Snake.memory──不滅の蛇の日記帳   作:カピバラバラ

6 / 9
ひでぇマッチポンプ──この傷を覚えているか…今ケガした

 

欲しいものがあると、人間はその欲望を満たすまで自分には足りないものがあると錯覚する。

けどまぁそうだね、欲しいものが手に入ってないのだから、足りてないと思うのは当たり前だ。

 

でも、その欠乏感は『まだ持っていないもの』を『既に手にしたもの』と錯覚するから感じるのだと思います。

包ちゃんはね、誤ちを犯す前に一度振り返れば……まだ何とかなるんじゃないかな〜って思う相手をこれまでいっぱい見てきました。

 

──あの金脈は私が欲しがったから、私のものであり奪う事は罪だ!

 

──この交渉は成功することを望んでいるから、失敗したなら家族諸共首を吊れ!

 

──その事はもう決着がついただろう?掘り返さずに黙ってろ!

 

あーあーあ、そんな事ばっかり言う子達が増えたせいで、この世界から悲劇は消えないんだな〜。

世界全ての人類の、永続的な不老を叶えるワケですから、そんな子達も楽園に招き入れなければなりません。

 

じゃあ、そういう子達の手で苦しみを被った子はどうするの?楽園の世界で、わざわざ人殺しにならなきゃ罪を償わせられないの?

うーん残念!楽園には罪も、それに伴う罰も持ち込みが禁止されています!!

 

今言った事が必要な時点で、そこは楽園なんかじゃない。贖罪だとかなんだとか、ソレらは洗い流してから辿り着く場所。

分かりやすく言うなら…──浄土、って感じかも。包ちゃん、楽園とかうんたらかんたらはよく分からないので日本での浅知恵を借りましょう。

 

「──活性薬で無尾ちゃんが起きたね。今頃初めての共同作業♡の瞬間か〜」

 

「いや〜、ちゃんと包ちゃんの思い描く通りにいくと気分が良いね!というか本編通り?本編からズレ無いように試行錯誤してたんだから、こうでなくちゃ」

 

そこで問いたいのは、『始まりの主』ってマジ役に立たないな〜って思わないか?という話。

サラちゃんの言う通り、善悪や苦痛絶望を超越してホロウに適合し、始まりの主の元に人類は至純へと至る……うんうん、なんか凄く良さそうだね。

 

──いや今救って欲しいな!?

 

ご大層な名前掲げて、私にエーテル信号をビシバシと飛ばしている始まりの主さんですが、先に救いを求める人間は救ってあげてよ、私もやったんだし。

なのにやってる事と言えばクソ溜まりより汚濁が似合う悪事を重ねる讃頌会に、オカルト地味た説法聞かせて、再創させてあげるから降臨させて〜って。

 

──寝言言ってる暇あるなら、病院で病人介護でもしてた方がよっぽど救世主っぽいよね。

 

私はこの世界で色々選別というか、なんというか、復讐の機会は大勢の人にあげてきました。

 

「あの〜」

 

「んー?」

 

「なんで僕はそのまま放置されてんですかね!?」

 

「そりゃぁ……あー、その、包ちゃんも知らない事が多くてさ、今この瞬間ってマサマサが何処に居たか上手く思い出せなくて…思い出せるまで、ちょっとまってて。あとナイスファイトだったよマサマサ」

 

「殺しきれなかったのが残念でならないけど!というか姿勢が…!腰にクルんだよこれぇ……」

 

制圧したマサマサをとりあえず人間大鳥籠みたいな奴にぶち込んでグルグル巻きに捕縛、タイミングを見て帰すつもりです。

 

「うーん」

 

「うーーん」

 

「あ、そうか。マサマサは柳ちゃんと蒼角ちゃん、二人と一緒にニコちゃんを助けてあげてたな」

 

「……そのマサマサって呼ぶの辞められないかなぁ?」

 

「えー、やだ」

 

「そもそも、何で『ネメシス』のトップがここに来ちゃってるワケ?君って表沙汰に出たらヤバい立場なの自覚してるよね」

 

「別に住処はネメシスだけじゃないもん、ホワイトスター学会とかH.A.N.D.とか、TOPSにも私の席は用意してある。今はネメシスがプロキシ活動にメスを入れられる立場だから利用してるだけ」

 

「──おっかないなぁ…。もしかしたら…ははっ、同僚になる未来もあるって事かな?」

 

「もしかしたら、ね」

 

とにかく!私が言いたいのは──みなさんそれでいいんですか!!という事です!

