【カオ転三次】ガイア連合ツーリングクラブ   作:山親父

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ツーリング回、書いてる方は楽しいけど、読者さん的にはどうなんだろう?


冬が来る前に

 ロングツーリングをするなら今の内

 

「食べ物が美味しい季節だね~」

 ガイアカレーをモグモグしながらLLENNネキが言った。

 季節は秋、確かに実りの秋とは言うけどさ?

「同意するけど、カレーには余り関係ない気が?」

 私もカレーを食べている。霊力体力の回復には最善だからね。しょうがないよね。

 デザートに柿があるのは、秋らしいのかな?

 

「雪が降る前に、どっか行こうよ」

「良いけど……」

 でも何処に?

「秋の味覚が食べたい!」

 秋……何が良いかな?

 

「秋刀魚とか如何?」

 ひょっこりとキノネキが顔を出す。

 

「良いね♪ あっ、でもキノネキとは行かないよ!」

「どうせ行けないよ、暫くは待機だもん」

 紅海に輸送船が居る間は、海魔ラハブが出る可能性を考慮してキノネキは動けない。

「出て来るなら、一発で滅ぼしてやるのに、チキンがよー」

 キノネキがオコである。

 

 無理もない。ヨーロッパでトンデモナイ悪魔と戦い、石化して帰って来たら、自分の派出所が大型支部になっていた。仕事も当然増える。

 前回のロングツーリングに参加したのはデスマーチに入る前に英気を養いたかったかららしい。

 それなのに〝キノネキマスツーお断り〟を喰らって、精神にダメージを受けてしまった。

 

 デスマの間に待機、こんな生活が続けばストレスも溜まるだろうね。お労わしやキノネキ……

 流石にコレを見捨てるのは可哀そうだ。

 そう思って、私達主従とLLENNネキで手分けして手伝ったけど、焼石に水。

 潰しても潰しても、時間が経てば復活しやがる! 賽の河原かぁ!!

 ガイアの術者が地脈を整えてくれて、ようやく安定してきた。

 

 だから私達は気分転換をするべく、ツーリングを計画し始めたんだけど……

「チクショー、ボクだってお魚食べたい! ツーリングしたい!」

 責任感が強い人だし、仕事を放り投げる人では無い。けどストレスが凄そうだな?

 

「お土産、買ってくるね……」

 LLENNネキも気の毒そうに見ているだけだ。

 

 秋刀魚、秋刀魚、秋刀魚苦いか、しょっぱいか。

 

 さて、食べに行くなら県外になる。山梨県は海なし県。

 秋刀魚の名産地と言えば、北海道に東北かな? 流石にソコまでは行きたくない。そうすると……

 

「千葉県の銚子市とか?」

「ほほう! 良いですな♪」

 

 秋も終わりの今日この頃、旬の秋刀魚は美味しいだろう。

「行くか?」

「行こう!」

 そう言う事になった。

 

 

 出発地点は相模原

 

「今日はワタシ達だけかぁ」

 私達主従とLLENNネキが相模湖を見下ろしている。

 LLENNネキのトラポートで相模原派出所へ移動してからのツーリングだ。

 メシアン対策の小細工である。

 常に同じ場所から出発してたら不味いかもだしね?

 メシアンが多い神奈川県を通るルートだからか〝お天気ネキ〟や〝250ニキ〟は不参加だった。

 警戒するのは良い事だよね?

 本人達はマスツーリーングが楽しかったらしく、『メシアン如きを恐れて趣味を楽しめないのは悔しい』って事で、レベル上げを頑張っている。

 このままモチベーションを維持できれば、中層に来るかも知れない。

 

 メシアン対策の話を続けよう。

 全ての情報をシャットアウトは出来ない。

 メシアンにもガイアの霊能者が度々、北神奈川支部へ仕事に来るってのは知られている。

 協力者は私達だけじゃ無いし、その他大勢に紛れていると思うけどね?

 でも油断は禁物。

 意外な所から情報がバレる事もある。

 

 だから居場所のヒントになる情報は減らした方が良い。

 リアルタイムでSNSに写真なんてのは止めた方が良いのだ。

 

 まあ、私はアカウントすら作ってないけど。

 私は兎も角、礼子みたいな美人さんやLLENNネキみたいなカワイイ娘の写真なんて上げたらどうなる事やら?

