「再生速度を上回る威力の攻撃を死ぬまで打ち込み続ける」
です。
生半可な威力の銃ではダメージ無視して突っ込むか、そもそも躱すか切り落とすかしてしまうので、有象無象が何人いたところで勝ち目はありません。
要するにカイカにとって、ネルはかなりの天敵と言えますね。
まあだからと言って、C&C全員対カイカ一人で戦えば必ずC&Cが勝つ、とは限りませんけどね。
あれから数日、カイカは普段通りの生活を送っていた。
万魔殿で仕事をし、外に出ては不良を連行し、更生施設…もとい給食部の手伝いをし、偶にお菓子を作って、万魔殿に戻り午後の仕事を終わらせ帰宅する。
変わり映えの無い、だからこそ愛おしい日々。
あの一件以来どこか余所余所しくなっていた風紀委員会との関係も、ようやく元通りになってきたように思う。
だからその日も、いつもと変わらない一日になると思っていたのだ。
校門を潜る、その瞬間までは…
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(何だ、これは何が起こっている…)
私は、そのあまりにも信じ難き光景に、唯只管に困惑していた。
見るはずの無い夢を疑い、何度も目を擦る。だが、眼前の景色が掻き消える事は無く。
最早それを現実として受け止める他無く、されど疑問が解消される事は無い。
何故…、何故…!
(何故、先生がイオリ先輩の足を舐めている…!!)
…いや本当に何故?
「お、大人としてのプライドとか、人としての迷いとかはないのか!?」
”そんなものは無いよ!”
「堂々と言うなぁ!?おかしい!ヘンタイ!歪んでるっ!」
…何があったのかは未だ分からないが、少なくともイオリ先輩
「…イオリ先輩が年上の女性に足を舐められて喜ぶ性癖をお持ちとは、流石に存じ上げませんでした」
介入する事にした。これ以上この光景を見せられ続けるのはキツい。
「カイカ!?いや違うからな?!これは…」
「分かっています、イオリ先輩。皆まで言わずとも大丈夫です」
そう、分かっている。
「性癖など、人の数だけ存在する物なのですから」
「だから違うって言ってるだろぉぉぉお!!!」
分かった上で、からかっているだけである。
「…なんだか楽しそうね?」
「い、委員長?!」
背後からヒナ委員長が現れた。まあ、あれだけ騒いでいれば当然だろう。
「自分の望みのために膝をつく姿は何度も見てきたけど、生徒のために跪く姿を見たのは貴女が初めてだわ、先生」
…どうやらヒナ委員長の位置からは丁度私の体が邪魔をして肝腎の行為が見えていないらしく、良い感じに誤解してくれているようだ。
なので、あえて誤解を解く事無く静観する。
「顔を上げてちょうだい先生。言ってみて、私に何をして欲しい?」
「いや、委員長。先生は跪いているんじゃなくて足を舐めてるんだけど…」
「…は?」
そのタイミングで私は半歩横に動く。
ー瞬間、ヒナの目に飛び込む、先生の勇姿!!
「あ、フリーズした」
「どうすんだよ先生!委員長、気失っちゃったじゃないか!」
”えっ、これ私のせいなの?”
「ウケる」
「”カイカ!?”」
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その後、ヒナ委員長が意識を取り戻すのを待つ間に、先生にゲヘナを訪ねて来た理由を教えて貰う。
何でもホシノ先輩が攫われたらしく、救出のために力を貸して欲しいとの事。
以前の件でヒナ委員長は、何かあれば必ずアビドスに力を貸す、と約束していたそうだ。そして先生はその言葉を頼りに此処へ来た、と。
「それで何故、足を舐める事になるのです?」
その疑問については何一つ解消されていないのだが?
