守護龍はシアワセを望む   作:五行天元

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真面な戦闘描写って今回が初では?


一矢報いる

「何あれ!何あれ!何あれ!何あれ!?」

「モモイが『混乱』のバッドステータスにかかってしまいました!」

「落ち着いて、お姉ちゃん!」

「無茶言わないでよ!」

 

モモイがビシッと指差す。

その先には、翼を広げ、尻尾を燻らせ、紅いマフラーを棚引かせ、守護龍の名に恥じぬ堂々たる威容を見せ付けるカイカの姿があった。

 

「勝てるワケないじゃん!!あんなのもうラスボスどころか裏ボスじゃん!!ソロでレイドボスに序盤装備で挑むほうがまだマシって思えるレベルだよ!!」

「だから落ち着いてって、お姉ちゃん…。そもそも私たちの勝利条件はカイカさんを倒すことじゃないでしょ?」

「ハッ!そうだった!」

 

そこで漸くモモイは冷静さを取り戻し、カイカの後ろに置かれた人型の的(デコイ)を見ながら戦闘前に伝えられたルールを思い出していた。

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勝利条件:デコイに攻撃を当てる。

敗北条件:マガジンを全て使い切る。

 

カイカは基本的にデコイの周囲2メートル範囲から動かず、能動的に攻撃しない。

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「…そうだよ!別に倒す必要はない!()()()()()()()()()()()()私たちの勝ちなんだ!」

「うん、だから「よーし、先手必勝!」…お姉ちゃん!!」

 

モモイは何の迷いも無く飛び出し、銃を乱射する。

 

実際、カイカは盾を持っている訳でも、電磁シールドの類を展開している訳でも無い。

その状態でデコイに向けて放たれた弾丸を防ごうと思えば、その身を盾にするしかない。或いはその大きな翼や尻尾を使うのか…

いずれにせよダメージは入るだろうし、まぐれでデコイにも当たるかもしれない。

 

モモイがここまで考えて行動したかは不明だが、まあ概ね似たような考えには至っている筈だ。

 

事実、これはキヴォトスの常識からすれば正しい。

 

だが、

 

ーーキキキキィン!ーー

ーーカンッ!カラン、カラカラカラ…ーー

 

竜胆カイカは、常識の埒外に位置する怪物である。

 

…半ばから切断された銃弾が、カイカの周囲に転がった。

 

「「「……」」」

 

これには勢い良く飛び出したモモイも、無言で妹たちの元まで下がっていった。

 

「今の見えた?」

「全然見えなかった…」

「恐ろしく速い斬撃…、アリスじゃなきゃ見逃してました!」

 

文字通り、目にも留まらぬ太刀筋。

刀を鞘から抜き放ち、銃弾を切り落として再び鞘に納める。それら一連の動作が肉眼では捉えられぬ速度で淀み無く行使されている。

 

改めて理解する。

カイカが提示した、どう考えてもゲーム開発部側が圧倒的に有利としか思えないルール。

これは舐められていたのでは無く、()()()()()()()と踏んでいたからこその条件なのだと。

 

「だったら、これならどうよ!」

そう言うと、モモイとミドリが飛び出し、カイカの斜め後ろの左右それぞれに分かれる。

同時に三方向から攻撃するというシンプルながらも効果的な作戦。

 

だが、

 

「甘い」

 

カイカはそれらを当たり前のように捌いていく。

切り落とし、弾き飛ばし、時には軌道を逸らして他の弾丸に当てる事で相殺するとかいう芸当もしてみせた。

 

「魔力充填…100パーセント…」

 

ならば、と今度はより威力の高い一撃を放つ。

 

「光よ!」

 

しかし、

 

「…シッ!」

ーーザンッ!ーー

 

カイカはそれを()()()()()()()()()()両断した。

正中から切断されたレールガンの弾は左右に分かれ、デコイの両脇を素通りし、

 

「ひょわっ!」

「嘘ッ!」

 

それぞれ、モモイとミドリに直撃した。

 

