【カオ転三次】ガイア連合ツーリングクラブ   作:山親父

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普通の黒札を書こうとしたんだけれど
ひょっとして私が考える普通って一般の感覚と剥離している?
キノセイダヨネ?

12/28 マカーブル氏よりFAを頂きました
シキガミの礼子ちゃんです。後書きに載せときます


私のシキガミ

 金曜日は富士山へ

 

「良い風だなー」

 バイクで感じる風には特別感がある気がする。

 トコトコと法定速度を守って、星霊神社に移動中だ。

 カブが来てから二週間。通学で使っている事もあって運転は慣れて来た。

 この慣れ始めの時期は油断して事故を起こしやすいので意識して注意している。

 

 この子はキノネキからのプレゼントだ、付喪神に成っている事からも考えて、前オーナーがとても大事にしていた筈なのだ。

 キノネキの話だと、前オーナーは亡くなっているらしい。

 老衰、人生を全うして逝かれたのだ。

 幸いガイア連合により氏神様も復活して、魂の安息も得られた様だ。

 このカブに乗ろうとする子孫は居なかった。

 朽ちていく位なら、新しくオーナーを探そうってキノネキがお節介をしたらしい。

 そして丁度、私が居た。

 これもめぐり合わせってヤツなんだろう。

 

「シキガミが出来たらしいし、いよいよ本格的にダンジョンアタックを始めるんだ!」

 ワクワクする心を抱えながら、私とカブが走る。

 荷台にはキノネキから貰ったBOXが載っている。外見はホームセンターで売ってる奴だけど、拡張機能で10倍の容量を誇るし、盗難防止の術も施してある。

 至れり尽くせりだなって思ったけど、必要な装備だった。

 私はガイア系企業でバイク便のアルバイトをしている事になっている。

 実際に週一でだけど、書類を運んでいるんだ。

 北杜市の霊能組織から星霊神社に報告書や要望書を運んでいる。

 対策せず、油断して盗まれちゃ不味い。

 このBOXならオカルトを知らない人には普通のBOXでしかない。

 偽装を見破るだけでも、かなりの霊格が必要だろう。

 護りの術を破って荷物を奪うなら超人クラスの霊格が要ると聞いた。

 まだ私は下っ端だし、奪われて中身を見られても終末思想のカルトが変な事言ってるって思われるだけだろうけど。

 まだまだ重要な書類なんて任せて貰えないから。

 

 それでも騒ぎになるかもだから、用心はしないとね。

 万が一にも襲われたなら、命優先でって言われているけど……

 

 収入に関しては改善の兆しがある。

 バイク便のアルバイト代が少しだけ、コレはガソリン代で消える。

 本命は異界での稼ぎだ。

 レンタルシキガミを借りて、教官引率の元、少しだけダンジョンアタックをしてみた。

 装備もレンタルの最低限だけど、少しだけレベルが上がり【反撃】と【アギ】を覚えたのだ。

 【アギ】については勉強したから覚えたのか、適性があって覚えやすかったのかは不明だけれど、遠距離攻撃手段が出来たのは大きい。

 私は戦士型のステータスみたいで、魔法の威力はソコソコでしか無いけど、出来ると出来ないとでは大違いだと思う。 

 

「さあ、もう一頑張りだ」

 この子は原付二種だから時速60㎞で移動できる。

 星霊神社に到着するまで、後1時間位かな?

 

 トコトコと軽快にエンジン音を響かせて私達は進む。

 春めいて来た夜の風を感じながら。

 

 

 探索準備は順調だ

 

 シキガミも最初の一人はサービス価格。

 黒札の魂保護のセキュリティを兼ねているから、覚醒さえすれば入手可能だ。

 私の場合、同年代に見える娘でお願いした。

 黒髪ロング、背は高めの167cm、お胸には連峰が聳え立っている。

 ちなみに私は平均よりチョット低い154cm。

 

 正直に言おう。心のおにんにんに従ったらこうなった!

 ボン・キュ・ボンな美人さんだ。

 私が野暮ったい田舎娘な感じなので、理想の女の子って意味でもあるのかな?

 

 名前は如何しよう?

