完成しているのは間違っているだろうか   作:新人作家

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年明ける前に一筆しました。


第5話

 

 【冒険者依頼(クエスト)】。

 その名も通り冒険者に向けられた依頼のことで、主にダンジョンに関わる事柄を生産系・医療系派閥、ギルドや商人から依頼されることが多い。報酬は難易度を考慮した上で依頼主(クライアント)との交渉の末に決められ、お堅いギルド以外だと相手によって色を付けられることもある。

 

 何が言いたいのかと言うと、僕は【冒険者依頼(クエスト)】を受けた。

 激動の祭りが終了して主神(ヘスティア)も無事回復した次の日、本業であるダンジョン探索に赴こうとバベルまでの道中で、だ。   

 

 「愚者(フェルズ)、ね······」

 

 恐らく偽名だし、黒いローブで全身を隠していたので、顔を始め性別や種族を特定できず素性を明かせない。 

 初めは断ろうとした。しかし、人は高額報酬を提示されてしまっては断れない。条件反射で誘惑に負けるのは生物学上仕方のないことである。何より僕の内にある本能が囁いている。

 

 『一度敵と認定すれば誰彼構わず噛みつく戦闘狂、という噂だったが、君に流れている父親(ヒューマン)の血かそれとも気質なのかは知らないが······。案外俗っぽい一面もあるのだな』

 

 誘惑に負けてしまった僕に向けてフェルズから言われた言葉である。ほっとけ。

 前々回所属していたファミリアの団長から簡単に釣られるなと叱責をもらいそうだが、主神である羽帽子の男神はいいんじゃないかと笑って背中を押してくれそうだ。

 

 話は戻して【冒険者依頼】の内容は、ダンジョン三十階層にあるアイテムの採取依頼。

 密林の峡谷と呼ばれるほどのジャングル型の階層は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 見てて気味悪いし悪臭も酷いので長居はしたくない。だから、

 

 「手っ取り早く終わらせますか」

 

 僕を食い殺さんとばかりに口を開く、祭りで戦った新種の群れに突撃した。

 

 

 

 

 

 場所は変わって十八階層。モンスターが誕生しない休息地帯(セーフティ・エリア)と呼ばれる空間の中でも、冒険者が冒険者向けのアイテムを売買する店や、休息するための酒場や宿がある通称【冒険者の街(ローグ・タウン)】。

 モンスターの襲撃で繰り返し破壊されてはいるが、その度に復興しているタフな街。

 

 『ようこそ、冒険者の街へ!』

 

 などと門にはデカデカと書かれ、辿り着いた冒険者を歓迎するムードをかましているが、その実態はギルドの目が届かないため非合法価格(ぼったくり)が常の騙し騙らせが横行する犯罪スレスレのエリア。

 

 『お!坊主、お使いか!偉いな、一本マケてやろう!』

 

 回復薬×2+1(合計三本)→5500円

 ・仕入価格一本500円(最低品質、賞味期限切れ)

 ・マケて······る、のか······?これが······?

 ・見ていただけでお使いに来た覚えはない

 

 もちろん買わなかったが、こんな風に子供の僕ですら倍以上の値段で取引させられるのだ。最低だよ。

 

 色々あって疲れた僕は街の宿(ぼったくり価格)で休んでいたら、ガチャリと扉が開いて()()()()()()

 

 ······???

 

 困惑する僕。

 そんな固まって動けない僕を無視して股がるお姉さん。あ、いい匂い···。

 

 両手で首を掴まれたことで瞬時に理解した。あの階層にあった()()の持ち主か。

 僕は女の腕を首から離そうと抵抗する。思った以上に僕の力が強かったのか、女は一瞬目を見開くが問題ないとばかりに力を籠める。

 

 くそ、首絞められて力が入らない······!

