羅浮に吹く旋風   作:サツキタロオ

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アークナイツは結構書き溜めしてるのでこっちも更新しないといけない…


episode.6:魔物が出る

霧が晴れ、異様な緊張感がようやく薄れてきた頃。

秋織たちは、無事に救助されたと思われる素裳と桂乃芬のもとへと向かった。

 

巨大野菜は既に活動を止め、周囲には雲騎軍の兵士たちが配置されている。

倒壊しかけていた建物も応急処置が施され、先ほどまでの混乱が嘘のように、場は一応の落ち着きを取り戻していた。

 

「なるほど……十蔵、という男に会ったと。」

秋作は腕を組み、静かに話を聞いていた。

その表情は冷静だが、眉間にはわずかな皺が刻まれている。

 

「そうなんだよ、兄貴。」

秋織は言葉を選びながらも、正直に状況を伝える。

 

「いきなり斬りかかってきてさ。明らかに、俺たちを試すみたいな動きだった。」

「……殺気も、本物だった。」

 

雲璃が静かに付け加える。

彦卿も無言で頷き、同意を示した。

 

秋作は短く息を吐く。

「……分かった。とにかく、この件は雲騎軍に正式に報告しておく。」

そう言って踵を返し、歩き出す。

 

「素裳、行くぞ。」

「あ、ちょっと待ってよ秋作〜!」

 

素裳は慌てて荷物を抱え直し、ぱたぱたと秋作の後を追っていった。

その背中は相変わらず軽やかだが、どこか不安を振り切るようにも見えた。

 

場に残ったのは、秋織たちと秋俊、桂乃芬だけだった。

 

「……じゃあ、俺はこの辺で。」

秋俊は端末を操作しながら淡々と言う。

「機材のチェックもありますし、配信の後処理も山積みなので。」

「今回は本当にありがとうねー!」

 

桂乃芬は元気よく手を振り、満面の笑みを浮かべる

「また何かあったら呼ぶから!」「それは出来れば遠慮したいですね。」

秋俊はそう言い残し、二人はその場を後にした。

残された三人の間に、ふと静寂が落ちる。

 

「……なんだか。」

雲璃がぽつりと呟く。

「とんでもないことになっちゃったね。」

「うん……」

雲璃の言葉に、今度は不安が滲む。

「私たちだけで、これから起こること……ちゃんと対処できるのかな。」

 

沈黙が流れる。

その空気を破ったのは、秋織だった。

「弱気になんなよ!」

拳を握り、前を見据えて言い切る。

「確かに相手はヤバそうだ。でもさ――」

 

 雲璃と彦卿を見る。

「俺たちが力を合わせれば、なんとかなる。だろ?」

 

一瞬の間のあと、雲璃が小さく笑った。

「……うん。そうだね。」

「その通りだよ。」

彦卿も頷く。

「少なくとも、逃げる理由は無い。」

夕暮れの空気が、少しずつ冷え始めていた。

先ほどまでの混乱が嘘のように、周囲には静けさが戻りつつある。

だが、秋織の胸の内には、まだ戦いの余韻と、これから先への緊張が残っていた。

秋織は一歩前に出て、彦卿の方を向く。

 

「彦卿。」

名を呼ばれ、彦卿は足を止めて振り返る。

「これからは――戦いの時は、協力しよう。」

秋織はまっすぐに彦卿を見据え、右手を差し出した。

 

「よろしく頼む。」

一瞬の沈黙。

だがそれは、迷いではなく、言葉の重みを受け止めるための間だった。

 

彦卿は微かに目を見開き、すぐに柔らかく笑う。

「うん。」

そう言って、差し出された手をしっかりと握り返した。

「僕も、君たちとなら安心して剣を振れる。」

二人の握手は短いものだったが、そこには確かな信頼が宿っていた。

手を離した後、彦卿は軽く肩を回し、視線を遠くへ向ける。

「さて……」

真剣な表情に戻り、淡々と告げる。

 

「僕たちは雲騎軍として、あの敵――十蔵と荒蛇の謎を追う。

組織として動ける分、調べられることも多いからね。」

 

そして再び秋織たちを見る。

「君たちは、君たちのやり方で探すんだろう?」

「ああ。」

秋織は短く頷く。

 

「何か掴んだら、すぐ連絡する。」

 

「こちらも同じだ。」

そう言って、彦卿は一歩下がり、軽く手を振った。

 

「また会おう。次は――もっと厄介な場所かもしれないけどね。」

その言葉を残し、彦卿は地面を蹴って走り出す。

夕焼けの中、彼の背中は次第に小さくなっていった。

秋織はその姿を見送りながら、静かに拳を握る。

(次に会う時は……俺も、もっと強くなっている。)

雲璃も隣で同じ方向を見つめ、静かに頷いた。

 

それぞれの道は分かれた。

だが、目的は同じ。

 

――十蔵という男の正体と、迫り来る災厄を止めることだ。




やっぱり同時連載はむずいな。できてる人が羨ましい。
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