 特定班と呼ばれるネット民が怖い。

 彼らが騒いでメシアンが反応する? 可能性はある。心配し過ぎかなぁ? 用心に越した事は無いよね?

 

「認識阻害の呪符良し、同じく認識阻害の腕輪良し、霊力のコントロール良し、ステルス良し!」

 指差し確認。

「ブレーキ良し、ブレーキランプ良し、ウインカー良し、ライト良し! リト君も万全!」

 私達はキノネキを見習って、長距離運転前にバイクの動作を確認する。

 付喪神バイクだし、異常が有れば自己申告してくれると思うけど、バイクに乗るなら安全確認は大事。

 カブみたいな小排気量バイクは車検も無いし、バイクが正常に動くように管理するのは、乗る人間の義務だ。

 

 終末が来たら、車検なんてシステムは消えそうだけどね。

 

「んじゃ、先ずは国道20号だねー」

 

 三人でのツーリングは馴れてるし、通信の呪符もある。

 アバウトに行こう。

 川崎からアクアラインに乗れれば早いんだけど、残念ながら原付二種は通行禁止。仕方が無いから東京を経由して千葉へ向かう。

 8時出発だから4,5時間も有れば着くよね?

 下道オンリーだから、移動時間は多めに見積もったつもりだけど、どうなるかな?

 お昼は秋刀魚と決めているのだ!

 

「千葉に着いたら、トラポート地点を登録したいな~」

 東京都は厄ネタの宝庫。メガテンシリーズで崩壊するのがお約束な場所だ。

「確かに、終末後で東京経由のルートが使えるとは限らないよね……」

 千葉にガイア連合の関連施設ってあったっけ? 丁度良い場所が有れば良いけど。

 終末が来たら、アクアラインの制限も意味が無くなるのかな? それなら、川崎経由で千葉に渡れる。

 そもそもアクアラインが通れなくなる可能性もあるのかな?

 

 まあ、トラポートで行ける場所が増えるのは良い事かな? って、LLENNネキ頼りの私が口出しして良い事じゃ無いや。

 

「八王子を通って新宿まで行くのは確定で良いかな?」

 LLENNネキの提案に頷く。

「道の混み具合で都内のルートは変えるとして、レインボーブリッジを目指せば分かり易いかしら?」

 礼子の提案にも頷く。

「じゃあ、臨機応変にノンビリ行こう!」

 朝の通勤ラッシュは避けられると思うけど、どうだろうね?

 

 

 都内はやっぱり混んでいる

 

「まあ、こうなるよね」

 諦めが入った言葉。

 分かり易く国道20号を走り続けたのは失敗だったんだろうか?

「思った以上に混んでる……」

 これでもピークは外したんだけどな。

「しゃあない、ノンビリ行こうよ」

 LLENNネキに賛成する。

「慌てる必要はないわ。秋刀魚は逃げないもの」

 礼子の言葉はもっともだ。

「そうだね、無理なすり抜けは嫌いだし、危ない真似をして急いでもね?」

 通勤で遅刻しそうとか、すり抜けをする人にも相応に理由はあるんだろうけどさ。

 

 多少のロスは計算の内だ。

 

 最悪、無理なら諦めてトラポートで帰還って手もあるんだし。

 最後の手段だけどね。

 

「一応渋滞じゃないのかな?」

 トロトロ運転だけど、車の流れは止まっていない。

 なら、このままで良いや。変に裏道を走ろうとして迷う方が時間のロスは大きい気がする。

 

 左折して国道1号線を南下する。

 

「東京タワーが見えてきたね♪」

「寄りたいの?」

 

「ん~? 寄って行こうかな」

「そうしようか」

 こういう時には礼子が静かだ。この娘は私の希望を優先してくれる。

 

 東京タワー。観光地としては陳腐化したのかも知れない場所だ。

 それでも、観光客はソコソコいるし、展望台からの景色は見事だね。

 チョット展望台に昇っただけ。

 休憩ついでの小観光。時間にして30分足らずの寄り道だ。

「こういう機会に見ておかないと、終末が来たら、見れなくなるだろうし……」

 LLENNネキがポツリと呟く。

 

 何時、終末が訪れるのかは、不明だけれど、何時来ても可笑しくない状態だ。

 

 こういう何気ない観光、平和な景色も、貴重な思い出になる時がきっと来る。多分遠くない未来に……

 

