守護龍はシアワセを望む   作:五行天元

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別にね、犯罪者だからって理由で見境無く襲いかかってるワケじゃないのよ。


逆鱗に触れる

「う…ん」

目を覚ます。そこは、

 

「へ?ここ、どこ?」

見知らぬ場所だった。一瞬パニックになりかけるも、いつも憎らしいほどに冷静な友人の顔が浮かんできて、つられて私も落ち着いてきた。なんとか現状を把握しようとする。

 

(さっきからずっと揺れてるのよね…。ひょっとしてここ、トラックの荷台?)

周りに目を向ける。すると小さな隙間が空いてることに気付いた。そこから外を覗く。

 

「…砂漠…線路!?…ということは、ここ、アビドス郊外の砂漠!?」

思ってたより状況は悪いのかもしれない。再び不安が押し寄せる。

 

(どうしよう…、これじゃあみんなに連絡を取ることもできない…)

もうみんなと会えなくなるかもしれない。そんな漠然とした恐怖に襲われる。

嫌だ。そんなの絶対に嫌だ。

 

誰でもいい。誰か助けて。

 

脳裏にみんなの顔が次々と浮かぶ。

対策委員会のみんな、先生、柴大将、そして…

 

「助けて、カイカ…」

 

「…聞こえた!」

 

ーーズバァッ!ーー

 

「!!、まぶしっ!!なに!!」

急に天井が吹っ飛んだ。思わず目を閉じる。すると、飛び込んできたらしい誰かに抱え上げられ、

 

…次に目を開いた時、私は空を飛んでいた。

 

「へ?ぇええええ!!!」

「落ち着け。舌を噛む」

その声にようやく気付く。もはや見慣れた白髪に紅い瞳、

 

「…助けに来た」

竜胆カイカが、そこにいた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

セリカが誘拐された。

それを知った私はシャーレの権限を使ってすぐに居場所を特定し、アヤネの運転するジープに乗ってみんなと一緒にセリカの救出に向かった。

 

「…目標を確認」

「了解です、このまま突っ込みますよ!」

目の前にトラックが見えてきた。おそらくセリカはあの荷台の中にいる。みんなが武器を構え、

 

…その時、視界の端に白い影が走った。

 

()()は一瞬にして私たちを追い抜き、前を走るトラックと併走する。

真っ白な髪に、真っ赤なマフラー。

 

”カイカ?!”

 

どうしてここに?そんなことを考えてる間にも事態は動く。

カイカは跳び上がり、刀を抜き放つ。それだけでトラックの荷台の屋根が切り飛ばされた。

そのまま荷台に飛び込んだかと思うや否や、誰かを抱えたまま空へと飛んだ。

 

「ん、半泣きのセリカを発見」

「なんだと~!?セリカちゃんを泣かせたのはだれじゃあ~!?」

シロコとホシノが好き勝手言ってた。後で怒られても知らないよ?

トラックはそのまま走り去っていった。あまりにも一瞬の出来事だったせいで気付かなかったみたい。

 

「先生」

ジープを止めて降車すると、大きく翼を広げながらゆっくりとカイカが降りてきた。

 

「シロコ先輩、ホシノ先輩。こちら、半泣きのセリカです」

「な!泣いてなんかないわよ!」

そう言いながらセリカを地面に下ろす。いや絶対さっきの聞こえてたでしょこれ。

 

”ありがとう、カイカ。セリカを助けてくれて。でもどうしてこんなところに?”

「それは…っと、のんびりと話をしている暇は無さそうです」

音が響く。目を向けると、さっきのトラックが2台の装甲車両を引き連れてこちらへ向かってきていた。

 

”みんな、迎撃準備…”

「私が足止めします。その隙に、退避を」

そうだね。この子はこういう子だったね…

 

「そんな…!援護しますから私たちも…」

「カイカちゃん」

ホシノが、アヤネの言葉を制止する。

 

「大丈夫なんだね?」

「当然でしょう」

その言葉に気負いはなく、ましてや強がりでもなく。ただ、文字通りの意味がそこに込められていた。

 

「…わかった。行くよ、みんな」

「ちょっ!ホシノ先輩!?いくらなんでもカイカ1人に任せるなんて…」

「たぶんだけど」

 

「おじさんたちがここにいても、足手まといになるだけだよ」

そう言って、私たちをジープに押し込んでいく。

 

”カイカ!”

走り出す直前、振り向いて叫ぶ。

 

”絶対に!戻ってきてよ!”

遠ざかっていく背中。私たちにできるのは、信じて待つことだけだった。

 

 

 

「誰に言ってると思っているのか…」

 

「私は」

 

「ゲヘナの守護龍ですよ」

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前方に見覚えのあるジープの姿を確認し、私はさらに走る速度を上げる。

十分に近付いてから跳び上がり、ジープの天井に降り立つ。そのままウインドウガラス越しに話し掛ける。

 

「戻りました」

”うわぁ!びっくりしたぁ!”

…驚かれた。まあ、いきなり窓に宙吊り状態の人間が現れたら無理も無いか。

 

私は天井に張り付いたまま車内に居る先生と会話を続ける。

 

”それにしても早くないかな?まだ、3分も経ってないと思うんだけど?”