 

 「言え。アレをどこにやった」

 「売りました。アレの見た目は悪趣味だけどかえってそれがマニアの趣味嗜好に刺さって──」

 「死ね」

 「──ガ、ハッッ!!」

 

 首をへし折られた僕が見た最後の光景は、お姉さんの足の裏だった。

 つまり、踏まれた(死んだ)

 

 

 

 

 

 

 

 「え~と、つまり君は」

 「はい。採取依頼の【冒険者依頼(クエスト)】を受け、それを達成した僕から回収する依頼を受けた人間に依頼品を渡し、宿で寝泊まりしていたら本来の持ち主である女性に攻撃されました」

 「なるほど······」

 

 整理すると、【冒険者依頼】を受けたのは彼ともう一人。採取役が彼、回収役がもう一人。彼はもう一人に渡した後、宿で寝泊まりしていたところ本来の持ち主が登場し、この惨状を産み出した。

 無抵抗とはいえ、ベートを倒せるLv.5だ。それもかなり高い耐久を誇る彼を······。

 

 「下手人は女性でいいんだよね。君の見立てだと強さはどれくらいだい?」  

 「Lv.6。以下だとしても力のアビリティはLv.5最強だと思います」

 「──!」

 「我々と同等だと!?馬鹿な······」

 

 これまで力と耐久値の貯金はS以上を超えていた。そんな僕が女が掴む腕を離せずその上頭を踏み砕いたとなると、力は僕と同等かそれ以上、つまりLv.6かLv.5最強のどっちか。

 

 第一級冒険者はオラリオのトップ層。それ故に英雄視されるほど有名になる。成るのが難しいことを知っているフィンとリヴェリアが驚くのも無理はない。

 

 被害者で当事者の僕?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。むしろ深層でデスマできるくらい元気とやる気に満ちている。最高にハイッ!てやつだ。

 

 そんな(リント)を他所に、フィンは思案する。

 

 (彼の推測は多分、当たっている。ただ、第一級冒険者の中に特徴が合う人物に心当たりがない)

 

 彼みたいに都市外で強くなった?──違う。ダンジョンにある採取物を奪い返しに襲撃したならば、オラリオにしかないダンジョンで長年活動していたということになる。  

 ならば候補は二つ。レベルを偽装した冒険者か闇派閥(イヴィルス)のどっちか。有り得るのは後者。

 

 (それにしても)

 

 フィンはベート戦を思い出し、獣化(スキル)が乗った猛攻を凌げる耐久系スキルがある。と予想したものを、この惨状から強力な治癒系スキルによるものだと()()()()。これならばベート戦で終始傷が見えなかったのは傷ができた瞬間に治っていたから。もしや体力も?加えて精神力(マインド)も含めてだった場合はヤバい。

 どちらにせよ血液と脳髄を治癒系スキルの範囲で治せるかが不明、だから確信ではなく更新。

 

 (······凄まじいね。それにしても闇派閥か)

 

 ゼウス・ヘラが去った後に台頭した過激派ファミリアで、彼らに壊滅されたとあるファミリアの眷属─【疾風】が暴走とも取れる報復活動をしたことで事実上解体された犯罪組織。

 

 もし暗黒期(あの時代)に彼がいたらどうなっていただろう。地上(オラリオ)地下(ダンジョン)、噂通りの戦闘狂ならば敵が現れる場所であればどこだろうと暴れ回るのだろうか。

 同じファミリアの場合、触発されたアイズが彼に続く。そんな二人をリヴェリアが叱る······いや、言い訳を並べて彼だけ回避するかもしれない。目の前にいる彼は歳に見合わず理知的で冷静な印象だから。

 

 それでも戦闘狂であるとは思う。今は違うが、一度戦闘になれば戦意高揚する(スイッチが入る)タイプ。

 

 (······うん、絶対苦労する)

 

 フィンは内心で苦笑いした。

 賢くて強くて体力オバケで戦闘狂──アイズの完全上位互換を想像する。忙しい時なら絶対手に負えない。

 

 想像しただけで胃が痛くなるので頭を切り替える。

 

 ここにいるのはフィンとリヴェリア、そしてリントの三人のみ。

 宿の店主(ビリー)は部屋の修繕費用を持って街の長(ボールス)と一緒にダンジョンの封鎖と指名手配、そして十八階層にいる冒険者をかき集めるため出ていった。

フィン達と本来ならばダンジョン探索する予定だった残りの【ロキ・ファミリア】は、吐き気が止まらないレフィーヤを介抱するため出ていった。

 

 「真面目な話、例のブツは何かな?」

 「()()です。これくらいの大きさで受け取ったのはルルネ・ルーイという名前の、褐色肌で犬人(シアンスローブ)の女性です」

 「······あっさり言うんだね」

 「ルルネ・ルーイ······【泥犬(マドル)】だったか。【ヘルメス・ファミリア】の」

 

 当然バラす。

 あの女性は確実に回収するため僕が一人になるタイミングを伺って乗り込んできた。今もアレを回収していないのなら、間違いなくこの階層に潜んで事を起こす。

 狙いが判明している以上、依頼主(フェルズ)と依頼内容の全容は伏せるとしても情報共有はしておくべきだ。

 

