これは祝ボッチ卒業で良いのかな?
「違う気がする……」
うん、多分違う。
傍目にはカブと言う、渋いバイク*1を好む、女子高生が仲間を得てキャッキャしてる図ではある。
実質は自作自演。私とシキガミが演技してるだけなのだ。
必要な演技なんだ、なんだけどね……
「虚しい」
悲しいが正確かも知れないね。
他にもバイク通学をしている子は居るのに、話に入って来てくれない。
他の子はスクーター乗りが多いし、彼、彼女等にとっては、ただの道具。
バイクが趣味って訳じゃ無いんだろう。
寂しいけど、仕方が無い。
普通の公立高校だし、ガラが悪いヤンキーが居ないだけマシなのかも?
族車でパラリラする馬鹿が居ないのは良い事だ。
そろそろ現実逃避も限界だな。
「ねえねえ名超さん、転校してきた湯瀬さんと随分仲がいいんだね?」
私に集まる好奇の視線……
正直、居心地が悪い。こちとら前世からの陰キャぞ?
「あっ、えと、その……」
イカン、言語中枢がバグってやがる。
「ふふっ、小熊とはお隣さんなの」
礼子の助け舟!
「同じカブ好きだったし、直ぐ仲良くなったのよ?」
後ろから抱き着いて来る。
原作のイメージとは違うんだろうけど、主人大好きなシキガミだからしょうがない。
私だって、原作とキャラが違うとか言わてれても『知らんがな』って成るだろうし、意識してもね?
そもそも原作を知らないんだし……
「へぇ~、カブってオジサンが乗ってるイメージだけれど」
まあ、そういうイメージだよね?
乗ってみると、良いバイクなんだぞ!
「燃費も良いし、壊れないし、カスタムし甲斐もあるしで、バイクを弄りたいなら楽しいわよ?」
礼子の反応はキノネキの受け売りだ。
郵政カブに乗る趣味人が言いそうな言葉を教えて貰った。
〝湯瀬 礼子〟これが私のシキガミの戸籍名になる。
今日から私のクラスメイトだ。
三年への進級時の引っ越し、家庭に不幸があった事を匂わせてあるから、空気を読む日本人はツッコミはしないと思う。
「そうなんだ、機械弄りが趣味なのかな?」
「そうね、簡単な修理なら自分で出来るかな? カブが壊れた事はマダ無いけど」
にこやかな礼子。
傍であうあう言ってる私。
知ってるかい? これでも私が主人なんだぜ?
「そろそろ授業ね、解散しましょ?」
オカシイ、産まれて一月なのに、私よりコミュ力が高いぞ?
そうか、【交渉】スキルが仕事したんだな?
お前が低いだけ?? 五月蠅いやい!!
お昼は駐輪場で食べる
「行くわよ小熊」
礼子に手を引かれて、駐輪場へ行く。
手にはメスティン。
キャンプギアの一つで飯盒にもお鍋にもなる便利なヤツだ。
私は中身が漏れる心配の無い、お弁当箱として利用しているんだけどね。
キャンプ好きなキノネキがお古をくれたんだ。
頑丈かつ保温(時間停止状態)能力付きで出来立て御飯を食べられる。
礼子の分も貰ってしまって、中身のお弁当は一緒に作って来たんだよね。
レベル10を超え、キノネキが送迎してくれる御陰で放課後にアルバイトも出来る。
頻度は多いとは言えないんだけど、一回の報酬が実に多い。
なんだ、この報酬って最初はビビった。
一回のバイトで、二桁万円を稼げる。難度が上がれば三桁や四桁も狙える?
オカシイ、私の常識と違う! 命がけだし当然なのか?
