思いついた場面を書き殴っただけのものです
ファイル1.モンスター執事のお家芸
「恋太郎様。そちらのデートプランはお蔵入りにした方がよろしいかと」
ある日。次のデート予定地である公園でプランを練っていた恋太郎の視界に、冷えた缶コーヒーが入る。
恋太郎が顔を上げると、普段から世話になっている燕尾服の男…花園 志都児の微笑みが見えた。
「志都児さん、それはどういう…?」
「例の子供が来ます」
「……………」
例の子供と聞いて思い浮かぶのは、やけに大人びたメガネの小学生。
江戸川 コナンと名乗る彼が来ると、高確率で殺人をはじめとする事件に巻き込まれる。
これまでの経験から、志都児の言いたいことを悟った恋太郎は、恐る恐る問いかけた。
「その、事前に止められたりは…」
「わたくしに未来予知ができない以上は不可能でございますね…。
ご期待に添えられず、申し訳ございません」
深々と頭を下げる志都児。
恋太郎がそれを止めようとした矢先、その懐にきらりと光るものが見えた。
「お詫びとして、どうかご笑覧ください。『無能執事の切腹』でございます」
「しなくていいです!!」
それはまごうことなき、切腹用のドス。
恋太郎が普段から鞄に入れている、「できる限り苦しんで死ねるよ!苦痛の中で己の罪を存分に後悔して死んでいってね!」という謳い文句で販売されている逸品であった。
「ご心配なさらずとも、死にはしません。弟に怒られてしまいます。
役に立てなかった分、苦しむだけですから」
「苦しまなくていいですから!!」
躊躇いなく腹を切ろうとする志都児をなんとか宥めた恋太郎。
しかし、彼の心配もわかる。大切な彼女たちをわざわざ危険に晒すわけにもいかない。
恋太郎は優しく微笑み、志都児の忠告を受け止めた。
「忠告してくれてありがとうございます。
羽香里たちが『気になるイベントがある』と言っていたので、惜しくはありますが…」
「行きましょう」
「えっ?」
羽香里の名前を出した途端、凄まじい勢いで手のひらを返す志都児。
彼は笑みを崩さず、しかし早口で捲し立てる。
「大丈夫です。邪魔は致しません。
いつも通り、羽香里お嬢様たちをお願いいたします」
「いや、でも…」
「大丈夫です。殺してでも殺人を止めるだけなので」
「本末転倒!!」
いつか本当にやるんじゃないか。
自分のことを盛大に棚に上げたことを自覚しながらも、恋太郎はその申し出を受け入れた。
ファイル2.アンタッチャブル
「薬膳家を探るのはやめた方がいい。本気で」
「……そんなに?」
ある日。赤井 秀一の震え声による警告に、出かける準備をしていたコナンがその動きを止める。
コナンとて引けない理由がある。
薬膳家。恋太郎の彼女である「薬膳 楠莉」をはじめとし、家族全員が薬剤師であると言う生粋の薬剤師一家。彼女らが作る薬は揃って、冗談のように思える効果のものばかり。
聞けば、その中には「ありとあらゆる薬の効果を打ち消すもの」があるという。
自分の体を縮めた毒薬、その解毒ができるのかもしれないのだ。コナンからすれば、そうそう諦め切れるわけがない。
その事情を把握している彼はコナンの肩を掴み、懇々と説き始めた。
「以前、組織とFBI、そのどちらもが潜入したことがあってな。両者とも復帰に半年以上かかる大怪我を負って帰ってきた」
「なにがあったの?」
「『空に放り投げられた』らしい」
「………比喩?」
「いや、なんの比喩でもない。筋骨隆々とした男に体を掴まれ、空に投げられたんだと。
『体力測定で投げられるボールの気分がよくわかった』と青い顔で言っていたよ」
「んなアホな…」
コナンは知らぬことだが、薬膳 楠莉の父は普段こそ8歳児の姿をしているが、その正体はまさにアメコミヒーローが如き筋肉を誇る巨漢。
人を投げ飛ばすなど造作もないだろう。
しかし、世間一般に考えて、人が人を天高く投げ飛ばすなどあり得ない。
証拠不十分で不起訴になるのは火を見るより明らかだった。
「あまりに現実味のない経緯から、起訴することもできなかった。
あの組織も薬膳家が作る薬を諦めきれず何度か襲撃を仕掛けたが、いずれも失敗。
更には今年になって花園家のあの執事が逐一警備にあたるようになり、襲撃を任された構成員が軒並み使い物にならなくなったことで漸く断念した」
「使い物にならなくなった…?」
殺された、始末されたならまだわかるが、「使い物にならなくなった」とはどう言うことだろうか。
コナンが返すと、赤井は肩をすくめ、答えた。
「なにをされたのかはわからないが、薬に関するものを見るだけでパニックを引き起こすようになってな。
ドラッグストアのチラシが視界の隅をよぎるだけで腰を抜かし、ひどい時は『おくす○のめたね』を見て、公衆の面前で大を漏らした奴もいた。その末路は…語るまでもないだろうな」
「本当になにをされたの…?」
「それはわからん。あの執事が撃退した者に限っては一切の外傷がなくてな。暴力でないことは確かだろうが…」
─────よくもファミリーに手を出しやがったな!!テメェらみたいなブタが、二度と人間らしい生活を送れると思うなよ!!!!
