きっとカイカも草葉の陰で喜んでいる事でしょう。
「勝手に殺すな」
と言う訳で、C&Cに大幅な精神デバフが入った状態でのエリドゥ攻略戦、スタートです。
今日も、昨日までと変わらない平凡な日常が続くと思っていた。
でも私達が思う当たり前なんて物は、決して当たり前なんかじゃなかったんだ。
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何時もであれば賑やかな声が絶えず漏れ聞こえるゲーム開発部の部室。
だがその日は、重たい沈黙が部屋を覆っていた。
切っ掛けは、『世紀の大発見』とやらがあると告げたマキに誘われてヴェリタスの部室に行った事だった。
そこにあったのは、奇妙な外見をした機械。解体する事も出来無ければ起動方法すらも分からないので、故障しているのか、或いは電源が入っていないだけなのか、それすら判別出来無いらしい。
そんな話をしている最中、アリスは、まるで導かれるようにその機械に触れ、
「……起動開始」
先程までピクリとも動かなかった筈のそれらが、突如として目覚め、
「…コードネーム『AL-1S』起動完了」
青かった瞳を、赫く変貌させたアリスが、
「プロトコルATRAHASISを実行します」
それらを従え、ゲーム開発部とヴェリタスの面々に襲い掛かった。
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…結果として、ヴェリタスの部室は全壊。それに伴い彼女達も少なくない怪我を負った。
だが、モモイ、ミドリ、ユズの三人が咄嗟に動き、暴走したアリスを即座に取り押さえた。彼女が従えていた奇妙な機械達も個々の戦闘力は大した事は無いらしく、然程間を置かずしてその全てが沈黙する事になった。
これで解決…となれば良かったのだが、
一度崩れてしまった日常は、そう容易くは元に戻らない。
目が覚めたアリスは、暴走していた時の記憶を失っていた。
だが、破壊された校舎の一角が、怪我をした皆の姿が、彼女を否応無く現実に向き合わせた。
其れ等の惨状を為したのは、紛れもなく彼女自身である。
分からない。
分からなかった。
何故、あんなことになってしまったのか。
彼女の心は混乱と罪悪感で占められていた。
そして、畳みかけるように事態は動き続ける。
「そう、貴女が怪我をさせた。
──それは逃れられない真実」
そう告げたのは、ミレニアムの生徒会長、調月リオだった。
突然現れた彼女は、困惑する面々を余所に『真実』を語った。
曰く、
アリスの正体は『名もなき神々の王女AL-1S』であり、世界を滅ぼすために生み出された存在である。
それを聞いたアリスは、世界から色が失われる様を幻視した。
皆がリオに対して何やら言葉をぶつけているようだったが、それすらも分厚いガラス越しに見ているかのような、そんな感覚だった。
(アリスは……、アリスは……)
思い返すのは、廃墟でG.Bibleを見付けた時と、つい先程の事。
どちらの時も、アリスの身体は自然と動いていた。
まるで、そう在るべしと定められていたかのように。
(…ああ、そっか)
ネルが何故かリオを裏切り、新たに現れたメイド服の少女に取り押さえられる姿を視界に収めながら、アリスは悟った。
否、
「…
悟ってしまった。
「アリス…、何言って…?」
アリスは立ち上がり、リオの元へと歩いていく。
「私がいなくなれば、みんなが傷つかずにいられるのなら、…私は、消えることにします」
「アリス!?」
「ダメ!アリスちゃん!」
「アリス…ちゃん…」
「なっ……チビ、てめぇ…!」
「今だって、私のせいで、ネル先輩が傷ついて…」
”それは違う!”
「…先生、庇ってくれてありがとうございます。…でも、もういいんです」
振り返る。
その目には、大粒の涙が浮かんでいた。
「私には、もうわからないんです。今、浮かべている感情ですら、同情を誘うためのプログラムなんじゃないか、って…」
誰も、何も言えなかった。
「…それでは──失礼するわ」
リオの後に続き部屋を出て行くアリス。
然れど外に足を踏み出す直前に立ち止まり、
「モモイ、ミドリ、ユズ、先生」
顔を此方に向けないまま、呟く。
「私を…、アリス
そうして、
扉は、閉ざされた。
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そして、現在。
ゲーム開発部の部室は、肌が痛くなる程の静寂に包まれていた。
元々口数の少ないユズは兎も角、普段なら底抜けに明るいモモイも、そんな姉に呆れながらも楽しそうにしているミドリも、…そして、そんな彼女達を笑顔で見守っていた先生も。
まるで別人のように、無言のまま微動だにしない。
(…気まじぃ…)
立ち去り損ねたネルは、居心地の悪さを感じていた。
そもそもとして、ゲーム開発部はネルに対してあまり良い感情を抱いていない。
当然だ。初対面からして『クッソ忙しい時に突然襲ってきた人』である。今回にしても、リオがアリスを捕縛するための戦力として連れてきたと思ったら急に裏切って、その割には何の役にも立たずにあっさりと無力化されて、彼女達からしたら「何がしたかったの?」である。
心証が良くなる筈も無かった。
「…なあ、このままでいいのかよ?」
気まずさに耐えかねて口を開く、が、
「…ここにカイカがいれば、アリスは連れてかれずにすんだ」
「んぐっ…!」
鋭い返しに黙らされる。
(こいつら…、こんなだったか?)
