で、正史ならゲ開部の部室をC&Cが襲撃する事になると思うんですけど、アスナが「やめた方が良い」って言い出したんですよね。
てなわけで、アリスが一人でいる所にネルが喧嘩を売る形になりました。
「…遅いな」
呟く。
アリスが買い出しに出掛けてからそれなりに時間が経過している。最寄りのコンビニまでの距離を考えれば明らかに遅い。
「混んでるんじゃない?」
「こんな深夜に、か?」
「それは、うーん…」
仮眠を取っていた三人も既に目覚めてしまった。元々、彼女達が眠っている間に帰ってこられると想定して送り出したので、今の状況は良いとは言えない。
アリスが居なくとも進行に問題は無いとは言え、唯でさえ人手不足の状況でイレギュラーが起こるのは困る。今は順調に進んでいるとは言え、人も時間もギリギリな事もまた事実故に。
アリスの性格を思えば、どこかでサボタージュしているとは考え難い。偶然時間が掛かっているだけか、或いは道に迷ったか…
それなら良い、それなら良いのだ。だが…
(嫌な予感がする)
脳内に警鐘が鳴り響く。
幸か不幸か、こう言う時の私の勘は、非常に良く当たるのだ。
手元の作業も丁度良く一段落付いた。
立ち上がる。
「迎えに行ってくる」
行ってらっしゃいの声を背に、私は部室を飛び出した。
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「光よ!!」
ーードカアアァァァン!!ーー
アリスが放ったスーパーノヴァの砲撃が、前方の道路を吹き飛ばす。真面に食らえば大ダメージは確実の一撃。
だが、
ーーダダダッ!ーー
「うぁっ!?」
「確かに、並大抵の火力じゃねぇが…」
土煙の中から悠然と現れたネルは、
「ただ、それだけだ」
無傷であった。
「も、もう一度、魔力を充電…
「遅ぇよ」
…!」
二発目を放つ暇も無く、ネルがアリスの元へと肉薄する。
咄嗟にスーパーノヴァを盾代わりにして追撃を防ぐ。しかし、それは武器を自ら手放す行為に等しい。
「てめぇの武器は確かに強い。だが引き金を引いた後、発射まで最低でもコンマ数秒はかかる」
二挺のサブマシンガンが絶えず火を吹く。アリスは防御に徹せざるを得ない。
「その上、その強すぎる火力のせいで、相手にある程度の距離まで入られたら撃てねぇ。爆圧に、
ネルはたった一回見ただけでスーパーノヴァの弱点を看破した。このままではジリ貧な事は誰の目にも明白である。
「そしてこの間合いであたしに勝てる奴なんざ、キヴォトス全体でもそう多くは……いや、一人もいねぇッ!」
「うぅ…」
苛烈さを増す攻撃を前に、防戦一方のアリスは苦悶の表情を浮かべる。
(まずい、です。このままでは…)
アリスの心に徐々に焦りが生じる。
目覚めたばかりで戦闘経験が少ないアリスにとって、単独での明確な格上との戦闘は非常に苦難を強いらされ
てはいなかった。
(『お使いクエスト』が完遂できません…!)
彼女の頭にあったのは部室で待っているであろう仲間達の事だけであった。
…誤解しないように言っておくが、アリスは決して目の前の相手を甘く見ている訳では無い。
この場での最適解は逃走。然れど機動力で大きく劣っている以上、背を向けて一目散に走ったところで直ぐに追い着かれる事は明白。ならば逃げるにしても追跡に支障が出る程度には痛手を負わせる必要がある。
ならば今すべき事は非常にシンプル。
あの時の試練と同じように、
ーーブォンッ!ーー
「ぐっ!」
総合的な戦闘能力では大きく劣っている。ならば、
「はっ、近接戦としては悪くねぇ判断だ……けどな。相変わらずこの距離じゃ、あたしの方が圧倒的に有利。てめぇは発射しようにも、あたしに照準を合わせられねぇ」
そして、アリスの目から見て、ネルは明らかに慢心していた。そうでなければ戦闘中に講釈を垂れるような真似をする事は無いだろう。
付け入る隙があるとすればそこだ。
(チャンスは一度きり…)
恐らく二度目は通用しない。油断してくれている今、確実に決める…!
「…!」
スーパーノヴァを大きく振りかぶり、横薙ぎに払う。
ネルはそれを
故に、
「うおっ!」
その勢いのまま一回転して銃身を叩き付けてきたアリスの動きに、僅かに反応が遅れる。
アリスは再び銃身を右に振りかぶる…
フリをして、そのまま時計回りに振り回す。ネルは再び虚を突かれる形となり、必要以上に大きく回避してしまう。
アリスは三度スーパーノヴァを振りかぶろうとする。その起こりの動作を見た瞬間、ネルは即座にリーチの外側へと跳び下がる。
非常に優れた反射神経。フェイントに惑わされるなら、予め武器が届かない位置まで下がってしまえば良い。
その判断は正しい。
アリスが持つ武器が、唯の鉄塊であれば、の話だが。
「しまっ…」
ネルが己の失策に気付いた時、銃口は既に向けられていた。
地面から足を離してしまった今、
引き金が、引かれる。
「光よ!!」
ーードカアアァァン!ーー
今度こそ命中した。その確信を得たアリスは踵を返し、全力で逃走を開始する。
今の一撃で倒せたとは思っていない。それでも逃げる時間位は稼げただろうと思っての行動。
だが、
ーーダダダッ!ーー
「あうっ!?」
土煙を貫いて飛来した銃弾が、無防備なアリスの背中に突き刺さる。
「今のは、中々悪くなかったと思うぜ」
先程の一撃は確かに当たっていた。事実、姿を現したネルは決して無傷では無かった。
「…相手があたしじゃなければ、の話だがな」
それでも、僅かな時間を稼ぐ事すら叶わなかった。
「チェックメイトだ」
地面に倒れ伏したアリスの背中に、ネルのツイン・ドラゴンが突き付けられる。
逃げなければ。そう思っていても体は言うことを聞かない。先程の無茶を押し通すために無視出来無いレベルの被弾を許しており、アリスのボディはいよいよ限界を迎えていたのだ。
(みんな…。ごめんなさい)
万事休す。薄れ征く意識の中、思わず諦めてしまった
その、刹那。
「カハッ!」
突如現れた闖入者が、ネルを物凄い勢いで蹴り飛ばした。
「何g(バシャッ)わぷっ!」
その乱入者は状況を飲み込めていないアリスの顔に水を被せると、尻尾を伸ばして胴に巻き付け、
「フンッ!」
校舎に向けて、ぶん投げた。
空中に投げ出されながらも、アリスは
追っ手から遮るように広げられた大きな翼を。
嗚呼、その白き龍の翼を見間違える筈も無い。
「カイカ!」
伸ばした手は、届かない。
躱せないと悟ったネルは、咄嗟に空中で体を捻って直撃だけは回避したそうです。
バケモンか?