ベル君のエロ本を書くのは間違っているだろうか?   作:リーグロード

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一話書けたら、二話目もサクッと書けた件について。


真夏のどちゃくそエロい受付嬢のこれ

 

 カリカリと紙の上をペンが走る音がギルド本部を支配している気がする。

 いや、他にも色々な音がしているのだが、そのペンを走らせる音を出している彼女の怒気が凄まじく、他の音がかき消されているだけだ。

 

「え……エイナぁ……」

「なぁに、ミィシャ?」

「ひっ!その、弟君のあの本は別に本当の事じゃないっていうか、噓っぱちの出来事を描いてるだけなんだし、そんなに気にしなくても……」

「べぇ~つぅ~にぃ~。私はぜんっぜん!気にしてなんかいないよ」

 

 嘘だ!と、その場にいた全員が思った。

 っが、まるでブリザードが吹いているのでは?と思うほどの冷気を撒き散らしているエイナに、誰も何も言えない。

 周囲に静かに緊張感を漂わせながら、エイナは書類を書き上げ、サインをして上司に手渡す。全ての仕事を終えたエイナは、早めに帰って休息を取るよう告げられ、少し早めの帰宅を促された。

 

「まったく、本当に何処の誰がベル君のあんな本を──!!」

 

 ブツブツと、以前歓楽街で追いかけた顔と性別以外は何も分からなかったあのエロ漫画の作者のことを思い出し、文句を言いながら帰ろうとするも、気づけば足は歓楽街へ向かっていた。

 普通、歓楽街に美人エルフが足を運べば、ナンパ目的で数多の男や神達が近寄ってくるのが常である。

 しかし、エイナが放つ怒りのオーラと、ベル・クラネルのエロ本に登場するヒロインの一人であることも相まって、彼女の目的を察した男連中は声を掛けず、まるで嵐が過ぎるのを待つかのように息を潜めていた。

 

「くっ、いない!」

 

 以前の販売場所に足を運んでみたが、どうやら時間じゃないのか、あるいは売り場を移したか、彼女の姿はなかった。

 それで、収穫がなかったのかと言われれば、一つだけあった。歓楽街で彼女の手掛けた本が別の店で売られていた。値段的に転売ではなく、恐らくは委託販売だろう。

 まあ、前々から自分だけでなく、様々な女性並びにファミリアから追い掛けられていたのだから、この処置も当然と言えば当然だろう。

 さて、それは置いておいて、エイナが購入したのは表紙に水着になった自分と顔を真っ赤にしてエイナの胸に挟まれるベルが描かれた本だった。

 

 二冊目となる自身をモデルにした本を手にしたエイナは、怒りを感じながらも、これがローリエ・スワルに勝てる作品なのか一瞬考えてしまった。

 そこで初めて、自分がこの本にどれほど毒されてしまっているのかに気づき、苛立ちとも困惑ともつかない感情に駆られて、思わず悲鳴のような癇癪を上げた。

 そして、声を上げたあとで、ここが人前だと思い出し、エイナは恥ずかしさから本を急いで買って足早に家へ帰った。

 

「ああもう!なんで私がこんな恥ずかしい目に遭わなきゃならないのよ!!それもこれも、全部この本が悪い!!」

 

 買った本をバシンとベッドの上に叩きつけ、エイナは髪を搔き乱しながら、そう叫ぶ。

 しかし、それはそれとして、本の中身は気になるようで、エイナは眉間に皺を寄せながら、ベッドに腰掛けて本を開く。

 

『ベル君!こっちこっち!!』

『待ってください、エイナさ~ん!』

 

 メレンの浜辺でベルといちゃつく自分達の姿を見て、ひとまず健全だと思いつつも、以前ならこの時点で取り乱していただろうことにエイナは気付いていない。

 まあ、気づいていたら、虚ろな目で「私、いつの間にか汚れちゃってたんだね。もう……綺麗なエルフじゃないや……」と、軽く絶望していただろう。

 とりあえず、そんなIFの可能性は置いといて、今は本の中身を語るとしよう。

 

『ねえ、ベル君。今、どこ見てたのかな?』

『ヴェッ!?いや、別に……』

『あっちの金髪エルフの水着に目を奪われてなかった。今は私とのデート中だっていうのに?』

『違います違います違います!?』

『ふ~ん、まあいいけど。次に別の女性に目を奪われたりなんかしたら、これだからね!』

 

