ベル君のエロ本を書くのは間違っているだろうか?   作:リーグロード

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シスコン猫の場合

 

 女神フレイヤの庭である戦いの野(フォールクヴァング)にて1つの激戦が行われていた。

 

「何としてでも、アレン様を止めろぉぉぉ!!!」

 

 団員の1人がそう叫ぶと、団員達はアレンに向かって走り出す。

 それぞれが武器を持って突撃を仕掛けるが、怒り狂う戦車の驀進を止められる筈もなく、団員達は吹き飛ばされる。

 

「ぐはっ……」

「そ、そんな……」

「か、勝てない……」

 

 地面に叩きつけられた団員はアレンの強さに絶望し、戦意喪失する。

 そんな戦意喪失した者達には目も向けず、アレンは戦場を駆け回る。

 

「どきやがれぇぇぇぇ!!!」

 

 アレンが駆け回る度に、その直線上にいる団員が次々と吹き飛ばされていく。

 その光景を見た他の幹部らは、呆れた溜め息を零す。

 

「はぁ、あの愚猫が……。【永争せよ、不滅の雷兵】」

 

 ヘディン・セルランドは苛立たしげに暴れ回るアレンに魔法を放つ。

 

「カウルス・ヒルド」

「──っ!!?」

 

 咄嗟に進行方向に放たれた鏃状の雷弾を回避したアレンは、足を止めて魔法を放ったヘディンを睨む。

 

「ヘディン!テメェ!!」

「大人しくしろ、この愚猫め。妹とあの愚兎のハレンチ本を見て暴走するな」

 

 そう、アレンが激怒した原因とは、ベルとアレンの妹であるアーニャのエロ本を偶然見つけてしまったことに起因する。

 

 ベル・クラネルのエロ本を描いている謎の人物を探すよう、神フレイヤからお願いという名の事実上の命令を受けていた。

 幹部や上級冒険者の団員は自ら足を使って捜索し、入団して間もない団員たちは、その人物が手掛けたエロ本から傾向を探るようヘディンに指示されていた。

 しかし、不運はそこで起きた。ヘディンはモデルにされている人物をある程度把握していたが、新刊の存在を知らず、しかもその中にアーニャが含まれていることなど知る由もなかった。

 さらに追い打ちをかけるように、その本をアレンの過去を知らない新人が扱っており、捜索に乗り気ではなかったアレンが偶然にもそれに出くわしてしまったのだった。

 

「あん?んだこりゃ?」

 

 資料として買ったアーニャとベルの本に気付いたアレンがそれを手に取って中身を読んでしまった。

 

『ダ……ダメニャッ♡!尻尾握ってズンズンしちゃおかしくなりゅニャッ♡』

 

『んっ♡ベル♡ベル♡大好きだニャ♡』

 

『これでオミャーも家族だニャ!ず~っと、ミャーと暮らさないと許さないからニャ!!』

 

「──ああああああああああああッ!!!」

 

 妹の幸せと兎との絡み合い。捨てた自分を責めるように、兎に拾ってもらった妹の幸せを見せつけられたアレンが発狂した。

 そして、発狂したアレンの事を新人が女神や幹部らに報告している間、色々とブチ切れたアレンが槍を持って駆け出し、現在に至る。

 

「俺は認めねえぞ!あの兎野郎が俺のことをお義兄さんだなんだと呼ぶことをぉぉぉ!!!」

「馬鹿が!現実と妄想の判別も出来ぬぐらいに狼狽えるな、この愚猫めぇぇ!!!」

 

 暴走する戦車の驀進はヘディンでも容易に止めること叶わず。幾多の雷弾も戦車にカスることも出来ずに散っていく。

 だが、直進の動きだけはさせぬように防げている。右に左にと、避けるアレンを戦いの野(フォールクヴァング)から逃がさぬように檻の役目だけは果たしている魔法だが、それも時間の問題かと思われたその時、援軍が駆けつける。

 

「まったく、何をしている馬鹿猫!」

「フレイヤ様の言いつけを忘れたか?」

「あの兎を殺すことは断じて許されん!」

「というか、本の中で妹があの兎と交尾したからといって、我を忘れてキレんな!」

「「「ほんと、それな!」」」

 

 駆けつけた炎金の四戦士(ブリンガル)たる四人が交わす会話に、アレンは苛立ちを隠せず声を荒げた。

 そして、援軍はまだ続く。

 

「【抜き放て、魔剣の王輝(おう)。代償の理性、供物の鮮血。宴終わるその時まで—殺戮せよ】」

 

 アレンの首筋を狙って、魔剣の一振りが放たれる。しかし、獣人──それもレベル6の冒険者であるアレンはその不意打ちを見事に回避する。

 

「ダインスレイヴ」

 

 戦場にはせ参じたヘグニは人格改変魔法によって、冷酷で無慈悲な『闇の戦王』へと変わった。

 目的は当然、女神フレイヤの意に反する戦車の暴走を止めるため。

 だが、レベル6が二人と、レベル5が四人居ても、それは簡単なものではなかった。

 

「ぐおおおぉぉぉぉ!!!!」

「いくぞ、ヘグニ!」

「──了解した!」

 

 怒りと共に、妹の存在しない幸せに脳が震えまくって、限界突破のリミットブレイクを果たしたアレン。

 戦車の突進を止めるべく、魔法に魔法を上乗せして放ったヘディン。

 全ての動きを見切り、回避不能のタイミングで魔剣の一撃を放ったヘグニ。

 

