ベル君のエロ本を書くのは間違っているだろうか?   作:リーグロード

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完全無欠のショタベル君とアルフィアママ

 

 今、オラリオはとんでもない騒ぎの渦中にある。

 闇派閥の襲撃、都市最強の冒険者の敗北、そして──大胆にもアルフィアをモデルにしたエロ本を販売するという、ヘラをも恐れぬ暴挙に、ギリシャ神話の神々は震え上がった。

 

 だが、一部の神やヘラファミリアを知らぬ者らは、女神にも劣らない絶世の美女が特殊性癖の持ち主の願望を叶える内容の本に大絶賛を送っている。

 

「く~っ、この本の作者は分かっていらっしゃられる!」

「俺もアルフィアママにあっちの方をよしよしされたい!」

「おぎゃー!おぎゃー!」

 

 まるでこの世の地獄のような光景だ。神も人も、性欲に突き動かされれば、こんなにも醜くなれるのかと、我ながら恐ろしくなる。

 本当は昨日のうちに売り出すつもりだったのに、ザルドに邪魔されてしまった。それでもなんとか無事に逃げ切って、新刊となる二冊目を販売すると、ドスケベな神や人が次々とアルフィアのエロ本を買っていった。

 

 そして、目の前で立ち読みする神様こと、邪神エレボスは一体何をしていらっしゃられるのでしょうか?

 

「ん?いや、あのアルフィアに喧嘩を売るってレベルじゃないやらかしをした勇者なのか愚者なのか判断がつかないキミを一目見に来てね。それと、俺これ欲しいんだけど」

「500ヴァリスになります」

 

 本の厚みからすればぼったくりレベルの値段だが、内容が内容だけに、エレボスは値切り交渉なく素直に払った。

 何か話したい事もあったのだろうが、買った本をじっくりと読んでいるので、話しかけるのは後にする。

 周りで本を買った人や神様も、エロ本>エレボスなのか、無視してじっくりとエロ本の鑑賞を続けている。

 

「ふむ、これはこれは──」

 

 エレボスが買った『アルフィアママの性教育』という本の内容は、夜中に起きた7歳のショタベル君が、お風呂上りのアルフィアママの裸体におっきしちゃって、病気なんじゃないかと騒ぐ内容のものだ。

 

『ママ!なんかあそこが変になっちゃってる!?』

『──そうか、もう7歳だものな。どれ、私がそれの処理の作法を教えてやろう』

 

「──っ、いかん、鼻血が!」

「ハンカチありますけど、いりますか?」

 

 エレボスはバスタオル姿のアルフィアがベルをベッドに連れていく様子に興奮し、鼻血を垂らしていた。

 エロ本で鼻血を出すなんて童貞かよと思いつつも、中の人繋がりで、ゲームで決まる異世界ファンタジーの主人公の前世が童貞で終わっていたことを思い出した。

 

「おっほん!これの続きは帰ってからじっくり読むとして……。一つキミに問いたい。何故キミはこんな真似を?正義でも悪でもない。酔狂……あるいは、自殺願望ともとれる。キミの行いは、オラリオを混乱に陥れている自覚はあるかい?」

「え~っと、偉そうに凄い神様ぶって語ってますけど、私のエロ本読んで鼻血出しましたよね?しかも、私のハンカチで拭きましたし……」

 

 その瞬間、カッコイイ神様なんてどこにもいなかったように、冷たい地面に突っ伏して、エレボスは恥辱で顔を真っ赤に染めていた。

 

「いや違うんだ聞いてくれ!あれはダンジョン帰りのついでにゲットしたダンジョンカカオで作ったチョコレートの食い過ぎでああなっただけで、決してアルフィアママの妖艶さとバスタオル越しに見えるぼんきゅぼんに悩殺されたから出たわけじゃないんだ!」

 

 立ち上がった途端、壊れたように早口で言い訳を巻くしたてるエレボスに、私はとびっきりのいい笑顔でこう答える。

 

「無理しなくていいよ。男の子だもんね♪」

「違うんだぁぁぁぁ!!!!」

 

 下界の子供に男の子扱いされる原初の幽冥を司る地下世界の邪神。もしこの瞬間を神友であるヘルメスに目撃されていれば、一万年はネタにされることは確実だった。

 

