直哉のお姉ちゃんになっちゃった…。   作:ザボン漬け

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直哉との初対面

七直が術式を発現したことで、母・京子の待遇も良くなった。

が、長年の負担が祟ったのか、もう子供をこさえる体力は残っていなかった。

逆にその方が幸せだったようにも思える。

そのくらい禪院家は、京子の血しか見ていなかった。

土御門家相伝の術式が発現したことから、京子の実家ではどうにかして七直を取り返そうと奮闘していた。だが、当主の直毘人は契約に基づき、これを突っぱねた。

本人曰く、

 

 

「呪術的縛りを設けて生まれた子だ。これを破れば、最悪術式が失われてしまうかもしれんぞ」

 

 

と、脅しをかけた。

いまや落ちぶれた土御門家では、禪院家には敵わないことを如実に体現していた。

 

 

 

月日は流れ一年が経った。

七直が6歳になった頃、父・直毘人から話があると広間に呼ばれ、足を運んだ。そこへ入ると、直毘人と一人の男の子が先に来て座っていた。

年齢は七直と同じか、一つ下といったところか。

 

 

「ただいま参りました、お父様。」

 

 

直毘人が手招きし、座るように促し話を切り出した。

 

 

「よくきた、七直。紹介しよう。こいつは儂の息子で、お前の弟の直哉だ。」

 

 

七直は眼を見開き驚いた。

弟がいるなんて思ってもみなかったのだ。

母を娶ったのも気まぐれで、最後の愛人関係だったと思っていたため、自分が最後の子供だとばかりだと思い込んでいた。

 

 

直毘人は七直を座らせ、続けて直哉に眼をやった。

 

 

「そして、直哉。こいつがお前の姉の七直だ。

土御門家相伝の術式を禪院で開花させ、将来は優秀な術師になるだろう。お前も禪院の男として恥じぬよう成長しろ。」

 

 

直哉は、紹介された七直をじっと横目で見つめていた。そこには好奇心ではなく、禪院家の男尊女卑の念がさも当たり前かのように存在していた。

 

 

(何なん、急に。そんな言われても、はいそうですかって納得できるかいな。)

 

 

直哉は冷ややかな目で七直を見つめた。

七直は嫌な感覚とともに身が締まり思考する。

 

(この子も既に、禪院の悪いところが出てしまっている。お父様の子供だと、術式も恐らく強力なものになるかも。それもお父様と同じだったらなおさら、つけあがってしまう…)

 

 

「どうした七直。弟の存在がそんなにも驚きだったか。」

 

 

直毘人は、言葉に詰まっていた七直をそう指摘する。

 

 

「あ、はい。てっきり私が最後だと思っていたので。」

 

「ガハハハっ!そうかしこまるな、お前も儂の娘だ。女だが、少々大きく出ても良いだろうに!禪院を引っ張って行けるよう精進しろよ!」

 

「はい、そうします。」

 

 

そして、七直は直哉に向かって笑顔を浮かべ言う。

 

 

「改めて、初めまして、直哉。紹介を貰った姉の七直よ。この家に顔向けできるよう、一緒に頑張りましょう。」

 

 

そういって手を差し伸べたが、直哉は無視し、そっぽを向いた。

 

 

「…別に、僕はあんたとなんか仲良くならんでもええ。関わらんといてや。」

 

「半分は血の繋がった姉弟なのに悲しいわ。もっと仲良くなりましょう?」

 

「うっさいわ!あんたもどうせ出来損ないの兄らと同じになるに決まっとる。仲良くする必要なんてあらへん!」

 

「こら直哉。そんなことを言っては良くないわ。目上の者にはそれなりの敬意を払うものよ。心ではどう思っても良いけど、それを表に出すのは未熟者のすることだわ。」

 

「急に説教たれんなや!パパの娘や、姉だからって、調子乗ってんやろ!土御門家の術式もうちの相伝に比べたら大したことあらへん!」

 

「落ち着け、直哉。七直も姉ならもう少し言葉を選ばんか。」

 

 

一触即発の空気になりつつも、直毘人が互いを宥め、この場を収めた。

 

 

「ごめんなさい、お父様。でも、このままでは…」

 

「七直。この儂に指図しても意味は無いぞ。」

 

 

直毘人は、ひと睨みで七直を黙らせた。

 

 

「禪院に非ずんば呪術師にあらず、呪術師に非ずんば人にあらず。ここでは力が全てだ。儂は余程のことが無い限り、お前たちの指図は受けんし、こちらからも指図はせん。好きにやれ。」

 

 

一息ついて直毘人はどこからか酒を取り出し、一気に仰ぎ、こう続ける。

 

 

「どうしても、儂に指図したいんだったら、この儂を下し、当主になってから言うんだな。まぁ、あと20年はそんな心配はないがな。ガハハハ!」

 

 

何も面白くない直哉は、部屋を出ていこうと立ち上がる。

 

 

「パパ、もう行ってええよな。用はすんだやろ。」

 

「待ちなさい、直哉。話はまだ…」

 

「さっき会ったばかりなんに、姉貴面すんなや。さっきパパが言うてたやろ。指図したいんなら相手を下せぇって。」

 

 

七直はこの先、直哉に正しい道を示さねばと思った。

このまま行けば、直哉は間違いなくこの家に染まる。

そうなる前に、考えを改めてもらわないと。

 

 

「…分かったわ。直哉に術式が発現したら、勝負しましょう。私が勝ったら、姉として敬いなさい。直哉が勝ったら、干渉しないわ。」

 

「言うたな。絶対やで。」

 

 

直哉は初めて笑った。

が、その笑みは人を見下した軽薄な笑みだった。

その後、直哉は部屋を出て行った。

 

 

「カカカッ!良いぞ、競い合え。これで禪院は安泰だな。」

 

「お父様、これを分かってて引き合わせたんですか?」

 

「おうともさ。だが思ったより、七直が捻くれてないのが意外だったわい。」

 

「母の教えが良かったもので。」

 

「おうおう、言いよるわ。」

 

皮肉を言ってもなんのその。気にも止めてない様子だった。

 




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