完成しているのは間違っているだろうか   作:新人作家

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第4話

 

 【怪物祭(モンスター・フィリア)】。

 ギルド協力のもと【ガネーシャ・ファミリア】が主催で行う、オラリオ内でも大規模な祭りの一つとして数えられる。

 人類の敵(モンスター)を地上に連れ出し、観客の前で調教(テイム)するというシンプルな催しではあるが、これが大いに盛り上がる。

 

 檻の中とはいえモンスターが地上進出する形なのだが、この祭りは長年積み重ねてきた【ガネーシャ・ファミリア】の実績が伴って初めて実現した事業。

 

 オラリオに来て初めての祭り。前世では祭りが好きだった気がする僕にとって、これは楽しみだったりする。

 

 

 

 

 

 

 

 「モンスターだぁぁぁぁ!!」

 

 はい、最悪。

 探索に行こうとするベルを誘って祭りに参加し、留守にしていた主神(ヘスティア)と合流したはいいが、ここにきてモンスターの脱走事件の発生。

 薄々こうなるんじゃないかと予感していたが、当たるとは思わなかった。

 

 楽しんでいた人々が一転し、悲鳴を上げて波のように押し寄せ、背の低い僕は二人とはぐれてしまった。

 

 人混みをかき分け開けた場所に抜けると、脱走モンスターその①(オーク)

 拳を振り抜き腹に風穴を開ける。

 

 はぐれた二人を見つけるため移動を開始したら、脱走モンスターその②(ソード・スタッグ)

 左右の角を掴んで一回転させて首を折る。

 

 シルバーバックに追われている二人組がいると耳にした瞬間、モンスターその➂(???)

 迫る蕾をアッパーカット!

 

 「()()()()()!?」

 

 思わず悲鳴じみた声を上げた。

 いやおかしいでしょ。【ガネーシャ・ファミリア】が連れ出したモンスターは中層域までだった。そこまでのモンスターに、Lv.5で(アビリティ)に自信がある僕のパンチが負けるはずがない。どんな物理耐性しているんだ、このモンスター!

 ()()()()()()()モンスターに内心で愚痴る。

 

 ······ん?()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 「!君は、この前の······!」

 「あー!酒場でベートと戦ったあの!」

 「ベートを倒した冒険者ね!お願い、力を貸して!」

 

 僕が殴るより先に戦っていたのは──ゲッ、【ロキ・ファミリア】!

 金髪で女剣士の【剣姫】は風の魔法で囮に徹し、アマゾネスの姉妹【怒蛇】【大両断】の二人は武器がないせいか防戦一方となっており、【剣姫】なのに剣を使わず囮なのは根本からへし折れて使い物にならなくなったせいだと推測できる。

 

 「リント君!こっち!」

 「──え?」

 

 声がする方に目を向けると、二人のギルド職員と倒れている誰か。一人はベルの担当を務めるエイナ・チュール。僕と同じ半妖精(ハーフ・エルフ)で怒ると怖い人。もう一人は僕の担当であるミイシャ・フロット。僕の冒険者登録の受付をしていたからそのまま担当になったヒューマンだ。

 

 「──【バラエティ・ボルト】」

 「す、凄い!本当に無詠唱なんだね!噂通りだ!」

 「傷を治したので、安静にしていればもう大丈夫です······やっぱり噂になっているんだ···」

 

 やはり目立ち過ぎたか。観客(ギャラリー)が集まってくる前にあのモンスターをとっとと倒そう。

 

 「ま、待って···くだ、さい······!」

 「ん?──お」

 

 歪ませた蕾が開き、()()()()。食虫植物ならぬ食人植物を彷彿とさせる、何本か折れた鋭い歯がこちらを向く。

 

 「······あ、コイツ。メレンに漂流していたモンスターか」

 

 苦戦していた漁師達に手を貸して倒したモンスターだ。弱っていて鈍い動きをしていたから剣で瞬殺したから忘れていた。

 

 「なら、簡単だな」

 

 双剣の切れ味はもう試した。次に試すのは()()の方だ。

 耐久力がある敵が複数体、試運転には丁度いい相手だ。

 

 「私は、私はレフィーヤ・ウィリディス!ウィーシェの森のエルフで神ロキと契りを交わした、このオラリオで最も強く誇りの高い偉大なる眷属の一員!」

 

 回復魔法で止血したのはいいが、まだ激痛で立てないくらい苦しいはずだ。それでも淡化を切って前に出ることを選択した彼女。

 

 第一級冒険者が苦戦するモンスター、それが目の前に来ても引かないその勇気と度胸に、僕は。

 

 「同胞の方、恥を承知で──」

 「時間を稼ぎますので、貴方の魔法で一掃しちゃってください」

 「~~っっ、はい!」

 

 自分より相手を優先するほどできた人間ではないが、頑張ろうとする人を無視するほど野暮ではない。

 

 「──【エルフ・リング】!」

 

