【カオ転三次】ガイア連合ツーリングクラブ   作:山親父

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普通の黒札が書きたい
バイク乗りを増やしたいのと同時に、こういう思いがあったんです

マカーブル氏からFAを頂きました
挿絵として使用しています


私の相棒

 ショタおじが用意する地獄は覚醒修行だけでは無い

 

 私は一応覚醒している。

 ぶっちゃけ事故で運よく覚醒しただけ。

 あの時、無残ニキに会って無ければ、どうなって居ただろう?

 

 何も知らずに暮らせていたかも知れないし、悪魔にモグモグされていたかも知れない。

 まあ、所詮はIF。

 

 私は悪魔退治に偶然居合わせ、覚醒した。

 これが現状だ。

 

「終末が迫る中、ガイア連合に合流できただけでも幸運かな?」

 

 苛酷な覚醒修行もしなくて済んだし……

 

 終末を乗り越えて、普通の生活をするなら覚醒は大前提。

 覚醒出来なきゃ、安全な所に引き籠るしかない。

 と言うか、そもそも覚醒してないと生存する事自体が難しくなる……

 

「覚醒しないと呼吸すら無理って、やっぱメガテン世界はクソだな!」

 

 そんな私が現在悩んでいるのはレベル上げの為の前提条件を知る事。

 具体的には私の適正。

 例えばどんな武器が向いているのか等の条件を知りたいのだ。

 

 出来るだけ速やかにレベル上げを始めたい。

 一応、目立たない様にはするし、警戒もするけど、メシアンに補足されたら不味いのだ。

 雑魚な私じゃ、あっさり捕まりかねない。

 だからって星霊神社に籠るのもね。

 安全だろうけど、自分の生活や将来を捨てるって事だと思う。

 

 我ながら煮え切らないとは思うが、思い切れない。

 終末が何時来るのかは不明なんだから。

 

「理想は今週末からレベル上げを始める事、無理なく進める為に自分の適性を今すぐ確認したい」

 言葉に出すと、無理があるよね……

 

 こんな何気ない言葉を捕らえて喜々として地獄を薦めて来るショタおじって頭ヒーホー族が側に居たのが我が身の不幸だ。

 

「100年ボタン?」*1

「時間が無い俺らの為に作ったんだよ、精神のみを加速させて修行できる」

 

 ふむ? 精神のみだから肉体は無事だし、試行錯誤も出来るのかな?

 

「魂の強度は上げられるよ? 具体的には耐性の獲得辺りだね」

 

 ふーん、時間の短縮は確実なのか……

 

「なら、やって見ようかな?」

 

「一名様ごあんなーい♪」

 

 

 止めときゃ良かった!!

 

 少し考えればわかったハズだった。

 

「耐性を得るって事は、何かに耐える必要があるって事なのに……」

 後悔先に立たず。

 現在、炎で焙られている。熱い、痛い、苦しい! 死にたくなーい!!

 

 死ぬんだけど。

 

 死んでもワンモアセッ! って繰り返し。

 耐性を得るまでリピートって事か?

 痛いのヤダー!!

 でも気絶は出来ない、死んでも死ねずに生き返る。

 

 地獄じゃ無いか!!*2

 

 えっ? 未覚醒だと覚醒する為に、死んでも生き返る範囲で何度も殺される? 死因はランダムで飽きない?

 

 それよりはマシかな??

 って騙されるかっ! 体感では区別が付かない! どっちにしろ死ぬほど痛いのには変わりがないよ!!

 

 修羅勢候補はこんな状況でも他のスキルを習得する為に訓練出来るらしい。

 頭オカシイ! 痛くてそれどころじゃない!

 のたうち回る以外の行動なんて出来るかぁ!

 

 やっとの事で【火炎耐性】を得たと思ったら、次は氷結ですって?

 うん、知ってた……

 鬼! 悪魔! ショタおじ~!!

