守護龍はシアワセを望む   作:五行天元

26 / 28
同音異義語をカタカナで表現するやつ。

好き好き大好き~


センドウ者

コユキに手を引かれ部室に入るとそこには、

 

「あの、モモイ……デイリークエストしないのですか?いつも、『デイリークエストより大事なものなんてない』と言っていたのに…」

「アリス……私のHPはもうゼロだよ…」

 

「えっと…。ミドリ…?」

「ごめんね、アリスちゃん……知ってたけど、現実って元々こういうものなの……そう、つまりこれがトゥルーエンド……ハッピーエンドとはまた別の到達点…」

 

「……。ゆ、ユズは……ユズはどこに?」

「多分、またロッカーの中に引きこもってるんだと思う。よく見て、ロッカーがたまにプルプルしてるでしょ?」

 

「これは、酷いな」

”あっ、カイカ…”

「わ、私は何もしてないんですよ!ただパスワードを開けただけで…」

”うん。それでG.Bible自体は問題なく作動したんだ。だけど、その内容が…”

「『ゲームを愛せよ』、そんな所か?」

 

私の言葉に驚いたように目を見開く二人。

そんな驚くような事でも無いだろうに。そもそも本当にそんな物が存在するならば、この世に駄作が生まれる筈が無いのだから。

 

「それでこんな情けない姿を晒している、と?…ハッ、下らぬ」

”カイカ?!それはさすがに…”

 

モモイが勢い良く顔を上げる。

 

「うぅっ…。仕方ないじゃん、最後の手段だったのに!それが、あんな誰でも知ってる文章が一つ入ってるだけだなんて!釣りにもほどがある!」

 

泣き言は尚も続く。

 

「知ってた!世界にはそんな、それ一つで全部が変わって上手く行くような、便利な方法なんか無いって!でも期待ぐらいしたっていいじゃん!うああぁぁぁんっ!」

 

分かるよ、私にも。

私だって、似たような事を考えたのは一度や二度では無い。

 

「ならば聞くが、仮にG.Bibleの中身が具体的なゲームの作り方だったとして、その通りに作ったゲームがミレニアムプライスで受賞したとしよう」

 

成程、確かにハッピーエンドだ。疑う余地も無い。

 

だがな、

 

「貴様等は、それで納得出来たと思うか?」

 

「それ、は…」

 

出来る筈無いよな?

 

「貴様等の作ったゲーム、TSCを遊ばせて貰った」

 

故に確信したのだ。

 

「ネットの前評判通り、クソゲーと呼ぶべき代物なのだろう」

「うぅっ…」

「だが、それは決して()()()()()からでは無い。少なくとも、システム面に関しては一切の妥協が無い事には直ぐに気付いた。ギミックから道中の敵に至るまで、一つとして使い回された要素が存在しなかったのだから。こんな事はとてもでは無いが、並大抵の熱意では不可能だ。だから分かったのだ。これを作った人間は、本当にゲームが好きなのだと」

 

だからこそ、彼女達が作ったゲームには()()()()()()人の心を動かす力があった。

常識的に考えて見ろ。インディーゲームのプロトタイプ、それも無名の作者の処女作に、四桁を軽く突破する低評価コメントが為されたのだ。普通に有り得ないだろう?

 

…本人達からすれば不名誉だろうが、最早偉業とすら呼べるだろう。

 

「肯定します」

 

そして、機械の少女にバグ()を与えた。

 

「アリスは『テイルズ・サガ・クロニクル』をやるたびに思います。あのゲームは、面白いです」

「え?」

「感じられるのです。モモイが、ミドリが、ユズが……。このゲームを、どれだけ愛しているのかを」

 

アリスは語る。一言一言、吟味するように。

 

「そんな、たくさんの想いが込められたあの世界で旅をすると……胸が、高鳴ります」

 

辿々しくも、はっきりと告げられるその言葉は、

 

「仲間と一緒に新しい世界を旅する、あの感覚は……。夢を見るというのがどういうことなのか…その感覚を、アリスに教えてくれました」

 

どこまでも真っ直ぐで。

 

「だから、待望のエンディングに近づくほどに、あんなに苦しんだのに、思ってしまうのです…」

 

「この夢が、覚めなければいいのに……と」

 

「アリスは、そう思うのです」

 

その想いは、どこまでも青く、そして眩い。

私が、疾うの昔に失ったもの。

…嗚呼、正に勇者と呼ぶに相応しい。

 

さて、アリスは道を示した。後は彼女次第だが…

 

ーーバァン!ーー

「作ろう!」

 

ロッカーが勢い良く開かれた。

 

「えぇっ、ユズ?!」

「うわっ、ユズちゃん!?」

 

普段らしからぬ行動に面食らう二人を余所に、ユズは語り出す。

 

「わたしの夢は…わたしが作ったゲームを、みんなに面白いと言ってもらうこと…

 

…だった」

 

「でもあの時、二人が訪ねてきてくれた。わたしが作った『テイルズ・サガ・クロニクル』のプロトタイプを、面白いって言ってくれた」

 

「それで、一緒に『テイルズ・サガ・クロニクル』を完成させて…今年のクソゲーランキング1位になっちゃったそれを、アリスちゃんは面白いって言ってくれた」

 

「…わたしの夢は、とっくの昔に叶ってたんだ」

 

…無粋だとは分かっている。だが敢えて口を挟ませて貰おう。

 

「ならば何故?夢が叶ったのならば、それで十分ではないのか?」

 

「十分じゃない!」

 

「わたしは、まだ夢から覚めたくない」

 

「心の通じ合う大事な仲間たちと、一緒にゲームを作って、それを面白って言ってもらう…ずっと一人で思い描いてるだけだった、そんな部室()を」

 

「わたしは、終わらせたくない」

 

それは、小さな欲望。

 

「それに…、ここで投げ出したら、きっとわたしは自分自身を許せなくなる」

 

「だってわたしは、ゲーム開発部の部長だから」

 

それは、小さな誇り。

 

「カイカさん」

 

ユズが私に手を差し出す。

 

「わたしたちに、力を貸してくれますか?」

 

しっかりと顔を見合わせる。未だ消えぬ怯えと、それを覆い隠す程の確かな決意。

 

「当然だ。遠慮無く使い潰せ」

 

私は手を握り返し、そう答えるのだった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

”やるじゃん、カイカ”

 

慌ただしく動き始めたゲーム開発部の面々を見ながら、茶化すように先生が言った。

 

「…私は、背中を押しただけです」

 

外方(そっぽ)を向きながら、そう返す事しか出来無かった。

 

…私に出来るのは、煽る事だけ。導く事なぞ出来やしない。

私が征く道が正しい等とは、口が裂けても言えないのだから。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

コユキ「あれ?ひょっとしてこれ、私も手伝うんですか?」

カイカ(無言で肩ポン)

冏<ウアァアアアアーナンデー




はい。こいつミレニアムに来た初日の夜にTSCクリアしてます。ゲ開部のことを知る一環としてプレイしたんですね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。