 彼女だけに許された稀少魔法(レアマジック)に反応して、モンスターの触手が殺到するが、

 

 「【バラエティ・ボルト】」

 

 一本一本の触手を精密に、炎属性に変えた魔法で炭化させる。

 すかさず噛み砕こうとしてくるが、

 

 「「「通さないッ!!」」」

 

 三人の冒険者が軌道を剃らして妨害する。

 【千の妖精】は自身が狙われているという恐怖をものとはせず、ただ憧憬(アイズ)に追い付くために詠唱を続け、ついに(リヴェリア)の魔法を完成させる。

 

 「──【ウィン・フィンブルヴェトル】!!」

 

 オラリオ最強の氷結魔法はモンスターの動きを完全に停止させ、

 

 「やりましたね」

 

 僕の踵落としで粉砕された。

 灰と氷片が散る中、功労者(MVP)である彼女は傷を抑えながらゆっくりこちらに歩み寄ってきた。

 

 「同胞の方、お手伝いありがとうございます」

 「いえいえ。それにしても同胞の方、か·····半妖精(ハーフ)だけど同胞でいいんですか?」

 

 純血至上主義っぽいから『穢れた血め!』なんて言って、人の血が入った半純血(エルフ)は同胞と認めなさそうだけど。

 

 ······昔どこかで聞いたことのあるセリフだな。コンポタっぽい題名(タイトル)だった気がする。

 

 「関係ありません。妖精(エルフ)だろうと半妖精(ハーフ)だろうと共に戦ってくれた貴方は、尊敬に値する同胞です」

 

 エルフとは?という問いに対し、僕は容姿も力も他種族とそんなに違わないのに見下している、プライドがやたら高い高慢ちきな潔癖種族と答える。

 例外もいることは知っているが、極々少数のため答えは変わらない。

 

 別にそんな半分とはいえ同じエルフであることに忌避感はないが──あの母親の血が半分流れていることに思うところはあるが──お前も外見で判断して差別するんだろ、という風には見られたくなかったな。

 

 でも目の前のエルフは違う気がする。どんなエルフかは偏見で決めつけるんじゃなくて、一個人として相手を見ているように思える。

 ほぼ初対面の間柄だが、彼女からはベルに似た善性を感じる。

 

 「リント・クライムロードです。勇気を見せた同胞、貴方の名前を聞いてもいいですか?」

 「!私はレフィーヤ・ウィリディスです。勇敢なる同胞、リント君」

 

 僕と彼女は互いに手を伸ばす。親交の証として用いられる握手。エルフは肌の接触を拒むため馴染みのない風習だが、僕達は拒絶することなく笑顔で握手を交わした。

 笑顔で手を握り返す同胞(レフィーヤ)を見て、この時ばかりはエルフも悪くないと思った。

 

 「──ん」

 「「え?」」

 

 隣から第三者が現れ、僕の近くまでズイッと手が伸びる。

 

 「······えと、私はアイズ・ヴァレンシュタイン。勇気を見せた同胞、あ、私はエルフじゃないから······冒険者?貴方の名前を聞いても、いいかな?」

 

 あ~、察し。

 僕達の一連のやり取りを見て、いいなと思った彼女は真似をしたわけだ。 

 隣のレフィーヤは微妙な顔をしている。

 

 うん、台無しだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 あの後、彼女達【ロキ・ファミリア】と離れた僕はようやくベル達と合流できた。

 僕がモンスターと戦闘中、ベル達もモンスターと戦っていたらしく、劣勢だった彼らは何とか立て直して勝利したようだが、血を流すほどのダメージを負っていた。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ベルの腕の中でぐったりしているのだ。主神の危機(ピンチ)は恩恵を授けられた冒険者にとって冗談抜きでヤバい。

 

 「今から【豊穣の女主人】に運んで治療するから!」

 「ではさっさと運びましょうか」

 

 僕達が向かう先は【豊穣の女主人】。目的は()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 「いや治療院でしょう普通。打ち上げするの?」

 「しないよ!?シルさんが部屋貸してくれる上に看病までしてくれるみたいだから」

 「シルさんに対する信頼の厚さ」

 

 最初シルの財布を届けるよう頼まれ、捜索していたら偶然ヘスティアと合流し、モンスターが檻から抜け出して各地で戦闘した、こんな流れだった。

 全部終わった後にひょっこりシルが現れ、空いている部屋を使って看病します、か。

 

 ······怪しくないか?

 

 「やっぱり治療院に──」

 「こっちです!ベルさぁ~ん!!」

 「シルさんだ!助かります!」

 

 店の前でシルさん登場。

 ベルは焦って気付いていない。冒険者である僕らより速く、目的地まで辿り着いていることに。

 

 シルは色々感づいた僕に向かって怪しく微笑みウィンクを飛ばした。

 

 「ひぇ」

 

 情けない声を出すのはしょうがないことなのだ。

 

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