勇者パーティーの荷物持ちが追放されたがるお話です。(タイトルまんま)
主人公はオカン系です。

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※不意に思いついた逆追放もの(?)です。
※※続くか分かりません。
※※※なーんにも先を見据えていません。


追放されたい荷物持ち

「ハイド、危ない!」

 

 魔物との交戦中、一匹のナイトゴーン(空飛ぶ夜鬼)がパーティーメンバーの攻撃を掻い潜り、後方で待機していた僕に襲い掛かる。

 

「■■■■!」

「う、うわぁ!?」

 

 ナイトゴーンの鋭利な爪が振るわれる。それを僕は間一髪の所で飛んで避けたが、勢い余って地面に転がってしまう。

 

「■■■■」

「ひっ」

 

 転んだ隙を突いて追撃してくるナイトゴーン。碌な戦闘技能を持たない僕では、どうやっても抗えない。

 

「───【プロテクション(防護の奇跡)】!」

 

 もう駄目だと思った時、光の壁がナイトゴーンの一撃を僕から守ってくれた。

 

「危ない所でしたね、ハイドさん」

「リ、リーリアさん」

 

 助けてくれたのはパーティーメンバーの一人、僧侶リーリアだ。彼女のお陰で命拾いしたが、まだナイトゴーンは健在である。……ついさっきまでは。

 

「【カオス・バスター】」

「■■■■……!?」

 

 真っ黒な極太レーザーがナイトゴーンに直撃する。たった一撃でナイトゴーンの半身は粉微塵と化し、そのまま肉体は塵となり消えていった。

 

「ん、間に合った」

「こっちも終わったぜー」

「ありがとうフォス、リーリア、危うくハイドがやられる所だった」

「いえいえ、パーティー全体をサポートするのが私の役割なので」

「はは、頼もしい限りだよ……ハイド、立てそうか?」

「う、うん」

 

 差し伸べられる手を握り、僕は立ち上がる。

 彼の名前はジーク。このパーティーのリーダーであり、魔王討伐の要と言われる勇者の証を持つ存在だ。

 

「……後で少し話したい事があるんだ」

「……うん」

 

 彼らは魔王討伐を目的とする勇者パーティー。そこで僕は荷物持ちとして雇われた身だが……そのお役目から外される時も近いだろう。

 

▼▼▼

 

 その日の夜、まだ目的地の町には遠いという事で野営する事になり、夕食の準備を終えた僕はジークに呼ばれてテントの中に入った。

 

「……」

「夕食前にすまないね、ハイド」

 

 テントの中には、ジーク以外の他のパーティーメンバーも集まっていた。

 

「この匂いはカレーか! カレーだよな!?」

 

 竜族の戦士、アグニスが尻尾をブンブン振りながら詰め寄ってくる。手狭なテント内では、彼女の大きな尻尾はかなり幅を取る。

 

「っ、邪魔」

 

 エルフ族の魔法使い、フォスフィシア・エメラルド、縮めてフォス。案の定、読書中だった彼女はアグニスを鬱陶しげに睨み付けた。

 

「なんだよフォス、随分機嫌が(わり)ぃじゃんか」

「お前のせい」

「はあん!?」

「まあまあフォスさん、アグニスさんも、少し落ち着きましょうね」

 

 火花を散らす二人を宥めたのは、僧侶のリーリア・シンフォニー。種族は僕やジークと同じ人間族だ。

 

……勇者ジーク、戦士アグニス、魔法使いフォス、僧侶リーリア、みんな僕とは比べようもない正真正銘の実力者だ。

 

「ははは……みんなに集まって貰ったのは他でもない」

「僕の処遇について、だよね?」

「……ああ」

 

 ジークが真剣な面持ちで頷く。それに僕の心はチクリと痛む。

 

「最近、魔物のレベルが高くなってきた。今日の出来事で確信したが、今のままじゃハイドを守りながら戦う事は難しい」

 

───ああ、分かっていた事だ。

 

 僕のジョブはサポーター。戦闘以外で冒険者達の活動をサポートする裏方専門のジョブ。ただし冒険者は魔物との戦闘や過酷な環境に赴く事が多く、戦う能のないサポーターは荷物持ちと揶揄される事もしばしば。