 受け取った人物は一時期仲間だった姉貴分のルルネ・ルーイ。彼女からは斥候や諜報活動を教わった。母性感じて危険から遠ざけようとする女性陣とは違い、彼女は仕事仲間として対等に接してくれた。そのお陰で人間の悪意やその対処法なんかを詳しく知れたので感謝している。

 一応ランクアップしている上級冒険者だけど、偽装しているみたいだし名前言っても偽名だった場合伝わらないかな、なんて思ったけど杞憂だった。

 

 「今、ボールスがこの階層に居る冒険者を集めている。僕達はこれからルルネ・ルーイを探して保護するのと同時に特徴が合致する女を探す。リント、君は君を傷つけた犯人を見つけてほしい」

 「いると思いますか?二人とも」

 「僕が【泥犬】なら身を隠すかな。犯人なら、身体検査が始まるギリギリまで残る」

 

 

 

 

 

 「も、モンスターだぁぁぁぁ!!」

 

 前触れなく家屋を破壊しながら街に現れたのは新種の群れ。冒険者であっても遭遇する未知に混乱する中、いち早く走り出したのは第一線で活躍する【ロキ・ファミリア】と、

  

 「─ハァッ!」 

  

 見つけ次第高速で討伐する半妖精(リント)。咄嗟に動けず固まっていた冒険者は助かったと安堵する。

 

 「知ってはいたがあのガキ、Lv.5なんだよな···」

 「俺も信じられなかった。ハーフってもエルフなら普通後衛だろ?それが【凶狼】を殴り合いで倒したとかなんの冗談だって」

 「アレを見たら嫌でも信じるしかねぇな」

 

 紅と蒼の双剣で舞うようにモンスターを斬り捨てるリント。戦うのはこれで三度目。戦闘を重ねる毎に相手の癖を見抜く彼は、討伐に掛かる時間を短縮し効率化する。

 

 それでも数が多い。ならば、武器を双剣→短杖に変更して纏めて焼き払う。

 

 【神の短杖(ヘスティア・ロッド)】。主神のヘスティアが、鍛治神(ヘファイストス)に作らせた文字通りの神作品。

 効果は【恩恵】に呼応して魔法の威力が変わる特殊武装(スペリオルズ)。鍛治師の手から離れて勝手に成長する邪道であり、そもそも魔導師用の杖は専門外だと怒られたらしい。

 

 「──【バラエティ・ボルト】!」

 

 計三十連射。無数に飛ばされた炎弾は正確に口内に着弾─せずそのまま貫通。炎は威力をそのままに階層の壁を破壊した。第二級冒険者以上の威力に(リント)は引いた。

 

 灰が舞い落ちる中に立つ半妖精に冒険者は何を思ったか。

 

 「「「「「あのガキ、ヤベェ······」」」」」

 

 ドン引きである。

 

 

 

 

 

  

 「弱い」

 「ッッ──!?」

 

 【風】を纏うアイズですら圧倒される力。赤髪の女は容赦なく少女を追い詰める。

 

 「食人花(ヴィオラス)もだが、アレすら討伐されるとは」

 

 アイズの魔法に反応し、食人花に寄生した【宝玉の胎児】。階層主を超える体躯のモンスターに成り果てたソレは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 そんな強力な魔導師が来る前に目的を果たす。

 

 「──【バラエティ・ボルト】!」

 「ぐぅぅ!?」

 

 至近距離で放たれた氷塊を喰らい、壁際まで後退された。自身を退ける魔法、つまりアレを討伐した魔導師。一つ目の魔法は炎、氷ということは二つ目か。

 

 いやそれよりも。

 

 「······ふっ、くくく。アリアに続いて二つも······ああ、私は運がいい」

 「私が殺したはずなのに、ですか──ってあれ?違う?うわ恥っっっず」

 

 首を折ってその上で頭を潰された軟弱な妖精がまさか供物としてこの上なく相応しい男で、生き返って自分の前に現れてくれたのだ。幸運としか言い様がない。

 

 「貴様、()()()()()()()()()()?」

 「勘違いです」

 

 




リント
 死んで復活。復活までの時間は損傷度合いによる。ヘスティアは消えて戻った【恩恵】にパニック。精霊と何かしらの関係がある模様。
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