なにをしたかはわからないが、怒号だけははっきりと聞こえる。
犯罪に慣れ、人の心を失った人間に、実生活に支障をきたす程のトラウマを刻み込む所業とは一体。
氷解しない、させてはならない謎を前に身震いしていると、赤井が咳払いをしてコナンの意識を戻した。
「もし薬膳家の薬が欲しいというなら、親しくなることだ。
と言っても、下心を持って近づけば、あのバケモノの怒りを買うだろうが」
「あ、あはは…」
─────探るのはなにもあなたの専売特許ではないのですよ、工藤新一くん。
なぜだろうか。今になって脳裏によぎるトラウマに、コナンは身を震わせた。
ファイル3.サッカー
「来るな!!来たらコイツを殺してやる!!」
「お゛っ♡ぼ、ボクのことは、構わなくていいから…♡」
「人質にした俺が言うのも何だが、なんだこいつ気持ち悪いな!!」
「気持ち悪いとはなんだ世界一キュートな女の子だろうが殺すぞ!!」
「ひぃっ!?」
とある日。コナン…もとい眠りの小五郎により追い詰められた犯人が恋太郎の彼女の1人…須藤 育を人質に取っていた。
しかしながら、ストイックさが度を超えてマゾの域に達した彼女は、その恐怖さえも糧として目にハートを灯している。
それに苦言を呈した犯人がモンスターと化した恋太郎に脅されるという、なんともカオスな光景が、ボールを出そうとしたコナンの目の前で展開されていた。
「コナン様。わたくしにボールを貸していただけますでしょうか」
「え?あ、うん」
あまりのことに呆然としていたコナンは、志都児が言うままにバックルからボールを出し、彼に渡す。
なにを思ったか、彼はそれを天に蹴り上げた。
「えっ?いや、どこに蹴って…」
「サッカーには性根が捻じ曲がったカスをたった一発で矯正できる技があると友人に聞きまして。素人なりに練習して、習得したんですよ」
「そんな技ないよ」
「ありますよ。多分、あなたも見たことがあると思います」
「………?」
コナンが疑問を浮かべるより先、志都児がボールの元へと飛び上がる。
いや。ただ飛び上がっただけではない。
炎を纏い、数えきれぬほどの回転を繰り返し、その勢いでボールを蹴り飛ばす。
炎を纏ったボールはそのまま呆然とする犯人へと迫り、その顔面を穿った。
「ファイアトルネード!!!!」
「ぶべべっべぇっ!?!?」
「それ違うサッカー!!!!」
花園 志都児…犯罪絶許モンスター。他の転生者からさまざまな必殺技を学び、忍び寄る魔の手のことごとくを粉砕する。黒タイツ状態の犯人の犯行シーンでページを突き破って殴りかかったりする。
愛城 恋太郎…恋愛モンスター。まだギリギリ人間してる頃なので、黒タイツの犯行シーンでページを破って殴りにかかれない。
江戸川 コナン…モンスターたちに振り回されてお疲れ気味。後日、ファイアトルネードを再現できないかこっそり練習しているところを灰原に見られてバカにされた。