真新しい畳の匂いと、静謐すぎるほどに広い部屋。
美々子と菜々子は、用意された豪華な和菓子には目もくれず、ただお互いの指が白くなるほど強く手を握り合っていた。
村の冷たい檻から救い出され、あの優しい女性と、救い主である夏油に連れられてきた場所。
そこは天国のように綺麗だったが、同時にあまりの広さに、二人の幼い心は押し潰されそうになっていた。
「……ねぇ、美々子。あの人たち、どこ行っちゃったのかな」
「わかんない、菜々子……。でも、戻ってくるって言ってた」
二人が身を寄せ合っていた、その時だった。
廊下からドタドタと元気な足音が近づき、襖が勢いよく開け放たれた。
「あ、誰だ?客か?」
不意に現れたのは、短い髪を揺らし、好奇心に満ちた瞳を輝かせる少女だった。
その後ろから、おずおずとした様子でもう一人の少女が続く。
「ちょ、ちょっと真希!お客さんなら失礼でしょ!」
「いいだろ、減るもんじゃないし。……なんだ、お前らもしかして双子か?めっちゃ似てんじゃん」
真希と呼ばれた少女が、美々子と菜々子の顔を交互に覗き込む。
村の人間たちの、あの濁った侮蔑の視線とは違う。
ただ純粋に、自分たちと同じ存在を見つけた驚きと喜びが混じった、真っ直ぐな視線。
「……だ、誰?」
菜々子が震える声で問い返すと、真希はニカッと快活に笑い、自分の胸を叩いた。
「私は真希。こっちは妹の真依だ。お前ら、夏油とか言う奴の連れか?」
「私、真依……よろしくね」
真依は、美々子たちが持っていた不安を感じ取ったのか、少しだけ困ったように微笑んだ。以前の禪院家なら、双子は凶兆として忌み嫌われ、日の当たらない場所へ押し込められていただろう。
だが、七直や直哉がこの家を塗り替えてからは、そんな古い因習はゴミ溜めに捨てられていた。
「双子……。私たち、いっしょ?」
美々子が恐る恐る、真希の着物の袖を指差す。
「ああ。一緒だ。この家にも双子はあんまりいないから、ちょっと珍しいけどな。なぁ真依、おやつあっただろ?こいつらに分けてやろうぜ」
「もう、真希はガサツなんだから。……これ、美味しいよ。食べて?」
真依が差し出したのは、彼女たちが大切に持っていた色とりどりの金平糖だった。
菜々子は戸惑いながらも、真依の手のひらにある甘い粒を一粒、口に運んだ。
「……あまい」
「だろ?七直姉様が、疲れた時は甘いもんを食えっていつも言ってるんだ。お前らも色々大変だったんだろ。ここなら誰もいじめたりしないから、安心しろよ」
真希が美々子の頭をポンと叩く。
彼女の手のひらは、少しだけ硬く、鍛錬の跡があったが、とても温かかった。
「……私は、菜々子。こっちは美々子」
「そうか!美々子に菜々子な。よし、今日からお前らも私の舎弟だ!」
「ちょっと真希!勝手なこと決めないでよ!」
真依の抗議も虚しく、真希はすでに二人を連れ出す気満々で、その手を引こうとする。
村の檻の中で、お互いの体温だけを頼りに絶望していた少女たちの世界に、初めて同い年の友達という名の、騒がしくも明るい光が差し込んだ瞬間だった。
「ほら、庭にでかい池があるんだぜ!案内してやるよ!」
「真希、走ったら転ぶわよ……!ごめんね、二人とも。行こう?」
美々子と菜々子は顔を見合わせ、繋いでいた手の力を少しだけ緩めた。
そして、差し出された真希と真依の手を、そっと握り返す。
大広間で大人たちが甚爾という過去の亡霊と向き合っているその裏で、禪院家の新しい世代は、過去の因習など知らぬ存ぜぬとばかりに、新しい絆を結び始めていた。
「……あ、あのね。おやつ、まだある?」
菜々子の小さな声に、真希が腹の底から笑う。
「当たり前だろ!あ、そうだ!直哉のお気に入りの奴があるんだ!食わせてやるよ!」
「また勝手に食べたら怒られるよ、お兄様に」
