新・日本戦記   作:アオトル

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第1話:始まり

 

大日本帝国・某所

 

 

「戦前かぁ。ま、やりたい放題してもいいよね。」

 

転生してから5年、状況を正確に把握した俺『大高勇弥(おおたかゆうや)』は今が戦前という事を知りはっちゃけた。

あらゆる分野が黎明期であり、何をして歴史上初めてになる素晴らしい時代なのだ。はっちゃけない理由がない。

 

 

 

 

それからしばらくして1932年、転生チートを使って後に何でも作る某楽器メーカーに介入し、あらゆる分野でやりたい放題した結果、いつの間にか絶大な信頼と共に目を付けられて内閣総理大臣に任命されていた。

 

(よわい)29のことだった。

 

 

 

 

「はい、という訳でですね。軍事費を大幅に削減します。具体的に12%まで減らします」

 

「何だと!それでは全く足らんではないか!」

 

「海軍は反対ですな」

 

「まぁ、取り合えず理由を聞いてください。これは日本が世界一になる為に必要な事なのです」

 

「まぁまぁ、皆さん。とりあえず話を聞いてみようではありませんか」

 

「どうも。え~まず、大前提として我が国は基礎産業・基礎科学などの経済の基盤となる分野の技術レベル、これが列強と比べて全く足りません」

 

「面倒なので一概に国力と称しますが、これが低い。知ってますか?海軍の仮想敵国アメリカの国力は日本の軽く10倍はあるんですよ。経済基盤もしっかりしているので本気を出せば更に凄いでしょうね。空母なんて1週間に1隻、輸送艦は最低でも二日に3隻、駆逐艦に至っては現在我が国で計画されているものよりも優れたものを1日1隻のペースで建造が可能である事が判っています。」

 

これを聞いた会議室は驚愕に包まれる。仮想敵国としてみていた相手の実態が想像以上だったのだから無理もない。まあ、未来から見ても頭がおかしいレベルなので当然の反応なのだが。

 

「そして残念な事に、どうあがいてもアメリカと対決しなければならない日が必ずやってきます」

 

もはや声が出ない。そんな雰囲気だった

 

「本当にアメリカと戦わなければならないのかね?回避は?」

 

「無理ですね。中国市場を欲するアメリカにとって最大の邪魔者が日本です。大陸からの完全撤退をするなら可能性はありますが」

 

「…無理だな。あそこを手放すわけにはいかん」

 

「でしょうね」

 

既に満州国が誕生している現在。これを手放すのは国内の不満が爆発する可能性があるのだ。特に軍部。五・一五事件が起きてからまだ数日しかたっていない。

 

「ま、そういう訳でアメリカとの対決に備えて国力の増強にリソースを費やす必要があります。本音を言えば7%前後まで減らしたいんですけどね。現在の世界情勢を考慮するとさすがにそれは減らしすぎるという事になったので12%になりました」

 

「だが、それで大丈夫なのかね。各種兵器の維持管理には足りないと思うのだが」

 

「えぇ、足りませんとも。ですが必要最低限機能を維持して諸外国を牽制できれば問題ありません。これから発動する国力増強計画“五ヵ年計画”が完了した暁には運用兵器全体の刷新を行いますので」

 

「その五ヵ年計画が達成すれば全て旧式になるから問題ない。そういう事かね?」

 

「はい。なのでこの軍事費の大部分は新たに開発する兵器の研究に使われます」

 

「ふむ。ちなみに旧式化した装備はどうするつもりかね」

 

「一部を管理・保存しつつ、それ以外の大部分はフィンランドなどの海外に売却します」

 

「フィンランドか、理由は」

 

「現在、ドイツではアドルフ・ヒトラー率いる極右政党ナチスが躍進しており、近い将来ドイツを掌握するでしょう。そしてこの政党は共産主義を目の敵にしています。これに危機感を感じたソ連が動き出すのはほぼ確実でしょう」

 

「なぜそう思う。」

 

「ロシア革命発祥の地であり、ソ連で二番目の大都市であるレニングラードとフィンランドの国境が近すぎる事が原因です。最も近いところで30kmしか離れておらず、フィンランドがナチス率いるドイツと手を組んだ場合、フィンランド方面からの奇襲攻撃で壊滅する可能性が有ります。これはソ連の国防上無視できない問題です」

 

「30となると、だいたい議事堂から赤レンガくらいか」

 

「かなり近いな」

 

「それなら確かにソ連は動くだろうな」

 

「えぇ。そしてソ連は我々の最大の敵です。フィンランドに軍事支援を行えばその力を削ぐことができるでしょう」

 

「なるほどな。ところで、君の言う五ヵ年計画はアメリカを想定しているように聞こえたのだが、なぜソ連と戦うことを考えているのか」

 

「いい質問です。答えはシンプルに順番です。」

 

「順番?どういう事だ」

 

「…近いうちにほぼ確実に二度目の世界大戦が起きることが予想されます。そして、現在の各国の技術力とその成長速度を鑑みるに、この二度目の世界大戦が世界のパワーバランスを決定する最後の大戦になるでしょう。三度目は人類社会が耐えられません。」

 

