貴方の為になると思ったのです。』
いえいえ!結果的にモモも連れてきてくれたなら‥‥うれしいです!
『では他に質問はありますか?』
「いえ、特には・・・またリース様に会えますかね?」
『はい、会えますよ、私からは今回同様、夢に出ます。あなたからは教会で祈ることが、私との接触機会となりますね』
「わかりました、ありがとうございます」
『では、よい旅を!!』
『あ・・・・』
「え?・・・」
『身体・・・若返らせときました・・・・』
「ええっ?」
『それとパートナーも付けましたから!❤』
「--------ええええ?」
その日の夢・・・・夢見というには、息苦しく体中に痛みが走る悪夢のような感覚があった。
目が覚めてからは、打って変わって頭がすっきりし、体も軽かった。
若返るって言ってたけど、どの程度なんだろうか。
せめて30前くらいまでは若返って欲しいけど。
この世界の人間って寿命どのくらいなんだろうか・・・まぁ大丈夫かな。
あたりは薄明るくなっていた。日の出のようだ、外に出てみる。
≪異世界2日目 朝6:30≫
ガチャ・・・ドアは開く・・・自動ドアだったのには驚いたけど。
ガサガサ・・・草を踏みつけて周りを歩いた。
だけど、何かスースーするなぁ‥‥。
下を向くと、ちょっと出始めた腹が引っ込んでいる。
ズボンもウエストがブカブカだ。
中腰でサイドミラーに顔を出す。
「な!・・・・おい!高校生だ!数少ない若いころの写真がこんな顔だった。」
「こりゃもう別人だな‥‥。」
周りをよく見渡すと・・・辺りはキャンプするには絶好の場所だ。
全方向障害物なし、大草原だ、所どころ岩肌や土の地面が露出しているが火事にしたらま
ずいから、焚火はやめておこう。
ヒヤリとした気持ちいい空気を大きく吸って、車に戻った。
コーヒーを飲もうと思う。
ポタ電につなげたケトルに水を入れ、インスタントドリップをカップにセットした。
窓とルーフを全開にし、風を感じながらコーヒーを一すすり・・・煙草に火を着けた。
「ゴホッゴホッ!!!まーずーい!昨日は旨かったのに。18歳の身体には、そりゃタバコが不味く感じるわな。」
この世界には魔法があるらしいって事だし。スキルもあるならステータスが面もあるかな?
年甲斐もなくワクワクしながら念じてみる。
「ステータスオープン!!」
ソー シシバ 18歳
レベル 1
職業 魔動技師
称号 ****
HP 30
MP 30
魔法適性 火・風・土・水・闇・光
スキル 生活魔法 *** ***
レアスキル ドライブ、*** ***
ex: 魔道車(神獣憑依)
おい、HP・MPの30って高いのか?
俺すぐ死なねーか?これ。
けど、18歳かぁ・・・やば・・・18歳でタバコ吸ってら。
そういえばもう時効だけど、タバコ初めて吸ったのも、そのくらいだったか?(笑)
しかし、これからどうすりゃいいかなぁ‥‥。
GPSナビは使えんよな?
‥‥‥‥!!!!
使えとるがな!
拡大!拡大!拡大!おお!湖発見!街もあるやん!
現在地は?
「スクワド平原?タキ沼ってところが近いな・・・これ沼なんだ。」
「スクワド平原かぁ(知らんわい)・・・・しかも滝沼(タキ沼)って、嫁の旧姓やん。一番近い街は・・・スクル・・・・スクルの街か。」
これもドライブスキルの恩恵?
異世界にGPSって使える環境なんかぁ?
「えーっと‥‥現在地からスクルまで、地図上で目的地セット・・・・!!!」
「600km!!!」「おい!千葉~青森間だぞ!遠!燃料もつかなぁ・・・・」
「あっ‥‥女神なんか言ってたなぁ。」
‥‥ガソリンじゃない燃料で走るとか。
FUELゲージは?‥‥満タン!!
ガソリン入れてないけど、まあ、普段もこのPHEV車には、ガソリンあんまり入れないけどな!
「よし!朝飯食ったら出発するか!目指せスクル!行こうぜモモ!!」
「--------------返事はないけど、レッツゴーだ!」
こうして、キャンプで残ったロールパンをかじりながら、道なき道を走って行った。
ところどころ岩がゴロついていたが避けながら走った。
草の上は比較的なだらかで、スピードも出せて走れることが出来た。
(雑草・・・踏みつけてごめんなさい)