「良いんだよ、なんだかんだ甘いんだから。お客様に出すんだから多少は許してくれるって」
「もう悪知恵ばかり働いちゃって。じゃ、ついてきて。案内してあげる」
夕暮れの禪院家に、幼い少女たちの笑い声が響く。
それは、かつての血塗られた歴史を、一番残酷で一番優しい方法で塗りつぶしていく、未来の産声だった。
「……よかったね、美々子」
「うん、菜々子……」
二人の頬に、ようやく年相応の赤みが差し始めていた。
四人は広い禪院家を歩いていく。
幼く小さい彼女らにとって禪院の屋敷は強大な迷宮にも感じるほど入り組んでおり、同時に好奇心をくすぐられずにはいられなかった。
もっとも同世代の子がいたからこその楽しさもあったかもしれない。
真希に手を引かれ、美々子と菜々子が長い廊下を渡っていた時だ。
曲がり角の先、ひときわ大きく立派な襖の奥から、数人の大人の気配と重々しい空気が漏れ聞こえてきた。
直毘人の野太い声が響き、五条の軽くも鋭い反論が飛び交い、夏油や七直の話声も聞こえてくる。
真希はそんな空気などお構いなしに、勢いよく襖の前に立った。
美々子と菜々子が止めるよりも早く、真希が声を上げる。
「直哉!直哉のお菓子、食べていいか?この子たちにさ、食わせてやりたいんだよ!」
襖の隙間から真希が顔を覗かせると、部屋の中の視線が一斉に集まった。
そこには、不機嫌そうな顔をした直哉、酒を煽る直毘人、そして夏油と七直、さらには白い髪をした五条と、見知らぬ二人の子供が座っていた。
「……お前ら、何しとんねん。今大事な話中や。あっち行っとけ」
直哉が眉間に皺を寄せ、義手の指先でシッシッと追い払う仕草をする。
だが、真希は引かなかった。
美々子と菜々子の背中をぐいと押し出し、直哉を真っ直ぐに見据える。
「この子たち、客なんだけどさ。遠くから来て腹減ってるんだ。お前の隠してるあのうまい大福、ちょっとくらい分けてくれたってバチは当たんねーだろ」
「……」
直哉は言葉に詰まった。
美々子と菜々子の、怯えながらも空腹を堪えているような潤んだ瞳。
それに加え、夏油が「おや、それはありがたい申し出だね」と、逃げ道を塞ぐような優雅な笑みを向けてくる。
「……チッ、しゃーないな。一個だけ残しておけよ。それは僕の夜食や」
「やったー!話がわかるじゃん、直哉!」
真希が勝ち誇ったように笑う。
その傍らで、五条の影に隠れていた恵が、珍しいものを見るように真希たちを見つめていた。
そんな恵の視線に気づいた真希が、今度は恵に向かって手招きをする。
「おい、お前も来いよ。そんなところでジジイたちの話聞いててもつまんねーだろ」
「……俺は別に」
恵がそっけなく断ろうとするが、隣にいた津美紀がその背中をそっと押した。
「行っておいで、恵。私は大丈夫だから」
「……あー、もう。わかったよ」
結局、恵も津美紀に促される形で立ち上がる。
五条は「お、交流会か?青春だねぇ」とニヤニヤしながら、手土産の残りを真希に放り投げた。
「ほら、これもおまけだ。みんなで仲良く食えよ」
「サンキュ、白い兄ちゃん!」
こうして、真希と真依、美々子と菜々子、そして恵と津美紀という、あまりに凸凹な子供たちの集団が出来上がった。
「よし、全員揃ったな!禪院家探検ツアー、出発だ!」
真希の号令で、子供たちが廊下へ飛び出していく。
恵は津美紀の隣を離れ、ぶつぶつと文句を言いながらも、真希の後を追った。
その後ろ姿を、七直はどこか遠い目で見守る。
「……あんな光景、一年前には想像もできなかったわね」
七直の呟きに、夏油がそっと肩を並べた。
「ああ。呪霊も呪いも、子供たちの騒がしさには敵わないようだ」
「ふん、騒がしいガキ共だ。畳が傷むわ」
直毘人はそう毒づきながらも、再び機嫌良さそうに酒を注ぐ。
一方、直哉は空になった菓子箱を見つめ、少しだけ寂しそうな、それでいて満足げな溜息を漏らした。
