アウトドアがしたいのでオンラインゲームを始めようと思います 作:七篠言辺
作者の押しなのでね。
(あの戦い方、見られてたのか。まぁ、見られたところで困るようなもんじゃないしな。)
立ち上げていたパソコンの画面にはNWOの関連掲示板が広がっていた。
普段から行き先を絞り込むためのツールとしてネット掲示板を用いる凪は、NWO内部の釣りスポットを探すためにネットサーフィンをしていたところ、興味本位で開いた掲示板で自分のことが描かれているのを発見した。
掲示板では自分の奇行をばっちり目撃されていたらしく、面白いやつがいたと紹介されていた。
幸い、積極的に探そうという人はいないようで一安心だが、面倒ごとに巻き込まれなければいいなと思いながら画面を閉じた。
(そもそもあのスキルはそんなに強いスキルではないしね。あのスキル使うくらいなら普通に武器持ったほうが強いし。)
そう。量才録用はあくまでダメージボーナスが発生するだけであり、装備品を装備している恩恵は受けられない。剣やナイフについているであろうスキルをつかえない、武器の
もちろん湖王との戦いのときのようにメタとしてぶっささることもあるが、それはレアケースだろう。
(まあいっか。それより今日も釣りにいこう。いいスポット候補もみつけたしね。)
そんなことを考えながら凪は再び異世界に飛んだ。
Side;ミィ
(はぁ…疲れたな…)
そんなことを考えながら歩くのはミィ。
現在NWOの中でもトップクラスの規模を誇るクラン*1、炎帝の国のリーダーである。
その圧倒的なカリスマと、第一回イベントで第四位に食い込むほどの実力を誇る女傑…なのだが、実際はそのカリスマは
実際の自分と、ミィとの差に、ミィを慕うたくさんのクランメンバー。ミィという名の仮面はメンタルのあまり強くない彼女にはあまりにも重荷であった。
(なんであんなことしちゃったんだろう。最初は楽しかったけど、こんなに大事になっちゃって、もう降りるに降りれなくなっちゃった。はぁ。もうリーダーやめたい…)
そんな彼女はオフモード。髪色もミィとしての緋色の髪ではなく、ブラウンのふわふわした髪に眼鏡というクラスで密かにファンができるタイプの見た目をしている。
そんな姿で向かうのは彼女のお気に入りの場所。第一層の端の端、東の森に点在する湖のうちの一つである。その湖は、それらの中でも最も大きな湖であり、緑の匂いがする中、湖面が日光でキラキラきらめいて、ダンジョンの奥地にもかかわらずモンスターが出現しないので、疲れたときはそこで昼寝をするのが彼女のリラックス手段の一つである。
(あれ。誰かいるな、珍しい…というか初めてかも)
彼女だけの秘密の場所に人がいることに驚きながらも、まぁゲームだしと切り替えるが、そこにいるのが男性だとわかると少しだけ表情を曇らせた。
(あ、男の人か。さすがに男の人がいるとこで寝るわけにはいかないよね。なにされるかわかんないし。)
そんなことを考える。さすがに某要塞少女のように誰にでも無防備というわけではない。だが、男側も最低限警戒している。
「なぁ、そこのお嬢さん、さっきから見てるけど、何かよう?」
「⁉あ、す、すいません‼」
「いや、別にいいんだけど。もしかしてここに何か用があった感じ?ならすぐにどくけど」
「え?いや、そんなわけには…」
「ん?そう?ならもうちょっとここ借りてもいい?めちゃくちゃ釣れるんだよね。ここ。」
そんなやり取りをしながら、ミィは彼の容姿を観察する。
見たところ、年は近そうだ。濃い紺色の髪に同じような色の眼。座っているからわかりにくいが、身長は175cmほどだろうか。
それなりに整った顔立ちにユニークシリーズであろう装備に身を包んだ青年は困惑したような表情をうかべて
「なぁ、あんた、大丈夫か?急にボーっとして。」
と己に声を…
「あ!す、すみません!」
「いや。構わないんだが、本当に大丈夫なのか?」
「は、はい。ただ、最近ちょっと疲れちゃって。」
