羅浮に吹く旋風   作:サツキタロオ

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次回作はピノコニー編。


episode.13:獣を宿せ

「………」

「………」

隔離室に雲璃と秋織が眠っていた。

「ひとまず隔離だけはしておいたわ。これで万が一暴走してもしばらくはここで監視できるわ。」

「しかし、まさか妖魔獣を二人が取り込むなんて…」

彦卿達が離している間、秋俊達も入ってきた。

「兄さん!」

「秋俊、例の奴は持ってきたか?」

「はい。」

秋作は秋俊に頼んでとある物を持って来させていた。

それは使用すれば精神を落ち着かせて仙人のような状態にしてくれると噂の薬剤"鎮魂剤"だった。

「爻光さん。これを使えないだろうか。」

「…なるほど、確かに精神を落ち着かせれば妖魔獣に苦しめられている二人を安定させられるかも。」

爻光は鎮魂剤を持って部屋に入ろうとするも、秋作に止められた。

「待ってくれ、俺にやらせてください。」

「危険よ!今の二人が暴走でもしたら…」

「それでもやります。秋織は俺の弟なんです。」

そう言って押し切って秋作は隔離室の中に入る。

そして雲璃と秋織に鎮魂剤を飲み込ませた。

「どうだ…?」

すると、二人の顔がみるみる苦痛に満ちた顔では無くなり、落ち着いた顔に変化していった。

秋作は安心して溜息を吐いた。

「…よーし…霊砂達を呼んで。このまま妖魔獣をどうにかする方法を考えるわ。」

爻光はそう言って近くの研究者達と共に部屋を後にした。取り残された秋作達。そのまま秋織達が目を覚ますまで、待ち続けていた……

 

 

……………………

 

「う、うーん…」

翌日。秋織が目を覚ました。

「おはよ、秋織。」

「雲璃…」

先に起きていた雲璃が秋織に挨拶した。

二人はこの前の事を思い出し、体を触ってみる。

「大丈夫なのかな…」

「さあな。でも、今は大丈夫だ。」

秋織はそう確信したような声で話す。既に落ち着いたのならば、暴走の可能性は無いだろうと思っているからだ。

『目を覚ました?』

「爻光さん!」

『おはよ、二人とも体調は?』

外から話す爻光の声はどこか嬉しさと安堵したような感じの声になっており、彼女も安心したような顔をしていた。

『二人の身体を詳しく見たけど、鎮魂剤と二人が耐え切ったおかげで、妖魔獣の力が抑制されたみたいなの。』

「それってどういう事?」

雲璃が爻光に聞いてみると、爻光は悪い顔をしだす。

 

『……なんと、妖魔獣と"合体"できるらしいのよ!』

 

「……合体?」

『……あれ、思ったより嬉しそうじゃないわね。』

「そんな事より合体の事教えてよ。」

思った反応を貰えず少しポカンとする爻光。それを尻目に雲璃が早く話せと急かす。爻光は少し間を置いた後に話し始めた。

「どうやら二人がそれぞれの妖魔獣の名前を唱える事が合体のトリガーらしいの。別に普通に言うのじゃダメみたいで、叫ぶのが重要らしいわ。」

隔離室から出た雲璃と秋織はエスカレーターを登りながら爻光からの説明を聞いていた。今まで見た日差しだが、久しぶりなので少し眩しく感じる二人。

「性能テストをするのも兼ねて、少し身体を動かしてみたら?ずっと隔離されてたから疲れてるでしょうし。」

彼女なりの気遣いだろうか、二人は久しぶりの日常に帰れることになった。だが、一応という事で雲騎軍が陰ながら監視しているのだが…二人はあまり気にしなかった。何せ自由が帰ってきたからだ。

 

そうして二人は手始めに彦卿に会いに行くことにした。

「彦卿ー!」

「秋織に雲璃!もう出てもいいのかい?」

「許可が降りたんでな。お前に会いにきた。」

「それは嬉しいな。上がりなよ。」

そうして二人は彦卿の自宅に入って行った。

 

……………………

 

その頃、破尾がイライラしながら路地裏で立ちすくんでいた。

「あーもう!折角の妖魔獣を両方取られちゃうなんてさ!」

作戦失敗してイライラが募る破尾。すると、後ろから十蔵とテリーが話しかけてきた。

「荒れていますね。」

「ふん…」

十蔵もテリーも破尾を労うわけでもなく、ただ文句を言いにきたようにも見えた。

「しょうがないじゃん!『薬師』様に献上予定だったのにさ!」

「……こうなったら直接奪いに行くしかないな…」

破尾はイライラしながらも作戦を考え、爪を噛み始めた。

爪は噛み続けられ、そのままガリッ…!という音と共に砕け散った。

 

そうして破尾は近くの建物を破壊し始めた。

「こうすればきっと…」

すると、読み通り秋織達が来た。

「待ってたよドロボーさん。さ、僕の妖魔獣を返してもらおうか!」

爪を鋭くして襲いかかる破尾。

雲璃と秋織は左右に回避して、それぞれ武器を構える。

「雲璃!ここは試してみるぞ!」

「ええ!?でもぶっつけでやるなんて…」

「とにかく、ここで使って奴を倒すぞ!」

「…………うん!」

二人は見合って頷くと共に、声を張って叫んだ。

 

「豺餓!」「九綺!」

 

二人の身体が禍々しいオーラに包まれ、オーラが消えたと同時に二人の姿は変わっていた。

「な、なに!?」

その姿に破尾も思わず驚いた。

二人はまさしく妖魔獣を纏ったかのような姿へと変化していた。

「…凄い、身体が思い通りに動いてる!」

特に問題無く、暴走する気配も無さそうだった。

「行くぞ!雲璃!」

「うん!」

二人はそのまま飛び上がって破尾の上空から爪で襲いかかる。

破尾も爪で殴ろうとするが、硬度の差で押し負けてしまい、そのまま地面に転がった。

「クソ!このままじゃ…!」

妖気の弾丸を放つが秋織はすぐに弾いて狙いを定めていた。

 

「オラッ!」

爪が破尾の身体を貫き、破尾は吐血と共に悶え苦しみ出した。

「…ぐっ…これが…妖魔獣の力…!?」

秋織は破尾を引っこ抜いてそのまま投げ飛ばした。

追い討ちの如く雲璃が火球を投げ、破尾は爆散した。

 

秋織は驚いた顔をしていたが、雲璃も同様だった。しかし、向こうよりは少し嬉しそうだった。

「やったね!」

「ああ。」

平然を偽って返事を返す秋織。しかし、内心ではこう思っていた。

 

(この力…怖いな…)

 

そんな事を思いつつ、今は勝利の余韻に浸っていた。




この前サイバースルゥースハッカーズメモリーをクリアしました。ラスボス強過ぎ。
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