「……あいつら、ほんまに遠慮なしやな」
廊下からは、真希の威勢のいい声と、菜々子たちの小さな笑い声、そして恵の冷めたツッコミが、夏の終わりの風に乗っていつまでも響いていた。
禪院家の長い廊下は、今日、初めて過去を繋ぐ場所ではなく、未来が駆け抜ける道へと変わったのだ。
その喧騒を背に、広間の大人たちは、次の時代への準備を始めていた。
◆
騒がしい嵐が去った後の屋敷は、驚くほど静まり返っていた。
五条は満足げに出された茶菓子を平らげ、恵と津美紀を連れて「またねー」と軽薄に手を振って消えていった。
「ようやく去ったわね。……嵐どころじゃないわ、あいつ」
「まったくだ。せっかくの親密な時間が、彼の手にかかれば台無しだよ」
七直と夏油は、縁側に並んで座り、沈みゆく夕日が描く残光を眺めながら呆れたように笑い合った。だが、七直の瞳にはふと、深い湖のような静謐な決意が宿る。
「ねぇ傑、まだ時間あるかしら」
「?大丈夫だが、どうしたんだい?」
夏油の問いに、七直はすぐには答えなかった。
ただ、夕闇に溶けゆく空の色を目に焼き付けるように見つめた後、ゆっくりと夏油に向き直った。彼が首を傾げると、七直は真っ直ぐに彼を見つめ、静かに立ち上がった。
「会って欲しい人がいるの。ついてきて」
案内されたのは、屋敷の喧騒から最も遠い、奥まった場所にある一室だった。
そこは、かつて禪院家という呪いの檻の中にありながら、陽光と花の香りに満ちた、どこか浮世離れした清潔な病室。
白いシーツの上に、一人の女性が横たわっていた。
血色の薄いその顔立ちは、あまり七直に似ていないが、それでも何処か彼女の母親だと思わせる雰囲気があった。
「私のお母様……京子よ」
七直の言葉に、夏油は小さく息を呑んだ。
彼女の母については、過去に断片的に聞いたことがあったが、その出自については詳しく知らなかった。
「母は……土御門の人間なの。かつては名門だったけれど、没落して、最後は禪院の援助と引き換えに、金銭で売られるようにしてここへ来たわ。非術師だった彼女への扱いは、ひどいものだった。直毘人の愛人契約に近い……ただの道具としての関係。それが母の始まりだった」
七直は自嘲気味に目を伏せる。
名門の矜持を切り売りして生きながらえていた当時の母親の絶望が、静かな語り口から伝わってきた。
「けれど、私が生まれて……私の術式が土御門家相伝のそれだと分かった途端、家中の態度が露骨に変わった。母の待遇は良くなり、離れが与えられたわ。でも、それは母自身の価値が認められたわけじゃない。……ただ、私が『使える駒』だったから。だから私は、この家で戦い、勝ち続けなければならなかった。負ければ、母の安寧は一瞬で崩れ去ると分かっていたから」
七直の小さな肩にかかっていた、あまりに重すぎる責任。
夏油は、彼女がなぜあれほどまでに執拗に完璧であり続け、他者に隙を見せなかったのか、その正体を知った。
「二年前……禪院家がまだ、今よりもずっと暗かった頃。私が力をつけ始めたことを疎ましく思った叔父の扇が、真希と真依に毒入りの茶菓子を持たせた。母は、それを娘たちの代わりに口にしたの」
七直の声は震えていなかった。
だが、その言葉の節々には、二度と戻らない時間への慟哭が、鋭利な刃のように潜んでいる。
「一命は取り留めたわ。私の反転術式で、毒はすべて浄化した。……でも、彼女の魂はどこか遠いところへ行ったまま、戻ってこない」
七直は、母の冷たい手をそっと握りしめた。
一年前、甚爾への愛執を焼き尽くし、更地になったはずの彼女の心の中に、たった一つだけ残っていた執着の正体。それは、自分を愛してくれた唯一の身内に対する、祈りにも似た後悔だった。