そう聞いた所、先生はヒナ委員長に用があって此処に来たが、対応したイオリ先輩がそんなに容易く会える訳無いだろうと言い、土下座して足でも舐めたら考えてやる、と冗談のつもりで言ったそうだ。
そしたら本当に先生が土下座して足を舐めた、と。
「イオリ先輩が悪いですね」
「なんでだ!」
己の発言には責任を持って貰わねば。
それにしても、ホシノ先輩が誘拐されるとは不自然だ。
あの人はキヴォトスでもトップクラスの戦闘能力を有している。相手はカイザーPMCとの事だが、奴らが真正面からホシノ先輩を制圧出来るか、と問われれば、答えは否だ。
私ですらホシノ先輩を相手にしようと思えば、
そんな存在を民間軍事会社如きがどうこう出来るとは、とても思えない。
可能性があるとすれば…
「借金を帳消しにする、とでも言われたのか?」
否、違うな。
カイザーが態々そんなリスクの高い提案をするとは思えないし、そもそもホシノ先輩が信用する筈が無い。
「第三者が、ホシノ先輩の身柄と引き換えに借金を肩代わりする、と持ち掛けた」
これが正解だろう。
アビドスの土地が欲しいカイザーと、ホシノ先輩の身柄が欲しいその人物との間で利害が一致したという事だろう。
…心当たりがある。ホシノ先輩、というよりその強大な神秘に興味を抱きそうな存在。
……………
”…カイカ?”
独り言を呟く私を心配したのか、先生が声を掛けてくる。
「…私も行きます」
”えっ、いいの?”
別に、私個人に恨みがある訳では無い。
カイザーPMCにも、その背後の人物にも、
「ホシノ先輩にも、少し言いたい事がありますし」
とは言え、深い理由がある訳では無い。
「まあ、強いて言うなら」
そう、これは唯の、
「八つ当たりです」
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あれから復活したヒナ委員長は先生の頼みを快諾し、すぐさまカイザーPMCと戦う為の準備を始めた。
私の方もその間にマコト議長達に事情を説明しておいた。無断で動く訳にはいかない。
そして私、ヒナ委員長、イオリ先輩、チナツの四人はホシノ先輩が囚われているという、カイザーPMC第51地区に来ていた。私達の役目は対策委員会の皆がホシノ先輩を救出するまでの時間稼ぎをする事。
だったのだが。
「これ、全滅ですかね」
「増援も来ないし、たぶん…」
戦闘開始してまだ10分である。
まず、ヒナ委員長が正面から暴れる。すると当然そこにヘイトが集まるので、その隙に私が飛び込んで敵を片っ端から切り伏せる。相手も私を狙おうとするが、同士討ちを恐れて巧く攻撃出来無くなる。そうなれば今度はヒナ委員長の的になり…
これを繰り返すだけの簡単な作業だった。
「これ…私来る必要あったか?」
「それを言ったら私こそ何もしてないですよ?」
イオリ先輩とチナツも困惑している。無理も無い。
とは言え、此処で突っ立ている訳にもいかないだろう。
「向こう、手伝いに行きますか?」
指を指す。その先は対策委員会が居る筈の場所。未だ戦闘音は続いている。
「そうね、行きましょう」
駆け出す。まあ彼女達が負ける事は無いだろうが、急ぐに越した事は無い。
「ちょっ、速い!ヒナ委員長もカイカも速いって!」
「待ってください~!」
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カイカ達が対策委員会の元へ辿り着いた時、そこでは巨大なロボットが暴れていた。
皆が攻撃しているが随分と装甲が堅いらしく、殆どダメージが入っていない。
…だがそれは、彼女達の武器では、という話だ。
「視界を潰します。その隙に武装を破壊して下さい」
「分かったわ」
そう言うとカイカは翼を展開し、全身を独楽のように回す。
砂嵐が巻き起こった。
砂嵐はロボットーゴリアテを包み込む。
『何だこれは!何も見えん!』
カイザーPMC理事が騒いでいる。唐突な出来事に混乱しているようだ。
ーーガガガガガッ!!ーー
ーーズバァン!!ーー
ヒナが放った銃弾がゴリアテの武装を破壊し、カイカの刀が脚部を切断する。
そうなってしまってはもう何も出来ない。デカい棺桶も同然だ。
カイカがコックピットに近付き、入り口を切断する。
「くそ、あり得ないだろう!ゴリアテがこんなあっさりとやられるなど!いや待て、その姿。まさか貴様、黒服が言っていたー
刀が振り下ろされる。カイザーPMC理事の意識は、そこで途絶えた。
戦闘が一瞬で終わってしまう。
強すぎるから、しゃーない。
カイカの強さは(文字通り)死ぬ程努力した結果辿り着いた領域です。
切っ掛けは偶然でも今の強さは必然なのです。