守護龍はシアワセを望む   作:五行天元

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初投稿です。
好き勝手に書いていきます。


守護龍の平穏な日常

ーー万魔殿には龍が住まう

そんな噂がまことしやかに語られるようになったのはいったい何時からだったか。

 

ー曰く、暴動が起きれば雷と見紛う速度で駆けつけそれを鎮圧する。

ー曰く、百を超える不良を相手に無傷でねじ伏せる。

ー曰く、ただその場に現れるだけでテロリストすらも跪く。

ー曰く、本気で戦えばあの風紀委員長でもなければ勝負にもならない。

等々、あまりにも荒唐無稽な話も多く、意図的に流されたデマだの秘密裏に造られた兵器だのとその正体についてもこれまた様々な憶測が流れている。

 

だが、そうして語る者たちは知らないだろう。その噂の大半が真実であるということを。そしてその「龍」の正体がただ一人の生徒を指していることを。

 

その生徒の名は「竜胆カイカ」

ゲヘナの守護龍とも称される、万魔殿所属の高校一年生である。

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「どうも、お騒がせ致しました」

そう言い残すと私は、来るときには無かった手荷物と共に風紀委員会の本部を後にした。

 

私の名は竜胆カイカ、ゲヘナの生徒会組織たる万魔殿に所属している。現議長である羽沼マコトから何故か直々にスカウトされ、気付けば一年生という身でありながらそれなりの立場を任されていたりする。

 

「あっ、カイカ。おはよう!」

「お早う」

「キキキッ、おはよう」

歩いていると通りがかった同級生に挨拶されたので、こちらも挨拶を返す。ついでに現在進行形で引き摺られている手荷物ーもとい羽沼マコト議長もキメ顔で挨拶をしていた。

 

そう、私は今、いつものように風紀委員会に余計なちょっかいを掛けに行ったマコト議長を万魔殿に連れ戻している最中なのである。

 

私個人としてはマコト議長のことは嫌いではない。むしろ自分に居場所をくれた恩人とさえ思っているが、仕事を押し付けるついでに嫌みを言うためだけにわざわざ風紀委員会本部にまで赴くのはさすがに阿呆だと思う。

 

始めの頃はすれ違う人たちに驚かれていたが、今となっては普通に挨拶をされる始末である。

それでいいのか万魔殿議長、あと引き摺られながらドヤ顔してもカッコ悪いだけだからな?

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そんなこんなで万魔殿に到着した。

 

「只今、戻りました」

「おや、おかえりなさい。今日もお疲れ様ですね」

棗イロハ先輩に声をかけられる。彼女は此処に来たばかりの私の教育係を務めてくださった方だ。

サボり癖を公言し、万魔殿の一角を自身のサボり部屋に改造していたりするが、自分の仕事はきっかりこなしてくるのを見るに、面倒臭がりではありながらも根は真面目なのだろうと思っている。

以前、サボりに誘われた際「私がイロハ先輩の仕事まで終わらせてしまえば、その分先輩が楽できますよね?」と言ったら、物凄く渋い顔をしながら仕事に戻ってしまった。解せぬ。

 

「あら、カイカちゃん。いつも頼んじゃって悪いわねぇ」

「大丈夫ですよ。慣れましたので」

そう言いながら京極サツキ先輩にマコト議長を引き渡す。彼女は周囲の人に催眠術をかけることが趣味の変人だ。それが無ければ正直マコト議長より頼りになるので、そのくらいでちょうど良いのかもしれない。その催眠術もマコト議長以外にかかった人は見たことがないのだが。

以前、冗談のつもりで「痛みを感じなくなる催眠術って、ありませんかね?」と聞いたら、泣きそうな顔をしながら抱き締められた。解せぬ。

 

「カイカせんぱーい!おかえりなさい!」

「ああ、只今」

駆け寄ってきた丹花イブキの頭を撫でる。彼女は11歳でありながらゲヘナ高等部に飛び級で通う紛れもない天才であり、ここ万魔殿におけるアイドル的存在である。そして何故か名目上は同学年である筈の私に対し先輩呼びをする。どうやら私に憧れている節があり、直してくれない。

以前、本気で心配して「私のようになってはいけないよ」と言ったところ、割と本気で怒られた。年下に説教されることになるとは思わなかった。解せぬ。

 