日本円だからの話でマッカの方が貴重かつ重要らしいけど。
奨学金の関係でバイト代は全部礼子の収入にしているんだ。
私と一緒に稼いだお金なんだけどな……
仕方が無いんだけど、世間体もあって大きな金額は使えない。
稼いでいるけど、それが自由に使えないって、思ってたよりストレスかも知れない。
私は奨学金で暮らす、苦学生だからね。
対外的にコレを通さないと変に目立つ。
目立つ=メシアンにバレる、それはマズイ。
メシアンが来ても返り討ちに出来る実力が身に着く迄はステルスを続けなくては……
「暖かい御飯って美味しい」*2
私が顔を綻ばせると礼子も嬉しそうに笑う。
この娘は戦闘優先でスキルを入れているんだけど、【嫁入りセット】を入れてある。
嫁シキガミに情熱を注ぐ“俺ら〟がいる御陰で、戦闘も日常生活のお世話も出来るシキガミが作り易いのだ。
これでは足りずに【房中術】とかを入れる“俺ら〟も多いらしいが、私はマダ良いや。
ちなみにキノネキは容量拡張型のメスティンを愛用しているそうだ。
あの人ってば大食いだからなぁ……
スキルの関係で量を食べれば霊力、体力共に回復できるって事だった。
そんな理由が無くても食べると思うけどねw B級グルメ大好き人間だし。
キノネキは旅の最中でも、御飯は欠かさない。
キャンプに便利なオカルト食材も色々有って、教えて貰った。
「でも時短には良いけど、食費を抑えるには向かないんだよねぇ」
便利系オカルト食材よりも普通の食材の方が安いのだ。
勿論、霊力の回復にはオカルト食材の方が良い。
もっとレベルが上がれば切り替える必要が出て来るかも知れないな。
回復って意味ならガイアカレーで事足りるんだけどねw
まあ、レベルが上がれば収入も増えるハズ。お仕事の頻度が安定しないから油断はダメだけどね。
ともあれ、マズはモグモグタイムだ。
カブに横座りでお弁当を頂くとしよう。
学校成績に不安無し!
普通の勉強をする時間は減少している。なのに成績は上昇中?
チョットだけ不思議だったんだけど、戦士型でも知力の上昇はゼロじゃないって事らしい。
元々勉強が苦手だった訳じゃ無いし、知力や集中力が上がったから勉強の効率も上がったと……
助かるけどさ?
ついでに礼子には、魔法スキルと共に【教育】スキルも取って貰った。
魔法を教えて貰うつもりで入れたスキルだったけど、覚えた知識をそのままに教えてくれる家庭教師になっちゃった。知力も高いしね。
便利なんだけど、日常生活ではポカする事もあってアンバランス。
これは馴染むまでは仕方が無いか?
〝優秀だけど、何処かズレてる趣味人〟これが礼子の評価だ。
私はと言えば、〝目立たないながら地味に優秀な趣味人〟って評価みたい……
目立つ気は無かったのに、礼子とセットで名前が売れてしまった。
家の礼子は美人さんだから仕方ないな。
ともあれ、学生としての勉強は学校だけで事足りる。
その分、覚醒者としての勉強が増えるんだけどね! 自宅での勉強は主にスキル関係になる。
こっちは生死にかかわる。手抜きなんて出来ないし必死だ。
それが成果につながるとは限らないのが悲しいが……
出来れば、早くに【ディア】は覚えたいんだけどな。
向き不向きは有っても習得可能なスキルらしいし、努力あるのみ!
キノネキみたいに適性がゼロじゃないんだ、頑張れば報われると信じるしかない。
多少、覚えが悪くても、絶対に無理な人と比べちゃうとね~。
私は恵まれてるんだ、がんばろうって思える。
適正と嗜好が一致すれば一番良いんだろうけど、向いてる事とやりたい事が一致するとは限らない。
妥協するか、無理を押し通すか……
私は妥協した事になるのかな?
戦いたい訳じゃないけど、強くなるのには戦うのが近道だった。
戦い以外にどうしてもやりたい事がある訳じゃ無し、妥協ともチョット違うか?
しいて言えば〝生き残りたい〟ってだけだし、やりたい事をやってるのかも知れない。
生き残る事が確定したら、改めて考えるのも良いかもね?
でも、カブを乗り回すのは楽しいから、何時でも何処にでもツーリング出来るようになるって夢はできた。
うん、これは進歩なのだ!(自画自賛)
どの位、レベルを上げれば良いんだろう? 終末後に旅をするって難易度が分からない。
キノネキに相談しても、『確実な事は言えないけど、レベル50もあれば平気じゃない?』ってさ。
あんたみたいな逸般人と一緒にするな! こちとら、ようやくレベル10越えたトコなんだよ!