 

右も左もホロウとエーテリアスだらけ!人間は大体傷を抱えて闇を背負ってる!隣人はいつの間にか怪しい宗教に堕ちて!一般人の生活はTOPSら財団の動向で簡単に蔑ろにされる!

 

主要人物じゃないから、主要人物だから、役に立つから立たないから、もうそんなのうんざりじゃありません?始まりの主は具体例を出さないし!解脱した後の楽園なんて信じれないワケですよ!

 

──ああ、そうです、みんなが求めてるのは、今この瞬間の苦しみを取り除いてくれる神様、ですよね!!

 

なってあげましょう、最新最高、最大のフレッシュな神様に!と言ってもそのための準備が沢山あるんだけど。

 

「──────」

 

「……念には念を、か。包ちゃん心配でたまりません、当たり所が悪くてドボン、だなんて絶対許さないんだから」

 

「マサマサ、暇つぶし付き合ってくれてありがとね!包ちゃん出勤してきます!」

 

「えぇ…?そう言われてなんて返せば良いのかな…僕…」

 

「……………行ってらっしゃいとか?」

 

「──言ってやるもんか」

 

「えーん、包ちゃん悲しい……それじゃまたね、マサマサ。次会う時もきっと、私達は味方同士だよ」

 

嘘はつかない、ただ誠実に、実直に。

楽園を作りたいと願う存在は、誰よりも理想を願って、それでいて───。

 

幸せになっていないと、ダメなんです。

自分を幸せに出来ない人間が、他の人の幸せなんて願えやしませんから!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「プロキシ…!?プロキシ!どうした!」

 

「お兄ちゃんっ!!」

 

「だ……ぃ…じょうぶ……少し、頭が…」

 

「プロキシ!!」

 

──星見家相伝、骸討ち・無尾。

それは超極級のエーテリアスであり、旧文明の遺産にして災い。際限なく全てを切り伏せる妖刀。

 

星見家はその力を利用して、ここまでの代を重ねてきた。しかし妖刀は妖刀、その際限なき力には代償が存在する。

故に無尾は普段、星見家の財源を元に作成された『鞘』により封印されていて、当主の指紋認証以外での開閉は許されないのだが、

 

「ぐっ…───」

 

ホロウに落下して数刻、脱出口を探すアキラとリン、そして星見雅はその最中、無尾の暴走に見舞われる。

包、もとい讃頌会による入念な妖刀の封印の弱体化は、つい先程の襲撃に使われていた弾丸に込められている薬品によって画策されていた。

 

雅が切り伏せた弾丸の中に仕込まれたソレは、実用的に使われる際はエーテリアスを人為的に誘導する為の薬剤、エーテルの活性を促すものであり、無尾にとってはキツイ寝起きの一発となったことだろう。

 

「─────」

 

漏れ出た無尾の執念である狐火、それを身に受けながら鞘へと封印し直したアキラは、無尾というエーテリアスからのエーテル侵食に加え───。

 

《パエトーン》

 

「っ……」

 

脳内へと語り掛けてくる声に、頭痛を治められずにいた。ひたすらに名を呼ぶ声、求める声は幾千と重なり合い叫びになっている。

それは怨嗟の渦だ、無尾に蓄えられた感情の濁流であり、救い先を求める為の抗い。

 

持ち主に尽くを切り伏せよと呪いを掛ける無尾が、打って変わって地獄の餓鬼が如く叫び続ける。封印を施して尚響くその声を取り払う事が出来ず、アキラの意識は闇の中へ。

 

「プロキシっ──!!」

 

頭を地面に打ち付ける、その直前で雅が身体を抱き抱えリンに向けて症状を問う。だが、リンも「私もっ、お兄ちゃんも…エーテル侵食に弱いの……っ…」と、膝崩れになりかけている。

 

二人を背負っても別に走れる、けれどこのままホロウの脱出口を完全に把握してもらう前に倒れてしまえば、その命が保つかは怪しい。

狐火によって焦がされたアキラの髪が、鼻腔をくすぐりながら焦りを助長させ、更に重ねて封印の緩みによって反応したエーテリアスの襲来が星見雅を追い詰める。

 

