星祭神社本殿利用許可証取得試験
中層試験は突破出来た。
試験の内容は人それぞれ、先輩に詳しく聞くのはダメだし、聞いたところで役には立たない。
兎も角、とある条件下で戦い、勝利する必要がある。
私の場合は物理が無効化された。
シキガミや仲魔と挑める試験ならば、クリアは出来ると思ったし、実際出来た。
思った以上に大変だったけど……
だから、中層へは進める。
LLENNネキとも合流できるし、中層でも稼ぐ事は出来るだろう。
でも、それで良いのか?
ここで楽をすると将来詰む気がするのだ。
だから高難度の試験に挑む。
自分一人、装備無しでクリアしなければならない試験。
〝星祭神社本殿利用許可証取得試験〟である。*1
ここの最後の難関がショタおじ配下の〝悪魔 モト〟らしい。
通称〝モト師匠〟。
彼は【獣の眼光】と【物理反射】【全属性反射】スキルを持ってるらしい。ランダムで弱点が付くケースもある様だが、私には意味が無い。
物理が通用しないと極端に弱くなるのが私だ。
蛮族呼ばわりは不満だが、棍棒バットを封じられると凄く弱体化するのである。
対策の一つとして【ブフ】を覚え、【アギ】の練度も上がった。
強敵には効果が少ない事も多いが、無力よりは良い。〝モト師匠〟にも効かないけど……
物理禁止だと礼子の下位互換でしかないんだけど……仕方が無い。私の魔法は礼子に教わったんだしね?
シキガミに頼って生きて行こう。
もう一人では生きていけないってのも本音。
孤独は嫌だ。
その孤独に気付きもしなかったのが昔の私だけど。
思えば色々麻痺してたんだろう。
もう過去の事……否、ようやく過去になったと言うべきか。
そのシキガミ〝礼子〟と離れて異界に挑む事にした。
甘えるのは良いが頼り切りはダメだと思った。
バイクは一人で乗る乗り物だと思う。タンデムも出来るけど、私の好みじゃない。
一人でも戦える、耐えられるって自信と実績が欲しい。
故に挑むのだ、〝モト師匠〟に。
そして師匠に挑むなら事前の準備が必要になる。
反射スキル対策だ。
モト師匠を倒す為には【時空耐性】も必要だけど、これは〝モト師匠〟と戦い、死にながら覚えるしか無いんだろうな……
物理を封じられたら、超弱体化すると言う、弱点を自覚しているんだ。
なら対策をしなければ、命がけの悪魔退治なんてしちゃいけないと思う。
そして終末後では悪魔を倒せなきゃ、ツーリングが出来ない。
私はこの趣味を捨てる気は無い!
「死ねい、ドッペルゲンガー!」
未熟とはいえ、物理貫通を乗せて殴る。【貫通撃】だ。
ここの異界には【反射】スキル持ちの悪魔が多く湧く。
仲間に化けて出てくるドッペルゲンガーの正体も看破出来る様になった。
先ずは素手で貫通を覚える。そして使いこなせる様に鍛える。権能の触り位までは練度を高めないといけない。
そこまで鍛えて、ようやく〝モト師匠〟に勝ち目が出る。
首尾よく修得出来たら、次の段階として棍棒バットで【貫通】を使える様にする。最終的にはどんな武器でも【貫通】が出来る様になりたい。
【棍棒】スキル以外は、まだ弱いけどな!
カッコよくスタイリッシュに戦える日は遠い……そんな日は来ないのかも?
否、諦めたら試合終了。私は足掻く! 【棍棒の心得】スキルを覚えたけど……
一応【メイス】スキルも覚えたもん!
まあ〝モト師匠〟を倒すまでは、武器自体がお預けなんだけど。
LLENNネキの報告
「くやしい、また負けたぁ~」
食堂で会ったLLENNネキが嘆いている。
「やっぱり難しいんだ?」
LLENNネキも師匠チャレンジを選んだそうだ。
私達の場合、星祭神社に住む気は無い。少なくとも今の所はだけど。
でもまぁ、色々と使える施設があるみたいだし、持ってて損は無い。
なにより、今後必須になる技術の練習台が確定で存在するんだもの、そりゃぁ挑むよね?*2
「うん、難しいよ。あたしは銃と〝ナーくん〟*3に頼りっきりだったんだなーって実感してるとこ」
LLENNネキは体格も良くないし、格闘では不利なのかな?
「んー? 霊力の運用で体格の不利程度はどーとでもなる」
先ずは基本を鍛え直してる状態らしい。
霊能者の基本。〝全身纏い〟〝延長〟〝分配変更〟〝性質変化〟〝形成〟〝射突〟〝放出〟の七つの技。*4
まあ、黒札なら大体〝H&Hの念〟と言えば通じると思う。
私達の場合は全身より先に〝部分強化〟を使いこなせる様になる必要があるだろう。
霊力を収束させ拳や脚に纏わせて攻撃する。最低源これが出来ないと〝モト師匠〟には通用しない。
【貫通】スキルがあるだけじゃ、意味が無いのが中層以降なんだよね。
後は攻撃を当てる為に【縮地】が必要かな?
まあ、霊力操作が必須だと思えば良いか。
「理解してても行動出来るかは別なんだよぉ~」
愚痴なら聞くけどね。
でも勝ちたいならレベル上げと訓練をするしかないのだ。
特に訓練。
レベルは重要だけど、それだけじゃダメな領域に入って来た。
レベル上げで増えた霊力を如何に運用するかが大事……実感は出来てないけど、そう聞いた。
「レベルを上げれば勝てるって思ってたけど、違うんだねぇ」
LLENNネキのボヤキに頷く。
「ゲームじゃ無いんだものね」
レベル、経験値。双方共に大事だけど、これらは前提条件でしかない。
単純にぶっ放せば勝てた時期から、工夫して使いこなす必要がある時期になったんだろう。
「ゲームで言うなら、初期ジョブの時間は終わり。上級ジョブにクラスチェンジが必要なんだよ」
たぶんね? この例えで正しいのかは知らないけど。
仲間内の戯言だ。多少間違っていたとしても伝われば良いや。
「そうだね~」
なんとなく意図は伝わったな? ヨシ!