「ぜぇ……はぁ……ぜぇ……はぁ……なぁ、今の俺ってオラリオを滅ぼす邪神なんだぜ?なんでこんなことで振り回されちゃってんですかね?」

「そりゃ、目の前にいる人物が、オラリオを阿鼻叫喚の渦に叩き込み、暴喰のザルドを真っ青にさせ、静寂のアルフィアを真っ赤にさせるエロ同人作家だからですよ」

 

 叫びすぎて息切れするエレボスに、私は胸を張ってそう言った。

 その言葉にエレボスは目を見開き、「そういえばそうだったな……」と乾いた笑みを浮かべた。

 

「それで、さっきのあなたの問いに答えるなら、自覚はある。けれど、後悔はしていない。何故ならば、私の主神たる女神は笑顔でお許しになられるのだから」

「…………え~っと、もしかして、オタクの女神って、水を司ってたりしない?」

「それは──ひ・み・つ♪」

 

 茶目っ気たっぷりにウィンクではぐらかす私に、エレボスは疲れたような溜息を吐き、ガシガシと頭を掻く。

 だが、そんな疲れ切った様子も一瞬で引っ込めて、エレボスは踵を返した。

 

「まあ、俺たちの邪魔にはならないっていうんなら、俺は見逃すとするよ。けれど、あまり派手に動くと、アルフィアは黙ってないぜ?ほら、あそこを見てみなよ」

「ん~?」

 

 エレボスが指差す方を見ると、まるで陽炎が生まれているかのような錯覚を覚えるほど、凄まじい殺気を放ちながらこちらへ歩み寄るアルフィアの姿があった。周囲の景色は歪んで見え、まるで背中に鬼子母神を背負って私の首を狩りに来てやがる!?

 

「今日はここらで店じまいです!!!」

 

 売り物の本を放置して、私は全力で逃げに徹する。

 直後、私が売っていた本がアルフィアの魔法でバラバラのボロボロにされ、本を購入した者達がエレボス含めてギタギタのボコボコにされた。この間、実に2秒!!!

 

逃がすものか(ゴスペル)

「きゃあぁぁぁぁ!!!」

 

 怒りが込められて放たれたその魔法は、初日に出会った時よりも遥かに凄まじい威力で私の背後の地面を爆散させた。

 この威力、もしかして、封印でもある静寂の園(シレンティウム・エデン)を解いてる!?

 

「え、馬鹿じゃないの!?オラリオの絶対悪として黒竜を倒せる次代の英雄を生み出す踏み台になる前に死んじゃうよ!!」

「黙れ、貴様が何故それを知っているのかは聞かん。だが、願わくば、ゼウスと共に、冥府魔道の地獄へと堕ちていけ!!!」

 

 閉じた眼を大きく開き、殺意の籠った魔法を連発してくる。

 もう病治ってるだろう!?ってツッコミたくなるぐらい、理不尽な弾幕系シューティングゲームのラスボスみたいに、アルフィアは魔法を放ってくる。

 

 死ぬ!殺される!!今はギリギリで躱してるけれど、逃走ルートを少しでも間違えたり、足がもつれれば即アウトになる。

 っていうか、初日は余裕そうに競歩みたいな歩きで追ってきたのに、今のアルフィアは腕を大きく振って陸上選手みたいな全力疾走で追いかけてきてるんですけど!?

 

「もうちょっと全力出すとこ考えてって──!!いったぁ~い!!」

「ちっ、外したか──!!」

 

 魔法で壊れた建物の破片が頭に直撃した。もしレベル1の頃だったら、間違いなく大怪我してたよ、これ!

 日々の鍛錬というか、あの頃の必死の逃走がちゃんと私の糧になって、役立ってくれたんだなってしみじみ思う。

 まあ、それでもたんこぶはできてるだろうから、これ逃げ切ったら、アルフィアを乙女にして、イケメンエレボス君に壁ドンされて「面白れぇ女」っでキュン♡しちゃうエロ漫画描いてやる!!