 

 結論、幾つか耐性は得たけど、スキルの修行は無理だったよ。

 

 

 教官教えて下さい

 

 素直に教官役の先輩にお願いしよう。

 出来るだけ早くシキガミは用意した方が良さそうなんだけど、どのタイプにするかで迷っている。

 同居人が増えるのもペットを飼い始めるのも説明が面倒。

 武器型で隠し持てれば一番良い気がするんだけど、そもそも武器が使えない可能性もあるのだ。

 

 そこで、私が使い易い武器って何なのか? を調べている。

 

「銃適正は無し、剣や刀も無理、斧や槍もダメ、弓はそもそも上手く引けない」

 我が身の才能の無さに悲しくなる。

 幸い耐性には恵まれてて、基本的な耐性は身に付けたから戦えないって事はなさそう?

 耐性があるからって痛みが平気な訳じゃ無いのは注意しないと。

 てか普通に痛いのヤダ!

「単純に殴る武器が良いのかな……」

 避けるのも下手だから、敵の攻撃に耐えつつ、それ以上に殴るスタイル?

 

「そうだな、幸い耐久(HP)は高いから鎧さえマトモなら戦闘は出来るだろう」

 初期スキルが【活脈】だった。

 タンクをしろと言う事か?

 

「痛いの嫌なんだけどな」

 

「トラウマで引き籠らないだけタフな方だぞ?」

 

 そうなのかな? 嫌だけど、超嫌だけど、あっさり殺されるのは、もっと嫌なだけだ。

 痛いってだけなら、我慢も出来る。反撃も出来るし……

 

 流石に反撃も出来ずにジワジワと殺されるのは耐えられなかったけど。

 

 とりあえず金属バットで戦ってみる。

 

「敵に当たらない!?」

 仮想敵の一反木綿に当てられない(愕然)。

 

「おおう……今すぐの肉弾戦は無理かもな」

 そんな!? じゃあ、どうすれば??

「武器は練習するしか無い。後は魔法スキルに期待かな?」

 アギ位なら勉強すればイケる? でも前衛が必須だし時間も必要だよね? すぐさまレベル上げをしたいのに……

 武器シキガミもダメだとしたら、手詰まりじゃないか?

 うーん、武器はダメ、動物型はペット不可だった気がするし、人間型はもっと無理? 詰んでる??

 

「諦めたら試合終了、何か方法は無いかな?」

 

 うーん、距離があると避けられる? 私の攻撃が見切り易いのか……

 

「じゃあ、これなら!」

 思い切って武器を捨てて素手で殴って見る。

「当たった!」

 反撃も当たるけど。

「痛いなぁ、もう!」 

 でも負けない!

 駄々っ子パンチでもダメージは入る。

 なら倒せるはず!

 

「勝ったけど痛いよ~(泣)」

 勝ったと言っても所詮は模擬戦。クリーンヒットを何発か当てて判定勝ちなだけ……

 防具を始めとする装備は必須だな。性能も出来るだけ良いのにしよう。

 実戦なら、連続での戦闘もあるだろうし、一対一とは限らない。

 手加減されててボロボロなんじゃ、私を殺そうとする悪魔を相手に出来るかどうか?

 泣いてたら、教官さんの補佐、多分シキガミさんが回復魔法を掛けてくれた。

 

「お前さん、思い切りが良いなあ……ガンギマリって言うには泣き言が多いが」

 苦笑なのかな? 普通は痛ければ泣くでしょ! そう反論してみる。

「普通は痛いと逃げるんだよ」

 逃げられるなら逃げたいですよ? 逃げて助かるなら一目散に逃げますって!