「しゃらくせぇぇぇぇ!!!」

 

 槍の一掃を持って魔法も、魔剣も、全てを吹き飛ばしたアレン。

 

「ぐっ、おのれぇ!!妹のまぐわいの妄想で容易く限界を超えるなら、とっとと素直になっていろ、愚猫ぉぉぉ!!!」

「マジ無理……」

 

 限界を超えたアレンの力は、ヘディンとヘグニを吹き飛ばし、魔剣を弾き、槍の穂先でヘディンの杖の先端を粉砕した。

 それを確認したアレンは、二人のことなど意に介さず、槍を振り回しながら外へ向かって駆け抜けようとする。

 だが、まだ終わりではない。この場にはヘディンとヘグニ以外にも、すでにアレンを取り囲むように陣取ったガリバー兄弟がいた。

 彼らの連携はまさに息の合った妙技。四つの小柄な影が迫る中、アレンは動じることなく一拍の呼吸を置く。

 そして、反撃の狼煙が上がった。

 

「があああぁぁぁっ!!!」

「「「「なっ!!?」」」」

 

 ガリバー兄弟の攻撃を避けも受けもせず、ただ力任せのカウンターで返した。アレンの槍は彼らの武器をすべて弾き飛ばし、その勢いでガリバー兄弟を吹き飛ばした。

 圧倒的な力の差に、ヘディン、ヘグニ、ガリバー兄弟は地に沈む。

 

「んで、後はテメェか……オッタル!!」

「女神の神意を忘れ、己が激情に任せて暴れ回る獣に堕ちたか、アレン」

 

 アレンを止められる者は、この場には1人しか居ない。レベル7の冒険者であるオッタルだけが、暴走する戦車を止めることができる唯一の存在であった。

 そして、2人の英雄が今ここに衝突した。

 

「ちょうどいい!テメェを下して、あのくだらねえ本を作った奴も、俺の妹に手を出しやがった兎も、全部轢き殺す!!」

「ぬぅ……!?この力、そうか……お前もついに己が限界を……」

「人の限界がどうとか……。テメェもヘディンも、上から目線で偉そうに語ってんじゃねぇぇぇ!!!」

 

 アレンはオッタルを狙い、槍を振り下ろす。だが、オッタルもまた防ぐべく大剣を振るい、アレンの槍にぶつける。

 槍と大剣が衝突したことで起きた衝撃は凄まじいものであった。

 その衝撃は荒野全体へと伝わり、誰も二人の間に入れないでいた。

 

「【金の車輪、銀の首輪】【憎悪の愛、骸の幻想、宿命はここに】【消えろ金輪(こうりん)、轍がお前を殺すその前に】【栄光の鞭、寵愛の唇、代償はここに。回れ銀輪(ぎんりん)、この首落ちるその日まで】【天の彼方、車輪の(ユメ)を聞くその死後(とき)まで-駆け抜けよ、女神の神意を乗せて】」

「【銀月(ぎん)の慈悲、黄金(こがね)の原野、この身は戦の猛猪(おう)を拝命せし。駆け抜けよ、女神の神意を乗せて】」

 

 互いに合わせたように魔法の詠唱にはいる。アレンの魔法詠唱、オッタルの魔法詠唱が同時に展開され、双方の魔法陣が展開される。

 

「グラリネーゼ・フローメル」

「ヒルディス・ヴィーニ」

 

 両者の魔法による一撃が戦いの野(フォールクヴァング)を粉々に吹き飛ばした。

 その後、騒ぎを聞きつけたフレイヤの仲裁の一言によって、アレンは鎮圧され、罰として破壊されまくった戦いの野(フォールクヴァング)の修繕を一人で行うことになった。

 

 

 


 

 

 

「はい、お待ちどうさま!」

 

 出来立てほやほやのじゃが丸くんを神様から受け取った。

 ダンまちの名物料理といえば、やっぱりじゃが丸くん!これに異論はない。

 そんなじゃが丸くんを味わいたくて、今日はベル君のエロ本執筆をお休みし、ぶらり食べ歩きの休日を満喫している。

 

「いただきま〜す!」

 

 少し行儀は悪いが、家に持ち帰れば冷めてしまうため、出来立てを味わうべくその場でかぶりつく。そうして食べた瞬間、外はサクッと、中はジュ〜シ〜な旨みが広がる。具なしコロッケかと思いきや、これは違う!まさにじゃが丸くんという名の食べ物だ!!

 

「うん、美味しい!」

 

 じゃが丸くんを味わっていると、遠くの方で何やら破壊音のようなものが聞こえてきた。

 

「事件?」

「う~ん、あっちはフレイヤのホームがある場所だし、事件というより鍛錬による音じゃないかな?」

 

 可愛らしいツインテールを風になびかせたロリ巨乳女神は、少し苦笑い気味にそう答えた。

 

「そうですか。昼間から騒音だなんて、人の迷惑も考えて欲しいですね」

「まったくだね。まあ、アレも下界の救済の為というお題目がある以上は、ギルドの方からも苦情をつけにくいんだろうね」

 

 それを聞いて確かにと納得する。原作でもタイムリミットは近いみたいな表現はされてたし、ギルドの方も焦ってるのだろう。

 まあ、どうせ主人公のベル君がどうにかしてくれるでしょう(知らんけど)

 

 

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