「私は平和が欲しい。ですが、ソ連やアメリカ、欧米諸国や支那(しな)の価値観ではそれは実現できないでしょう。真の世界平和には日本の価値観でなければ実現できないと考えています。」

 

「つまり、我々が第二次世界大戦で勝利しなければならない訳ですが、それには戦う相手を慎重に選び、順番通りに適切な手段で倒さなければならいのです。」

 

「壮大な野望ですな。それで?その順番はいかに?」

 

「まずは支那、次にソ連、再び支那、からの東南アジア、状況次第で欧州、これらを経て最後にアメリカと戦います。かなりの綱渡りになりますが、上手くいけば私の野望は可能です。」

 

「上手くいかなければ?」

 

「その時は中途半端な世界平和が実現し、第三次世界大戦という名の最終戦争がやってくるだけです。この場合、我々は生きていないでしょうから考える意味はありませんが。」

 

「些か無責任では」

 

「考えなしではなく、最善か最悪の二択で最善を掴もうと努力した結果です。その時には全てが終わった後なので甘んじて受け入れてもらうしかありません。」

 

「話を戻しましょうか。これらの目的実現の為には現在の日本は役者不足も(はなは)だしい。ゆえの五ヵ年計画です。ご協力いただけますか?」

 

笑顔ではあるが滲み出る有無を言わさない圧に参加者は口を噤んでしまう。

 

「ご理解いただけたようで何よりです。では始めましょうか。世界平和への行進を」

 

 

 

 

 

赤坂某所の料亭

 

 

「いやはや、軍の連中の顔は見ものだったな。大高君。予算を増やし続ける軍には困っていたからね。実に良い気味だったよ」

 

「ふふ。私は日本の為、そして自らの野望の為にしたまで。軍部憎しでやった事ではありませんから。高橋さん」

 

「今はプライベートだから是清(これきよ)でも良いのだがね」

 

「失礼ながらこっちの方が呼びやすいので」

 

「そうか。まあいい。それよりも五ヵ年計画だったか。可能なのか?君の目的を考えればもう少し期間が必要だと私は思うのだが」

 

「えぇ、万全ではないですね。なのでそこから先はアドリブも必要になるでしょう」

 

「ふむ。理由を聞こうか」

 

「それ以上時間を掛けると第二次世界大戦までに軍備の更新・戦力増強が間に合わないからですね。」

 

「間に合わない?」

 

「私の見立てでは1940年代のどこかで確実に起こると考えています。今から五年後は1937年ですからそこからの準備期間は短く見積もって3年、甘く見積もっても5年か7年になる訳です。これ以上準備期間が短いと間違いなく間に合いません」

 

「3年か。長門型戦艦を1隻建造できるかどうかといった具合か。確かにギリギリだな。」

 

(ゆえ)の五ヵ年計画です。それ以上では間に合わない。」

 

「それでは仕方がないな。因みにそれでどこまでやれるだろうか」

 

「見立てでは一人当たりの所得が2~3倍にはなると考えています。」

 

「2~3!それは凄い。それならアメリカとも渡り合えるんじゃないか?」

 

「いえ、これでも倍以上の差が有ります。アメリカが戦時体制になればその差はさらに開くでしょう。」

 

「…まさに怪物だな」

 

「えぇ、何せ国力差10~30倍ですからね。比べ物になりませんよ」

 

「会議では10倍と言ってなかったか」

 

「正直に30倍と言っても納得してくれないでしょうから少なめに見積もりました。彼らはアメリカと国力差が有るとは理解していましたが、その数値が間違っているように感じたので修正する必要があったんです」

 

「それでも10倍か」

 

「それでも10倍です」

 

「ちなみにだが軍の連中はどのくらいと考えていたか分かるか?」

 

「海軍の山本さんは航空戦力でどうにかできると考えていた節が有るので良くて3~4倍くらいじゃないでしょうか」

 

「その認識と今の日本の状態でアメリカに挑んでいたらタダでは済まなかっただろうな」

 

「でしょうね」

 

「で、君のプランではアメリカに勝てるのか」

 

「はい。順番と過程にミスが無く、求めた結果をその都度(つど)得られたらアメリカと戦う前に支那・一部ソ連・東アジアの人口と資源を手に入れる事になります。これを正しく使えばアメリカをも超える超大国となって挑むことができるでしょう」

 

「随分と曖昧だな」

 

「仕方がないでしょう。相手は万全で全力を出せる状態のアメリカです。多少の融通は利くでしょうが、一つのミスが致命傷になりかねない」

 

実際、史実の日本も勝利条件を満たして事実上の勝利を収める事は可能だった。しかし、ミッドウェーに始まり、致命的なミスを繰り返した結果、日本の勝利の芽は摘み取られてしまったのだ。

 

「戦争回避が理想なのだがね。戦争なんて何の利益も無いのだから」

 

「それについては私も同感です。アメリカが協力的なら私も他の手段を取れました。ですが、現実はそんなに優しくはない。であればこそ、ここで決着を付けなければならないのです」

 

「まったく、嫌な時代になったものだ」

 

そうこぼしながら飲む酒は少しばかり苦く感じた是清であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お会計はこちらになります」

 

「「…割り勘で」」

 

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