完成しているのは間違っているだろうか   作:新人作家

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現実でも空想でも寄生って怖いよね。


第11話

 

 リント・クライムロード。

 精霊が身近にいたとされる古代より存在が希薄になったこの神時代において、高い親和性と融和性を持って産まれたこの世界の特異点(バグ)

 

 リント本人はふよふよ光ってる虫が寄ってくるな、この世界の蛍かな?程度にしか精霊を知らないためこの才覚を知っているのは、背中に神血(イコル)を注いだヘスティア以外のかつての主神達、それとリントと密接に関わる精霊達に他ならない。

 彼の故郷には住み処である大聖樹がないため、純粋故に残酷な計画を企てた。

 

 宿木という植物がいる。これらは他の樹木に張り付き、栄養や水分を吸収して成長する植物であり、一定の魔力が無ければ消滅を免れない精霊は(リント)という樹木に狙いを付けた。精霊という宿木に寄生されたら最後、生かさず殺さずただ半永久的に魔力を吸い上げられる人型の大聖樹となる。    

 魔法種族(マジック・ユーザー)の母を持つ彼は先天的に魔力量が多く、また()()()()()()()()()()()()()()()()リントはまさにうってつけなのだ。

 

 そのためにはまずは微精霊を用いてリントに近づき、親交を重ねて絆を育み、全幅の信頼を寄せさせる。そうすれば大聖樹に変わる木になってと()()()()()簡単に説得できる。杜撰で穴だらけな計画でも失敗を疑わない彼らは立って喋れるまで育った友人(リント)に契約を施そうとするが、

 

 『は?嫌だが?』

 『──』

 

 断れた。

 魅了!ピカッ!

 

 『っ、立ち眩み?』

 

 効かなかった!?

 ええい、力ずく!やー!

 

 『消えなさい』

 

 異常だと判断した両親が知らせた、早馬で駆け付けた美神に阻まれた。

 

 『精霊がこんなこと仕出かすなんて······。貴方、変な子ね』

 

 美神──アフロディーテはリントに対して目を細める。精霊から力を授かるのではなく、大聖樹にされかけた少年。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()追い払っても第二、第三の精霊が強襲するかもしくは愉快神(ショタ好き)に誘拐されて穢されると判断したアフロディーテは──()()()()()()()()()()()()()()()()──少年を眷属にすることにした。別に可愛い顔立ちと純粋を体現した魂と立派な器に惹かれたわけじゃない。決して美の化身のアフロディーテは初対面ショタに惹かれたわけじゃないのだ!善意で!眷属に!するのだ!

 

 それはそれとして、リントを数多の神血(イコル)に浸して無垢な魂に色を付けされることにした。自分以外の女色(男色)に染められるのは憤慨ものだが、精霊に狙われにくくし、古代の英雄のような健全な協力関係を築かせるためなのだ。血涙垂れ流しながら我慢できる。

 

 美の女神(アフロディーテ)

 狩猟の女神(アルテミス)

 旅の男神(ヘルメス)

 真実の女神(ヴェーラ)

 光の男神(バルドル)

 正義の女神(アストレア)

 そして炉の女神(ヘスティア)

 

 どの神も精霊に執着される(好かれる)特異性を聞いて驚き、完成されたステータスを見て目を見開いた。そして全部引っくるめた下界の可能性に思わず笑った。

 彼こそが最後の英雄(ラスト・ヒーロー)だと、皆は思ったので我が物にしようとするアフロディーテを説得した。

 

 

 

 

 

 

 「リント・クライムロード!お前がこの階層にいる理由を今は聞かん。しかし、あの戦いには参加しないでくれ!」

 「了解です!周りの骨がアイズさんに向かないように殲滅します!」

 「あの娘もこれくらい聞き分けがよかったらな······」

 

 骸の王(ウダイオス)が振り下ろした大剣に、剣の姫(アイズ)が繰り出した暴風が衝突する。階層を揺らすほどの激震と、通路に至るまで風が支配する。

 【王座の間】に転がりこんだリントは、骨の群れを蹂躙しながら全身を撫でる風に嫌な既視感を覚える。

 

 「──はぁぁぁぁぁ!!」

 『──ガアアアアア!!』

 

 二度目の衝突。そして巻き起こる暴風。普通の魔法とは違う、アイズ・ヴァレンシュタインの"風"の魔法。

 

 既視感。自分は以前、これに似た風を味わったことがある。

 都市内(オラリオ)迷宮(ダンジョン)で?いや魔剣含めて風の魔法を喰らった覚えはない。都市の外だ。外で出会った人達を思い浮かべるが、やはり誰一人として使用しなかった。