「お母様が目覚めたとき、ここが以前と同じ地獄であってほしくなかった。……だから私は、この家を変えたかった。お母様がいつか目を開けたとき、窓の外に広がる景色が、優しくて自由なものであって欲しかったの。土御門の娘でも、禪院の道具でもない、ただの『京子』として笑える場所を」
七直は母を見つめたまま、夏油に背中を向けた。
「……傑、引いたかしら。私は結局、こんなに個人的で、身勝手な理由でここまで来たのよ。大義なんて、これっぽっちもありはしない」
夏油はしばらく沈黙を守っていたが、やがてゆっくりと手を伸ばし、母の手を包む七直のその手ごと、力強く握り込んだ。
「……引くわけがないだろう。むしろ、君をますます愛おしく思ったよ」
夏油の声は、これ以上なく穏やかで、湿っていた。
「大義だとか、世界の救済だとか、そんな空虚な言葉よりも、君のその『身勝手な理由』の方が、よっぽど尊い。君が彼女のために創り上げたこの安寧を、私は全力で守りたい。……彼女が目を開けた時、隣にいるのが私であってもいいように、ね」
七直は驚いて振り返った。
夕闇の部屋で、夏油の瞳は揺らぐことなく、彼女と、その母を、包み込むように見つめていた。
「傑……」
「君の喉は飴が必要かもしれないが、私の喉は、君のその美しいエゴに救われているんだ。……挨拶が遅れました、お母様。夏油傑です。彼女の隣にふさわしい男になることを、ここで誓います」
七直の目から、堰を切ったように涙が溢れ出した。
他人の前では決して見せられなかった、弱くて、幼い、一人の娘としての涙。
夏油は彼女を静かに抱き寄せ、その背中を優しく撫で続ける。
更地になった心に、新しい芽が息吹いていた。
それは恋という名の情熱だけでなく、誰かと共に生き、誰かを共に守るという、家族という名の新しい光。
「……ありがとう、傑」
「いいんだ。さあ、泣き止みなさい。君が泣いていると、お母様が安心して眠っていられないだろう?」
窓の外、禪院家の新しい庭には、夏の終わりの風が吹き抜けていた。いつか京子が目を開けるその日まで、この場所を、そしてこの絆を、絶対に守り抜く。
夏油の腕の中で、七直は初めて、本当の意味で自分自身を許すことができた。
「ねぇ、傑。もう一つ我儘を言って良いかしら」
何時になく、神妙でいて女性的な熱を持った言葉だった。
「いいよ。言ってごらん」
「あなたの術式…呪霊操術を私に預けてくれないかしら」
夏油は一瞬だけ、目を細めて沈黙した。
「私たちはまだ学生だから清い付き合いしかできない。けど、あなたという存在を私に刻んで欲しいの」
彼女の提案は、呪術師にとって魂の根幹を差し出すに等しい行為だ。
術式とはその人間の脳であり、生き様そのもの。
それを「刻んで欲しい」という言葉は、指輪を交わすよりも、血を分かつよりも重い意味を持っていた。
「……本気なんだね、七直」
夏油の声は低く、しかし拒絶の色はなかった。
かつての交流会での賭け事のような、無邪気な力への渇望ではない。
彼女の瞳にあるのは、共有への渇望であり、運命を共にしようとする熾火のような情熱だった。
「ええ。身勝手なのは承知しているわ。でも、私はあなたの全てを知りたいし、あなたという存在を私の魂のどこかに繋ぎ止めておきたいの」
七直は迷いなく、その白い掌を上に向けて差し出した。
術式五行想術の全情報の開示。
彼女は自身の術式の全容を、一切の秘匿なしに夏油に公開する。
これまで秘匿してきた禁忌、死者を弄ぶ泰山府君祭の応用による術式の書き写し。
その制約として、対象への深い理解と、術式を分け与える側の合意が不可欠であり、さらに写した術式は本来の出力には遠く及ばない。
「私の術式の正体は、これよ。私は、あなたの『呪霊を呑み込み、独りで耐える苦しみ』を、少しでもこの身に写し取りたい。……廉価版でも構わない。あなたが独りで歩く道の隣に、私が同じ歩幅で立っている証が欲しいの」
