完成しているのは間違っているだろうか   作:新人作家

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第2話

 (ヒューマン)は言った。気安くエルフに近づくな、と。

 

 (エルフ)は言った。運命の出会いを大切に、と。

 

 そして(ハーフ)は思った。遊び人の父がナンパした相手が激重感情持ち行き遅れに手を出したことで(八十代未婚エルフだったことで)僕が産まれたんだな、と

 

 

 

 ギルドにて。

 

 「ランクアップしました」

 「······ん?」

 「アンフィス・バエナ倒しました」

 「······ん?」

 「失礼します」

 「──待て待て待て待てぇい!!」

 

 

 

 鍛冶場にて。

 

 「それは【ロキ・ファミリア】だな。主神殿も言っておったし、間違いない」

 「【ロキ・ファミリア】······」

 

 超大手じゃん、やばーい。

 どもども、僕はリント・クライムロード。【ヘスティア・ファミリア】に入団したLv.4の駆け出し冒険者。

 母が父の背中を刺してるいつもの光景を眺めている間、歌劇団の美神が登場し否応なしに【恩恵(ファルナ)】を授けて、およそ七年都市の外で活動してレベルを上げた。ダンジョンから出たモンスターは世代交代で弱くなっているのが通説だが、その中には滅茶苦茶強い奴がいた。お陰でいい経験値にはなったけれど振れ幅がすごいと感じました。まる

 で、主神をコロコロ変えながらつい最近オラリオにやって来たという訳。それと僕は多分転生者とかいうやつです。通してください。

 

 話を大きく変えて、器の昇華(ランクアップ)に必要なのは上位の経験値(エクセリア)。通常のと違うそれを獲得するには神々が認める偉業を打ち立てなければならない。

 アビリティが育っていたLv.4の僕に必要なのがまさに偉業。達成するにはそれ相応の相手が必要なので、噂に聞く迷宮の孤王(モンスター・レックス)こと階層主を討伐しに向かったのだ。

 

 その戦闘中出会したのが【ロキ・ファミリア】であり、不本意とはいえ大手派閥の遠征を妨害してしまったと椿、主神(ヘスティア様)経由で知り合った大手鍛冶系派閥の団長に相談しているというわけだ。

 

 「ハッハッハ。それにしてもまさか、アンフィス・バエナをソロで倒しにいくとはな!」

 「それに関してはヤれると思ったからでって、僕が言いたいのは──」

 「分かっておる。結論から言えば大丈夫だ」

 

 アンフィス・バエナを含む、階層主を野放しにしておくと冒険者のダンジョン探索に支障をきたす。なので、中堅以上の派閥には遠征以外にも強制任務(ミッション)として討伐が言い渡される。

 

 「しかし、アンフィス・バエナはまだ休息期間中(インターバル)。今回の遠征にこれの討伐は含まれていなかった」

 「なんでそんなことが分かるの?」

 「ガレス······【重傑(エルガレム)】が言っておった。今回は倒さなくていいとはいえ、万が一ということもある。遭遇するやもしれぬから足場を作る用の氷の魔剣は必要最低限だけ持っていく、と」

 「なるほど······」

 

 つまり大丈夫ってことか。

 

 「······姿は見られたか?」

 「んー、多分?どうだろ、結構激しくやりあってたから分かんない」 

 「そうか」

 

 結局そこなんだよね。

 獣人の上級冒険者の聴覚と嗅覚が優れていても、あの音と水飛沫だ。戦闘音と水面を叩き付ける音が大きすぎて聞こえないし、陸地にも水流れていたから僕の匂いも残ってないと思うんだよね。ただでさえダンジョンは匂いがごちゃごちゃしているらしいし。

 でも視覚は違う。光とか煙とか変装とか一切目眩ましなんてしてなかったから、視力が優れている冒険者に姿を見られたかもしれない。

 

 バレてないんなら、こんなに悩まないしもちろんスルーするけどさ。

 

 「ほれ、できたぞ」

 「ん?お~!」

 

 モンスターが落とすのは魔石だけではない。その象徴である牙や爪、鱗なんかを落とすことがあり、それをドロップアイテムと言う。

 僕が戦ったアンフィス・バエナが落としたのは魔石だけではなく、ドロップアイテムも落としてくれた。

 

 大牙。  

 アンフィス・バエナが落とす代表的なドロップアイテムだったが、通常と異なる点が一つあった。

 

 「こんな色の牙は初めて見たぞ」

 

 どのモンスターも、牙は基本的に灰色に近い白色。アンフィス・バエナも例外ではなかったのだが、

 

 白ではなく蒼、鮮やかな蒼色が炎のように揺らめく。

 

 白ではなく紅。鮮やかな紅色が水のように流れゆく。

 

 矛盾を孕む二つの大牙を椿に見せたら案の定食い付き、武器を鍛えてやると聞かなかった。まあ、丁度武器がなかったので了承したが。

 

 「代金は魔石払い。釣りはこれからの整備代として頂く。それでいいな?」

 「うん」

 

 銘は【紅蒼の双牙(アンサラー)】。切れ味はさることながら耐久も凄まじく、紅剣と蒼剣(二つの剣)それぞれに能力が付与されている特殊武装(スペリオルズ)

 

 「付与したのではない、()()()()()()()

 「付いてきた?」

 「うむ。普通にいつも通り、最高傑作作るぞと気合い入れて鍛えたらこうなった」

 「ええ······」

 

 まるで意思があるみたいに······。

 

 「デキは申し分ない。試してみるがいい」

 「そうする。ありがと」

 

 早速ダンジョンに行こう。もうすぐ夕方だけどね。

  

 「リントよ」

 「ん?」

 「抱いてよいか?」

 

 いつもの。ぎゅー。

  

 

 

 

 ダンジョンにて。

 

 「悪くないな」

 

 思いの外手に馴染む双剣に感想を溢す。

 両断して灰になるモンスターはミノタウロスで、中層に出現する硬い上に集団で行動する厄介なモンスター。

 適正レベルはLv.2、Lv.5になった今集団で現れても苦戦する相手ではないが、

 

 「一体あっちに逃げましたよ」

 「······!ご、ごめんなさい!それとありがとうございます同胞の子!」

 

 一体逃げられた。

 

 ここは上層。本来ミノタウロスが現れない階層なのだが、彼女らの様子を見る限り異常事態(イレギュラー)が発生してここまで逃げられたらしい。

 ダンジョン内は何が起きても自己責任が基本だが、この場合罪の所在はどうなるのだろうか。ナァナァで済まされそうだな。

 

 「【千の妖精(サウザンド・エルフ)】······」

 

 彼女の所属はあの【ロキ・ファミリア】で、大手の不祥事なのだから罪状を決めるギルドは適当な罰則(ペナルティ)で隠蔽に力を入れる。

 なんだろう、ギルド長が噂通りの権力者なら被害者に慰謝料払うくらいならギルドに払えっていいそう。これがエアプギルド長概念。

 

 「ま、どうでもいいか」

 

 元々中層のモンスターで少し試す程度だったのが、思わぬ棚ぼたで上層でできたのだ。

 

 体力は常時回復するけど、精神疲労までは癒せない。疲れた。今日は帰って寝よう。

 




時系列
 オラリオ入り→ヘスティアの眷属に(ベル未加入)→ダンジョン探索(ベル加入したが顔合わせしてない)→アンフィス・バエナ戦→ヘスティア捕まえてランクアップ→ギルドに報告後椿のところへ→ダンジョンでミノタウロス戦(原作開始)→初顔合わせ(ヘスティア飛び出す)→三話へ

こんな感じ
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