名もなき盾 作:金切
エンジェル・ハイロゥを巡る最終決戦が勃発した。
宇宙はMSの火線と爆発の光に包まれ、無数のデブリが舞い散る激戦地と
化す。
リーンホースJr.から出撃する直前、オデロはカミオン隊の支援船にいるエリシャ・クランスキーと最期の通信を交わしていた。
「オデロ、お願い。絶対に戻ってきて。あなたがいない世界なんて、私には考えられない」エリシャの声は、戦場の喧騒とはかけ離れた、切実な響きを持っていた。
ガンブラスターのコックピットの中で、オデロは深く頷いた。
彼の胸には、シュラク隊の悲劇と、仲間を失った痛みがある。
だが、それ以上に強いのは、エリシャとの未来への確固たる希望だった。
「心配するな、エリシャ。俺は、必ず生きて帰る。そして、戦争が終わったら、二人で、誰も知らない遠い場所で、小さな畑を作ろう。そこで平和に暮らすのが、俺たちの新しい未来だ。だから、絶対、待っててくれよ」
それは、戦火の最中に交わされた、二人の命をかけた「誓い」だった。
オデロはその約束を力に変え、ウッソのV2ガンダムが切り開いた進路を追って、ザンスカールのMS部隊へと突進していく。
一方、戦場の中核からやや離れたデブリ帯で、アルフォード中尉率いる「シールド」隊のジェムズガン三機は静かに潜伏していた。
彼らのジェムズガンは、周囲の戦闘ノイズに紛れ、光学的なカモフラージュを施されている。
「隊長、オデロ機、動きが速すぎます。予測進路を大幅に超えています!」シドニー軍曹が報告する。
「やはりな。仲間たちの復讐心と、生きるための焦燥が彼を突き動かしている。このまま行けば、彼は間違いなく敵のエースパイロットがいる最前線へ突っ込むぞ」アルフォードは冷静に指示を出す。
高精度センサー・ポッドの解析は、恐ろしい予測を弾き出していた。
オデロ機の予測進路の最終到達点は、エンジェル・ハイロゥの防衛中核、そして、そこに配置されたエース機の予想座標と完全に一致していた。
エースとは、すなわちカテジナ・ルースのゴトラタンに他ならない。
「全機、現在地を維持しろ。オデロ機が敵中へ深く入り込み、孤立するまで待つ。ニール、最終設置座標へのポッドの移動と偽装を確認。デブリとノイズに完璧に溶け込ませておけ」
アルフォードは、自らの任務が英雄の戦いを傍観し、その影の瞬間に介入するという非情なものであることを再度認識する。
彼らは、オデロがエースの攻撃を受ける、その寸前まで姿を現さない。
「我々は、ただの盾だ。この盾は、未来を救うために使う」
オデロのガンブラスターは、エリシャとの約束を胸に、死の運命へと一直線に進んでいた。
そして、シールド隊は、その運命の交差点で、静かに待機していた。