選択する先の全てが未確定、肝心の武器は封印が弱まっている事で使えない。無手でも負けはしないがエーテリアス相手では効果が薄く、反乱軍の銃弾も切り落とせず戦闘が長引く。長引けばそれだけ二人の命が危険に犯され、死へと向かってしまう。

 

「……っ」

 

それ故、星見雅が選んだ選択肢は運任せだった。

二人のプロキシによって脱出口は寸前まで導き出されている、ならばその出口ギリギリまで辿りつければ、自身の部下によって救出……もしくは脱出できるかもしれない。

 

──一瞬の思考の最中、自身の名を呼ぶ声がなければ、すぐにでも走り出していただろう。

 

「アキラくん!リンちゃん!雅ちゃん!」

 

「誰───…包…!?」

 

「包ちゃん!けほっ…お兄ちゃんが…!って、どうしたのその怪我!?」

 

「走ってた時についたかすり傷!気にしないで!」

 

こちらへ向かって声を張り上げ、小さな身体を必死に操り走ってくる人影、いや蛇影が居た。

額から血を流し、右腕を負傷したような様子の彼女は身の丈に合わないアタッシュケースを抱え、エーテリアスと反乱軍が道を塞ぐ中突っ切ってくる。

綺麗に整えられていた鱗は血と埃に塗れ、身体のあちこちがひび割れている風にも見えた。

 

「ギリギリセーフ……かな。包ちゃん二人がホロウに落っこちたって聞いて、心配で心配で走ってきちゃいました!」

 

「けほっけほっ…──それでそんなに怪我してたら…それこそ心配だよっ…!」

 

「私は良いの、すぐ治るし。リンちゃんは優しいね〜。……雅ちゃん、武器使わずに私達三人の事守れるかな?今から二人のエーテル侵食を何とか治してみるから」

 

「治す……?この状況で、ホロウ内でそんな事が出来るのか」

 

「『棺』の開発者を舐めないでよ!このアタッシュケースもアレの小型バージョンなんだからね」

 

「……了解した、守るだけで良いのならこの場の全員、傷一つ付けさせはしない」

 

無尾を地面に置き、拳を握り締める雅。

星見家三代目虚狩りである彼女は、骸討ち・無尾の力を使わずにその地位へと認定された本物の傑物。敵がなんであれ、刀を持っても持っていなくても、違いが出るのは『殺傷力』のみである。

 

背後を見やれば、包が手にしたアタッシュケースから泡の様な薄い膜、小型の無菌テントのビニールが展開されていくのが分かった。

 

憂いは無い、そう言い切るには施術を担当する本人自体が信用に値するのかが分からないのが難点ではあるが、宗一郎との記憶、そして刀の封印に何の迷いもなく協力したプロキシに信頼されている事を念頭に、

 

「いざ、参る」

 

──虚狩りの名が示す意味を、敵対者に刻み込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「包……ちゃん…」

 

「あんまり喋らなくて良いよ、しんどいでしょ?」

 

「………うん…」

 

「アキラくんはちゃぁんと、起きてすぐ走り回れるぐらいに治してあげるから安心して眠ってて」

 

「……──ごめんね、色んな事に……巻き込んじゃった」

 

「いいのいいの、二人は包ちゃんの恩人さんなんだから」

 

「…………」

 

「んふふ、お休み〜」

 

──てな感じで、リンちゃんが気絶した所で。

包ちゃんによる現状解説を挟みましょう!!どうしてこんな状況になってるか、説明が欲しいと思いますので。

 

まずは無尾ちゃん、本編じゃ雅ちゃんにしか興味無いし、アキラくんに語りかける事なんて有り得ません。けど割と話の分かる子だったんだよね、武人気質?そんな感じで、包ちゃんは無尾ちゃんとお話が出来ます。

 

雅ちゃんのお母さんを救ったあの日───私は無尾ちゃんに、『次の継承者である雅ちゃんが完璧に君たちを使いこなす』『そうなれるように私が協力する』として、一度だけ言う事を聞いてもらうことにしたんです。

別に私が何をしなくても雅ちゃんは無尾を使いこなすし、勝手にパエトーンと一緒に試練を乗り越えるんだけど、まぁみんなそんな事は知らないよね!!詐欺?いやいや、有望株を紹介しただけですから!