 実際その評価は正しい。高レベルな依頼を受ける冒険者であればあるほど、サポーターは文字通りお荷物になる。だからこうなる事も、言ってしまえば必然だった。

 

「うん、承知の上だよ。次の町に着いたら、僕はパーティーから抜けるよ」

「「「「え?」」」」

「うん?」

 

 先んじて伝えると、全員から一斉に「何言ってんだコイツ」と言わんばかりの目を向けられた。

 

「いや、ハイドの事を守れるように改めて陣形を考え直そうっていう話をしようと思ったんだが」

「え?」

「というかどうした急に、そんな冗談言うキャラじゃなかっただろ」

「いやいやいや、これ以上お荷物は要らないから僕をパーティーから追放するって話じゃなかったの?」

「え?」

「え?」

 

……あ、あれ? もしかして勘違い?

 

「ったくなんだよもぉ! 驚かせんなよな!!」

「ぶべらっ!?」

 

 唐突にアグニスが僕の背中を叩く。小突いたつもりなんでしょうが、下手したら骨が折れる威力だったんですけど?

 

「ん、びっくりした。ハイドの癖に生意気」

「い、いひゃいでふ、ふぉふはん」

 

 そこへ畳みかけるようにフォスが僕の頬を突っぱねる。アグニスからの一撃に比べたら赤子のような優しさだった。痛いけど。

 

「まあまあお二人ともそのぐらいで。……ですがハイドさん!」

「は、はい!」

「思い違いとはいえ、もうそんな事言わないで下さい。……あなたは間違いなく、私たちに必要なお人なんですから」

「リーリアさん……」

「リーリアの言う通りだ。ハイド、確かに君は元々雇われの身だったけど、今じゃこのパーティーのかけがえのない仲間の一人なんだ」

「ジークさん……」

 

 みんなの言葉に、僕はハッとさせられる。

 そうだ。確かにサポーターは不遇な扱いをされがちだけど、例外だってある。その例外こそ彼らなんだ。

 

「ありがとう。相変わらず戦いじゃ役に立たないだろうけど、これからもよろしくお願いします」(みんな、サポーターに僕を選んでくれてありがとう。僕、これからも精一杯頑張るよ)

 

 その日、僕は勇者パーティーの一員である事を強く自覚し、みんなに相応しい存在になれるよう努力しようと硬く誓ったのだ。

 

 

 

……そう、今はまだ。

 

▼▼▼

 

 ある日、僕は宿屋でジークに相談をした。

 

「ジーク、ちょっと聞きたいんだけど」

「どうしたハイド?」

「僕、いつになったらパーティー追放されるの?」

「……」

 

 あれから一年、僕たち勇者パーティーはあの頃から大きくレベルが上がり、僕は変わらず最弱のまま。目指している魔王の居る城にも段々と近づいてきて、その影響で戦いは激しくなる一方。それらが意味する事はつまり、

 

「今日戦ったラヴァゴーレム(燃え滾る岩巨人)、強かったよね」

「ああ、せっかく新調した防具の半分を溶かされたよ」

「うん、僕は防具どころか全身溶かされかけたけどね」

「……」

 

 僕の身の危険が激増するという事だ。

 

「もう一度聞くけど、いつになったら僕って追放されるの」

「ははは、その冗談も久しぶりに聞いたな」

「いや冗談じゃなくって」

「懐かしいな、あれからもう一年経つのか。俺たちもだいぶ成長したよな」

「君たちはね? 僕はもうお荷物どころかおんぶにだっこだよ。実際強い魔物から逃げる時は僕、アグニスにおぶられてるし」

「ははは」

「ははは、いや笑い事じゃないから」

 

「……」

「……それで」

「頼む! 俺たちのパーティーに戻ってきてくれ!」

「(気が)早いよ」

 

 パーティーの荷物持ちに深々と頭を下げるジーク、これが勇者の姿か。

 

