完成しているのは間違っているだろうか   作:新人作家

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遅れました、難産です。


第9話

 

 「逃げろ、逃げろおおおおお!!」

 「!なんでこんなところにガキが···いやLv.5になったってクソガキか!強ぇんならお前がどうにかしろよ!」

 「なんてたって第一級冒険者様だからな!任せたぞクソガキ!」

 

 「ええ~···」

 

 モンスターを押し付ける行為は、俗に言う【怪物進呈(バス・パレード)】に該当する。ギルドが明確に禁止行為(タブー)と定めているこの行為は、相手が第一級冒険者だから押し付けた、などという言い訳はもちろん通じず重い罰則(ペナルティ)となる。

 

 『『『グギャアアアアアアア!!!』』』

 『『『キシャアアアアアアア!!!』』』 

 

 『ダンジョンは生きている』という格言が迷宮都市(オラリオ)にある。

 まるでこちらの様子を伺っているかのように、弱味を見せた瞬間あたかも狙いを定めたかのように異常事態《イレギュラー》に見舞われるためだ。

 

 【怪物の行進(モンスター・パーティー)】。

 溢れ出すぐらいの量のモンスターが種を問わず群れをなして襲撃されることを指す。数ある異常事態(イレギュラー)の中で、最も多い。

 

 ()()()()()()()()()モンスターが、地を揺るがす足音と咆哮が津波になって逃げ惑う冒険者の背から押し寄せてくる。

 神時代における量より質の真逆···いや、圧倒的な質と量を伴った純然たる数の暴力。

 

 「これは······」

 

 他人に面倒事を押し付けて逃亡を図るのは、死にたくない者からしたら仕方ない気がする。

 彼らは恐らくLv.2中心のパーティ。生活する分と少しの娯楽だけの利益で満足し、命を第一に行動するタイプの冒険者。彼らにとって、この【怪物の行進】は避けたい事柄のはず。

 

 これは優しさではなく甘さであり、仲間が一人でもいたら話は別だが被害者は僕一人。そして僕は強い(Lv.5)。内々で解決してしまえば報告するまでもない。

 

 (······よし、決めた)

 

 ギルドには【怪物進呈】をした冒険者のことは伝えず、ただモンスターが大量発生していたと伝えるだけに留めておこう。

 そして、彼らや彼らとはまた別の冒険者達が同じ真似をしないように、この群れはここで殲滅する。

 

 「行くぞ!」

 

 短剣を構えて走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【怪物の行進】、終了。

 モンスターが例え三倍四倍の数がいたとしても、ここは中層域でしかないのだ。魔法禁止のルール(縛りプレイ)でやっても余裕で突破できる。てかやった。

 

 なので下層へ。

 

 「──ラァッ!」

 『ギャッ!?』

 

 こちらの背を目掛けて追ってくるモンスターに合わせ、回転蹴りを見舞う。

 ゴキャリ、と首の骨が折れる嫌な感触を足で味わいながら、体勢を立て直す。

 

 「【バラエティ・ボルト】!」

 

 『『『キシャアアアアアア!!?』』』

 

 無詠唱で放たれる、炎属性の速攻魔法。集団で襲いかかるモンスターをまとめて焼き払った。

 

 『『『······』』』

 「······いつの間にか囲まれちゃってるよ」

 

 魔法で敵全てを焼き払って灰にした···と思ったのだが、前後左右の前方向いつの間にか同じモンスターに囲まれている。

 爬虫類特有の鋭い眼光が全身をくまなく突き刺してくる。

 

 ここは下層三十三階層【密林の峡谷】。

 二十八階層までの【水の迷都】を抜けた先にある、巨大な樹木が辺り一面生い茂って白亜紀を彷彿とさせるジャングル型のエリア。

 凶暴かつ獰猛な恐竜種が出現し、純粋な数と力で圧倒してくるため、Lv.3~4が在籍する中堅派閥でも苦戦を強いられる。

 

 主神(ヘスティア)からの謹慎が明け、待っていたのはギルドから課せられた探索義務。そのギルドから、今回の探索で【密林の峡谷】を完全攻略しなればならないとお達しが届いた。

 【冒険者依頼(クエスト)】で三十階層に来て攻略したばかりなのに、なんで昨日と今日で三十三階層あるこのエリアを攻略しなければならないのか。まあ、以前来た時は新種関係で一部エリアが変質していたが。

 

 そしてここを攻略して待っているのは【砂漠の迷園(サンド・ランド)】。

 地図やモンスターの情報を貰いはしたが、完全初見となる砂漠エリアを順次攻略しろというのは、少々横暴過ぎやしないか?