春休み中にガッツリ潜れたから、それなりのレベルには成った。
学校が始まったら、成長速度は大幅ダウンだ。
まあ仕方ない。
ワープ進化が出来ない以上、地道に強くなるしかないのだ。
次の目標はレベル20、更には30と段階を踏んで強くなるしかない。
途中で挫折するかもだけど、そうなったら、その時のレベルで出来る事を考えよう。
キノネキ曰く、人間の強みは集団戦。なら有志を募ってツーリングクラブでも作ろうかしらん?
「チャント集中して? 【ディア】を覚えたいんでしょ?」
はい、礼子先生ゴメンナサイ。
一応【マルチタスク】の触りは覚えたと言っても、魔法スキルの勉強中に考える事じゃ無かったね……
突発アルバイト
『ゴメンcubネキ、手が足りなくてさ』
学校が終わり自宅で勉強してたら、キノネキから電話連絡が来た。
『予定は空いてる? 緊急でアルバイトを頼みたい』
「良いですよ」
アルバイト=悪魔退治だけど、HP、MP共に満タン。直ぐに戦えるしOKだ。
そう答え、アパートの駐輪場に移動して結界のアイテムを起動する。
そうしたら間髪入れず【トラポート】でキノネキとエミール君が転移して来た。
キノネキのシキガミはバイク型〝ホンダC95〟をベースにしたエミール君。
エミール君は転移と輸送のエキスパート。大量の物資と側に居る人員を一瞬で運べる。
彼の御陰で、放課後でも日帰りバイトが出来るのだ。
基本キノネキと一緒だけど自立行動も可能らしい。
今は変に目立つからヤラナイだろうけどね。
「緊急事態なんだ、仕事を受けてくれて助かった」
「報酬は弾んでくださいね」
キノネキに笑いかけて、言葉の続きを待つ。
なんでも、今の私なら楽々攻略できる難度の異界だけれど、待機中の一般所員だと命がけの仕事になるらしい。
そんな説明を受けながら相模原市中央区の現場へ転移する。
私は変装用のアイテムを使用する。礼子共々、幻影を被って顔を隠し、認識阻害のローブを着ているのだ。
少しでも情報は隠した方が良いってキノネキの気遣いだ。
「退魔に危険は当然だけど、流石に死亡率八割なんて異界に突っ込ませるのはね?」
キノネキの顔は苦い。現地の人は『生還率が二割もあるなんて!』って喜んでるらしいのがまた……
「ボクに頼り切りも困るんだけど、喜々として死地に突っ込まれるのもさぁ」
私に愚痴を零すのは同胞意識の性かな? いくら強くても、キノネキだってやっと今年成人の若輩者。
一都市の安寧がキノネキの肩にかかっているんだ、愚痴の一つも言いたいだろう。
でも、ウッカリ現地の人に愚痴を聞かれたら、喜んで死地に行っちゃうと……
愚痴を零すにも、口元を隠して超小声。
私はシェルターの運営なんてしないぞ! 絶対に、絶対にだ!!
今回の異界はレベル15判定らしい、私のレベルが13だから、礼子と二人掛かりなら大丈夫だと思う。
頼りになる盾役の簡易シキガミ〝木綿くん〟も購入したし、アイテム拾い&治療用のアガシオンもキノネキがくれた。
緊急だったし、ボーナス代わりって言ってたな?
多分、他人用に注文してたんだろうと思う。まあキノネキの好意だし有難く受け取っておく。
失敗したら困るのはキノネキも一緒だもんね? 少しでも失敗の可能性は減らしたいんだろう。
キノネキは緑区のみを担当するつもりだったみたいだけど、現地の人は知らないからね。
近くに助けてくれそうな組織があって、ソコの主が人格者として知られていると……
「助けて下さい、お願いします」
って、頼み込まれちゃうんだね。
しかも依頼者のみならず部下も一緒に頼んで来るんだ。
緑区の名家と中央区の名家に繋がりが有っても不思議は無いし、実際親戚だそうだし。
自助努力を惜しんで言ってるならキノネキは無視したと思う。
でも、現地の様子を見ると死屍累々、死んでないのが奇跡って状態の人がイッパイ居るんだもの……
【傷薬】一つで全快しちゃうんだけど、これはガイア連合のアイテムが高品質だからだし馬鹿にしちゃダメだよね?