 結局、完成までに決められなかった。

 

「キノネキに二台目のカブをお願いしたけど、どうなったかな?」

 シキガミを人型にしたから、シキガミ用のカブも必要になった。

「お世話に成りっぱなしだ」

 その分、働いて返さなくては。

 装備についても支援してくれたし……

 

 木製バット(棍棒)に防具(クマさんパーカー)、傷薬なんかの消耗品を頂いてしまった。

 正直助かる。

 ただ、私にフィットするのが蛮族スタイルなのが不満! 防具もパーカーよりも熊の毛皮の方が相性は良かった。なんで~?

 戦闘力より優先すべき事だって有るし、パーカーでも防御力に不足は無い。流石に普段から毛皮を着るのは目立ちすぎる。

 それから、一通り武器の練習は続けていてスキルも覚え始めた。

 貴様に文明の利器は似合わんとばかりに、一番に覚えたのは【棍棒】スキルだったけどねっ!

 私はバーバリアンじゃなーい!!

 

 まあ、良い。

 おかげで、少しずつだがレベルも上がる。

 シキガミと同行するなら、今後も無理なくレベルを上げられると思う。

 今の戦い方は木綿くんを楯にしてのカウンタースタイル。

 

 カッコよく言ったが、実態はダサい。

 木綿くんが戦っている隙に、木綿くんの後ろから殴っては殴り返される前に逃げるだけ。

 へっぴり腰でヒイヒイ言いながらの戦いだった。

 笑うなら笑え。

 私は私なりに必死だし、ゆっくりでも成果は上げてるんだ。

 

 俺TUEEEEを夢見ても、理想通りに動けるとは限らない。

 妄想と現実は違うって事だな。 

 

「先ずはシキガミちゃんだ」

 シキガミと合流したらキノネキの所に行かないと。 

 

 

 あれ? 知らなかったの私だけ?

 

「こんばんはー」

 チマチマと貯めたマッカを持って製造部に来た。

「私のシキガミが出来たって聞いたんですけどー?」

 私のシキガミちゃんは何所かな~♪

 

 私キモイw

 是非も無いよね!? 専用のシキガミちゃんだもん。

 

「おう、こっちだ!」

 

「こんばんはエドニキ」

 

 先ずは挨拶。挨拶は国生みに影響するくらい大事、古事記にも書いてある!*1

 礼儀って大事だよね? 私は新入りだし。

 装備の面倒を見てくれる熟練の技術者に無礼を働くなんて有り得ないのだ。

 

 ホントなら手土産の一つも渡したいけど、金欠なのです。

 

「待ってたぜ! さあ、御対面だ!」

 

 テンション高いですね? 徹夜明けなんですか? お疲れ様です。

 お労わしいで良いんだろうか?

 忙しいんだろうなぁ。

 技術者には感謝と尊敬の念を送っておく。

 私もカブの整備くらいは覚えないと……

 家の子は手のかからない良い子だけどね。

 

 とと、シキガミちゃんと初対面なんだ。マスターとしてシッカリしないと。

 シキガミちゃんはマダ情緒が育っていない。これから友愛を育んでいかないといけないんだからね。

 

「にしてもアレだな、やっぱcubネキは原作で揃えたんだな」

 

 ん? 原作? なんの話だろ?

 

「バイクもカブだし、シキガミも登場人物がモデルだよな?」

 

 疑問形ではあるけど、確認の意味が強い印象のセリフ??

 

「スイマセン、原作って?」

 

「あん? cubネキってソックリさんだろ? だから原作……」

 ここでマジマジと私の顔を見てる?

「まさか、気付いてねぇのか!」

 ビックリした。急に大声出すんだもの。

「cubネキを名乗ってるしスーパーカブを知ってるもんだと……」

 名前が小熊だし英訳したんだけど? それにスーパーカブ??

 うん、乗ってるバイクは古いカブだけど……

 

「知らないのは分かった」

 天井を見上げて、片手で顔を覆いながらエドニキが呟く。

「cubネキってスーパーカブって小説の登場人物にそっくりなんだよ」

 ふうん、でも私みたいな田舎娘って、珍しくない気が……

 

「シキガミちゃんが主役で私が友人モブ?」

 それならわかる。私は典型的なモブ顔だもの。

 

 首を横に振るエドニキ。

「逆だ、シキガミは普通にレギュラーキャラだけどな」

 

「えっ、まさか私が主人公!?」

 

 うんうん頷かれた。

 

 ウソでしょ……

 

「それでシキガミの注文を受けた時に、思い浮かんだのが主人公の友人“礼子〟だったんだよな……」

 

 つまり、礼子ちゃんなるスーパーカブの登場人物は背が高めの黒髪ロングなナイスボディなんだな?