 

 適正レベルはLv.3~、とあるけどこれはソロではなくパーティの平均レベルを示す。僕がLv.5だとしてもまだ新人冒険者(ルーキー)。油断していたら命を刈り取られる。

 

 「······でもまあ、ここで躓くようじゃ無理か」

 

 十八階層で色んな敵と戦った。恐らく、口振りと態度からあの赤髪の女性のワンマンチームではないので強大な敵が控えているのは想像に難くない。であれば邪神もいるよな。神ほど厄介な敵はいないとこれまでの旅路で身に染みて思い知っている。

 

 この程度の階層に膝をつくようでは、この先の戦いに勝利はない。

 

 僕を中心に囲うのは、シャドーラプトル。

 この階層では比較的小柄なモンスターではあるが、体長はおよそ三Mで大人以上の体躯を誇り、猛禽のような鋭い動きをする恐竜種。

 それの集団をさっき倒したばかりなのに、また次の集団が現れた。水源エリアよりも出現率が異常に高くなった気がする。   

 

 これを手早く倒して完全攻略し、目的地である砂漠エリアに進出しよう。そして、どんどん強くなろう。

 

 それにしても······

 

 「良かったよ、ズレを直しておいて」

 

 アビリティの急激な上昇は、器の昇華(ランクアップ)までと言わずとも多大なズレを生じさせる。

 僕の場合はアビリティもそうだが()()()()()()()()()()()()()()()()、常時発動する戦闘系スキルが加わって一つ一つの動作が出力過多になって無駄に消耗する。そうならないよう調整をしなければならないのだ。

 

 リント・クライムロード(12) Lv.5

 力:G233→F300→F376

 耐久:H170→G200→G288

 器用:G212→F300→F359

 敏捷:G260→F300→F390

 魔力:G280→F300→E412   

 

 (死亡後、スキルの効果でアビリティが一段階上昇。その後の上昇値はワイバーンの戦闘で獲た経験値(エクセリア))

 

 発展アビリティ

 狩人:E→D

 幸運:E→D

 精癒:D→C

 勇猛:D→C

 神秘:E→D

 魔導:D→C

 覇撃:E→D

 覇光:E→D

 加護:D→C

 

 魔法

 【バラエティ・ボルト】

 ・速攻魔法

 ・希望属性

 

 【ディア・ミメシス】

 ・吸収魔法

 ・魔力付与

 

 【──】

 ・■■魔法

 

 スキル

 【完成大器】

 ・魔法、スキル、発展アビリティの完成

 ・経験値量増加  

 

 【闘争本能】

 ・戦闘時、アビリティの超高補正

 ・傷、体力、精神力の超回復

 

 【一撃覇者】

 ・任意発動

 ・チャージ実行権

 

 【不死戦王】

 ・死亡時の蘇生

 ・蘇生成功後、アビリティ及び発展アビリティの一段階強化

 ・蘇生後、24時間使用不可

 

 【空間収納】

 ・ストレージ

 ・重量過重時における能力補正

 ・収納量は魔力に依存  

 

 【技能増幅】

 ・発展アビリティ及びスキル効果増幅

 ・レベル上昇に伴う増加量上昇

 

 『ヘスティアは絶句した』

 『何言ってるんですか?』

 

 ヘスティアが絶句したことを伝えるほどの上昇値、【怪物の行進】はズレを直す必要不可欠の工程だった。

 

 本調子になり、残りのラプトルを速やかに討伐しようとしたその時。

 

 「──!!」

 

 ()()()()()()()()()()()

 樹木を薙ぎ倒しながら突進してきた一つの影が、前方に陣取っていたラプトルの集団を一瞬で灰に変えたのだ。囲んでいたラプトルは一目散に撤退した。

 そんな影の正体は、

 

 「ブラッドサウルス···」

 

 階層主を除き下層最大クラスの体格と重量を誇る大型恐竜であり、人間以外にもモンスターを攻撃する獰猛性を兼ね備えている。魔石を取り込んで強化種になりやすいモンスターのその筆頭。

 都市外で見掛けるブラッドサウルスは交配を続けるうちにLv.2でも倒せるぐらい弱いが、ダンジョン内のこいつはとにかく強い。

 

 その獰猛性の通り、目の前でラプトルの死骸をガツガツ貪り喰っているところを見るに、魔石の味を知り、餌を求めてやってきた強化種と考えるのが妥当か。

 

 ······そう言えば戦ったのはラプトルなんかの小型恐竜ばかりで、小型より大きなサイズのモンスターを全然見なかった。

 異常事態(イレギュラー)の前兆だと警戒していたが、違った。

 三十三階層の中型と大型モンスターを喰い尽くしてきた強化種、つまりこいつの仕業だったのだ。

 