「なるほどね。それで休みに来たら変な男が釣りしてたと。」
「い、いえ!そんなつもりは‼」
「あはは!大丈夫、大丈夫。わかってるって。それよりも、休憩スポットとっちゃったら悪いし、俺はこの辺で。」
「あ…」
ミィは一瞬逡巡する。ゲーム内でこんなに楽しく話したのはいつ振りだろうか。
此処でこの人が去ってしまうと、いつまたこんな機会が訪れるかわからない。
ミィは意を決して声をかける。
「あの、釣りをしながらでいいので、少しだけお話しませんか?」
「え?」
一瞬の間が開いて、男は答える
「…新手の逆ナン?見た目に反してなかなか…」
「ち、違います!その…」
「あはは、わかってるって。疲れてるときって人さみしいことあるよね。俺なんぞでよければ、いくらでも話し相手になるよ。」
「あ、ありがとうございます!」
それから二人は他愛ない話で盛り上がった。男は自分の名がルアであること。
アウトドアが趣味であり、手軽にアウトドアを楽しむためにゲームを始めたこと。そしたらゲームにもしっかりハマってしまったことなどを話した。
対するミィは自分の名前。これまで戦ったモンスター、好きな本の話、ゲームの中ならばカロリーを気にせずにいくらでも甘いものを食べられて幸せであることを話した。
「あ、もうそろそろ落ちなきゃ。」
「あ、確かに。もういい時間だしな。俺もそろそろ落ちなきゃ」
そんな楽しい時間も無限には続かない。二人ともリアルの身分は学生であり、明日のことも考えるとそろそろ落ちねばならない時間であった。
「しゃーない。帰るか。町まで送るよ。」
「う、うん。よろしく。」
普段はトッププレイヤーとして、誰かを守る立場である彼女にとって、守られるというのは新鮮であった。
ルアの戦い方は大変変わっていた。釣り竿で敵を切り裂いたり、引き寄せたところを腰のナイフで突き刺したり、頭から埋めたりなどかなり自由に遊んでいるのが見て取れる。
(いいなぁ)
大規模クランのリーダーという、ある種自由からは程遠い彼女にはその自由な戦い方はまぶしく、思わず心の内を話してしまった。
彼女が炎帝の国という大規模クランのリーダーであること
その立場につかれていること
自分のまいた種であるがゆえに易々と手放すわけにはいかないこと
そんなことを思わずぶちまけてしまった。それを聞いたルアは少し考えるそぶりを見せると、口を開いた。
「ミィさんはすごいね。俺ならゲームだしっていって速攻投げ捨てるよ。その立場。」
「え?」
帰ってきたのはまさかの賞賛であった。
「だってそうでしょ。ゲームってのはあくまで娯楽だし。いや、まぁプロゲーマーみたいな例外はいるけど。だからさ、嫌なら嫌で辞めればいい話でしょ?でも、それをしっかりとやり遂げようとしてる。責任もって。だから俺はミィさんのこと、立派だと思うよ。」
「そうかな…」
「そうだよ。だからさ、演技につかれたらさ、連絡頂戴?愚痴くらいなら聞いたげられるからさ。」
「う、うん。わかった。」
「OK。じゃあさ、フレンド登録しよ?連絡取りあえると便利だし。」
「わ、わかった。じゃあこれ、私のID.」
「ん。申請送った。確認して?」
「確認できたよ。フレンド登録完了。」
「何気に初めてのフレンドだ…初フレンドがこんな大物になるとは…」
「ち、ちょっと恥ずかしいかも…」
そんなやり取りをしていたら森を抜け、町に入る。
「それじゃ、また。」
「うん。またね。」
そんなやり取りをしてから分かれる。
これからまた
しかし、彼女は以前より少しだけ軽くなった足を拠点へとむけた。
余談だが、この日以降、フレンドリストを見つめてうれしそうにしているミィが見られるようになったとかならなかったとか。
ミィ「ふふっ」
ミザリー(あら?ミィが何やら嬉しそうに…もしかして…ふふっ)
ミィ「む?どうしたんだ?ミザリー?」
ミザリー「いえ。なんでもないですよ。ふふっ」
ミィ「そうか?ならいいんだが。」
ミザリー(精一杯、応援させていただきますね?ミィ。)