 

「注文通りなら問題は無いですよね?」

 大体のイメージしか伝えてないんだからクレームなんて入れませんよ?

 

「cubネキが良いなら問題ないが……」 

 

 そんな事よりシキガミちゃんとの対面が大事!

 細かい事は良いんだよ!!

 

「わかった、こっちだ」

 ワクワク、ドキドキ♪

 

「この娘だ」

 そこには注文通りの娘が居た。

 マダ無表情だが感情が育てば変わる筈。

 少々吊り目気味なのが勝気な印象を齎す。

 

「情緒が育つまでは外に出さない方が良いかもな、同じ学校に通わせるんだろ?」

 エドニキの言葉に頷く。

 

 この娘には私の親友として振舞って貰う。

 友人になる切っ掛けはスーパーカブ。

 引っ越してきた、この娘が同じカブ乗りに興味を持ち近付く。

 不自然さは無いと思う。

 だからキノネキにはこの娘の分のスーパーカブを頼んだのだし。

 バイク自体はキノネキに任せたけどね。

 同じ原付二種でカブならなんでも良いんだし……

 

「で、名前は如何するんだ?」

 丁度良いか。

「じゃあ礼子にします」

 悩んでて決められなかったし。

「わかりやすいし良いけどよ」

 そう言えば苗字は?

「そのキャラって、苗字は何ですか?」

「作中では呼ばれて無かったな」

 なら苗字は適当に決めないと駄目か。どうしよう?

 まあ、後で良いか。

「はじめまして礼子」

「礼子? それが私の名前ですか?」

 

「そうだよ、私は小熊。君のマスターだけど対外的には親友で通して貰うね」

「親友……言葉遣いは如何すれば?」

「ため口で良いんだけど……少しずつ慣れようか?」

 食堂に移動してお茶でもしながら、お話しよう。

 どうせ、二日はコッチに居るんだ。慌てる必要は無いよね?

 

 そうしてお茶とケーキを食べてたら、キノネキが来た。

 

 

 やっぱり知らなかったのは私だけ……

 

「やあ、cubネキ。シキガミちゃんのカブを持って来たよ♪」

 

「こんばんは、ありがとうございます」

 親しき中にも礼儀あり。挨拶は大事、古事記にも書いてある(二回目)。

「ありがとうございます」

 私に合わせてシキガミちゃんも頭を下げる。

 ちゃんと名前で呼ぶようにしないと、マズイな。

 学校でウッカリ、シキガミちゃんなんて呼んだら騒ぎになるかもだし。

 

 基本ボッチだから余計な心配かな?

 

 マスターとシキガミだとしても、パートナーなら名前で呼ぶのが愛情だよね。

 

「こっちが私のシキガミ〝礼子〟です」

 キノネキと会う事も増えるだろうし、ちゃんと挨拶はさせて置こう。

「礼子です。マスター共々よろしくお願いします」

 

「うん、よろしく」

 キノネキはニコニコ顔だ。

 なんでかな?

「いやー、初々しいねぇ。ボクの相棒はバイクのエミールだからさ、女の子のシキガミも良いね♪」

 

 キノネキは祖父の形見のバイクをシキガミにしたらしい。

 相棒に不満は無いが、不便な面もあるし、人型のシキガミが羨ましくなることもあったんだとか。

 キノネキの案内で、礼子のカブの元へ移動しつつ会話は続く。

 

「次のシキガミは女の子にして貰おうかな?」

 現在、事務仕事の補佐が出来るシキガミを頼もうか迷っているとの事。

 

 やはり、派出所なんて経営してると苦労が多そうだ。

 私には無理だな。

 背伸びしても良い事は無い。

 身の丈に合った行動をしないと……

 

「礼子ちゃんのカブだけどさ、ボクが趣味でオーバーホールした郵政カブで良いよね?」

 

 郵便局のカブですか? あれ? さっき聞いた原作で礼子が乗ってたのって……

 

「うん、ちゃんとレッグシールドも外した原作仕様だよ? 原作の礼子ちゃんみたいなピーキーなカスタムはしてないけどね」

 

 やっぱり知ってたんだ!