「チアキ先輩、またイブキに写真撮らせてもらっていたんですね」

「ええ。カイカさんも見ますか?」

同じ部屋から出てきた元宮チアキ先輩と言葉を交わす。彼女は常にカメラを携行しており、取材と称してキヴォトス中を飛び回っているらしい。稀に町中で視界の端に捉えることがある程度で詳しくは知らない。万魔殿に居る際は私かイブキの写真を撮ることが多い。先輩方を差し置いて。

以前、純粋な疑問から「私なんかの取材して興味ある人いますか?」と聞いたところ、急に真顔になって無言で連写された。解せぬ。

 

「キキキ…さあ今日も我ら万魔殿の素晴らしさを広めるために勤しもうではないか」

「さっきまで引き摺られてた人がなんかほざいてら」

「ぅおい!?」

今日も万魔殿は平和だ。

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午前中に自分の仕事を終わらせた私は外回りに出掛けていた。本来こういうのは風紀委員会の仕事なので私がする必要はないのだが、まあ趣味のようなものである。

こうして自治区内を歩いていると道行く人達に声をかけられるのでこちらも挨拶を返す。自分で言うのもアレだが、私はそれなりに有名人らしい。具体的には、ゲヘナに通う生徒に対して万魔殿所属の生徒が誰かを聞くと、大体がイブキか私の名を真っ先に挙げる。いや私らまだ一年ぞ。

 

「む…」

戦闘音が聞こえる。手近の建物に飛び乗り、屋根伝いに現場に向かう。そこでは不良が風紀委員相手に大立ち回りを繰り広げていた。中心にいる不良は三名、それに対する風紀委員は十名程、しかし碌に連携が取れておらず、現在は各個撃破されないように動くことが精一杯という印象だ。イオリ先輩あたりがいれば何の問題も無く蹴散らせる程度の相手ではあるものの、どうやら付近には彼女達以外の風紀委員はいないようである。

そこまで確認して、私はこの戦闘に介入することを決めた。腰に提げた相棒に触れると、私は建物の上から不良たちの元へと勢い良く飛び降りた。

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「手伝いに来ましたよ」

「あっ、今日も来てくれたのね。早速だけど入ってもらえる?」

昼頃、先程締め上げた不良共を引き摺りながら訪れたのは給食部。ここは昼飯時になるとゲヘナで一番忙しくなる場所だ。にも拘わらずいつも人手不足なので、こうして手伝いに行くと非常に感謝される。

 

「おい、なんでアタシらがこんなことしなきゃならねーんだよ!」

「サボったらコロス」

「「「ハイィィ!!」」」

(強制的に)連れてきた労働力が文句を言ってきたので黙らせる。まだまだ元気だがそのうち口を動かす暇も無くなるので後は逃げ出さないように見張っていればいい。

片手ずつ別々の調理工程を同時にこなしながら、私はそんなことを考えていた。

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「本っ当にいつもありがとうね!」

「いえ、こちらとしても利点があることなので」

昼のピークを過ぎてようやく手空きになった。フウカ先輩にいつものように感謝されたので、こちらもいつものように返す。チラリと隣に目を向けると、

 

「うめぇ、うめぇ!」

「こんなうまいメシ食ったの、初めてかもしれねぇ…」

「今まで文句ばっか言ってごめんなさい…」

泣きながら賄いを食べている不良たちの姿があった。

給食部の人手不足を知った時、私はこれを懲罰代わりに使うことを思い付いた。結果は大成功、再犯率が著しく低下するという成果を出した。なのでそこまで感謝することでは無いと思うのだが、

 

「それでも、よ。今までどれだけ訴えても改善してくれなかったことのために動いてくれた、そのことがたまらなくうれしいのよ」

「そうですよ。それにいつも、カイカさんも手伝ってくれてるじゃないですか」

フウカ先輩だけでなくジュリにまでそう言われてしまう。こうして面と向かって感謝されると気恥ずかしいものがあった。

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万魔殿に戻ってきた。駆け寄ってきたイブキに先程厨房を借りて作っておいたプリンを渡すと目をキラキラさせながら喜んでくれた。可愛い。

ついでに先輩方の分もあるので渡して回る。マコト議長は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。

 

午後の分の仕事を終わらせ、皆と他愛も無い雑談をして、帰路に就く。

 

今日も、なんてことの無い一日だった。

願わくばこの日常が、明日も変わらず続かんことを。




カイカは万魔殿に所属していますが、個人的な風紀委員会との仲はそんなに悪くありません。擦れ違えばお互い挨拶するし、現場で出会えば迷わず共闘する程度の仲です。何ならヒナ委員長からは何度か直接スカウトされています。全て断っていますが。

次回はチュートリアルに参加します。
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