多分、異界で死んだ人も居るんだと思う。で、ケガが治ったら、生贄前提で封印だけでもって……
うん、お人好しなキノネキが見捨てられるとは思えない。
だけど、どれだけ強くてもキノネキは一人なんだ。
今回の様に、二つの異界が相互に補完していると一人で攻略は出来ない。
片方だけだと、潰しても直ぐに復活しちゃうギミックがあるんだ。
否、力尽くで無理やり二つ同時に潰す事は出来るだろうけど、周囲も地脈も大きく傷つくからヤリタクナイって。
手が空いていてタイミングを合わせてキノネキと同時に攻略できる人員が私だけだったって話。
緑区の派出所にだって、潰す異界に生産用に改造する異界、そして鍛錬用に利用する異界を選別し、維持管理する仕事があるんだ。
予定外の仕事が増えたなら、キャパオーバーしても仕方ないよね。
「ボクと助手に任せておいて。大丈夫! 必ず潰すから」
優しい声でのキノネキの宣言。私はガイア連合から呼ばれた助手扱いか……
頑張るけど、私を見る目が期待と信頼たっぷりで落ち着かないんだけど?
「ゴメンネ」
おい。目を逸らすな! 大丈夫なの? ホントにメシアンに眼を付けられない??
「大丈夫、近くに二重の護りを破れるヤツは居ない。呪符だけでも足りると思う」
そう言われてキノネキお手製の〝身代わりの符〟と〝偽装の符〟*3を渡されたのを思い出した。
〝偽装の符〟は私達がどんな姿をしているか誤認させるものだ。
用心に用心を重ねているんだし、これで見破られたらファンブル判定だろう。
運が試される? 油断できねぇ、出来るだけ顔は隠そう。
キノネキの血が含まれた墨で書かれた〝身代わりの符〟は、死亡ダメージを一回無視出来る命綱であり、私達の状況を知る為のマーカー。
私の命を護る為の保険。でも使ったら作戦は失敗と見做すと言う宣言でもある。
キノネキは敗北も考えているんだ……身が引き締まった。
激動の四月? 五月はもっと凄いぞ!
先日のアルバイトは無事に終わった。
特筆する事も無く、幾つかの階層を潜ってボスを倒しただけ。
二つの異界の主を同時に倒す必要があるだけで、他にギミックは無し。
私と礼子が攻略するタイミングでキノネキもボスを倒して終わり。
正直に言えば、普段潜っている星霊神社の異界の方が難度が高いだろう。
ボスもレベル15の〝ツチグモ〟だったし、普通に倒せる相手だ。
私にとってはだけど……
現地の名家の人間は一桁後半レベルなら強者、レベルが二桁なら超が付く天才って感じらしい。
そんな超天才が複数で協力しないと倒せないレベルのボスな訳だ。
二か所同時って事を考えると二組必要になる。
そんな戦力が有るなら、そもそも外部に頼る必要が無い。
長老が面子大事で若者を特攻させて失敗。
工夫も無く、再度挑戦させようとして、現場がキレた。
反乱&下剋上。
無事、実権を奪ったが異界の処理が出来ないので親戚を頼ってキノネキに頼み込んだと。
頼り切るつもりは無く、回復してくれたら命がけで封印をって気概があった。
無理なら手を差し伸べる事は無かっただろう。
でもキノネキには余裕があった。
そして、キノネキが頼れなければ、何処を頼るかが問題となる。
相模原市中央区には在日米軍が居る。当然ながらメシアンも居る訳だ。
奴らは現地の困窮に付けこんで勢力を伸ばすだろう。喜々として日本の霊能者を弾圧しかねない。
キノネキとしては少々無理をしても、彼らを護る必要があった。
相模原市内でのメシアン伸張を防ぐ為に必要だったんだ。
無理と言っても私を引っ張り出す程度だしね。
この程度でキノネキへの恩返しが済んだとは思わないが滑り出しとしては上々だろう。
ゴールデンウィークでも集中的に鍛錬を重ねて、レベル20が見えて来た。
「これなら、終末までにソレナリに……」
そう思ってたのに、世界中にICBMを落とした馬鹿が出た。
半終末の始まりである。
戦闘シーンが面白く出来なかったので省略しました
cubネキの戦闘描写は次の機会に期待だな