 

「さて、まずは手術だね」

 

その一度きりのお願い事は何なのか、それはこの瞬間を作ってもらう事です。パエトーンの二人がダウンして、雅ちゃんが刀を手放して、尚且つ私のすぐ側にある───細工が出来るこの瞬間を。

 

はい、『パエトーンって言いながらみんなで叫んで欲しいなー』それがお願い事です。察しの良さが結構あるアキラくんを先に気絶させないと、この妙なタイミングの合流に何か気づく所があるかもしれないから。

 

不自然なタイミング、場所も分からないのにピンポイントに見つけ出した事、そしてあの乱戦で誰も姿を見ていなかった(マサマサは記憶を消すので別)てな感じで、不審な点は沢山あるのでね。

 

「『デウカリオーンの棺』起動」

 

「…うわぁ…心肺停止寸前じゃん。やっぱり走ってきて良かった、まぁ本編でも一度止まりはするんだけどさ〜。怖いよほんと、万が一ってのは」

 

「エーテル粒子の除去と並行して心肺蘇生……後は無尾ちゃんにもういいよって言って……」

 

ちゃかちゃかっとアキラくんの服の上から、ずっと脅し文句に使ってた『棺』…高周波エーテル粒子中和装置こと、クランプスの黒枝が開発してた『輝磁の匣』のオリジナルを包ちゃんの手で改造したものを使って、『棺』側にエーテルを吸収させちゃいます。

 

その効果は絶大!顔色が土色だったアキラくんにも血の気が戻ってます。人類存続を夢見る企業の本気が垣間見えるよね〜、健気健気。ホロウ内で重度なエーテル侵食にかかった患者の治療が出来るなんて、技術の進歩は本当に凄いものです。

 

「二人とも、インプラントが適合するまで弱っちいんだからもう…。それに、私が居るからってイアスちゃんも連れてこないのはどうなのさ」

 

「………辛いだろうけれど、頑張ってね」

 

雅ちゃんにはとっても大層に振舞ってましたが、もう応急処置は終わり。後はほっといても完治しちゃう。権能を使っても良かったんだけど……まぁ必要無いかな〜って。

 

「ふふん、んふふふふ」

 

本題はこっち!雅ちゃんの刀である骸討ち・無尾ちゃん!!

割と年齢が同期に近いこの子は、その全力を振るうと新エリー都を雅ちゃん一人で壊滅出来ちゃうの。

軍も他の虚狩りも何もかも関係無し、この世界でも最高峰の実力者である雅ちゃんに、始まりの主すら求める妖刀の力。これらが合わさった時に敵は居ない!!

 

──居なさ過ぎるよ!!?私でも勝てないよ〜…。

 

うん、勝てないのよね〜。包ちゃん色々シュミレーションしてみたけど、零号ホロウ内でニネヴェちゃんの力を借りてもキツイ、無理。

最終的にラスボスになって、世界を楽園へと誘うか、私を乗り越えて未来へ進むかを突き付けたい私にとって、全力出しても勝てない相手はちょーーーーっと都合が悪い。

 

ホロウ内なら死にはしないんだけど、勝てる見込みも無し。だから今こうして細工をする瞬間が欲しかったんです。

それに伏線も敷きたかった、刀に細工が!?何時の瞬間だ!ってなったらさ、やっぱ考察してもらいたいんだ。

 

アキラくんやリンちゃんがまさか……って顔しながら真相へと迫っていき、そこへ現れる証拠の数々!いやー、この為に頑張ってると言っても過言じゃない!

 

「無尾ちゃ〜ん、失礼するよ〜」

 

《…………》

 

「私の因子、来る時まで大切に食べててね!美味しいから食べ過ぎ注意!」

 

《…………》

 

「──エーテルの絶対支配権を持つ私から、エーテリアスである君は何時まで抗えるかな〜?」

 

《─────……》

 

本編じゃ、刀を鞘に収めた後…パエトーンの手によって封印に応急処置がされちゃいます。

それが施される前の、本当にこの瞬間しかない状況でやりたかったのは───無尾ちゃんの隷属。

 

今頃ビックリしてるだろうな、「騙されたッ!」って。でも包ちゃん、目的の為なら加減しない蛇なのだ。

封印が緩んでいる間に、私の体内エーテルを無尾ちゃんに喰わせて……後は放置!時間が経てばどんどん支配領域は広がって、最終決戦の時には殆ど私の力になっちゃってることでしょう。

 

喰わせるのは内臓!でもエーテルに変換して渡すとすんごい消耗するし、痛いし…いてててて…イタタタタタッ!?