 そう言って自身の胸を持ち上げて、エイナはベルを叱咤する。

 

「これってなんだぁぁぁぁ!!?」

 

 脅しなのかどうかも分からない漫画内の自身の言動に、現実のエイナは読んでいたその本を壁に思いっきり投げつける。壁にぶつかった本がパラパラとページを捲らせながら床に落ちた。

 そうして、エイナは落とした本を拾う気力もなく、ぐったりとベッドに項垂れた。

 

「はぁ~、こんな本なんかに振り回されて……馬鹿みたい」

 

 こんなの所詮はあの女の人のエッチな妄想で、あのランキングだって、ただの周りの人たちの評価でしかなく、ベル君が選んだ訳じゃないのは知っている。

 知っているのに、心はずっとモヤモヤしてしまっている。仕事に集中したくとも、あの純愛英雄譚を読んでしまったせいで、自分なんかよりも、ローリエ氏の方がずっとベル君にお似合いなんじゃないかと心のどこかで自問自答し続けてしまう。

 

「……これ、私とベル君はどうなるんだろう?」

 

 投げ捨てた本を拾い上げ、パラパラとページを捲って続きを読み進めていく。

 一緒に遊んで、一緒にご飯を食べて、一緒の宿屋に泊まる。

 

『二人っきり……だね。ベル君』

『はい、エイナさん』

 

 ランプの明かりだけが照らす部屋の中で、水着のままのエイナとベルはベッドに横になって座る。

 この後どうなるか、散々この作者の本をミィシャ経由で知ってしまったエイナには簡単に予想がついた。

 

『さて、私というとっても可愛い彼女がいながら、他のエルフの女性に目を奪われちゃったベル君にはお仕置きがあります!』

『えっ、いや、本当にあれは違うっていうか!!その、お仕置きって……あれ、ですか……』

 

 ベルの視線がエイナの水着で露わになっている胸の谷間に集中している。

 それが正解だと言わんばかりに、エイナは胸を抱き寄せて、ベルを誘惑する。

 

「むぐぐ……。本当のベル君ならもうとっくに照れて逃げ出してるよ!!いや、逃げられるのは正直ちょっと傷つくから嫌だけど、かと言ってコロッと私の誘惑に墜ちるのもなぁ~……」

 

 現実と漫画とのベルの差異に文句を垂れつつも、実際に逃げられたら傷つくんだろうなと、エイナは自嘲しながら、逆もそれはそれでと難しい乙女心を口にする。

 

『これ……気持ちいい?♡』

『うっ、エイナさん。すごく……気持ちいいです♡』

 

 例の()()でベルのゼウス棒を気持ちよくする漫画の中の自分自身に、エイナは顔を真っ赤にしてその行為に怒りを上げる。

 

「へっ、はぁ……?じょ、女性のあそこは赤ちゃんを育てるための大切な部分で、そんな風に使うなんて……!?」

 

 エルフの貞操観念からしたら、漫画内での自身の行為はNGというか、想像の埒外だったようで、エイナは怒りと困惑で頭がどうにかなってしまいそうだった。

 ただ、漫画の中のベルの表情を見て、エイナはちょびっとだけしてあげてもいいと思ってしまわなくもない。

 

「いやいや、毒され過ぎだから私!!?……でも、それくらいしなくちゃ、ローリエ氏には勝てないのかな?」

 

 そこから、水着のまま最後まで行為を続ける漫画の自分に、エイナはやっぱり怒りが込み上げてきて、その本を投げ捨てた。

 最初は勝手にエッチなことを描かれていたことに怒りが湧いていたのに、読んでいる途中から、現実じゃまるでそういう空気になっていないことや、ローリエとの本の内容差に不安というか、劣等感からの怒りに変わっていた。

 

「ああもう!せっかく休息を取るために早めに帰らせてもらったのに、全然休めてな~い!!それもこれも、全部ベル君が優柔不断で、色んな女の子に手を出すのが悪いんだもん!!」

 

 ゴロゴロとベッドの上で転がり、エイナは一人悶々とした気持ちを抱えて、今後どんな顔でベル君と顔を合わせればいいのかを悩むのだった。

 

 




次回はアイズの回。
結構R18に認定されそうな内容にするけど、運営さん見逃してくれるかな?
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