この作品を書く上で、「カイカが関わっていない範囲では原作通りの展開を辿る」って言う前提条件が在りまして。
だもんで、ユメパイは死んでるし、セイアは昏睡状態だし、アリウスはベアトリーチェの支配下だし、連邦生徒会長もちゃんと失踪してる。
逆説的に言えば、カイカが関わった人物は何らかの形で原作との乖離が生じているとも言えるね。
わかりやすいのだと戦闘能力の向上。
まあ今回の話とは関係無いけどね。
カイカの奮闘によってオートマタ達の包囲を突破したゲーム開発部一行。
漸く安全な場所へと辿り着く事の出来た彼女達は、興奮冷めやらぬ様子で口々にカイカへと賞賛の言葉を投げかける。
「すごいよカイカ!あんなにいっぱいいたロボット達を全部ひとりで倒しちゃうなんて!」
「本当にすごい…!ひょっとしてネル先輩よりも強いんじゃない?」
「カイカは最強の『お助けキャラ』だったのですね!」
「強いとは聞いてたけど、ここまでなんて…」
余りにも次元の違う戦い振りを見せられた結果、彼女達の頭の中は「なんかもう、すげぇ」と言う感想で埋め尽くされていた。
”でも、あれだけ精密な射撃ができるんだったら、どうして普段から銃を使わないの?”
だからこそ、浮かんだ当然の疑問。銃一つであれだけの蹂躙劇を繰り広げられるならば、何故普段から銃を持ち歩く事すら無く、刀なんて使っているのか。
他の生徒と違い、銃弾一発で容易く死ぬ身である事を知っているのは先生だけだが、そうで無くとも接近戦に固執する意味が理解出来無いのはゲーム開発部の面々も同様だった。
何せ、カイカが使用していたのはサブマシンガンである筈なのに、明らかにスナイパーライフル並の射程距離を発揮していたのだ。
安全圏から狙撃しているだけで一般的な狙撃手を遙かに超える戦果を挙げる事が出来るだろう。
常識的に考えれば。
「使う意味が無いからです」
そう言うとカイカは、
モモイの頭に銃を突き付け、引き金を引いた。
単発火力が低めのサブマシンガンと言えども、これ程の至近距離で撃たれれば確実に無事では済まない。
それなのに、
「あいたぁ!……くない?」
モモイは無傷だった。
撃たれた筈の額を擦りながら不思議そうにしている。
「この通り、効かないのです」
『ヒトを殺す為の武器が、非殺傷兵器となる』
そしてこれこそが、カイカが刀を愛用する理由でもある。
唯の素手で、ヘイローによる保護を貫いて殴り殺す事が出来るカイカにとって、手に持つ武器はヒトを殺す為に作られた物でなければならないのだ。
「ですが無生物相手であれば問題無く通用するので、この期に作って貰いました」
「そう!その銃!それどうなってんの?」
これもまた、当然の疑問である。射程に関してはまあ目を瞑るとしても、最後に放たれた一撃は明らかに威力がおかしかった。
とは言え、これに対しては、
「エンジニア部の深夜テンションが生み出した狂気の産物…と言う他無いな」
件の銃「ハートフル・エゴ」を見せながら説明し始める。
そもそもカイカが所望したのは、連射性能に特化した銃
だがエンジニア部の皆様はベストを尽くした。尽くし過ぎてしまった。
その結果、出力されたのはデカい、重い、重心が悪いの三重苦を備えた『片手で扱う事が想定されていない片手銃』でしたとさ。
完全にスーパーノヴァの二の舞である。
「…とは言え、持ち替える手間が無いのは明確な利点だな。因みに、私の手に掛かればこんな事も出来る」
”おお…ガンスピン。鈍器がグルグル回ってる…”
「代償付きの武器というわけですね!ロマンです!」
「今だけはその無邪気さが羨ましい…」
先程までの危機が嘘のように、平和な時間が流れていた。
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その後、アリスが何かに導かれるように進んでいった先で、一台のコンピューターを見付ける。
ピピッ
『Divi:Sion Systemへ、ようこそお越しくださいました。お探しの項目を入力してください』
そのコンピューターは廃墟に放置されていた筈。にも関わらず、今も稼働していた。
「おっ、まさかの親切設計。G.Bibleについて検索してみよっか?」
誰がどう考えても怪しいそれを、モモイは迷わず使おうとする。この向こう見ずさはある意味才能なのかも知れない。
「ふむ…」
カイカは少し離れた場所からその様子を観察していた。
(何か
機械的な文章の向こう側、そこに何者かの明確な意思を感じ取ったからだ。
その予感が正しければ何らかのアクションを起こしてくる筈。それが彼女達の身に危険を及ぼす物であった場合、直ぐに引き剥がせるように待機していた。
そして、案の定その時は訪れた。
『緊急事態発生。電力限界に達しました、電源が落ちると同時に消失します。残り時間51秒』
(十中八九、嘘だな)
態々G.Bibleを「廃棄対象データ
突発的事態を装う事で判断を鈍らせ、要求を押し通す。よくある手口だが、モモイ達に対してその効果は覿面だったようだ。
『G.Bibleが欲しいのであれば、提案します。データを転送するための保存媒体を接続してください』
(確実に何かを仕込む気だ)
考える。仕込むとすればウイルスか?違う。だとすれば幾ら何でも回りくどすぎる。
アプローチを変えよう。ここで問題となるのは相手の目的。そもそも奴は何者だ?少なくともアリス、基AL-1Sに関係する何かである事だけは間違い無い。と言うよりも、先程までの対応を思い返せば、まるでアリスの為に作られたかのようでは無いか?だとすれば正体は従者、アリスを補佐する事が役目?そしてアリスは戦闘を目的として生み出されたと思しき存在…
…まさか、
(…!自分自身を、送り込むつもりか!)
どうする。今、手持ちの情報だけでは流石に手に余る。これ以上の考察は不可能。
ならば、と無意識下の未来演算、即ち勘に思考を委ね、
「ああぁぁ!私のゲームガールズアドバンスのデータがあぁぁっ!!」
…止めない方が良い、と判断した。南無。
カイカはコンピューターに近付き、それに触れる。
G.Bibleのデータを転送し終えたDivi:Sion Systemは完全に沈黙していた。カイカの感覚も、そこにはもう誰も居ない、と告げている。だとすれば、やはり…
「待っててねミレニアムプライス……いや、キヴォトスゲーム大賞!私たちの新作は今度こそ、キヴォトスのゲーム界に良い意味での衝撃を与えてやるんだから!!」
「お、お姉ちゃん、声大きすぎ。そんな大声で叫んだら…」
野生のロボットが現れた!
「ここにいるって、言ってるような、も、の…」
…どうやら、ゆっくり考える暇も無いらしい。
「あちゃー…」
「…モモイ」
「ごめぇぇん…」
…嘆いていても仕方が無い。起きてしまった事はもう変えられないのだ。
カイカが銃を構え、敵の銃弾を撃ち落とす。
「先生」
”うん!”
”みんな、突破するよ!”
「今度は私が殿を務める。背中は気にしなくて良い」
その声に、ゲーム開発部の面々も武器を構える。
「ようやくG.Bibleを手に入れたのに、こんなところでやられるわけにはいかない…!」
「…みんなで無事に、部室まで戻ろう!」
神秘によって銃弾の威力が強化されるなら、逆があってもおかしくないよね?
例えば、カイカが鉄パイプで思いっ切りぶん殴った場合、
カイカにとって武器とは、身を守る道具であり、蹂躙の手段であり、手加減のための枷です。