 

「ごふッ゛…」

 

クソっ、めちゃくちゃ痛いけど…これで私も、ブリンガーちゃんが『妖刀の力だぁ!』って言いながらやってくるクソ遅延行為なんか比にならないぐらいの、最悪最凶の遅延を見せれるぞー!

 

私が登場する危局で、満足に星9取れると思うなよ!あ、痛い!イテテ!!?口から血が止まりませんけど!?

 

「…これで一通り終わったかな。包ちゃんよく頑張りました!」

 

「──雅ちゃん!応急処置出来たから帰るよ!!」

 

額の血を拭って、雅ちゃんを呼び寄せる。戦闘がどれだけ激しかったかは分からないけれど、宣言通りに弾丸一つこちらへ飛んできていなかった。

エージェントの皆はそんなものじゃ傷一つ付かないかもしれない、でもパエトーンの二人はヨワヨワだからね、大切に、大切に扱うんだ。

 

「終わったのか」

 

「どわぁ!?もー、空から降ってこないでよ。ビックリしちゃう」

 

「帰ると言ったな、道筋は分かっているのか?」

 

「うん。リンちゃんがキャロットに殆ど経路を書いてくれてたからね、ワープに惑わされずに帰れるよ」

 

「……ふむ」

 

「──包、感謝する。私では両名の命、救いきれぬやもしれなかった」

 

「わっ……包ちゃん嬉し〜!雅ちゃんからお礼を言って貰えるなんて…さっきまであんなに毛嫌いしてたのにさ」

 

「邪気というものは誤魔化せない、貴様がどれほど悪行を成しているかは知らないが、だとしてもこの場で二つの命を救った事実も変わらない。私はその事実に従ったまで」

 

その言葉を聞いて満足し、『デウカリオーンの棺』をしまい込み、雅ちゃんが二人を両腕に抱え───私は背中に引っ付く形で、退却の準備をする。

 

「それと、君の刀だけど…──封印はやり直しといたよ。これでも設計者だから、故障した後のメンテナスも簡単簡単」

 

「…助かる。これで魑魅魍魎を漸く藻屑へと変えられる」

 

「それじゃ後は頑張ってね、雅ちゃん。包ちゃんちょっと疲れたから寝ちゃいます!」

 

「────」

 

「二人が起きたら、包ちゃんは少し疲れただけだ〜って言ってて欲しいな。無駄な心配掛けたくないから」

 

「分かった、請け合おう」

 

後は寝て起きたら勝手に物語が進行しているはずです!パールマンは連れ去られて、ブリンガーは雅ちゃんを逮捕、逮捕からの暴走からの解放!最後にブリンガーちゃんとの決戦が始まって………。

 

ブリンガーちゃんは負けて、死んじゃいます。

 

「……ふー」

 

どうにかできるかな〜、なんとかできるかな〜。まっ、頑張るしかないか!包ちゃん、悲しいお話も救われない終わりも嫌なので、それこそ救いを求めていたブリンガーちゃんをそんな終わりに迎えさせたく無い。

 

例え捻れ、歪み、壊れていても、私は…私達は、求めただけなんだ。求めて、生きて、求め続ける、ソレは死んでもまだ終わらない。

ひたすらに、真摯に、真剣に、求めるものを求めてる。

 

ただそれだけなんだから、報われないのもなんだかね。

 

「げほっ…」

 

「…死ぬな、包」

 

「んー?急にどうしたの?」

 

「……自分の状態が分かっていないのか」

 

「眠いだけだよ〜」

 

「…………」

 

「心配しないで、雅ちゃん。本当に君は優しいね、お母さんと、お父さんが言ってた通りだ………強くて、可愛くて…優しい……」

 

「───」

 

意識を落とす、真っ暗闇の中へ。

その寸前で、空に向かって叫びたいことが一つ、下世話だったけどあったんだよね。それは────。

 

 

 

───マッチポンプ最高〜!!!!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。