 

 レインボーブリッジ

 

「上にも道があるって不思議な感じだねー」

 この橋は二階建て、上部は高速道路で一般道は下部。

 横には〝ゆりかもめ〟の線路がある。

「わかる」

 のほほんとお喋りしながらの安全運転。

 東京湾の景色は綺麗だけど、余所見は厳禁だ。

 

「この橋って夜に外から眺める場所じゃないかな~?」

 確か2005年以降はライトアップされてたハズ。

 その時は、また見に来ても良いかも? 終末が来てなければだけど……

 

「この橋もフィクションよろしく、壊されるんだろうね」

 ゴジラに何度も壊されてた気がする。この世界では悪魔に壊されるのかな?

 

 そもそも東京に来ること自体が稀だし、次の機会があるのかも不明だ。

 ただの空想、特撮好きの妄想に過ぎない。

 

 ホントに妄想で終われば良いのに……

 叶わぬ願い。ショタおじが断言する以上は終末は避けられない。

 少しでも終わりの日が遠のくよう、終末が来ても生き残れる様に鍛えるしかない。

 

 偶の息抜きなのに、変な事を考えてるな?

 簡単にゴジラに壊されるレインボーブリッジが悪い!

 

 

 千葉県に来たよ

 

「ここまで来て、テーマパークをスルーして漁港に向かう。女子高生として、それで良いのだろうか?」

 LLENNネキが悩んでいる。今更じゃないかな?

「私は自分に正直に生きている。ネズミなマスコットより、体は秋刀魚を求めているのだ!」  

 夢の国よりも秋刀魚だ。夢より食欲! LLENNネキもそう思わないか?

 

「普通の女子高生じゃないんだし、今更だよねー」

 

 そうそう、目的はアトラクションでは無い。美味しい秋刀魚なのだ!

 と言う訳で、浦安市は素通りである。船橋市もスルーしよう。

 

「そろそろ千葉市に入るね」

 

 時刻は11時。

「どうする? ここで一休みしようか?」

 下道縛りの原付二種だから、ここから目的地の銚子市までは2時間程かかる。

「うーん、cubネキって疲れてる?」

「全然」

「だよね? このまま進もうよ、直行すれば13時には着く。遅めのお昼って事で!」

「了解」

 なるほど、こうして人は距離ガバになって行くんだ……*1

「慣れていくのね、自分でもわかる」

「ホントは慣れちゃダメなんだよ? お天気ネキ達と一緒の時は自重しないとだよ!」

 そーだね。

 でもキノネキの気持ちもわかる様になったかも知れない。

 それなりに高レベルの覚醒者だと4~6時間は休みなしで走っても、平気なんだもん。

 悪魔の襲撃がある異界に比べたらイージーだし。 

 

 

 観光? そんな事よりお魚だ!

 

「朝なら、もっと活気があるんだろーねー」

 LLENNネキが呟いている。

 

 銚子市の漁港に来た。

 一応観光になるのかな? 

 市場は15時までやってるみたいだけど、チョット覗いてお終い。

 

 目的は秋刀魚なのだ!

 

「んーとぉ、キノネキから聞いた、お店は此処かな?」

 漁港の側の小さなお店。

 以前キノネキが食べた店で、美味しかったとオススメされた。

 成り行きで知り合ったんだって。

 なんでも、悪魔の所為で漁船が壊されて困ってた所を、キノネキが付喪神漁船で助けたらしい?

 

 良くわからないが、キノネキってばお魚大好き人間だからなぁ。

 お人好しだし、美味しい魚の為なら、身銭を切る位はするだろう。

 どうせ、お小遣いの範疇だし。

 

 前回来た時のキノネキは、真アジのタタキとナメロウをおかずに、どんぶり飯を3杯もおかわりしたそうだ。

 すいません、私達もそれくらいは食べます。なんなら自重した方です……

 推定一般人だろう女将さんには言えないけど。

 

 

「キノちゃんの友達だね? 沢山食べていきなよ」

 キノネキから私達が来る事を聞いていたみたいだ。

 やさしい微笑みと共に聞かれた注文に炭火焼の秋刀魚定食を三人分と答えた。

 

 炭火で焼かれる秋刀魚の匂いがたまらん。

 網の上で皮がパチパチと音を立てて弾け、炭火の熱で透明な脂がジュワジュワと滴る。

 火力の調節の為だろうか? 左手にペットボトルを持ち、時折炭に水をかける。

 すると煙とともに、新鮮な魚の脂が焦げる香ばしく美味しそうな香りが広がって……

 思わず涎がじゅるり。

 目の前にお盆が置かれる。

 秋刀魚にご飯とお味噌汁、お新香付き。秋刀魚には大根おろしとスダチが添えられていて、これぞ正しい日本の定食!