夏油はその言葉を受け止め、静かに笑った。
かつての彼は、この術式を強さだと思い、強者たる矜持を持って己を律してきた。
独りで飲み込むべき孤独の象徴だと定義していた。
だが、目の前の女性は、その孤独を刻んで欲しいと願っている。
「……困った人だね、君は。私のそんな呪われた部分まで、愛してくれるというのかい」
「呪いなんて呼ばないで。……それは、あなたがこれまで戦い抜いてきた勲章でしょう?」
夏油はゆっくりと右手を伸ばし、七直の差し出された手に重ねた。
「分かった。私の術式……呪霊操術を、君に預けよう。出力が落ちるというのなら、私がその分まで強く、君を支えるから」
その瞬間、部屋の空気が震えた。
七直の術式が発動し、夏油の魂に刻まれた黒い螺旋の奔流が、光の糸となって彼女の掌へと吸い込まれていく。
夏油の脳裏に、七直の清冽な呪力が流れ込み、覗かれているような感覚が。
七直の脳裏には、夏油がこれまで呑み込んできた数多の呪霊の、どろりとした苦みと冷徹な強さが流れ込んだ。
「……っ……!」
七直は一瞬、眩暈に襲われたように肩を揺らした。
脳の奥に、自分のものではない他者の領域が強制的に上書きされ、突き刺さるような感覚。
(凄まじい情報量!?これが呪霊操術の術式…少しでも、多く受け入れたい。書き写す先は、式神・晩…)
それはひどく暴力的な感触であるはずなのに、夏油の温かな呪力に包まれているせいか、不思議と心地よい熱を帯びていた。
「……できたわ。傑……あなたの術式が、私の中で脈打っている」
七直は自分の手を見つめ、それから愛おしそうに胸元に当てた。
今の彼女が呪霊を取り込める数は、十にも満たないだろう。
等級を無視した調伏も難しい。
だが、そんなことは問題ではなかった。
「これで、もうどこへ行っても一緒ね。……私たちが離れていても、私の魂はあなたの欠片を抱いている」
夏油は、顔を赤らめながらも誇らしげに語る彼女を、もう一度強く抱きしめた。
「ああ。私も、君を感じているよ。……君の術式が私に触れた感触が、まだ胸の奥で熱いんだ」
静まり返った病室で、二人の鼓動が重なる。
夕闇は完全に部屋を支配したが、二人の間に漂う呪力の残光は、いつまでも消えることはなかった。
一年前の更地。
そこに芽吹いたのは、もう誰にも引き抜くことのできない、魂の根まで絡み合わせた深い愛の形だった。
「……さて。お母様に、少しお行儀が悪いところを見せてしまったかな」
「ふふ、きっと笑っているわよ。……傑。大好きよ」
「私もだ、七直。……一生、離さないよ」
二人は微笑み合い、静かに部屋を後にした。
廊下からは、まだ遠くで真希たちの賑やかな声が聞こえてくる。
新しい禪院家。
新しい家族。
そして、互いに魂を刻み合った二人の、本当の戦いと幸福が、ここから始まろうとしていた。
ヒュ~ヒュ~
質問コーナー
Q.廉価版呪霊操術について。
A.術式の書き写し先は、太極図を象徴とした二対の式神の一つ「晩」です。
かなり廉価されました。
・取り込める呪霊の数は一桁まで
・階級差による無条件調伏の撤回
となっています。「渦」は可能ですが、多くても9体しか纏められないので会ってないようなもの。
Q.読者からの質問。直哉の壊れた義手について、真依と話したのか?
A.はい、話してます。先に連絡だけして、禪院家に戻ったところで修理、改修してもらってます。夏油戦で、無茶なやり方で壊されているため、真依はちょっとお怒りモードでしたが、七直の婚約者を試すため、と訳を話すと、じゃあ仕方がないと抑えてくれました。
どーも、ちょいちょい題名を付け忘れる、作者です。
皆さまいつも応援ありがとうございます。高評価、お気に入り登録、感想、誤字脱字報告も助かってます。励みも萌み。