 では、モンスターかと聞かれたら答えは違う。()()()()、魔力の熱線や光線を放つ異彩なモンスターは居たが違······わないか?あのモンスターは封印した月の精霊を吸収して使用していた。

 この既視感はつまり、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 「───」

 

 答えに辿り着いた瞬間、リントの脳内に溢れる()()()()()()

 

 『リント!リントみたいな強くて壊れない玩具(人間)は初めて!もっともぉぉぉと遊ぼ!』

 「え?」

 『キャハハハハハハ!行っくよ───!!』

 「え、え?あっ、待っ、ぎゃああああああああ!!?」

 

 じゃれてきた馬は周りの粒子を吸い込んだと思うと、一気に神々しい馬の姿になった。辺りに漂う微精霊から力を貰ったのだ。そして壊れないと見るや球状にまで圧縮した台風(ハリケーン)を有無を言わさずそのままぶつけてきた。

 あの日、なす術なく()()()()()()()。アイズの風を間近で感じている今思い出した。目が覚めたらアストレア様のお胸の深い谷間の中。何がどうなってそうなったのか分からず気が動転してそれどころじゃなかったし、まだ命を落とすことに慣れてなかったから無意識的に記憶から消していたんだろうな。思い出そうとするたびにうっ、頭が!てなってたし。

 

 ユーフィと呼ばれるデカ駄馬──じゃなくて精霊はなんかシュンとなって凹んでいたが、先輩(セシル)曰くあれはアストレア様がガチ説教したかららしい。それでああなるのかと思うが······まあ、優しそうに見えて意外と厳しい神様だし納得はできる。セシルも説明中その姿を思い出して顔を蒼白させ震えていた。

 その後の遊びは加減を覚えたのか死ぬまでとはいかずとも、中々に命懸けだった。いい経験値(エクセリア)になったと言ったらドン引きされたのを覚えている。解せぬ。

 

 ユーフィからお詫びの印に貰った沢山の『雫』は普通の炉でも加工できるらしいが、精霊炉で加工するとかなりの効果を見込めるとのことで、【学区】から貰った最硬金属(オリハルコン)と母の故郷から貰った大聖樹の枝を一緒にアストレア様に預けている。任せてうふふ。と言われたら誰だってそうする。

 

 そんな昔話を思い出したリントは、そろそろ決着がつきそうなので、本気を出す。

 

 「──【ディア・ミメシス】!!」

 

 自傷しなくとも、この風をそのまま付与する。やはりと言うべきか、通常の魔法とは違い、()()()()()()()()()()()()()()()()()。力に呼応するように背中が熱を帯びる。

 

 「やはりアイズの風を纏えるのか······」

  

 アイズの同行者であるリヴェリアは、リントの付与魔法(エンチャント)に目を向ける。十八階層の一件で相手の魔法(魔法に準ずる魔力攻撃)を吸収していた。ならばアイズの風だって例外ではない。

 半妖精(ハーフ)にも関わらず、恐らく自分(リヴェリア)やレフィーヤと並ぶ総魔力量。加えて【白黒の騎士】と並ぶ剣技の才能。それがまだ育ち盛りの十代前半の少年と言うのだから末恐ろしい。

 

 (面白いな、この子は······)

 

 アイズやレフィーヤ、ベートですら(リント)を認めるのが分かる。特にレフィーヤは触発されたのか訓練に身が入っている。

 【ロキ・ファミリア】に入団していたら他の者も影響されるのだろうか?その前に誰がこの子を教育するかで揉めそうだな。主にアイズとベートが。

 

 そんなあったかもしれない世界線を想像してふっと笑った。

 

 「片付けました。あっちも丁度終わったみたいですね」

 「そのようだな。待ってろ、お前にも精神回復薬(マジック・ポーション)を渡すから──」 

 「あるんでいいですよ」

 「どこから出した」




精霊の計画。
 魔力を吸い取る宿木として、リントに寄生する恐ろしい計画。大聖樹に住みたい彼らはリントを人型の大聖樹に見立てていた。この精霊達に悪気は一切なく友達と一緒にいられるんだからいいよねの精神で行動していた。

リント
 精霊に寄生されかける。厄介(ポンコツ)な美の女神の眷属にされる。そして数年後に精霊馬に殺されるという不運に襲われる主人公。

ユーフィ。
 剣製都市の精霊馬。中位精霊だが、たくさんの微精霊達から力を貰って大精霊に片足突っ込んだ。古代の英雄は精霊によって強化したんだから、精霊も精霊から力を貰ったらそうなるよねって理屈。アストレアからのガチ説教の後、加減しながらリントと遊んだ。楽しかった。
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