今後の展開の都合上、踏まなきゃならねぇフラグがあっての。
あれから数日、平穏な日常が帰ってきた。
ゲーム開発部は無事、存続が決定。「TSC2」はネットニュースのトップ記事に掲載され、社会現象とまで呼べる程に世間の話題をかっさらった。結果、正式に部の実績として認められたのだ。
また、アリスも正しくゲーム開発部の部員となった。以前のようなハッキングにより偽造された身分証では無く、セミナーが発行した学生証を手に入れたのだ。これにより、大手を振ってミレニアムサイエンススクールの生徒だと主張出来るようになった。
コユキに対しても、今回の功績を鑑みてセミナー復帰の打診を受けていたが…。思うところがあったのか、彼女はそれを断って元いた反省部屋へと帰って行った。ユウカ先輩は少し残念そうにしていたが、本人が決めた事である以上、私は何も言わなかった。まあ、私にとっては
さて、そんな訳でシャーレとして手を出すべき業務は終わったと言って良いのだが、依然私はミレニアムに滞在している。
別に、もう十二分に休暇としての体裁は取れたであろう事を思えば、ゲヘナに帰っても何も言われないだろうが…。
(……)
未だ、何も終わっていない。
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話は変わるが、今私はとある人物に呼ばれて会いに行く途中である。
…別に無視しても良いのだが、このタイミングで断った場合、確実に警戒度合が上がる事になる。
もう少し泳がせていて貰いたい身としては、それは好ましく無い。故に、顔合わせに応じるべきだと判断した。
…
正直会いたく無いが。
もう一人の方なら未だしも。いやまあ、伝聞だけで他者を決め付けるつもりは無いが、それを加味しても直接会いたいとは思えないと言いますか。
(…行くけどね)
多少の引け目もある以上、会わないと言う選択肢は…
「…はぁ」
そんな言い訳を頭の中で捏ねくり回している内に、辿り着いてしまった。
『特異現象捜査部』
…私は、意を決して扉をノックした。
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扉を開けた先に居たのは車椅子に乗った一人の少女。
…そう、一人だ。
(特異現象捜査部は二人の筈だ)
それを抜きにしても、正面戦闘なんぞ熟せる訳が無い身でありながら護衛の一人も付けずに他校の人物、それも粗野で知られるゲヘナ学園の生徒と会談するなど、誰がどう考えても正気の沙汰では無い。
(だが、
竜胆カイカは、この場で何かしらの問題を起こした際に自校に降りかかる政治的リスクを冷静に考える事が出来る人物である。故に余程の非礼を働かない限り、カイカが暴力的な手段に訴えかけるような事は起こり得ない。
また、仮に
まあ、これら全てが考え過ぎの産物で、実際には只の慢心かもしれない。だがどちらにせよ、カイカにとってはどうでも良い事であった。
「…こうして、面と向かって顔を合わせるのは初めてですね」
「そうですね。私としては一度も出会わないままでいた方が御互いに良かったのでは無いかと愚考致します」
「なんてこと言うんですか?!」
先制パンチはカイカが
「…コホン。お互いに知っているとは思いますが、自己紹介をしませんか?」
「そうですね」
何とか自分のペースに持ち込みたい相手の提案に、断る理由も無いカイカはそれを承諾する。
「では改めまして、
ミレニアムが誇る超天才清楚系病弱美少女ハッカーであり、「全知」の学位を持つ眉目秀麗な乙女であり、そしてミレニアムに咲く一輪の高嶺の花である「特異現象捜査部」部長、
明星ヒマリです」
「喧しいなこの人。
此れは此れは御丁寧に。では私からも、
ゲヘナ学園が生徒会、万魔殿所属の一年、
竜胆カイカと申します。どうぞ宜しく御願い致します」
この差よ。
「よろしくお願いしますね、カイカさん」
「ええ、此方こそ。
ミレニアムガホコルチョウテンサイセイソケイビョウジャクビショウジョハッカーデアリゼンチノガクイヲモツビモクシュウレイナオトメデアリソシテミレニアムニサクイチリンノハナデアルトクイゲンショウソウサブブチョウ*1
明星ヒマリ先輩」
「…あの、カイカさん?」
「どうかしましたか?ミレニアムガ(中略)明星ヒマリ先輩?」
「いやその…」
「何か言いたい事でも御有りですか?ミレニ(中略)明星ヒマリ先輩?」
「えっと…」
「はっきりと言葉にして頂かないと分かりませんよ?ミ(ry 明星ヒマリ先輩?」
「あの…、やっぱりヒマリでいいです…」
「ではヒマリ先輩と、そう呼ばせて頂きますね」
強い(確信)
「…コホンッ!…そろそろ本題に入りましょうか」
ヒマリは何とか自分のペースを取り戻そうと話を切り出す。が、
「私は、
「なっ!」
返ってきたのは、明確な拒絶だった。
「何故ですか!?あなたは既に気付いているのでしょう?!
