「
「うあぁああああーーなんでーー!」
偶然出会ったカイカとコユキ。
時間を潰したいカイカと、遊び相手が欲しいコユキ。
思惑が一致した両者は、もはやコユキの私室となってしまっている反省部屋にて、コユキの発案でまずはトランプをすることになったのだが、
「全額ベット。からの、ダブルダウン。…21になりました」
「インチキですよこんなのーー!!」
…カイカは争い事に対して、一切容赦が無かった。その上、大人げなかった。
そして何より恐ろしいのは、これでもカイカはイカサマ
唯、
「カードの順番を全て覚えておけばこの程度誰でも出来る」
それだけの事だった。
「いやいやいや…。最初にシャッフルしたじゃないですか…。その時点でグッチャグチャになってると思うんですけど…」
「ああ、それも簡単な話だ。シャッフルの要領でカードの山から途中まで引き抜いてみろ」
そう言われたコユキはカードの山の中ほどから適当な枚数を引き抜き、半分ほど突き出した状態にする。
「…上から12~33枚目、だな」
「ええっ!嘘でしょ?!…ひー、ふー、みー、…、ホントだ…」
「これを把握し続ければ、幾らシャッフルしたとて順番が分からなくなる事は無い」
…当たり前の事のように言っているが、勿論そんな訳は無い。例え記憶力と動体視力が非常に優れた人間だとしても、こんな事をすれば確実に脳がパンクする。
それこそ、人間性を投げ捨てでもしない限り…
「そんなの最初から私に勝ち目なんてなかったってことじゃないですかー!ズルですよそんなのー!」
それはそれとして、コユキが機嫌を損ねてしまった。まあ、当然と言えば当然だが。
この状況では、元凶であるカイカがフォローの為に声を掛けても逆効果になりかねない。ので、
「…これをやるから機嫌を直せ」
「…なんですか、これ」
「饅頭だ」
菓子で釣る。
「その程度で機嫌を直すほど私はチョロくないですよ!」
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「おいしーです!」
チョロかった。
「ほら、茶も飲め」
「にはは!ありがとうございます!」
ズズッ、と二人揃って煎茶を啜る音が響く。
「…やはり、改善の余地が多いな」
「そうですか?たしかに変わった味ですけど…」
十分おいしいと思いますよ? と、コユキが答える。
独特な味ではあったが、そもそも緑茶の類を飲む機会など百鬼夜行連合学園でもなければそう無いのだ。
コユキからすれば、『高級品って珍味の類のことも多いし、これもそういう系かな』と感じた程度である。
実際そのお茶は、キヴォトス中を探しても決して同じ物を手に入れる事はできないので、貴重な代物と言えなくも無い。
何故なら、
「これ、雑草煮出して淹れた煎茶なんだよ」
「ブーーッ」
…材料が特殊すぎるからである。
「なんてモン飲ますんですかーー!!」
「安心しろ、毒に類する成分は一切含まれていない」
「そういう問題じゃないですよー!」
それはそう。
「探究心を捨てたら進歩は無い。そうだろう?」
「そうかな…?そうかも」
しかし、丸め込まれてしまった。
ミレニアム生だからね、仕方無いね。
…誤解の無いように言っておくが、カイカは普段からその辺の雑草でお茶を淹れている、と言う訳では決して無い。使うにしてもドクダミのような実際に前例が存在する物だけである。
飽く迄、暇だったから試したに過ぎないのだ。
「所で、今更な質問だとは思うのだが…」
懐に急須を仕舞いながら訪ねる。
「何でこんな場所に居るんだ?」
「ホントに今更ですね?!」
暇人は、深い事を考えない。
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反省部屋にぶち込まれた経緯をコユキは語った。
彼女の能力、そしてそれを用いたやらかしの数々。
聞けば聞くほど妥当と言うべき内容であり、寧ろ未だに矯正局送りになっていないのが不思議なくらいである。
他校とは言え生徒会組織に所属しているカイカからすればそれらの行いがどれだけ洒落にならない事なのかを理解していた。同時に、矯正局送りになっていない理由も、だが。
それだけの事をしでかしている当の本人は反省する素振りを一切見せていない。
普通の人間であれば、その様子に眉を顰めることだろう。
だが、カイカは違った。
(気付いていないのか?自身の持つ力の凶悪さに…)
カイカからすれば所詮は他校の問題だからだ。物理的な破壊活動であればまた違うのだろうが。
そんなことよりもその能力の方が重要だった。
どんな鍵でも直感で開ける事が出来る力。使いようによってはそれこそキヴォトスを滅ぼす事も可能であろう。
(だが、実際にコユキが起こした事件は
何故?
カイカは考える。能力と実害の隔たり、罪悪感を抱かない理由、能力について語る時の態度、言葉の端々から感じ取れる自己肯定感の低さ、etc…
それらを統合した結果、カイカの頭脳は容易く答えを導き出す。
(成程ね。それでは幾ら説教されようと自らの行いを鑑みる事は無いだろう)
…放置した所で、誰からも責められる謂れは無い。
所詮は他校の生徒。関わろうとしなければ二度と会うことも無い程度の仲だ。
だが、出会って間も無いながらも、カイカはコユキの事をそれなりに気に入っていた。
だから…
「例えば、ゴリムキのマッチョが居るとする」
「は?」
脊髄反射みたいな会話してるな、コイツら。