 

「貴様──今、何を考えた?」

「生きて明日を拝むこと!!!」

 

 ナチュラルに思考を読まれたことに恐怖しながら、曲がり角を曲がって大通りに出ると、そこには戦火が広がっていた。

 

「ははははははっ!どうした、オラリオの冒険者どもぉぉ!!もっと派手に抵抗しろよぉぉ!!そんでもって、無様な断末魔を──っ?」

「あははは、どうも~、それとあれ、よろしく~!」

 

 なんか高嗤いしながら冒険者を殺しているであろう殺帝のすぐ横を、笑顔で通り過ぎる。

 以前の私なら、こんな光景を目にすれば多少は足がすくんだだろうが、背後から迫るアルフィアの方があまりにも恐ろしくて、笑いながら横をすり抜けてしまった。

 直後、私を狙っていたであろう魔法を食らって吹っ飛ばされるヴァレッタの悲鳴を聞きながら、私は心の中でこれで悪がまた一つ滅したと南無阿弥陀仏を唱えた。

 

「滅べぇ、オラリオ!!!」

「その前に、君が滅ぼされなきゃいいね」

「はっ──?」

 

 愉快そうに破壊されていくオラリオを眺める白髪鬼の前を、私は全力で駆け抜けざまに注意したが、不意を突かれて呆けたオリヴァスは哀れにも、アルフィアの魔法の流れ弾を食らって吹き飛ばされた。

 キラーン!という彼がお星さまになった音を聞きながら、肉盾になってくれたことへの感謝を敬礼のポーズで示し、私は彼の分まで生きる為に必死に逃げる。

 

 そうして、私と怒り狂うアルフィアが通り抜けた後は、闇派閥の主力がいなくなった事で冒険者側が息を吹き返したそうだが、その立役者となった私たちの事は、速すぎるあまり誰の目にも留まらず語られなかったそうだ。

 

「ああ、もうやばい。この時代に来て5徹目。全力で逃げ回った挙句、本二冊を一睡もせずに描いたから、体力も限界……」

 

 寝れば元の時代に戻れるとはいえ、この状況で眠れるはずもなく、誰かが助けに来てくれることを期待しながらオラリオ中を走り回るも、出会うのはモブ冒険者か闇派閥ばかり。今なら布団に入れば一瞬でスヤァっと眠れそうなのにと思いつつ、都市を破壊しながら迫ってくる破壊神アルフィアから全力で逃げていると、ようやく一筋の希望が見えてきた。

 

「────ッ!!」

「やっと……ついに限界が来た!!」

 

 絶対に私を捕まえるまで止まらないと思っていた足が、不意に止まり、その場で大量の血を吐き出した。

 そう、本来ならば最終決戦の日まで休息を取らねばならないアルフィアが、全速力で追い掛け、封印を外したサタナス・ヴェーリオンを何発も打ち込み続けたのだ。こうなるのは自明の理。

 それでも、本当に助かった。私自身も魔法の余波や飛来物で体のあちこちに傷を負い、全力で走り続けたせいで足が酷く痛んでいる。

 

「ごめんだけど、このまま逃げさせてもらうね。この勝負、私の勝ち逃げで終わらせてもらう。もう二度と会うことはないでしょうね。だって、()()()()()()()()()()()

「──っ、待て!」

 

 アルフィアの呼び止める声に返事することなく、私はそのまま逃げ去って、住人の居なくなった綺麗な空き家に潜り込む。

 ただ、もう限界だった。走り続けた疲労と眠気が相まって、ベッドに倒れ込むと、布団も掛けずに眠りに入る。

 

 消えていく──。泥のように沈み込む意識のなか、私がこの時代から消えていくのを感じる。

 

 

 

 


 

 

 

 

 こうして、この時代最悪のイレギュラーは元の時代へと帰っていった。

 だが、もう誰もその存在を覚えてはいない。人々からも神々からも記憶の中で忘れ去られた女が残したものは、この時代に確かな傷として消えることなく刻まれ続けた。

 

「っとまあ、俺や他の神々、オラリオの誰もが忘れた誰かの忘れ形見ってやつなのかな?大抗争が終わって落ち着いた頃にようやく腰を据えて捜索した結果、何も成果は出なかった」

「────」

 

 とある田舎の村の、とある一軒家。そこで、二柱の神が向かい合って会話を交わしていた。

 いや、話しているのはヘルメスのみで、もう一人の神はヘルメスに手渡された本を普段のふざけた態度は鳴りを潜め、真剣にその本を読み込んでいる。

 