「だからこそ」
カイカは、何処までも冷静だった。
「どちらにも協力しない、と言ったのです」
フゥ、と溜息を一つ。
「AL-1S、名もなき神々の王女。名もなき神を崇める
ヒマリは驚愕に目を見開く。名もなき神とそれに纏わる情報はその殆どが失われており、彼女達をして容易くは手に入れる事が出来無かった。
だと言うのに、
(どこでそれほどまでの情報を!?調べる時間など数日しかなかったでしょうに…)
この時点でヒマリは、既に冷静さを失っていた。
一方的に主導権を握られていたから…では無く、
カイカの姿に重ねてしまったのだ。
髪色も体格も真逆。だが、前置きも無く要点だけを語るその口振りが、そして何より、相手を真っ直ぐに射貫くその赤い瞳が、否応無く彼女を想起させた。
「しかし決戦兵器と銘打つだけあってその能力は強力無比。仮に覚醒してしまえば文字通り世界を滅ぼせるだけの力を我々に向ける事になるでしょうね。唯そう在るべしと定められたが故に」
「だから…、だから殺すと言うのですか!あなたはあの子と仲良くしていたでしょう?!何も思うところはないのですか!?」
「…話聞いてましたか?そんな事一言も言ってないでしょう」
再び溜息を吐く。
「私とて、今更アリスの人格を疑いはしませんよ。少なくとも彼女が
カイカはヒマリに対して呆れの感情を抱いていた。
いっそ愚かとすら思えた。
(あまりにも、考え無しが過ぎないか?)
真にアリスの事を思うのであれば、何もしないはあまりにも愚策。
何故なら、
「外的要因により覚醒が促される可能性は?」
「…っ!」
(いや何で驚いてんだよ?)
逆に何故この可能性に思い至らなかったのか問い詰めたい程であったが、何なら
「そうなった場合、その手を血で濡らす事になるのは誰だ?」
しっかりと目を合わせ、告げる。
「アリス自身だ」
本当に、なんでこんな簡単な事に気付けないんですかね、この自称「全知」さんは。
(そもそも、何の根拠を持って私が味方に付くと考えた?)