練習と実戦
反復練習と実戦の繰り返し。
練習で出来たとしても、命がけの戦闘で出来るとは限らない。
実戦で使えないって事は練習が足りないんだろう。考える前に体が動く様に鍛える必要がある。
LLENNネキの御陰で毎日の様に放課後特訓だ。*5
二足のわらじはキツイけど、後半年で学校も卒業だし頑張ろう。
【貫通撃】は修得出来た。だからって簡単には勝てないんだけど……
今の私は武道の型を覚えただけって状態。
実戦で使う為には、どんな状況でも、不利な体勢でも【貫通撃】を使える練度と、威力が要る。
この威力ってのが物理だけじゃ無く、霊力も必要なのが厄介な所。
先輩が言うには霊力の質を上げなきゃならないらしい。
つまりどういう事だってばよ?
「うーん、説明が難しいが……存在の格の問題って言ってわかるか?」
はて?
「見せた方が早いな。まずこれが普通のパンチだ」
仮想敵の木綿くんが吹っ飛ぶ。
「次が一段上のステージのパンチ」
木綿くんは吹っ飛ぶ事すら出来ずに倒された。命中した部分が消滅している。
「込めた力自体は同等、ただ霊力を収束させたかどうかの違いだな」
実演してくれた御陰で何となく理解出来た。
同じバケツ一杯の水でも、そのまま掛けるのと、圧縮してブツケルのとは威力が違うって事だと思う。
所詮、私なりの理解でしか無いけど、そう間違ってはいない……よね? 正直不安。
「有難うございます」
お礼を言って、自分でも試して見る。
意識すれば出来ない事も無い。これを息をするように自然に出来なきゃならない訳か。
習うより慣れろだな。
「じゃあ異界で練習して来ま~す」
私はチャント進めているのだろうか? ヤルしか無いんだけど。
礼子が待っているんだ。
私が異界に潜る時には待機していてくれる。私が死んだら、魂を回収して復活させる為にね?
早く強くなって、礼子を安心させたい。
強くなる為にと無理をして、シキガミに不安を与えながら、同時に安心させたいとも思う。人間は矛盾の生き物だな。
今日も私は異界に潜る。礼子と一緒に趣味を楽しむ未来の為に。
私に出来るのは殴る事だけ
一月ほどは続けただろうか?
n回目の師匠チャレンジだ。何度死んだかは忘れたねっ!*6
「どんなにカッコ付けたくても、不器用な私に出来るのは単純な物理なんだ」
何度も死に、繰り返し戦い続けて自覚した現実である。
色々魔法は覚えたが、所詮は小細工。
私の本質はベルセルクで、本能の儘に殴るのが最適なんだ。
「だから殴る!」
モト師匠と接敵。ルーチンと化している【獣の眼光】に【ラスタキャンディ】を仕掛けて来る。
全部気にしない。
足裏で霊力を爆発させ、【縮地】と共に加速。
【獣の眼光】は【時空耐性】で耐える。ホンの一瞬、一発殴る程度の時間は耐えられる様になった。
「それなら一撃で潰す!」
残った全霊力を棍棒状に固めて【貫通」付きで思いっきり殴る!
「滅びろっ!」
後先考えない背水の陣、これで
確かな手応え。
「
MAGに還って行く〝モト師匠〟。彼には随分とお世話になった。
御陰でレベル36になったよ……
「これで一応の目標はクリア」
ギリギリ及第点だろうか? もっと練度を上げないとダメだな。
修羅勢になる気は無いし、戦闘漬けの生活もイヤだから程々に鍛えよう。*7
【棍棒】スキルがドンドン育つな……だって【メイス】より形成が楽なんだもん!
「おめでとー」
クリアした後で、先に合格していたLLENNネキに会った。
「LLENNネキもおめでとう。私、忘れてないからね?」
後半は恨みがましく小声で呟く。
星祭神社本殿利用許可証取得試験は同時に何人も受ける事になる。
多分二桁の人間が挑んでいたと思う。その中には、LLENNネキも混じっていた。
当然、中で出会う事もあった。
ドッペルゲンガーと間違えられて、問答無用で殺されたけども!(怒)
まあ仕方ないのか? F.O.Eなる文化もある。
でも性癖を聞かれて戸惑ったらノータイムで殺されるとは思わなかった。
こっちはコミュ障なんだぞ!? 知らない人に話しかけられて、咄嗟に返事が出来る訳ないじゃん!!
しかも、話題が性癖だぞ? そんなの答えられるかぁ!
LLENNネキに会った時も酷い目に遭った。
先に見つけたのは良かった。ホンモノだって確信出来たからって、普通にアイサツしようとした私が馬鹿だったのか?
イヤ、アイサツを無視するなんて、大変にシツレイなのだ! よって私は悪くない!
友達なんだし、ネタに付き合ってくれても良いじゃん……*8
LLENNネキを始めとする友人には笑われた。
殺された事より、ネタが滑って笑われた事を恨んでいる私なのだ。
秋も終わりの頃、寒風吹きすさぶ日の事である。
身も心も寒かった……
私の戦闘シーンはアッサリしがちだ
脳みそ薩摩だからね、シカタナイネw
可笑しい? 普通の黒札を書いてたつもりだったのに、修羅に染まっていく……
なぜだ!?(答え 作者の性格