だがそれよりも、ネルが感じたのは違和感であった。
ネルにとって、ゲーム開発部は問題児の集団と言う認識だった。
普段は遊んでばっかりで、かと思えば突然とんでもない事を後先考えずにやらかす。然れど仲間を見捨てるような事は絶対にしない。
だから、今回だって迷わずアリスを助けに行くだろうと、そう思っていた。
「…あと、『このままでいいのか』って?」
嘗ての彼女達であれば、その通りだった。
言うなれば『無知故の蛮勇』
それを振り翳し、立ち上がっていたであろう。
「そんなわけ、ないじゃん…」
だが、
「嫌だよ!このままアリスと二度と会えなくなるなんて、絶対いやだ!…でもっ、アリスが急におかしくなって、それで私たちを攻撃してっ、…でも、アリスはそのことを覚えてなくて…。それで一番苦しんだのは、アリス自身じゃん…。そんなアリスが決めたことを止める権利なんて、私たちには無いよ…」
アリスの想いを、理解してしまった。
「…リオ会長、わざと冷たく突き放すように話してました。きっと、自分一人が悪役になろうとしてるんです。…私たちよりもずっと頭の良いリオ会長が、アリスちゃんを殺すしかないって判断したってことは、きっともう、そうするしかなかったんです。それに、…アリスちゃんのヘイローを破壊するって言ったとき、…一瞬だけ、すごく苦しそうな顔をしてたんです。それに気付いちゃったらもう、私、あの人のこと責められませんよ…!」
リオの想いを、理解してしまった。
「…知る機会は、いくらでもあったはず。そもそもアリスちゃんが普通の生徒じゃないってことくらい誰だってわかる。なのに、見て見ぬ振りをし続けてきたのは私たち。…アリスちゃんの正体を最初から知っていれば、アリスちゃんがアリスちゃんのままでいられる方法を見付けられたかもしれない。…少なくとも、今回のことは確実に防ぐことができた。先延ばしにすることはできたはずなんです。…でも、実害をもって事件が起てしまった。そうしたらもう、リオ会長は動かざるをえない…!だって、あの人はミレニアムの最高責任者なんだから」
そして何より、
…責任の重みを、理解してしまった。
納得なんて、端からしていない。
でも、動けない。
そんな状況だったのだ。
”みんな…”
先生はそんな彼女達に何か声を掛けようとする、が。
(”…私にできるのは、
伸ばそうとした手は、力無く垂れ下がる。
『責任を取る』
そう、
アビドスでの一件を思い出す。
カイザーが何かを企んでいるという情報を得て調査に乗り出した時の事。
責任は全て私が負うと、飽く迄シャーレの部員として彼女達を動かしたのだから責任は全てシャーレにあると、そう主張した。
……
何の意味も無かった。
当然の事だった。
何故なら、当事者となるのは
結果として私の行動は、アビドスのみんなを窮地に陥らせただけだった。
今回だってそうだ。
仮にアリスを何とかして連れ戻したとしよう。少なくとも現段階では、アリスはアリスと言う生徒として今までと変わらない生活を送れるだろう。
だが、もしもリオの言った通りにアリスが『名もなき神々の王女』なる存在として覚醒してしまったら?
その結果、キヴォトスが滅亡してしまったら?
…責任など、
(”リオの見立てが間違っている可能性に賭ける?…だめだ。その可能性は無いに等しい”)
”カイカに危害を加えるというのが何を意味するのか、リオが理解していないはずがない…”
そのリスクを踏まえた上で、動かざるを得ないと判断した。その事実こそが、逆説的にリオの発言の信憑性を高めていた。
「「「”あれ?”」」」
気付く。
明らかな、異常に。
「…ねぇ、なんか、おかしくない?」
「だよね!こう、言っちゃ悪いけど…。
「うん、私も同感…。仮に勝てなかったとしても平然と逃げ切りそう…」
”もし、逃げることすらできない状況だったとしても、何らかの方法で連絡くらいは残す。カイカなら、そのくらいはやってのけるはずだよ”
そう、有り得ないのだ。
絶対に、有り得ない。
”そっか、そういうことだったんだ…!”
「先生、なにか知ってるの?」
”うん。私が最後にカイカと会ったとき、別れ際にこう言ったんだ。
『仕込みは全て終わった』
…って”
「「「!!!」」」
四人は顔を見合わせ、頷く。
そして真実を確認するために、
「ネル先輩!すっごい失礼なこと聞くんだけどさ。…カイカ、わざと負けたんじゃない?」
「
初手でぶっこんだ。
…まあ、好感度低いからね。
仕方無いね。
「…だが、ああ。その通りだ。あたしたちは奴相手に手も足も出なかったんだ。証拠にあたし以外の3人はあれ以来部屋に閉じこもって出てこねぇ。トラウマになっちまったんだ」
「やっぱり…。ていうか、何なら最初から知ってたんじゃない?襲撃されること」
「それも含めての『仕込み』ってこと?…全然ありそう」
「…だとすると、先生にしたみたいに他の人にも同じように伝言を残してる可能性が高い…!」
”その相手はカイカが信頼していて、尚且つセミナーと無関係な人物…”
いる。
あの人は自分達がカイカと出会う前から、カイカと関わりを持っていた。
確信と共に走り出す。
「ウタハ先輩!カイカからなにか聞いてたりしない?!」
「…なるほど。今が、その時なんだね」
さあ、
希望を掴みに行こうじゃあないか。
今回マジで難産で、時間掛かった割にはクオリティに納得いってない…。