類推するための手がかりとして、カイカはヒマリの感情を読み解こうとする。
(動揺…畏怖…)
違う。
(私自身へと向けられた感情は…)
瞳の奥。
根本的な、カイカに干渉しようと考えるに至った、その原因。
(…傲り、そして…)
──憐憫
「は?」
ズシリ、と。
空間自体の質量が増したかのような錯覚。
呼吸すらも侭ならない程の濃密なプレッシャーを前にしてヒマリは、自分が何か、目の前の人物にとっての逆鱗を踏み抜いてしまったのだと理解させられた。
「嗚呼、成程」
「以前ウタハ先輩がゲヘナに寄越したステルスドローンの映像を勝手に覗いたのですね」
カイカにとって、それ自体は別に構わない。だが、
「私の事を理解したつもりか?」
たったそれだけの情報で、竜胆カイカと言う存在を理解したつもりになっているその傲慢さ。
度し難い事、この上無し。
「
カイカは気付く。
どうして、出会う前からこれ程までの嫌悪感を抱いていたのか。
……
明星ヒマリは、全ての他者を無意識下で見下している。
…嗚呼。
(
踵を返す。
最早、何も話す事等無いと言わんばかりに。
然れど部屋を出る直前、思い出したかのように告げる。
「忘れるな。貴女は「全知」と呼ばれるに相応しいのだろう。だが、決して全能足り得る事は無いのだと」
そう言い残し、カイカは振り返る事すら無く去って行った。
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”あれ?カイカ一人?”
先生がゲーム開発部の部室を訪ねた時、そこに部員の姿は無く、代わりにカイカが一人でモニターの前に座っていた。
「次回作のネタ集めだそうですよ。急な用事であれば探すのを手伝いましょうか?」
”ううん。今すぐってわけじゃないから大丈夫”
そう言いながら先生は画面を覗き込む。
”それって、TSC2?”
「ええ。それも、あの日追加したシナリオです」
道中、魔王自ら襲撃に来るイベント。それに対しカイカを模したキャラクターが仲間達を逃がすために囮となり退場する。そんな、賛否両論のイベントだった。
カイカは画面の向こうの主人公達を操作して、先程逃げてきた道を引き返す。
本来のシナリオでは既に戦いが終わっており、誰一人いないと言うスチルが挟まっていた。だが、一切の寄り道をせず引き返した場合のみ、救出イベントと称した魔王との戦闘が始まる、と言うストーリーが追加されていた。
そして始まった魔王との戦いだが、これがまあ何とも酷いもので。
そもそもとして、ここでの魔王戦は絶対に倒せないように設定されており、規定ターン数を脱落者0人で耐久する事が勝利条件となっている。ならばどうするのかと言えば、最もステータスの高い味方に回復やバフを集中させて盾役とする以外に無いのだが、要するに救出対象である筈の相手を容赦無く盾として使うと言う、中々に鬼畜な事を要求されるのである。
「世界を救う勇者様にしては、随分と情けない戦い振りですよね」
”作った側のセリフじゃないよ、それ…”
「でしょうね」
まあそんなこんなで魔王は撤退を選び、主人公達は無事、とは言えないが全員生存となった。
画面の中からカイカの声が響く。
何故戻ってきたのだ、と。全員死んでいたらどうするつもりだったのか、と。
それに対し主人公は返す。
それでも、ここで見捨てたら一生後悔することになっていたから、と。
何ともまあ、青臭い話だ。
でも、だからこそ。
「…どうして、忘れていたんでしょうね」
”?”
「『誰かの犠牲の下に成り立つ平和』…。そんな物を認めたくなかったから、私は強さを…力を、求めた筈だったのに」
”カイカ?それってどういう…”
カイカは、先生のその疑問に答える事は無かった。
ゲーム機の電源を落とし、立ち上がる。
「仕込みは全て終わりました。ですので、後は貴女方次第です」
それだけを独り言のように呟き、カイカは部室を出て行く。
”ちょっと待って!それどういう意味…”
慌てて部屋を飛び出すも、既にその姿は何処にも無く、
それを最後に、カイカは行方不明となった。
Q 引け目ってなんぞや。
A 監視ドローンを始めとした盗聴器や隠しカメラの類を片っ端から破壊してた。
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カイカの考え方はどっちかと言うとリオに近いんだけど、そっち側に付くわけにはいかないんだよね。
リオの言い分を認めてしまったら、カイカは今すぐ自殺しなければならない事になるから。
まあ、カイカって基本的に
だからヒマリと協力する未来は残念ながら存在しないです。
ところで、
今現在、カイカからの好感度が最も高いミレニアム生って誰だと思う?