 

「私が原作持ちって、何で教えてくれなかったんですか!」

 

「えっ? まさか、知らなかったの??」

 自分からcubネキを名乗る位だから自覚してるモンだと思ってたと?

 ……確かに、私が悪いのかも知れない? 納得はしてないけどさ!

 

 歩く事暫し、赤いカブが見えてきた。

 キノネキは礼子にキーを渡すと、私を見つめて確認してくる。

「そんな事よりスペックの説明しても良い?」

 

 そんな事って……他人からすればどうでも良い事だな。仕方が無い、切り替えよう。

 こっくり頷く。

 

「1991年製スーパーカブデリバリー、型式MD90H。排気量89㏄、6.5馬力、キックスターターのリターン三速」

 私のカブとはウインカーの操作方法が違うんだって。私のカブの方が一般とは外れてるらしい。

 郵政カブのウインカースイッチは左手側で左右の操作。

 私のカブは右手側で上下の操作、右折は上、左折は下。

 慣れれば平気だけど、カブの感覚で他のバイクに乗ると危ないかも?

 まあ、他のバイクに乗る機会があるかは不明だし、今は気にしないでおこう。

 

「燃料5㍑、郵政カブは重めだし燃費は1㍑辺り50㎞が限界かも? 走り方次第では40㎞に落ちるからね?」

 

 勿論、付喪神化はしてあるそうだ。

 

「走行距離は50000㎞チョイ、cubネキのスタンダードより走ってる。スタンダードは45000㎞で大差無いし、コンディションは上々だから、気にする必要は無いね」

 私のカブに比べれば若いバイクだけど、郵便屋さんで毎日走っていたバイクだもん。走行距離はコノ子の方が上なのか。

 

「さっきも言ったけど、レッグシールドは外してある。ギア比を変えて、速度も出しやすくしてあるよ」

 とは言っても普通のカブと同程度の速度らしいけど……

 元々が大荷物を運ぶ為のセッティングだから、普通に合わせたって事だね。

 

「cubネキのカブよりも弄ってないんだけどね」

 そうキノネキは笑う。

「バッテリーなんかは6V電源だと、終末後に苦労しそうだしね。cubネキのカブは12V電源に交換してあるから、この子とも互換性があるよ♪」

 

「そこまで手間を掛けてたんですか!?」

 いやいや、他人のバイクに時間かけ過ぎでしょ!?

 

「趣味だし」

 そうかもだけど!

「コンバージョンキットも出てるし、問題なーい♪」

 手間だけじゃ無くて、お金も掛けてるって事じゃないですか!

「ボクのエミールって弄る所ないからさ、楽しかったよ?」

 

 まったく、気軽に言ってくれる。

 私の気分的に借りが山よりも高くなってて落ち着かないんですが!!

 

「だいたい、私が借りパクしたら如何するんですか!」

 

「わざわざ、それを言う娘が借りパクをするとは思わないな」

 

 そうかもだけど!

 

「それに、そうなったらボクに見る目が無かったってだけ。損切りするよ?」

 

 キノネキはアッサリと言い放つ。

 

 なんか悔しい。

 でも、恩知らずに成る気はない。

 

「ぜったい、恩義は利子付けて返しますからね!」

 多分キノネキの思う壺。

 

 だけど、それも悪くない。

 これが、今生で初めて目標を持った瞬間だったのかも?

 

 借りっぱなしは嫌だからね。

 私ってば意外と負けず嫌いだった様だ。

*1
ヒルコの逸話




シキガミは迷ったけど普通で行こう
普通の黒札を書くとの前提を忘れるところだった
筆に任せて書くと、暴走しがち(シキガミを着ぐるみにする所だった馬鹿)

今年の投稿はコレで最後
皆さん、良いお年を!

シキガミの礼子ちゃんと郵政カブ

【挿絵表示】

何時も感謝です
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