 『ガァアアアアアアアアア!!』

 

 咆哮。ただの雄叫びでも、目の前のブラッドサウルスがすると格下相手の動きを強制停止させる威圧となり、同格であっても充分怯ませる威嚇になる。

 

 僕にはどっちも効かない。

 

 「シッ!」

 『──!?』

 

 高速移動による駆け抜け様の連続攻撃。紅と蒼の双剣から繰り出された連撃は、丸太のような脚をズタズタに切り裂いて片膝をつかせた。

 

 「硬いな」

 

 両足を切断するつもりでした攻撃は、あまりにも硬く、片足だけに留まらせた。

 このことから耐久はLv.5相当、かなりのものだ。

 

 「じゃあこれを使おう」

 

 短剣を亜空間に仕舞う。代わりに取り出したのは、竜顎をそのまま剣にしたような身の丈以上もある片刃の大刀。

 十八階層に出現したワイバーンのドロップアイテムである、牙を加工して造られたそれは、破壊力を突き詰めた対大型を想定した大刀。

 

 作者はお馴染みの椿・コルブランド。そのお値段は8800万ヴァリス。それを一緒に採取に行く約束と試し斬りの手伝いと手元のドロップアイテム諸々売り払って最終的なお値段は3000万ヴァリス。安くなったけどしっかり高く付いた。ぐはっ。

 

 気を取り直して。

 

 「······よし」

 

 リィン、と鈴の音を鳴らす。それはスキル【一撃覇者】によるチャージ開始の合図。

 ミスリルを配合しているため、魔力攻撃と相性がよく多大な負荷に耐えられる設計だ。

 

 溜め技(チャージ)も例外なく大幅に強化されているため、試運転を当然やらないといけない。

 まずは五秒で様子を見る。

 

 「やぁっ!!───あ」

 『ギャアアアアアアアアアアア!!?』

 

 光の軌跡は断末魔を呑み込み、壁に大きな亀裂を作り出した。

 ブラッドサウルス?上半身消し飛んだ。いい奴だった。

 

 「······ええ~······」

 

 あまりの破壊力に反応に困った。たった五秒でこれ?

 

 魔力(アビリティ)+覇撃(発展アビリティ)+覇光(発展アビリティ)+闘争本能(スキル)+技能増幅(スキル)

 

 ······組み合わせたら···こうなるのか???

 

 ちなみに覇撃・覇光なる発展アビリティは、必殺!とかトドメの一撃!とか領○展開!とか所謂必殺技に補正がかかるもののことなのだとか。

 過去に取得したものは全員、英雄と呼ばれるに相応しい偉業を立てたとかなんとか。僕も呼ばれるようになるのかな?

 

 どうでもいいが領域○開ってなんだろ。これ言ったのヘルメス様だし無視していいか。あの神様適当だしな。

 

 などと変なことを考えている、つまり油断している状況をダンジョンは目敏く見抜く。いくら第一級冒険者といえど下層だと足元を掬われることが起こりうる。

 

 「──マジかぁ!?」

 

 速攻魔法で······ダメだ自分の魔法に巻き込まれる。いや再生スキルあるし切り抜けられるか!?

 僕は下から大口開けた何かに飲み込まれ、地下深くに引き込まれる感覚とともに暗闇を彷徨う羽目になった。

 

 本当に足元掬われたなぁ!?

 




流れ
謹慎明けすぐにダンジョンへ→中層でモンスターを押し付けられる→迷宮攻略のため下層へ→ラプトルからのブラッドサウルス(強化種)→消し炭にするが下からパクリ←今ここ!

椿
リントと付き合いのある中で一番得をした人物。前から収納スキルに目を付けていた。Lv.4時点で将来有望だと思っていたので、強力なモンスターの素材を持ち帰ってもらい相手のニーズと自分の欲を満たせる武具を造って提供できるのではと期待していた。その際掛かる費用(適正価格)をその収納スキルを使わせてもらう代わりに割引する···などと考えていた矢先に達成できた。それどころかダンジョン産の高品質な素材まで貰えたのだ。すごく得をしているので徹夜で武器を仕上げたし、強めにぎゅーした。
  
リント
稼ぎまくってるので借金はしなかった。ただし財布は一気に寂しくなった。ぎゅーは嬉しい。何なら都市外の旅路で色んな女性からたくさんされている。女性陣の中にガチ惚れしている人がいることを、リント自身は気付いていない。天性の甘え上手。

 
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