守護龍はシアワセを望む   作:五行天元

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一応言っとくけど、理事は死んでないから安心してくれ。

…なんで刀で斬られたのに気絶するんだろうね~?


唯、今を大切に

突如現れゴリアテを一瞬にして下した二人に対し、その場に居た先生と対策委員会の面々は酷く驚いていた。当然であろう。本来彼女達はカイザーPMCの本隊と戦っている筈なのだから。

だが、

 

「全滅したようなので、此方の手伝いに来ました」

と言われてしまえば、いっそもう呆れの感情が浮かぶというものであった。

 

その後、先生とアビドスの面々とカイカはホシノを救出するためにバンカーに入る。風紀委員会の三人はここで帰っても良いのだが、万が一敵が残っていた場合に備えての見張りを請け負った。

…決して「このまま帰ったら本当に何のために来たか分かんなくなる」とか言い出したからでは無い。

 

不十分な明かりで照らされた道を進む。幸い余計な分かれ道なども無く、すぐにホシノが囚われているであろう部屋に辿り着いた。その部屋は如何にも頑丈そうな扉で施錠されていたが、

 

ーーザンッ!!ーー

 

カイカが刀を抜き放てば障子紙の如く切断された。そうなれば最早何枚も重なっていようが関係無い。部屋の入り口は容易く開かれた。

 

「ホシノ先輩!!」

 

果たして、ホシノはそこに居た。

拘束こそされていたものの、五体満足な姿で。

 

駆け寄るアビドスの面々。対するホシノは助けが来るとは思っていなかったのか、幻覚でも見たような顔をしていた。

 

「え、あ……そっか、おじさんまだ夢の中にいるみたいだね~」

「そんな訳無いでしょう、ホシノ先輩」

 

そう言いながら、カイカはホシノの元に歩み寄る。

 

「…カイカちゃん?」

 

そしてホシノの目の前にまで来ると、

 

「あいたぁ!」

 

…強烈なデコピンを食らわせた。

 

「いきなり何するのさ!」

「寝起きの頭には丁度良いでしょう」

 

それに、と続ける。

 

「私、貴女に文句を言いに来たんです」

「え?」

 

大きく、息を吸う。

 

「過去に囚われる。大いに結構!」

 

カイカとて分かっている。これは、ただの自己満足だ。

 

「自棄に走るのも、理解出来る」

 

だが、

 

「貴女が死ねば、悲しむ人が居る」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「己と同じ道を、後輩達に辿らせるつもりか」

 

ホシノの心に、深く突き刺さった。

 

「あ…」

 

ようやく、気付いたのだ。自身に抱き付く後輩達、そして彼女達が流す涙に。

 

「…うん。ごめんね、みんな」

 

フッ、とカイカが笑う。もう、自分が此処に居る必要は無いだろう。

 

”カイカ”

 

先生の言葉に立ち止まる。

どうやら一足先に帰ろうとしている事に気付いたようだ。

 

”ありがとう”

 

たった一言。それで十分だった。

 

カイカは片手を挙げてそれに応える。そして、

 

「お帰りなさい、ホシノ先輩」

 

小さく呟き、この場を去るのだった。

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私は、一人で帰路を辿っていた。ヒナ委員長達は一緒に帰る事を提案してきたが、それを断って。

 

誰も居ない町を一人歩く。そして、

 

振り向くと同時に、刀を突き付けた。

 

「クックックッ…、相変わらずですね」

「…黒服」

 

切っ先が首に向けられているにも関わらず平然としている。

…否、多少の動揺はあるようだが、それを一切表に出していないだけのようだ。それはそれで大した物だが。

 

「言った筈だ。私の周囲の人間に害を及ぼせば、その時は…」

「ええ、覚えています。ですので、()()今回何もしていません。ただ、()()をしたに過ぎませんので」

 

…そう言う事か。

恐らく、此奴と理事の関係性を示す証拠は存在していない。書類の類も一切介さず、終始助言者という立場を崩さなかったのだろう。

ホシノ先輩の件にしてもそうだ。彼女の身柄と引き換えに借金の幾らかを肩代わりするという契約だったようだが、理事との間には単なる口約束しか無かったのだろう。

これならば、「話を持ち掛けはしたが、向こうが()()()突っぱねた」という言い訳が出来る。

 

…はっきり言って詭弁だ。が、筋は通っている。

 

「…チッ」

舌打ちと共に、刀を納める。

 

「次は無い」

「勿論です。我々としても、貴方と敵対する事だけは避けたいので」

「フンッ」

 

踵を返す。振り返る事だけはしなかった。

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数日後、私はとある場所へと足を運んでいた。

 

「いらっしゃい!…おお、久しぶりだな!」

「ええ。お久しぶりです、柴大将」

復活した柴関ラーメンの屋台である。諸々の問題が収まったので、漸く来る事が出来たのだ。

 

ラーメンを注文し、それを待っている間にもう一つの用事を済ませる事にした。

 

「…それで、わざわざ私を呼んだ理由は?」

先客に話し掛けられる。

 

そこに居たのは、陸八魔アル。私は彼女に向き合うと、

 

「礼を」

「え?」

「あの時、アビドスに味方して戦ってくれたと聞いた。だからその礼を言いに来た。有難う」

そう言って、頭を下げた。

 

「え、それだけ?」

「?、そうだが?」

「いやだって、私達、大した事してないわよ?」

「だが、そもそもお前達はアビドスとは無関係。例え見捨てたとしても誰も文句は言わなかった筈だ」

「そんな事、できるわけないじゃない!」

アルは、然も当たり前の事であるかのように言った。

 

…彼女は知らないのだろう。その「当たり前」が出来る人間が、この世界にどれ程居るのかを。

 

「お前やっぱアウトロー向いて無いと思うぞ」

「ななな、何ですってー!?」

 

正直、私からすれば何でアウトローを目指しているのか分からない程度にはお人好しだと感じているのだが。

否、だからこそ、慕われているという事か。

 

「そうだ、忘れる所だった」

そう言ってポケットから小包を取り出し、投げ渡す。

 

「?、これは?」

「クッキー。この前の物は割れてしまっただろ」

「たしかに粉々になっちゃったけど、美味しかったわよ?みんなも喜んでたわ」

 

食ったのか…。

 

「やっぱお前等アウトロー向いて無いぞ」

「何でよー!?」

 

嗚呼、やはり彼女達の事は、嫌いになれない。




対策委員会編、完!

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