「別に、大した事はしていませんよ」

そう、本当に大した事はしていない。弾切れになるまで耐久しただけだ。

全て切り落とすとなれば骨が折れただろうが、背後を気にする必要が無いならば、銃弾を避けたり弾いて軌道を逸らすという選択肢を取ることが出来た。

そして一度弾を撃ち尽くさせれば装填のための隙が生じる。そこを狙えば容易く無力化する事が可能、という訳だ。

 

そう告げたのだが、車内から何やら絶句している気配が。

 

「いやいや、そんな一瞬で装甲車両を無力化なんてできないでしょ!」

「切れば良いだけなので」

「「「「「”ああ…”」」」」」

納得したようだ。

 

”そうだ、聞きそびれてたけど、どうしてセリカが誘拐されたって知ったの?”

「情報提供者が居たというだけです」

道を歩いているスケバン達が私に手を振ってきたので、此方も手を振り返した。

 

その後、ゲヘナ自治区近くまで送って貰い、そこで彼女達と別れた。

皆、残念そうにしていたが、いきなり学校を飛び出して来た身である故、あまり長居する事は出来ない。アビドスの皆と先生の感謝の言葉を背に、私はゲヘナへと帰るのであった。

 

…帰って来た私に待っていた先輩達からの説教の事は、此処では語る必要も無い。

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あれから数日、私はいつものように柴関ラーメンの手伝いに来ていた。

あんな事があったので、最近は少し此処へ来る頻度を増やしている。ゲヘナからでも駆け付けようと思えば直ぐに来る事も出来るが、やはり近くに居た方が早い。

それに、今日は少し気掛かりな事もある。今朝の万魔殿定例会議の事だ。

 

『風紀委員会が、ヒナ委員長の指示とは別で動いている』

…無関係であれば、良いのだが。

 

そんな事を考えていると客が入ってきた。その先頭に居た人物と目が合う。

 

「り、竜胆カイカ!?」

「…便利屋68」

見知った顔触れだった。

 

「な、なんでこんな所にいるのよ?!貴方確か万魔殿の人間でしょ!?」

「…それはお互い様だろう。それより客ならさっさと席に着いて注文を言え」

彼女達は指名手配犯であり、風紀委員と共闘した際に何度か闘った事がある。とは言え、個人的には然程嫌っている訳では無いので、一先ず客として扱う。

向こうも納得はしていないようだが、敵意が無いのは伝わったようだ。大将に注文を伝え、席に座った。

 

出来上がったラーメンを彼女達に持って行く。尚も警戒しているようだが、まあ、当然の事なので軽く受け流す。遠ざかって暫くすれば和気藹々としながら食べ始めたので、問題無いだろう。

 

手空きになった私は店の掃除をすることにした。アルの騒がしい声を聞き流しながらテーブルを拭いていき、

 

「それって、つまり…こんな店ぶっ壊してしまおうってわけですよね?」

 

ーは?

 

「おい」

伊草ハルカの腕を掴む。その手の中には起爆スイッチがあった。

 

「貴様、今、何と言った」

「ひっ」

ミシミシと握り締めた腕から音がする。いっそこのまま折ってしまおうか…

 

「待って!」

静止の声が掛かる。そちらに目を向けると、陸八魔アルが私に頭を下げていた。

 

「部下の不始末は社長である私の責任よ。だから彼女をこれ以上責めないでほしいわ」

それに、と続ける。

 

「元はと言えば私が不用意な発言をしたのが原因よ。だから今回の件は全て私に責任があるわ」

そう、告げた。

 

ハルカの顔を見る。酷く、怯えた表情をしていた。

 

「すまない。やり過ぎた」

ハルカの手を解放して、こちらも謝罪する。

 

…ポケットに入れていたクッキーをアルに手渡す。

 

「?、これは?」

「詫びだ。受け取っておけ」

やはり彼女達の事は嫌いになれない。困惑するアルの表情を見ながらそう思って、

 

ー悪寒が走った。

 

咄嗟に翼を展開し、柴大将と便利屋の面々を包み込む。

直後、轟音と共に柴関ラーメンは崩れ落ちた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

私たち風紀委員会は突然の事態に足を止めていました。

元々私たちは便利屋68を捕まえるためにアビドス自治区にまで来ていました。そして、彼女たちが潜伏していると思しき建物に迫撃砲を撃ち込んだのです。

 

…異変に気付いたのは、3発目を撃ち込んだあたりからです。

先程まで快晴だったはずの空を、突如として分厚い暗雲が覆い隠し始めたのです。

 

「おいおい、なんだよこれは」

イオリ先輩もあまりの異常事態に困惑しているようでした。

 

…その時、崩れた建物の中から、誰かが瓦礫をどかしながら這い出てきて、

 

「…は?」

「嘘…。なん、で」

そこにいたのは、私たちにとって、見知った人物でー

 

「ガアアアアアアアアアッ!!!!」

 

幾重もの雷霆が降り注ぎ、私たちを貫いた。




隕石降らせる生徒がいるなら、雷降らせる生徒がいてもええやろ。
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