守護龍はシアワセを望む   作:五行天元

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対策委員会編、はーじまーるよー。

まあ、今回はまだアビドスに先生が到着する前の話なんですけどね。


龍と黒猫の凡庸な前日

自由には、責任が伴う。

 

責任の伴わぬ自由など唯の理不尽である。

 

それは「自由と混沌」を謳うゲヘナ学園においても同じ事。

 

忘れるな。汝が理不尽を為すならば、それを上回る理不尽に襲われた時、守られる権利を失うという事を。

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キヴォトスに先生が来て数日が経過した。とは言えすぐに何かが変わるといった事も無く、私は今日も万魔殿にて大量の書類を捌いていた。

因みに、我らが議長はイブキと遊んでいる真っ最中である。あれで普段から我々以上の仕事を片付けているのだから、本当に大したものである。後は風紀委員会にちょっかいを掛けに行く癖さえどうにかしてくれれば…

まあ、無理だろうな。と諦めながらも書類仕事を続けているとスマホに通知が入る。そう言えばこれはあの日から変わった事の一つだったな、と思いながらモモトークを開いた。

 

シャーレの部室を奪還するために戦った後、私はあの場に居た面々とモモトークの交換を行っていた。というより向こうから頼んできたと言った方が正しいか?まあそれはどうでも良い。

あの日以来、こうして先輩達からよくモモトークが送られてくる。内容は様々、取り留めの無い雑談や仕事への愚痴、戦闘時に意識している事を話し合う時もあれば、同僚やら上司やらへの愚痴に対して相槌を打ったりなど、etc…

七割は愚痴だなコレ。そう思いながらも一人一人返信していく。

書類仕事はどうした、って?そんな物は尻尾一本あれば事足りる。

 

そうしていると対面に座っていたイロハ先輩が此方を見ている事に気付く。

「どうかしましたか?」

「いえ。ただ、あまり積極的に他者と関わろうとしない後輩がそうして誰かと友好関係を築いているのを見ると、嬉しいものがあるな、と思っただけです」

「…?、そう言う物ですか?」

「そういうものです」

随分と、優しい顔をしていた。

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放課後、私はゲヘナ自治区を出てとある場所へと向かっていた。その場所とはアビドス自治区にある「柴関ラーメン」というラーメン店である。とは言え私はこの場所にラーメンを食べに来たという訳では無い。

 

「お待たせ致しました。柴関ラーメン二人前です」

最も忙しくなる時間に、店の手伝いに来ているのである。

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「今日もありがとな!さっ、2人とも賄いだ。食ってくれ!」

最後のお客さんが帰りバイト時間も終わりに近づいたころ、大将が用意してくれた賄いを食べながら私ー黒見セリカは、隣で同じように賄いを食べているバイト仲間のことを考えていた。

 

そいつー竜胆カイカは、正直に言ってなにを考えてるのかよく分からないヤツだ。

いや決して嫌ってるわけじゃない。むしろいい人だと思うし、あっちからも私に対してそれなりに親しげに接してくれている、と思う。ただ、いまいち何者なのかを掴みきれていないのだ。

 

私がカイカについて知っていることは、私よりも先に柴関ラーメンの手伝いをしていること、私と同じ1年生であること、ゲヘナ学園に通っていること、あとはお菓子作りが趣味なこと。

どうしてゲヘナの学生がわざわざアビドスにあるこの店にまで手伝いに来てるのか、そもそもいつどこで大将と知り合ったのか。

以前、カイカの同僚だとかいう万魔殿?の人たちがラーメンを食べに来てくれたことがある。騒がしいけど気の良い人たちという印象で、カイカも楽しそうにしていた。けど私には、その人たちの中にカイカが一緒にいる姿がうまく想像できなかった。

 

でも、何より一番分からないことは、

「なあ、いつも言ってるけどよ。バイト代くらい出すぜ?」

「いえ、受け取る訳には参りません。私はまだ、貴方から受けた恩を返せてはいないのですから」

そう、カイカはずっと無償で働いているのだ。

そのことについて以前、大将に聞いてみたことがある。

 

『俺からすりゃあ大したことをしたつもりじゃ無かったんだがな。あの子からすれば、返しきれないほどの恩義に思えたみたいでなぁ…』

とのことだった。

 

とはいえ、うちの学校には生徒がほとんどいないのもあって、カイカのように対等に話せる同級生というのは結構貴重だったりする。カイカが案外聞き上手なのもあって、バイト終わりにはこうして賄いのラーメンを食べながら雑談に興じることが多い。普段はお互いにそれぞれの学校で起きたことを話しているが、今日の話題は、キヴォトスに来たばかりのシャーレの先生についてだった。

 

「へー、それじゃあカイカはもうシャーレの先生に会ってきた、ってコト?」

「ああ、とは言え赴任して来て早々あれ程の銃撃戦に巻き込まれることになるとは、中々に災難な話だとは思うがな」

なんというか、カイカの口ぶりからはどこか、その件の先生に対する同情的な感情を感じられた。

 

「…ねえ、カイカから見てその先生って、どんな人だった?」

「そう、だな…」

そこでカイカは箸を置いた。

 

「異常なまでのお人好し」

「え?」

「恐らくあの人は、自身の価値をかなり低く見積もっている。誰かの為という名目さえあれば、例えその場が死地であろうと何の躊躇いも無く飛び込んで行くだろう。…そんな、危うさを秘めている」

「…なにそれ、そんな大人が本当にいるの?」

「少なくとも、私の目にはそう映ったというだけの話だ」

箸を手に取り、再びラーメンを食べ始める。どうやらこの話はもう終わりらしい。

 

私もラーメンを食べ進めながら今の話について考えていた。

カイカは気に入らない相手を遠ざけようとする癖があるらしい。以前、カイカの先輩だという人が言っていた。それに私ほどではないとはいえ、大人への不信感も強いように思う。

そんなカイカにここまで言わせる先生に、私は少なくない興味を抱き始めていた。大人への不信感が薄れたわけじゃない。それでも、その先生のことは少しは信じてみてもいいかもしれない。そう思わせる程度には。

 

 

 

…なんてことを思っていた翌日、シロコ先輩がその先生を担ぎながら登校してきた。




カイカから先生への評価は、
「人格面は信頼できるけど、実績という点ではまだ信用できない」
という感じです。

前回の先生に対する突き放したような態度は、「実績を積まなきゃ信じてはもらえないよ。だから私にばかりかまけてちゃダメだよ」という忠告混じりの発言だったりします。
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