「あ~、ゼウス。その本が非常に俺たち神好みの神作だってのは読んだ俺も認めるところだ。だけど、そろそろ本題に入ったらどうだい?」

「かぁ~、やかましいのう。人がせっかくありえんくらいドスケベになったアルフィアのむふふな本を楽しんどるというのに。それで、この本を描いた者の事か……」

 

 ヘルメスが持ってきた本は、アルフィアのエロ同人。しかも、その内容が神好みなドスケベとあって、ゼウスも例に漏れずに静かに興奮して読みふけってしまった。

 だが、ヘルメスに指摘をされて、ゼウスは渋々と本を閉じて会話に戻る。

 

「まず、どうやってこの本を描いた者がベルの事を知っているのか、……儂にもさ~っぱりじゃ?」

「おいおい、貴方が知らなきゃ誰も分からないだろう」

「だってぇ~、知らないものは本当に知らないんじゃもん!」

「爺のもんは気持ち悪いから本当にやめてくれ」

 

 この神との付き合いも長いが、こういう子供っぽいところは本当にどうにかならないのかと常日頃から思っている。だが、そんな思いも露知らず、ゼウスは再び本題に入った。

 

「じゃが、存在したというのに、誰の記憶からも消えている。おそらくそいつは、カオスに巻き込まれた時の旅人──というところじゃろうて」

「カオスの──そうか、だから誰の記憶にも!?」

「まあ、憶測にしか過ぎんがのう。それよりも、そいつが描いたのはこの二冊だけか?まだあるんなら、ケチケチせずに渡さんかい」

「ないよ。俺だって、この神作がまだないか散々オラリオ中を探し回ったんだぜ」

 

 ヘルメスは首を振ってそう返す。その反応を見て、ゼウスは残念そうな顔を浮かべた。

 だが、そんな感情は一瞬にして消え失せ、手に持っている本に釘付けになる。

 

『ほ~ら、ママの手の中は気持ちいいだろう?♡そのまま我慢せずに、ドビュ~ってしていいんだからな♡』

『あっ、うっ、ママ~♡』

 

「うひょ~、これ考えた奴天才じゃろう!!!」

「孫のエロ本見て興奮するとか、神ながらに業が深い……」

「何を言うか、ヘルメス。神々の間じゃ、母子相姦などいくらでもある。それで興奮するのは間違ってはおらん!!」

 

 エロ本でテンションが上がる神と、そんな神を呆れた目で見るヘルメス。

 

「しっかし、流石は儂の孫よな。下半神は儂譲りじゃ……」

「まあ、少年らしからぬサイズだけど……。実際のところ、マジなの?」

「う~ん、ナ・イ・ショ♪」

「イラッ!」

 

 イラっとくるウインクを飛ばされて、ヘルメスは殺意の波動に目覚めた。

 そのままゼウスにグーで殴り掛かるも、武神にも引けを取らぬ大神からすればカウンターで投げ返すのは容易なこと。

 

「ぐへっ!?」

「甘いのう。もっと腰を入れんか、腰を!!」

 

 ゼウスはゲラゲラと笑いながら茶化すが、やはりどうでもよくなってエロ本に再び視線を落とした。

 

「あ~、痛ててぇ……。ったく、好々爺の癖に武神に負けない強さとか、反則もいいところだぜ」

「これでもオリュンポスの大神じゃからのう。……ヘルメスよ、もし未来でこの本を描いた者が現れたなら、守ってやれよ」

「言われなくとも、男神にとってエロスケベは必要な栄養素。それを生み出す神作家は守らねばならないからな」

 

 ヘルメスが胸を張って答えると、ゼウスは満足げに頷いた。

 

「ただいま~。お爺ちゃん、どこ~?」

「おっと、ベルの奴が帰ってきよったか。どれ、この本でも見せてやるとするかのう?」

「止めてやれよ。義母とのエロ本とか、孫をショック死させる気か?まあ、なんにせよ、俺はもうオラリオに帰るぜ。アルフィアに殺されないうちに、その本は隠しとくんだな」

 

 ヘルメスはそう言い残し、オラリオに帰っていった。背後で響く魔法の爆裂音をBGMにしながら。

 




これでイレギュラー・レコードは終わりますが、感想でゼウスにも読んで欲しいとありましたので、最後に幕間としてヘルメスとゼウスのシーンを追加で書き上げました。
後、アストレがショタベル君×アルフィアママのエロ本を読むかどうかのアンケートします。

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