「撤退!てった~い!!」

 

慌てて最初の位置にまで戻る三人。

ダメージ自体は大した事無いが、あのまま戦闘を継続していた所でジリ貧だと分かっていた。

 

「どうしよう…。もう残弾がほとんどないよ」

「こうなったら、いっそ玉砕覚悟で突っ込みますか?」

「ムリだって!接近戦になったらそれこそ勝ち目ないって!」

 

あーでもない、こーでもない、と騒ぎ出す三人。

余りにも勝ち目の見えない戦い。そんな現実から目を逸らしたいと考えるのも、至極当然の事だった。

そんな彼女達に、

 

「どうした、勇者共」

 

冷や水を浴びせるかのように、

 

「その程度か?」

 

カイカの言葉が飛んだ。

 

モモイ達の背筋にぞわり、と冷たいものが走る。同時に、沸々と湧いてくる感情があった。

 

「…負けたくない」

「そうだよ!それに、私たちはこんなところで立ち止まってる場合じゃないんだ!」

「はい!一泡吹かせてやりましょう!勇者は必ず勝つんです!」

 

そうして彼女達は話し合う。

先の言い合いとは違い、絶対に勝つという決意の元に。

 

奇抜な発想(ユニーク・アイディア)斬新な閃き(フレッシュ・インスピレーション)、そして爆発力(スーパーノヴァ)

 

未熟なれど確かな輝きを宿す少女達が、『最強』に牙を剥く。

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(巧く行ったな)

 

先程の声、■■の応用で彼女達の闘争心を煽ってみたのだが、どうやら無事奮起させる事に成功したらしい。

今、彼女達は私に勝利するための作戦会議を行っている。

 

そうだ、それで良い。そのために時間制限を設けなかったのだから。

 

…正直に言おう。彼女達の目的を思えば、この戦いには何の意味も無い。

 

元々これは、あのレールガンを実戦使用できるかを確認するためのテスト。そしてそれは、私の元に辿り着けた時点でクリアしている。

つまり、私との勝敗に関わらず『光の剣:スーパーノヴァ』はアリスの物になる事が既に確定している。

 

だからこの戦いは、私の自己満足。

彼女達の願いは、本当にシャーレと言う絶対的権力を利用してまで叶えるべきか。

故に、彼女達の覚悟を知りたかった。

 

…どうやら、作戦会議は終わったようだ。

再び、相対する。

 

…良い眼だ。絶対に勝つ、と言う強い意志を感じる。

 

「…行くよ!」

 

モモイが私の右手側に飛び出し、銃を連射する。

それだけなら最初と同じ。だが、

 

(弾数が多い…?)

 

幾ら何でも景気良く撃ち過ぎている。恐らく妹の分のマガジンまで使っているな。

彼女の役割は間違い無く囮。ならば一秒でも長く釘付けにするため?

 

「魔力充填…100パーセント…」

 

今度は左から、アリスが()()()()()()()()()()()()()()走って来る。

 

成程、発射と同時に振り抜くつもりか。

私が躱せばデコイが被弾する。受け止めようにも確実に体勢を崩す。その隙に、ミドリがデコイを撃ち抜くと言う算段か。

何より、どの選択肢を取るにせよ、()()()()()()()()()()()()()()行う必要がある。

 

…面白い、受けて立つ!

 

狙うは砲身を振り抜く直前。最も力が抜ける一瞬を見極めて蹴り飛ばす。

 

(…今ッ!)

「光よ!」

 

軽く足を上げる。直後、アリスはレールガンを、

 

()()()()()()()()()()()、私に向かって()()()

 

「はあっ?!」

 

発射時の反作用で加速したレールガンは、私の体を容易く突き飛ばす。

 

「ドットを打つように緻密に…!」

 

ミドリが引き金を引く。

 

射線は完全に間合いの外。おまけにモモイの銃撃は尚も続いており、姿勢が崩された今はそちらの対処で手一杯。

 

「美事!」

 

そして、ミドリの放った弾丸はデコイに命中した。

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