「召し上がれ」

「「「「いっただきまーす!」」」 

 箸を身に入れると、皮はパリッと小気味よく割れて、中からはしっとりと蒸された純白の身がコンニチハだ。

 ひと口頬張れば、口いっぱいに上品な脂の甘みと旨味がジュワッと広がって、皮のほろ苦さが絶妙に絡み合って……

 大根おろしにスダチは最強! 異論は認めない!

 

 美味しくて夢中で食べた。おかわり食べようかな? って迷ってたのがわかったのかな?

 

「追加はいるかい? 今ならとっておきも出せるよ」

 って聞かれた瞬間。

「「「お願いします」」」

 3人共に反射で答えていた。

 

「表の札を準備中にしといたぜ」

 そう言いながら、漁師をしている旦那さんが扉を開けて入って来た。

 準備中?

「素人さんには見せられない食材があるのさ」

 ニヤリと笑う、海の漢は渋いな。でも素人はダメ? なんだろう?

 

「じゃあ、炭火焼きから始めるよ」

 そう言って取り出したのは〝骨なし秋刀魚〟!? 

「オカルト食材がなんでぇ?」

 LLENNネキの驚いた声。

 

「はっはっは、俺もガイア連合所属なのよ。しがない銅札だけどな」

 下田の三羽烏なる銀札の漁師達と友人で、オカルト食材の入手ルートを持ってるそうだ。

「異界での養殖が始ったばかりでな、覚醒者にしか食わせられん。量もねえしよ」

 キノちゃんの友人なら、もてなしたいからなって豪快に笑っている。

「試食だと思って食ってくれ。値段はサービスするからよ」

 

 骨なし秋刀魚の焼ける良い匂い。

 女将さんが熟練の技で焼いている。

 

「骨なし秋刀魚のづけ丼とナメロウもあるけど食べるかい?」

 返事はノータイムでYESだ。

 

 そして箸を身に入れて、私は壊れた。

 

 

 心は秋刀魚を求めている

 

 右手はお箸で左手に醤油

 

 炭火焼きに大根おろしを添えたら不敗

 

 豪快な、づけ丼があり

 

 新鮮な、お刺身もある

 

 旅人はここに三人

 

 美味いメシに舌鼓を打つ

 

 ならば、細かい事に意味は不要ず

 

 この体は……無限の食欲で出来ていた!

 

 

 気付いたら、心の中でエミヤ擬きの詠唱を唱えていた……

 

 なんて恥ずかしい、口に出して無いよね?

 

「小熊、言い辛いのだけどね……通信の呪符を付けた儘よ」

 

 えっ!

 

「cubネキ、ネットミームに汚染され過ぎw」

 

 二人には聞こえていただと? 無意識で伝えていたと言うのか!?

 礼子には沈痛な表情で、LLENNネキには悪戯っ子の表情で頷かれた。

 

 なんてことだ、主人の威厳がぁ。それにLLENNネキに弄られるぅ~!

 おいは恥ずかしか! 生きておられんごっ!*2

 

「こんな美味しい秋刀魚を前に自害するの? じゃあワタシが食べて上げる♪」

「それはダメ!」

 

 じゃれ合いながら、美味しい食事を続ける。

 

 確かに世界はオカシクなりつつある。

 でも、人間もチャント終末に備え始めているんだ。

 付喪神漁船に骨なし秋刀魚。まだ小さな変化かも知れないけど……それでも終末への備えを始めた人が此処にもいる。

 それが何故か嬉しかった。

*1
お前も距離ガバにならないか?

*2
通信の呪符を付けた儘である




キノが主役なら、事件が起こるのに、小熊だと平和に終わる? 
これもキャラ付けの結果か……
無理に戦闘を入れるのも違う気がするし
秋刀魚の描写にはこだわって見た。時期外れ? 細かい事は気にするなw
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