「でも逃げられるとは思えないですし……」

 終末が秒読みっぽい状況を考えると、一時的に逃げたとしてもなぁ……

 終末までに最低限の実力を付けないと死んじゃう。下手すると死後、魂まで悪魔にモグモグされちゃうのだ。

 

「さて、総論だ。現状では格闘で戦うしか無さそうだ、それには防御力が不可欠! シキガミを前衛にして後方支援に徹するのが無難だが?」

 

「でも同居人を増やすのも問題なんですよね」

 ご近所付き合いだってある。最低限だけども……

 

「鎧型って選択肢も有るがな?」

「鎧型? 持ち歩く事は出来ますか?」

 イザと言う時に使えないのは困ると思うのだ。

 

「難しいな、スキル次第ではあるんだが……」

 【変化】系のスキルは需要が多い。当然、値段が高くなるのか……

 キノネキが支援してくれるとは思うが、甘えすぎると後が怖い。

 

「まあ、武器も諦めずに練習してればスキルが身につくだろう」

 

 そうですね、【メイス】スキルの練習はしようと思う。

 

「それから一言忠告だ。シキガミを如何するかで悩んでるようだが」

 忠告? なんだろう?

「シキガミってのはハニートラップ対策でもあるんだ。人間型は無理だって決めつけないで、状況を整える方向でも良いと思うぞ? ガイア連合ってのは、お前さんが思うより手が長いぜ?」

 ふむ? 戸籍は勿論、色々と誤魔化せるのか……

 なら、意外といける?

 

 

 色々と相談しよう

 

「シキガミを迎えるにあたって、何処まで工作出来るのか? って事ですか」

 取り合えず事務で聞くのが筋だろう。他に相談先も知らないし。

「色々可能ですよ。例えばcubネキの隣の部屋を確保するとか」

 既に住人は居るけど?

「20代の独身女性ですね。ガイア系企業にお勤めですし、お付き合いをしている男性もいらっしゃいます」

 ほえ?

「同棲を考えているみたいですし、少々後押しすれば引っ越しますよ」

「そこまで調べてるんですか?」

「黒札の御近所ですから、一通りは……メシアンが潜んでないとも限りませんし」

 うわ~、チョット引くわー。

「何言ってるんです。〝何時の間にか御近所さんがメシアンと入れ替わって黒札を取り込みに掛かる〟良くある事ですよ」

 ……これは、私の危機意識が低かったのかも知れない。

「ですから先んじて、隣の部屋を確保するのもアリです!」

 お隣の彼女さんは、幸せの為に引っ越すのか……

 それなら問題無い? お金の問題はあるけど、稼ぐ当てもある。

 

 後は覚悟の問題か~。

 ダメなら、現在の暮らしを諦めて、星霊神社に引き籠るしか無いんだよね?

 

「なら、ヤルだけヤルか」

 

 

 帰宅

 

「疲れた……」

 一度、アパートへ帰って来た。

 たった二日の事なのに、へとへとだよ……体感では100年経ってるしな!

「それにしても嫌な話だ」

 しかも現在進行形で色々ピンチだってさ。

「命に貞操、魂の尊厳、これら全部が纏めて危ないって」

 思わず絶句する。

 それを行うのが自称天使と、その家畜になり下がったメシアン共。

 ゲームを知ってるから色眼鏡で見てしまう。

 先輩の話だと、そんな偏見の斜め上を行くのがメシアンだってさ……

「どんなクズだ」

 食堂で同席した先輩の話だと〝脳缶〟や〝メシアを産ませる部品〟位なら可愛い方だって?

「詳しく知りたくない……」

 自衛の為にも最低限の知識は必要なのかも知れないが、考えるだけで気分が悪くなる。

 伝聞だけでも吐きそうなのに、資料には写真も付いてるらしい。

 読むなら覚悟が必要だ。

 

「こっちから近寄らなくても、向こうから寄って来るから用心はして置けって……」

 ハニートラップだって当然やる。

 イケメンには注意だ。私はどっちかと言えば女の子に惹かれる気もする。美人さんにも注意だな。

「元々、ボッチだ。急に近寄る人間は警戒対象なのか」

 つまり一律、警戒が必要だと言う事。

 変に身構えて目立つのもマズイ。出来るだけ自然体で霊力も漏らさない必要がある……

「100年ボタンで修行させたのは、こういう意味が?」

 感謝はする。せざるを得ない。

 それはそれとして恨むけどな!

