理由としては、アリスのいる場所にカイカを向かわせることができないからですね。
ワンチャン『該当する生徒情報が存在しません』とか言いだす可能性がありまして…。
ミレニアムサイエンススクールに到着した先生とカイカ。
二人はその足でゲーム開発部の部室に向か…わなかった。
「では先生。私はセミナーの方へ今回の訪問理由の説明と、私個人の長期滞在の許可申請を行うので、ここで一旦お別れです」
”あれっ、一緒に来てくれるんじゃないの?”
「言ったでしょう?用事がある、と。まあ、大した事では無いのですが」
”合流するにしてもそれが終わった後、ってコト?”
「そうなりますね。喫緊の事情があれば連絡してください。その時は駆け付けますので」
”わかったよ。でも私、ゲーム開発部がどこにあるのか知らないんだけど…”
「大丈夫ですよ」
そう言うとカイカは軽く跳び上がり、
先生の頭に向かって落ちてきたゲーム機をキャッチした。
「これの持ち主が案内してくれますよ」
カイカはゲーム機を先生に手渡すと、一人校舎に入っていった。
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「…と言う訳でして。此方の滞在許可を頂きたいな、と」
「随分急ね…。いやまあ、私個人としては別に構わないのだけど」
ミレニアムサイエンススクールの生徒会組織たるセミナーにて、二人の生徒が会話していた。
一人はセミナー所属、会計担当の早瀬ユウカ。もう一人は、一応シャーレの部員として訪れた竜胆カイカである。
この二人が直接顔を合わせるのはあの日以来なのだが、それ以来普段からモモトーク上ではそれなりに話す間柄となっていた。おまけに学園こそ違えど生徒会組織に所属する者として通じるものがあったのか、二人の間柄は友人と呼んでも差し支えないものとなっていた。
とは言え、実際の所は、
「それにしても、休暇って言ったってあくまでも生徒会業務や治安維持活動に関しての話でしょ?授業とかは大丈夫なの?」
「あ、それについては問題無いです。三年生用の試験で満点を取って以来、定期試験さえ受ければ授業は出席しなくても良い、という特例が認められているので」
「そんなバカな…」
…ぶっ飛んだ発言をしまくるカイカに対し、ツッコミ気質のユウカが放っておける訳がなかった。というのが真実かもしれない。
そんなこんなで、滞在許可証を受け取ったカイカは退室しようとして、
「おっと、手土産を持って来ていた事を忘れていました」
足を止め、ジャケットの懐に手を入れる。
「皆様で御召し上がり下さい」
つ(低糖質ロールケーキ一本)
「ハスミ先輩の御墨付きです」
「うんどこからツッコめばいいのかしら?」
最後までツッコミ所満載であった。
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「ユウカちゃん、あの子のこと随分と気に入ってるみたいですね?」
カイカが退室していったのを見計らい、ノアがユウカに声を掛けた。
「そうね…。正直うちに欲しいくらいよ」
「!…。驚きました。そこまで言わせる程とは」
「調べれば調べるだけ冗談みたいな実績が出てくるのよ。去年まで一切無名だったのが信じられないわ」
そこで一旦言葉を切ると、ユウカは声を潜めて告げた。
「たぶんだけど、あの子1人雇い入れるだけでC&Cの存在意義が消滅するわ」
「マジですか」
これには流石のノアも言葉が崩れた。優秀だが金食い虫であるC&Cは、セミナーにとって悩みの種の一つなのである。
「…まあ、叶わないことをいくら願ったって意味ないわね。ノア、ここらで一旦休憩にしない?丁度お菓子もあることだし」
「いいですね。私お茶の用意してきますね」
ふと、視線を向ける。そこにはでかでかと鎮座する、一本そのままのロールケーキが…
「…あれ、どこから出したのでしょう?」
「私が知りたいわよ…」
味は、とてもおいしかったそうです。
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無事、滞在許可証を入手したカイカは本来の目的を果たすためにとある場所へと向かっていた。
「今日は」
「やあ、いらっしゃい。待っていたよ」
目的の部屋に辿り着くと、その中にいた紫髪の女性に話し掛ける。
「刀のメンテナンスだったね。早速預からせてもらうよ」
「ええ。お願いします、ウタハ先輩」
そう。これこそが今回、カイカがミレニアムに来た理由である。
何を隠そう。カイカが普段愛用している刀「破壊殺」はここ、エンジニア部の手によって鍛え上げられた逸品なのである。
黒にも白にも見えるその刀身はただの金属では無く、エンジニア部の粋が詰まっていると言っても過言では無い。
折れず、曲がらず、刃毀れせず。使い手の腕が良いのも相まって、
だが先日のアビドスでの一件、砂塵が舞う中での長時間運用の上に、ゴリアテの堅い装甲を切断したことで、僅かに違和感を覚えるようになっていたのだ。
素材が特殊故に自分で研ぎ直す事も出来ず、こうして作り手の元に持ち込んだという次第である。
「ふーむ。所々刃が欠けてしまっているみたいだね。じっくり観察しないと気付けない程度ではあるがね」
「修復に掛かる期間は如何程ですか?」
「直すだけなら今日中にでも終わるだろうね。ただ、刀身そのものが劣化してしまっているみたいでね?直してもまたすぐに刃毀れしてしまうだろう」
それでは意味が無い。今回は刃毀れだけで済んだが、肝腎な時に折れてしまう可能性のある武器など不安しか無い。
「そこでだ。これを期に打ち直さないかい?」
「ほう」
「デザインはそのままに、刀身だけを新しく作り直すんだ。時間は掛かるだろうが、以前のものよりも高性能になることを約束しよう」
断る選択肢など無かった。
「そういえば、刀を私に預けている間の武器はどうするつもりだったんだい?」
「あー、考えて無かったですね。最悪素手でも構いませんし」
「いや、それはダメだろう。銃なら用意できるが、なにか希望はあるかい?」
「ならば御言葉に甘えて、…」
それは、中々に無茶振りとも言える要求であった。普通ならば。
しかし、
「任せたまえ!今日中に完成させてみせよう」
そこにロマンがあるならば、どんな無茶だろうと乗り越えてみせるのがマイスターである。
翌日また訪れることを約束し、カイカはエンジニア部を後にするのだった。
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「さて、どうしましょうかね」
一先ず用事を済ませ終えたカイカは、再び手持ち無沙汰になっていた。
やる事が無い訳では無いが、長時間部屋に籠もることになると予想されるので、まだ日が高い内からそれをする気にはなれなかった。
一応シャーレの部員として来ているので今からでも先生と合流するか?だが先生からは何も連絡は無いし、そもそも今は何も武器を持っていない。もし戦闘になった場合、対人なら未だしも戦闘ロボットの類と戦うのであれば無手では厳しい。
そんなことを考えながら歩いていた為か、曲がり角の向こうから走ってくる気配に気付くのが遅れてしまった。
「へぶっ!あだっ!」
…まあ、ぶつかられた程度でカイカが体勢を崩す筈も無く、ぶつかってきた側だけが尻餅をつく結果となったのだが。
「…大丈夫か?」
手を伸ばす。そこにいたのはピンク髪のツインテールの少女。
「にはは…、ありがとうございます」
これが、竜胆カイカと黒崎コユキの初邂逅であった。
授業免除の特例ですが、やってることは事実上の飛び級ですね。
イブキがカイカのことを先輩呼びしてる主な理由です。
…正実の自称エリートが聞いたら気絶するんじゃないかな。