守護龍はシアワセを望む   作:五行天元

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カイカがアコにキレてた内容ですけど、あれ、めっちゃ簡単に言えば、
他人(ヒト)に怪我させた上に他人(ヒト)(モノ)ぶっ壊しておいて、なんか言うことあるやろが、オオン?!」
てことです。

だから本当に、一言「ごめんなさい」って言えてれば、あそこまで拗れなかったんすわ。


責任を手放さなかった者

カイカが顔を向ける先、果たしてその人物はそこにいた。

 

「い、委員長!?いつからそこに?!」

ヒナは溜息を吐きながら答える。

 

「さっきマコトから連絡があったのよ。『風紀委員会がアビドス自治区で、独断で軍事行動をしている』ってね」

「既にマコト議長には事の子細を伝えさせて頂きました」

 

いつの間に、その場に居た全員がそう思った。

 

「…アコが迷惑をかけたみたいね、カイカ」

「ええ、それはそれは多大なる迷惑を」

正直者である。だが事実なのでアコは否定できない。

 

「それで?こんなことをしでかして、どうするつもりだったのかしら、アコ?」

『そ、その…、これは…』

「素行不良の生徒を捕縛するという名目でアビドス自治区に侵攻し、シャーレの先生を拘束しようとしたのですよ」

カイカはもはやアコの発言する権利すら許さない。そして口撃は尚も続く。

 

「大方、切っ掛けはトリニティがシャーレに関する報告書を掴んだ、という程度の話でしょうね」

 

「それを知って、そこで初めてシャーレについての報告書を自分も確認した」

 

「そして、シャーレという組織が有する超法規的な権力に危機感を抱いた。さて…、私の推論は間違っていますか?」

そこまで言って、カイカはアコを睨み付ける。

 

アコは何も反論ができない。多少大雑把とはいえ、図星だったからだ。

カイカもすぐに興味を失ったように顔を背ける。端から返事など求めていない。

 

「…よくわかったわ。アコ、貴女への処遇は追って伝える。それまで謹慎していなさい」

『…はい。申し訳ありませんでした…』

そしてアコは弱り切った姿のまま通信を切り、ホログラムが消えた。

 

要するに今回の一件は、今更な上に管轄外れな杞憂を抱いた末の暴走だ。

そもそもゲヘナにて政治を担うのはカイカたち万魔殿の仕事であり、風紀委員会の仕事ではない。

アコがしたことは明らかな越権行為であり、もしカイカがこの場に居なければ、外交問題に発展していたとしてもおかしくなかった。

 

「ヒナ委員長」

 

逆に言えば、

 

「今回の風紀委員会の不始末、貴女はどう落とし前を付けますか?」

 

風紀委員会と実際に戦闘したのはゲヘナ生であるカイカのみ。

 

「…そうね。まずはアビドス自治区で許可無しに戦闘行為を行ったことに対する対策委員会への謝罪。それと今回巻き込まれたラーメン屋への謝罪と立て直しのための費用を全額負担。…こちらは後日、アコを直接連れてきた上で行うと約束するわ」

 

被害者である柴大将、及び対策委員会からの赦しを得られるのであれば、表向きにはただの内輪揉めとして処理することが可能だ。

 

「まあ、妥当な所でしょう」

 

そう言うと、カイカはヒナと共に、未だ状況を把握しきれず固まっている対策委員会の面々の前まで歩み寄り、

 

揃って頭を下げた。

 

「事前通達無しでの無断兵力運用、そして他校の自治区で騒ぎを起こした事。此度のゲヘナ風紀委員会による問題行動については、ゲヘナ学園が生徒会、万魔殿を代表し私、竜胆カイカが、アビドス廃校対策委員会に対して公式に謝罪致します」

「同じく私、空崎ヒナが、ゲヘナ風紀委員会の委員長として、公式に謝罪する。今後、ゲヘナ風紀委員会がここに無断で侵入することは無いと約束する」

 

風紀委員会は厳密には万魔殿の傘下組織である。それにカイカは今回の件に関して、不確実とは言え予測ができていた。つまり止めようと思えば止める事もできた立場なのである。

 

故にカイカは率先して頭を下げた。それが、上に立つ者としての責任だからだ。

 

「…頭をあげなよ、2人とも」

重苦しい沈黙を、ホシノの声が破った。

 

「2人からの謝罪は確かに受け取ったよ。これ以上私たちに危害を加えないなら、これ以上追求しないからさ。…そもそも私たちがここに来た時にはほとんど終わってたし。だから今回は、これで手打ちってことにしない?」

 

二人は顔を上げる。だがその言葉に甘えて事態をなあなあで済ます事はできない。

 

「有難う御座います、ホシノ先輩。ですが後日、天雨アコ行政官には必ず直接出向かせ、謝罪させる場を用意する事を期約束致します」

 

責任は、取ってもらう必要がある。

 

「ホントに君って、難儀な性格してるよね~。そこまで堅苦しくなくてもいいんだよ?」

「…それを、貴女が言いますか」

まあ、ここで態々話すような事では無い。そう考え、カイカは踵を返す。

 

「帰りましょうか、ヒナ委員長。もうこれ以上此処に留まる理由は無い筈です。…便利屋も既に逃げ去ったようですし」

「そうね、帰りましょう…と、言いたいところなんだけど」

辺りを見回す。そこには未だに動けずに転がっている生徒たちの姿が。

 

カイカは溜息を吐く。そして空を覆い続けている暗雲を見上げる。

すると、

 

雨が、優しく降り始めた。

 

「う…ん、あれ?」

「傷が、治って…」

 

雨が止み、雲が散ってゆく。その頃には、倒れていた生徒たちも歩ける程度にまで回復していた。

 

「…これで、帰る事も出来るでしょう」

「…あなたには本当に感謝しかないわね」

改めて撤収命令を出そうとしたその時、

 

ーゴプッ

 

カイカが血を吐いた。

 

反射的に袖口で拭おうとして、できない。

 

左腕が、地面に落ちた。

 

今度は急にバランスを崩し、倒れる。

 

右脚が、置き去りになっていた。

 

そしてカイカは、意識を失った。




責任は手放しません。

意識は手放します。

あとカイカ、迫撃砲が直撃したことマコトに伝えてません。
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ヒナがホシノについて言及しなかった理由は二つ。
一つ目は、それどころじゃなかったから。
二つ目は、カイカの殺意に当てられて一時的に過去ホシノになってたから。
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