 

 周囲の人間を観察する必要もある。

 目立たないように、何時でも逃げれるようにだ。

「普通の生活って、こんなに気を張らなきゃいけないものだっけ?」

 逆に言えば、今まで地雷原に気付かずノホホンと暮らしていたって話なんだが。

 また週末には星霊神社に行かないと……

 とりあえず、地元で出来る修行は続けよう。

「瞑想とかかな?」

 バイクの免許も取らないとね。

 明日は放課後に自動車学校に行かないと……

 

 そんな事を考えながら眠りについた。

 

 

 私の相棒

 

 時間は飛んで一月後。

 免許も取れて、今日はバイクが来る日。

 キノネキが持って来てくれると言うのでアパート前で待っていた。

 

 待つ事暫し、白い軽トラが来て止まる。

 運転席からキノネキが降りて来る。

「やあ、cubネキ。お待たせしたかな? これが君の相棒だ」

 挨拶もソコソコに荷降ろし作業に入るキノネキ。

 軽トラから降ろされる、ピカピカのスーパーカブ。

 随分新しく見えるね?

 

「1978年製スーパーカブ70スタンダード。排気量72㏄、5.7馬力、キックスターターのリターン三速*3

 

 キノネキがセンタースタンドを立てて、私に乗るように促して来る。

 

「燃料4.5㍑、1㍑辺り60㎞は走ると思う。乗り方にもよるけどね」

 

 勿論付喪神化してある。それが、わざわざ古い、でも大切にされて来たカブを選んだ理由なのだから。

 

「付喪神に成ってるから、成長すれば性能も上がるよ♪ この子がどう育つのか、楽しみだね」

 私と共に成長していく相棒。バイクとしての性能が上がるのか、それとも戦う為のスキルを身に着けるのか?

 先の事はわからない。でも私はこの子が気に入ったし、この子も私を認めたと思う。

 

 お互いの印象が良くなるようにって、キノネキが車体を再塗装してくれていた。

 ブレーキなんかの消耗品も交換済み。

 

「それでピカピカなんですか……」

 メーター部分を撫でてみる。

 跨ってからキックペダルを勢い良く踏み込む!

 

 バルルン!

 

 一発でエンジンが掛かった。

 その途端、微風を感じる。ただの偶然、でもカブに早く走ろうって言われた気がする。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「良い子ですね、私を旅に誘ってるみたいです」

 思わずキノネキに笑いかける。

 

「じゃあ、これを付けて走って来なよ」

 白いジェットヘルメットを渡される。フェイスシールド付きだ。

 

 ヘルメットを被って、グローブも付けてっと。

 

 キノネキに手を振ると、発車。

 

 トコトコトコ……

 

 規則的なエンジン音。製造から24年、まだまだ現役だぞと言わんばかりに力強く走り出す。

 

「うわぁ♪」

 

 何時もの景色がなんだか新鮮だ。

 自転車と同じ視界。でも何かが違う。

 

「これ楽しい」

 無意識に出た言葉。

 ああ、そうか。楽しむなんて感情は久しぶりかも……

 

 カブと共に風を感じる時間が私の癒しになる。そんな予感があった。

 マダマダ寒い、でも確かに春を感じる初めてのツーリングは私の心に深く刻まれていた。 

*1
ポポァ氏作『【カオ転三次】本霊デビルなの バ レ バ レ』に登場する修行アイテム

*2
ホントに焦熱地獄だし……

*3
変速機の種類




スーパーカブ良いよね
キノが暴走してボクの考えたサイキョーのスーパーカブを作り始める所だったw
ミッションを4速か5速にしてアンチリフトフォークに変えてって、マニアック過ぎるので没。
趣味に走るとダメだねw
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