「もうこのパーティーにはお前が居ないと駄目なんだ!」

「そんな事ないでしょ」

「ドロップ品の回収やアイテムの整理整頓、ダンジョンのマッピングにパーティーの資金繰り、朝昼晩の食事の用意だって!」

「そ、それぐらい僕じゃなくても出来る事だし」

「他にも朝フォスを起こしたり、酒場で酔い潰れたアグニスの回収なんかも!」

「それは自力で頑張って」

 

 僕はオカンじゃないんだぞ。

 

「えーっと、ほ、ほら、僕が居なくなったら男はジークだけになるし、夢のハーレムパーティーが出来上がるじゃんか」

「馬鹿を言うな! ハーレムなんて男に器量が無ければただ肩身の狭い思いをするだけなんだぞ!?」

「お、おう……で、でも、ジークって勇者だし」

「勇者に求められるのは魔物と戦う力だ。モテるかどうかは関係ない」

「……ごめん」

 

 この説得方法は駄目だ。ただジークを傷付けるだけになっちゃう。

 

「頼むハイド! ウチに戻ってきてくれ!」

「だから(気が)早いって」

「───聞き捨てなりません!」

 

 今にも土下座しそうな勢いのジークにどうしたものかと悩んでいると、リーリアが背後の扉からバァーン!と登場した。

 

「ハイドさん、パーティーを抜けるというのは本当ですか?」

「リーリア……分かって欲しい、僕と君たちとじゃレベルが違いすぎるんだ。直近で一カ月、その間だけでも僕は少なくとも三回死に掛けている。このままじゃ命がいくつあっても足りないよ」

「それなら私がハイドさんをお守りします。今よりももっと、もっともっと、ハイドさんをお守り出来るよう努力します!」

「っ、そこまでする必要のある足手纏いなんて要らないでしょ!」

「いいえ必要です! ハイドさんが居なければ、これまでハイドさんがして下さった面倒くさい作業を全部私gゲフンゲフン」

「リーリアさん?」

「ゴホッゴホッ」

「えっ、嘘っ、いつもそんな事思ってたの?」

「ゥ゛エ゛ッ゛フ゛ン゛!! ン゛ゥ゛ケ゛ッ゛フ゛ン゛!!」

 

 そんな咳き込んでも誤魔化せないよ?

 

「……ですから、ハイドさんは私たちのパーティーに無くてはならない存在なのです」

「うん、流さないよ?」

「~っ! だってだって! 本当に面倒くさいんだもん!」

「えぇ……」

 

 落ち着き払った清楚な僧侶だと思っていた子が、今目の前で地団駄を踏みながら駄々をこねていた。

 

「やだやだ! もう早起きしてご飯作りたくない! 酔っ払い(アグニス)のお世話なんてしたくなーいー!」

「あのー、ジークさん? これはいったい」

「前に話さなかったか? リーリアはストレスが爆発すると駄々っ子みたいになるって」

「いやこれ、駄々っ子みたいというか、駄々っ子そのものというか」

 

 確かに聞いた覚えはあるけど、まさかこんな感じだとは……。

 

「そういえばリーリアがこのモードに入るのも久しぶりだな。そうか、今考えるとハイドがリーリアの仕事(ストレス源)を引き継いでくれたお陰か」

「ええそうよ! あの頃は自分しかやれる人が居なかったから出来るだけ頑張ってきたけど、ハイドさん(身代わり)が居る今、またあの頃に戻るなんて考えられない! 私もう頑張れない!」

「えぇ……」

 

 僕が居なくてもしっかり者のリーリアがなんとかしてくれるだろうと思っていたけど……コレ、無理だな?

 

(いやでも、このままだといつか僕のせいで取り返しのつかない事が起きるかも知れないんだ)

 

 僕がパーティーから抜けたいのは、なにも我が身可愛さだけが理由じゃない。

 足手纏い()が居るせいで、皆が僕を守るせいで、パーティーが壊滅する。それだけはあってはならない。

 

(だからどうにかして、このパーティーから追放されてみせる!)

 

 これは、荷物持ちの僕が勇者パーティーから追放されるまでの物語。

 

「ヤダヤダヤダヤダ!!」

「落ち着けってリーリア! ほらハイドも、馬鹿な事言ってないで宥めるの手伝ってくれ」

「あ、はい」

 

……追放される気配は、未だ見えず。


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